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2016年12月18日 (日)

辺野古訴訟と司法の政治・行政への従属/日本の針路(314)

オスプレイが海上に「墜落(不時着)」した事故について、在沖縄海兵隊トップが「感謝されるべきだ」と発言したことが報道されている。
日本が未だに敗戦状態にあることを図らずも全国民に知らしめることになったと言えるだろう。
⇒2016年12月15日 (木):オスプレイ事故と根拠ない安全主張/永続敗戦の構造(7)

沖縄県民の忍耐も限界を超えることと思われる。
にもかかわらず、政府はアメリカの発表を追認して「不時着」と表現している。
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東京新聞12月18日

辺野古埋め立て訴訟で、最高裁は弁論も開かず、沖縄県敗訴判決を確定した。
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東京新聞12月13日

われわれが学校で学んだ三権分立という仕組みは、現実には機能していないことが明確に示された。
最高裁が政治・行政に従属せざるを得ない現実を、元判事の瀬木比呂志氏が『黒い巨塔 最高裁判所』(講談社)で描いている。

 小説では、福島原発事故が起こる以前の80年代後半、ある原発が稼働停止に追い込まれる。この原発では、大津波により非常用電源が喪失されるというシミュレーション結果が出されていた。にもかかわらず、電力会社がこの事実を握りつぶしていたことが発覚。また、制御棒6本が脱落し臨界状態が8時間も続くという重大事故の隠蔽なども明らかになったことで、稼働停止を余儀なくされていた。
 一方、こうした事態に電力会社は再稼働へ向け躍起になるが、しかし住民による原発再稼働差し止め訴訟が起こされ、その結果、地裁は再稼働差し止めの仮処分を決定する。時代は違うが、福島原発事故後の原発停止、そして再稼働の動きや、数々の住民訴訟を彷彿とさせるものだ。
 だが、これに危機感をもったのが最高裁判所だった。
・・・・・・
〈須田は、念のため、全国の原発訴訟係属裁判所について、再度人事局に担当裁判長についてのチェックをさせ、また、民事局や行政局にも調査をさせ、原発訴訟で原告側に有利な心証を表に出したことがある者や、過去に行政訴訟や国家賠償請求訴訟で目立った原告側請求容認判決を出している者については、四月に、目立たない形で、つまり、いわゆる左遷人事ではない形で、異動させていた(略)。早急に仮処分を取り消させるために、先の支部長、またこの四月が異動時期であった右陪審の後任には、事務総局経験者の中なら、取り消し決定を出すことに絶対間違いのない者を選んで送り込んだ〉
・・・・・・
 2014年5月、福井地裁において大飯再稼働を認めないよう命じる仮処分が出された。この判決を出したのは同地裁の樋口英明裁判長(当時)。樋口裁判長はその後、高浜原発差し止め仮処分も担当することになるが、一方、裁判所は15年4月1日付で樋口裁判長を名古屋家裁に異動させる決定を行う。
 裁判所は、住民側の訴えを聞き入れた樋口裁判長に、原発裁判にかかわらせないような人事を発令したのだ。
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 問題は、樋口裁判長に代わって最高裁が福井地裁に送り込んだ林潤裁判長の存在だ。林裁判長は1997年の最初の赴任地が東京地裁で、2年後に最高裁判所事務総局民事局に異動。その後も東京、大阪、福岡と都市圏の高裁と地裁の裁判官を歴任しているスーパーエリート裁判官。司法関係者の間でも、将来を約束され最高裁長官まで狙えると言われている人物である。
 これはもちろん、最高裁の“意思”を忖度することを見込んでの人事だった。目論見通り、林裁判長は15年12月24日、高浜原発再稼働を容認する仮処分決定の取り消しを行った。このとき、林裁判長の左右陪席の2人の裁判官もまた最高裁判所事務局での勤務経験があるエリート裁判官だった。
辺野古訴訟の県敗訴は最高裁と政府の癒着だ! 原発再稼働でも政府を追従し続ける司法の内幕を元裁判官が暴露

瀬木氏は、『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』(ともに講談社)などで、裁判所と裁判官の腐敗を告発し続けてきた人だ。
司法の腐敗を糺すのは最終的には国民であろう。

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