昭和改元と歴史観/日本の針路(315)
1926年12月25日、つまりちょうど90年前、大正は昭和と改元された。
現時点で振り返れば、前年の1925年が歴史の大きな分岐点だったと言えるだろう。
4月22日 - 治安維持法公布
5月5日 - 普通選挙法公布(25歳以上の男子に選挙権)
12月1日 - 民労働党結成、即日結社禁止、京都学連事件、京都府警察部特高課が京大・同志社大などの社研部員33名を拘束。
治安維持法が天下の悪法であったことは、よほどの右翼的な傾向の人間でない限り、現代の共通認識と言えよう。
治安維持法は普通選挙法とバーターというか、セットで導入されたものである。
普通選挙制度は、民主主義の観点からは制限選挙制度より優れたものとすべきであろうが、衆愚に陥る危険性については注意する必要がある。
「悪貨は良貨を駆逐する」からである。
船戸与一『満州国演義』第五巻『灰塵の暦』(2016年1月)で、西木正明氏は、日本近代史を次のようにまとめている。
戦争の世紀と呼ばれる二十世紀は、あまたの国々の興亡の世紀でもあった。
……
二十世紀冒頭の一九〇二年。
当時全世界に君臨する覇権国家だった大英帝国が、前世紀末の一八九五年、日清戦争に勝利した日本に目をつけ、同盟締結を持ちかけてきた。日本にとっては世界の盟主からの同盟締結提案である。否やのあろうはずもなく、一九〇二年一月三十日に同盟は調印され、発効した。
……
十年後の一九一四余年、欧州で第一次世界大戦がはじまり、日本は英国を中心とする連合国側の一員として、中国や西太平洋に植民地や利権を有するドイツと戦い、戦勝国となった。
結果的に大英帝国は手先にした日本を操って、自らが握る世界の利権と覇権に挑もうとした、帝政ロシアと帝政ドイツを殲滅した。
こうして当面の目的を達成し、これ以上日本を支える必然性がないと判断した英国は、東アジアで台頭した大日本帝国を危険視したアメリカの意向をふまえ、一九二三年八月一七日、同盟延長を懇願する日本の意向を拒否して、日英同盟に終止符を打った。
しかしこれが大きな誤算に繋がることを、ほどなく英国は知ることになる。
……
日英同盟廃棄から十年後のこの年、世界の孤児的な存在となっていた日本がドイツに急接近、アジアと欧州の情勢が一転して不安定になった。
激流となった時代の流れの片隅にで出来る渦のように出現したのが満州国である。
要するに、世界史の流れの中に咲いたアダ花が満州国だったのだが、その満州国を「私の作品」と言ってのけたのが岸信介、つまり安倍首相の祖父である。
⇒2012年12月24日 (月):エリート官僚としての岸信介/満州「国」論(13)
祖父を尊敬するのは孫の美徳であろうが、歴史観は肉親の情とは峻別すべきものであろう。
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