企業と労働の本質が問われている/ブランド・企業論(61)
電通によって、改めて企業と労働の意味が問われた年となった。
新入社員だった高橋まつりさんが自殺してから1年、母が手記を発表した。
それをマスメディアが、トップニュースとして全文掲載などで大きく扱った。
今までの電通のメディアへの影響力を考えると、ちょっと風向きが変わってきたように思える。
12月23日、第5回ブラック企業大賞2016授賞式が行われた。
大賞に「輝いた」のが電通で、受賞理由は以下の通りである。
電通においては、「殺されても放すな。目的完遂までは・・・」などという社訓『鬼十則』に象徴される異常な精神論が蔓延し、パワハラ・セクハラなどが日常化している。13年前にも入社2年目の男性社員の自殺が過労死と認定され、3年前にも30歳の男性社員の病死が過労死と認定されている。 厚生労働省東京労働局は28日、広告大手の電通と幹部社員1人を、社員に違法な長時間労働をさせた労働基準法違反の疑いで書類送検した。 社長辞任が示すように、この事件は電通という 電通は「鬼十則」を社員手帖から外すとともに、夜10時に一斉消灯するなど対策を行っている。 特に、肉体労働から知的労働に比重がシフトし、ICTの発達によって労働の場と時間の制約がなくなりつつある現在、「一斉消灯」などという対策は笑止でもある。
電通は、このような過酷で人権侵害的な労働環境をまともに改善することもなく放置し続けた。何人もの労働者がこの企業によって殺された。 電通は、日本を代表する大企業である。それは輝かしい意味でではない。社会的に決して許されない人権侵害を続けた代表的企業である。ここに、強い怒りを込めて「ブラック企業大賞2016」の大賞を授与する。
ブラック企業大賞2016 受賞企業決定いたしました
幹部社員は、インターネット広告を扱う部署で、高橋まつりさんの直属の上司だったじんぶつである。
このような展開を受けて、電通の石井社長は辞任を発表した。
東京新聞12月29日
企業の存立基盤に関わるものである。
同社を象徴するのが「鬼十則」の社訓である。
⇒2016年10月18日 (火):電通の光と影/ブランド・企業論(58)
⇒2016年10月30日 (日):電通「鬼十則」の功罪/日本の針路(301)
長時間労働に対しては多くの企業が「36協定」を結んで対応しているだろう。
雇用者と被雇用者の間で締結される"労使協定"で、届け出があった場合にのみ労働時間の延長や休日の労働が可能になるものである。
しかし、実態としてこの協定が守られていない企業は多いだろう。
政府は「働き方改革」というが、ことは資本主義の本質に係るものであり、ことはかんたんではない。
東京新聞12月29日
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