マツダの復活/ブランド・企業論(60)
マツダが好調である。
プロ野球の広島カープは、リーグ優勝を果たしたものの 日本シリーズでは日本ハムに敗れた。
しかし、カープのシンボルカラーを思わせる深紅のマツダ車が街頭で目立つ。
相次ぐ不正隠しによって、日産自動車の傘下入るした三菱自動車と対照的である。
マツダは長い間、日本の自動車業界のお荷物的な存在であった。
12月18日の日本経済新聞が、マツダ復活の舞台裏を探っている。
金井には秘策があった。部下でエンジンのスペシャリストとして知られる人見光夫(62)は改良点を7つに絞り込むと提言していた。フォードなどと比べ限られた人員で世界一を目指すため、取り組むべき課題をあえて限定した。特にこだわったのがエンジンの燃焼効率に直結する圧縮比。人見は既存技術を活用して世界一を実現できるという。金井は「最後はあいつの目を見て考えた。賭けてみようと」と振り返る。
後にHV並みの燃費を達成した実力を認めたのがトヨタ自動車だ。マツダに車両供給を打診し、15年の包括提携につながった。
翌10年には中国政府から「マツダ切り」の要請を受けたフォードがあっさり保有株を売却し、実質的に提携を解消した。後ろ盾を失ったマツダ。尾崎はこの後、金策に駆け回った。
「何とか3年連続の最終赤字は回避できそうです」。井巻から社長を引き継いだ山内孝(71)に尾崎が報告した日の午後、大震災が東日本を襲った。広島が本拠の同社に直接の被害はなかったが11年3月の震災で部品供給が停止。起死回生に向けいよいよ開発陣へのプレッシャーは高まった。
結局、12年3月期まで4年連続の赤字になった。増資を繰り返したためマツダの発行済み株式数は2倍にまで膨らんだ。それでもぶれなかった。山内は何度も繰り返した。「(世界の)3%のお客様に支持してもらえる車づくりに徹する」
「もうこれ以上の赤字は許されませんよ」。主力取引銀行から最後通告とも取れる連絡が入った前後の12年2月、スカイアクティブ技術をフル搭載した小型SUV(多目的スポーツ車)「CX―5」を発売するとヒットを連発して赤字を帳消しにしていった。
フォードという「大樹の陰」を捨ててまで独自路線を貫いたマツダ。対照的なのは巨大メーカーのトヨタの傘下に入ることで復活した富士重だ。08年に16.5%の出資を受け入れた。
同社もここから選択と集中で復活を果たす。だが大樹の陰に入るリスクが見え隠れする出来事もあった。
「もし御社がトヨタと同じ領域に入ってきたら、即座にたたきつぶします」。トヨタとの提携交渉の初回会合。経営企画部長として出席した富士重社長の吉永泰之(62)は、トヨタ幹部の言葉に息をのんだ。立ち位置を間違えれば富士重の将来はない。その制約は恐らく、今後も続く。
危機から復活 マツダ、エンジン一点突破の凄み
自動車産業は典型的な装置産業であり、規模の経済が大きく効く。
独自路線で成功しているマツダだが、独自路線と規模の経済は背反的である。
独立性と合従連衡策のバランスの舵取りが問われることになるだろう。
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