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2016年12月

2016年12月31日 (土)

2016年の回顧/アベノポリシーの危うさ(118)

2016年が暮れて行く。
今年は親しくしていた友人が亡くなったが、そういう年代になったということであろう。
国内的には、残念ながら、安倍政権によって反動化が進んだというしかない。

アベノミクスと称する経済政策は、明らかに破綻している。
日銀が史上初のマイナス金利を導入したものの、アベノミクスは失速した。
それでも政権は、環太平洋連携協定(TPP)承認、カジノ解禁を強行採決した。
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「アベノミクスは破綻してる。新3本の矢なんて絵空事」

経済成長を前提とする資本主義の終わりの始まりだという指摘もある。
しかし、「安倍1強」の言葉と論理を無視した政治は、依然として成長を求めている。

国際的には、英国民投票における欧州連合(EU)からの離脱派の勝利(Brexit)、米大統領選におけるドナルド・トランプ氏の勝利があった。
世界を主導する2大国の想定外と言われる現象が2016年の象徴だろう。
⇒2016年6月28日 (火):BrexitはRegrexitになるか?/世界史の動向(45)

共に、世論調査の予想を覆す結果で、世界の既成秩序を大きく揺さぶったと言えよう。
テロも相次ぎ、世界は混迷を深めている。
日本の周辺では、韓国の朴槿恵大統領の親友による国政介入疑惑を巡って、大統領の弾劾訴追案が可決され、大統領は職務停止に追い込まれた。
国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が南シナ海での中国の主権主張を否定する判断を下したが、中国は受け入れを拒み、軍事拠点化を推進している。

天皇陛下は8月8日、強い譲位の意向を滲ませたビデオメッセージを発表された。
⇒2016年8月 9日 (火):天皇陛下のお気持ちと護憲/日本の針路(285)
しかし政府の設置した有識者会議は、退位の恒久制度化は困難との認識で一致しているという。
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東京新聞12月30日

政府は18年の退位を視野に、来年の通常国会で「一代限り」の特別法制定を目指すというが、天皇制の曲がり角になるだろう。
沖縄県の米軍基地問題では、県と政府の対立が深刻化した。
佐藤優氏は、沖縄を差別するものは呪われよ、と言っている。
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東京新聞12月30日

安倍政権の崩壊が始まっている。

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2016年12月30日 (金)

企業と労働の本質が問われている/ブランド・企業論(61)

電通によって、改めて企業と労働の意味が問われた年となった。
新入社員だった高橋まつりさんが自殺してから1年、母が手記を発表した。
それをマスメディアが、トップニュースとして全文掲載などで大きく扱った。
今までの電通のメディアへの影響力を考えると、ちょっと風向きが変わってきたように思える。

12月23日、第5回ブラック企業大賞2016授賞式が行われた。
大賞に「輝いた」のが電通で、受賞理由は以下の通りである。

 電通においては、「殺されても放すな。目的完遂までは・・・」などという社訓『鬼十則』に象徴される異常な精神論が蔓延し、パワハラ・セクハラなどが日常化している。13年前にも入社2年目の男性社員の自殺が過労死と認定され、3年前にも30歳の男性社員の病死が過労死と認定されている。
 電通は、このような過酷で人権侵害的な労働環境をまともに改善することもなく放置し続けた。何人もの労働者がこの企業によって殺された。 電通は、日本を代表する大企業である。それは輝かしい意味でではない。社会的に決して許されない人権侵害を続けた代表的企業である。ここに、強い怒りを込めて「ブラック企業大賞2016」の大賞を授与する。
ブラック企業大賞2016 受賞企業決定いたしました

厚生労働省東京労働局は28日、広告大手の電通と幹部社員1人を、社員に違法な長時間労働をさせた労働基準法違反の疑いで書類送検した。
幹部社員は、インターネット広告を扱う部署で、高橋まつりさんの直属の上司だったじんぶつである。
このような展開を受けて、電通の石井社長は辞任を発表した。
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東京新聞12月29日

社長辞任が示すように、この事件は電通という
企業の存立基盤に関わるものである。
同社を象徴するのが「鬼十則」の社訓である。
⇒2016年10月18日 (火):電通の光と影/ブランド・企業論(58)
⇒2016年10月30日 (日):電通「鬼十則」の功罪/日本の針路(301)

電通は「鬼十則」を社員手帖から外すとともに、夜10時に一斉消灯するなど対策を行っている。
長時間労働に対しては多くの企業が「36協定」を結んで対応しているだろう。
雇用者と被雇用者の間で締結される"労使協定"で、届け出があった場合にのみ労働時間の延長や休日の労働が可能になるものである。
しかし、実態としてこの協定が守られていない企業は多いだろう。

特に、肉体労働から知的労働に比重がシフトし、ICTの発達によって労働の場と時間の制約がなくなりつつある現在、「一斉消灯」などという対策は笑止でもある。
政府は「働き方改革」というが、ことは資本主義の本質に係るものであり、ことはかんたんではない。
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東京新聞12月29日

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2016年12月29日 (木)

和解の方向性/アベノポリシーの危うさ(117)

安倍晋三首相が真珠湾を訪問し、先の大戦の犠牲者を慰霊した。
首相は記念館を望む埠頭で、「戦争の惨禍は、二度と繰り返してはならない。私たちはそう誓いました」「戦後七十年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たち日本人は静かな誇りを感じながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります」と述べた。
美しい言葉である。

しかし、かつて激しい戦火を交えた日米両国が「強く結ばれた同盟国」になった意義を強調することに重きが置かれ、反省や謝罪の言葉はなかった。
問われていた歴史認識についてはNo answerだった。161229
東京新聞12月29日

まあ、語れるはずもない。
大山鳴動した昨年の「戦後70年談話」において、「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」としたが、侵略をどう認識しているかには触れなかった。
侵略の定義は定まっていない、と逃げたのだから。
上記の言葉と、歴代内閣の積み上げてきた解釈を敢えて変更して、集団的自衛権の行使を容認する立憲主義の否定が論理的関に矛盾しているのは明らかである。

真珠湾攻撃に至った歴史を振り返れば、アメリカ「だけ」を向いて和解の価値を高言することがいかに偏っているか。
そもそも、「大東亜戦争」の名称は、1941年(昭和16年)12月12日に東條内閣が、支那事変(日中戦争)も含めて「大東亜戦争」とすると閣議決定したのである。
支那事変とは何か?

支那事変(しなじへん)とは、1937年(昭和12年)から始まった日本と中華民国の間で行われた長期間かつ大規模な戦闘である(ただし、両国とも宣戦布告を行わなかったため事変と称する)。
「支那事変」という呼称は、当時の日本政府が定めた公称であるが、現在は、太平洋戦争(大東亜戦争)勃発後も含めて日中戦争とも呼ばれる。しかし、日中戦争は1937年から1945年までの戦争を指すことが一般的であるが、「支那事変」は1937年から1941年12月8日までとするのが代表的見解とされており、期間が異なる。
Wikipedia

つまり、順序からしても中国との和解が優先すべきであるだろう。
⇒2016年12月 6日 (火):真珠湾訪問を意義あるものにするために/アベノポリシーの危うさ(112)
事実、アジアに目を向けよ、という声は多い。
⇒2016年12月27日 (火):真珠湾と歴史認識/アベノポリシーの危うさ(116)
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東京新聞12月29日

そして、アジアへ目を向けることは、沖縄に寄り添うことに繋がるだろう。
ダブルスタンダードはもう通用しないのだ。

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2016年12月28日 (水)

薬師寺論争と年輪年代法/やまとの謎(117)

飛鳥の法隆寺、天平の東大寺と対比され、白鳳を代表する寺が薬師寺であるとされている。
薬師寺は、天武8(680)年に、鸕(ウ)野皇后(のちの持統天皇)の病気治癒を祈願して、天武天皇によりその造営が企図された。
この薬師寺は、平城京ではなく、藤原京に建立された。

ところが、元明天皇によって平城遷都の詔が出され、和銅3年(710)藤原京から平城京への遷都が実施された。
それと共に、飛鳥や藤原の地に造営された諸寺も、平城京へ移転することになった。

これらの寺院の移転には大きな特色がある。"移転”と言うと、旧伽藍を解体し、平城京で新たに組み立てたとの印象を与えがちだが、実情はそうではない。単に寺号を受け継いだだけで、平城京で新しく堂宇を建立しているのだ。しかも、旧伽藍とは全く異なる伽藍配置を採用している。
唯一の例外が薬師寺である。薬師寺だけは寺号を変えなかった。そのため、藤原京にあった薬師寺は、奈良薬師寺と区別するために「本薬師寺」と呼ばれるようになる。それだけではない、他の大寺とは異なり、本薬師寺の伽藍配置をそのまま踏襲している。
本薬師寺から奈良薬師寺への移転の陰に隠された秘密

薬師寺が、本薬師寺の伽藍配置をそのまま踏襲していることから、本薬師寺と薬師寺に関して、建築物と仏像の関係が、「移建-非移建」「移座-非移座」についての論争がある。
「移建・移坐」ならば、東塔は、文武天皇の時に建てられたものの移建であり、金堂三尊は、持統天皇の時に造られたものの移坐である。
非移建ならば、両者とも平城京遷都後のものということになる。
文化史・美術史では、平城京遷都までを「白鳳」、遷都後を「天平」といっているので、「移建・移坐」か「非移建・非移坐」の問題は、「白鳳」か「天平」か、という問題であり、美術史の様式をどう捉えるかという問題になる。
⇒2008年2月22日 (金):薬師寺論争…①「白鳳」か「天平」か

奈良文化財研究所(奈文研)が、解体修理中の薬師寺東塔の天井板2点に対し年輪年代測定を実施した結果、新事実が判明した。
伐採年が729年と730年と推計され、塔中央の心柱についても、最も外側の年輪が719年を示し、720年代に伐採された可能性が高まった。
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読売新聞12月20日

東塔の造営年代については、平安時代の歴史書「扶桑略記」に「天平2(730)年3月29日、薬師寺東塔を建て始める」とする記述がある。
東塔保存修理事業専門委員長の鈴木嘉吉・元奈良国立文化財研究所長(建築史)は「年輪年代測定の結果が史書の記述と一致する、国内初の発見。東塔を平城京で造ったことが確定した」と話している。
年輪年代法という理化学的方法の有用性は法隆寺論争でも明らかにされてきたが、様式論とは別の視点から、古代史の謎解明に貢献するのではなかろうか。
⇒2007年8月30日 (木):若草伽藍の瓦出土

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2016年12月27日 (火)

真珠湾と歴史認識/アベノポリシーの危うさ(116)

安倍晋三首相が、27日、オバマ大統領と首脳会談を行った後、攻撃で沈んだ戦艦の船体をまたいで建つ追悼施設「アリゾナ記念館」で献花し、それぞれ所感を述べる。
慰霊することは結構なことだとは思うが、アメリカだけに終わるとアンバランスではないか。
⇒2016年12月 6日 (火):真珠湾訪問を意義あるものにするために/アベノポリシーの危うさ(112)

やはり、日米の学者ら約50人が、首相あてに歴史認識を問いただす公開質問状を出した。

「侵略の定義は定まっていない」とした首相の国会答弁の真意や、真珠湾のみならず、中国や朝鮮半島、アジア諸国の犠牲者も「慰霊」する意思があるのかをただしている。
 公開質問状を出したのは映画監督のオリバー・ストーン氏や、法学者のリチャード・フォーク・プリンストン大名誉教授、哲学者の高橋哲哉・東京大教授、安斎育郎・立命館大名誉教授ら計53人。
 質問状では「日本が攻撃した場所は真珠湾だけではない」と指摘し、安倍首相が2013年の国会答弁で「侵略の定義は定まっていない」と主張したことにも言及。「連合国およびアジア太平洋諸国に対する戦争と、対中戦争を侵略戦争とは認めないということか」と問いただした。
 また、26日からの首相のハワイ訪問に関し、「中国や朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争犠牲者の『慰霊』にも行く予定があるか」とも質問している。さらに日本の「侵略的行為」や「植民地支配」についての首相の歴史認識もただした。
首相の真珠湾訪問、歴史認識問う質問状 ストーン監督ら

首相がどのような所感を述べるのかは分からないが、アジア太平洋諸国に対しての目配りと侵略についての明言を避けるものであると、何のための真珠湾訪問か、ということになりかねない。
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東京新聞12月27日

また真珠湾を訪問するならば、沖縄の児童が多数犠牲になった対馬丸の慰霊も忘れるべきではないだろう。
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東京新聞12月26日

天皇、皇后両陛下は2014年6月対馬丸犠牲者の慰霊碑や記念館を訪問され慰霊している。

天皇、皇后両陛下は6月27日、太平洋戦争中、沖縄からの学童疎開船「対馬丸」がアメリカ軍に撃沈されて、今年で70年になるのに当たり、那覇市にある慰霊碑「小桜の塔」に供花された。対馬丸記念館も訪問し、遺族や生存者と懇談した。
天皇皇后両陛下、対馬丸の慰霊碑に供花 遺族、生存者と懇談

パフォーマンスとしての慰霊なのかどうかが問われているのである。

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2016年12月26日 (月)

不時着と墜落/「同じ」と「違う」(102)

沖縄県名護市沖で米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイが「不時着」した。
米側は「コントロールを失った状況でなく自発的に着水した」と墜落を否定しているが、現実に大破しており、客観的の見れば「墜落」に限りなく近い。
⇒2016年12月15日 (木)::オスプレイ事故と根拠ない安全主張/永続敗戦の構造(7)

「不時着」か「墜落」か。
現実は1つであるが、立場によって見方は変わる。
「地」と「図」があった場合、どちらを「図」とみるかは相対的である。
ゲシュタルト心理学で有名な錯視の絵がある。
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カメラ的日乗3.0

若い娘と見るか、老婆と見るか。
どちらにも見えるが、一度どちらかに見てしまうとなかなかもう一方の見方にならない。
柔軟な見方を失うと、安倍首相のように「裸の王様」になることになる。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)

沖縄県は、統計上のカテゴリーを「墜落」とした。
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東京新聞12月18日

「不時着」にしか見えないとすれば、日本政府は「裸の王様」集団である。

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2016年12月25日 (日)

昭和改元と歴史観/日本の針路(315)

1926年12月25日、つまりちょうど90年前、大正は昭和と改元された。

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1週間しかなかった昭和元年の出来事まとめ

現時点で振り返れば、前年の1925年が歴史の大きな分岐点だったと言えるだろう。
4月22日 - 治安維持法公布
5月5日 - 普通選挙法公布(25歳以上の男子に選挙権)
12月1日 - 民労働党結成、即日結社禁止、京都学連事件、京都府警察部特高課が京大・同志社大などの社研部員33名を拘束。

治安維持法が天下の悪法であったことは、よほどの右翼的な傾向の人間でない限り、現代の共通認識と言えよう。
治安維持法は普通選挙法とバーターというか、セットで導入されたものである。
普通選挙制度は、民主主義の観点からは制限選挙制度より優れたものとすべきであろうが、衆愚に陥る危険性については注意する必要がある。
「悪貨は良貨を駆逐する」からである。

船戸与一『満州国演義』第五巻『灰塵の暦』(2016年1月)で、西木正明氏は、日本近代史を次のようにまとめている。

 戦争の世紀と呼ばれる二十世紀は、あまたの国々の興亡の世紀でもあった。
……
 二十世紀冒頭の一九〇二年。
 当時全世界に君臨する覇権国家だった大英帝国が、前世紀末の一八九五年、日清戦争に勝利した日本に目をつけ、同盟締結を持ちかけてきた。日本にとっては世界の盟主からの同盟締結提案である。否やのあろうはずもなく、一九〇二年一月三十日に同盟は調印され、発効した。
……
  十年後の一九一四余年、欧州で第一次世界大戦がはじまり、日本は英国を中心とする連合国側の一員として、中国や西太平洋に植民地や利権を有するドイツと戦い、戦勝国となった。
 結果的に大英帝国は手先にした日本を操って、自らが握る世界の利権と覇権に挑もうとした、帝政ロシアと帝政ドイツを殲滅した。
 こうして当面の目的を達成し、これ以上日本を支える必然性がないと判断した英国は、東アジアで台頭した大日本帝国を危険視したアメリカの意向をふまえ、一九二三年八月一七日、同盟延長を懇願する日本の意向を拒否して、日英同盟に終止符を打った。
 しかしこれが大きな誤算に繋がることを、ほどなく英国は知ることになる。
……
 日英同盟廃棄から十年後のこの年、世界の孤児的な存在となっていた日本がドイツに急接近、アジアと欧州の情勢が一転して不安定になった。
 激流となった時代の流れの片隅にで出来る渦のように出現したのが満州国である。

要するに、世界史の流れの中に咲いたアダ花が満州国だったのだが、その満州国を「私の作品」と言ってのけたのが岸信介、つまり安倍首相の祖父である。
⇒2012年12月24日 (月):エリート官僚としての岸信介/満州「国」論(13)

祖父を尊敬するのは孫の美徳であろうが、歴史観は肉親の情とは峻別すべきものであろう。

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2016年12月24日 (土)

わが国の軍国化の加速/アベノポリシーの危うさ(115)

わが国の軍国化は完成の域に達しつつある。
南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊部隊が、首都ジュバで7月に大規模な武力衝突が発生した際の状況を記録した日報が、廃棄されていた。
ジャーナリストの布施祐仁氏が情報公開法に基づき、同月7~12日の日報を9月末、防衛省に開示請求したところ、12月2日付で「既に廃棄しており、保有していなかった」とする通知を受けた。

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 今回の日報廃棄問題であらためて浮かび上がったのは、活動継続への疑念が強い南スーダンでのPKOについて、国民に正確な情報を届けて理解を得ようという意識が安倍政権に依然として薄いという点だ。
 同PKOを巡っては、これまでも現地報道を基にした地図を黒塗りにして公表するなど、情報公開に消極的な政府の姿勢が批判されてきた。黒塗りどころか、将来公開される可能性を摘む「廃棄」は、より深刻な問題だ。
 ジュバで最初の大規模衝突が起きた、二〇一三年十二月に派遣されていたPKO五次隊の「教訓要報」には、隊員らが防弾チョッキと鉄帽を着用したり、撤退経路を偵察したりという対応が記されている。
 これを作成する材料となった日報が存在していれば、国民は当時の状況をより詳しく知ることができた。
 まして今回、日報の廃棄が判明した六日間は、陸自の宿営地の隣にあるビルで銃撃戦が起きるなど、一三年に劣らず緊迫していた状況が明らかになっている。日報の廃棄が、検証を難しくした可能性は大きい。
 PKO関連文書の保存期間を原則三年間と定めた、文書管理規則が形骸化している事実も見逃せない。今回のように「上官に報告したから」という理由での廃棄がまかり通れば、組織にとって都合の悪い文書はすべて公開せずに済む「抜け道」になりかねない。
PKO陸自、日報廃棄 南スーダン、大規模衝突を記録

安倍カラーは、予算編成を見ても明らかである。

 政府の二〇一七年度予算案は、過去最高を三年連続で更新した防衛費や前年度から微増となった公共事業費など、安倍政権が重視する政策がひと目で分かる編成になった。円安という追い風に乗った税収増加に陰りが見えるなかで、政権色を優先した予算のしわ寄せは国民の日常生活に及ぶ。
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東京12月23日

いつか来た道を歩むのか?

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2016年12月23日 (金)

象徴天皇制の行方/天皇の歴史(13)

天皇誕生日だ。
今年は、天皇という制度をめぐって、画期となった年だと思う。
天皇自らが、退位についての問題提起をして、その可能性について論議が重ねられている。
⇒2016年8月 9日 (火):天皇陛下のお気持ちと護憲/日本の針路(285)

言うまでもなく、天皇のあり方は、日本国憲法をどう考えるかという問題と密接に関連している。
憲法の第1章は次のようである。
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Wikipedia

天皇自身は、「このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」と述べられ、、「象徴天皇」のあり方を自問自答した。

「私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」「天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じ」、「日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて」と自身の考えを述べられた。

天皇退位をめぐる政府の有識者会議が設けられ、専門家16人からの聞き取りを終え、年明けの論点整理を待つ段階になっている。
ヒアリングでは退位に賛成9人(1人条件付き)、反対7人であった。
⇒2016年12月 5日 (月):退位に関する有識者会議に対する疑問/天皇の歴史(12)

賛否は天皇観の違いに由来している。
私は、八木秀次氏のような「神武天皇のY染色体の継承」というような論理には反対である。
遺伝子の優劣を問題にするのは、優生思想に繋がると考えるからである。
新聞読者欄への投稿に問題の本質を衝いていると思われるものがあった。
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東京新聞12月16日

明治憲法の「国家元首」「大元帥」「統治権の総攬者」から、日本国憲法の「日本国の象徴」「国民統合の象徴」に変わった。
天皇について『満州国演義』第4巻『炎の回廊』新潮文庫(2016年1月)の中に、次のような箇所がある。
新聞連合の香月信彦が、敷島四兄弟の長兄の太郎に言う。

「天皇は日本人が産み出した最高の虚構なんだよ!」
解説を書いている高山文彦氏は次のように書いている。

私は本巻で船戸さんが最も登場人物に言わせたかったのは、これではないかと思っている。日本人を日本民族に、ゆるやかな自治連合国家であった日本列島を大日本帝国にまとめあげていくための「最高の虚構」が、どれだけの人びとの生命を奪い、苦しみを与えてきたか。いや、このような「最高の虚構」をなぜわれわれは信じ、虚構を真実として、天皇を現人神などとしてあがめまつってしまったのか。現代の視点から見れば大日本帝国は明らかに超カルト国家であり、どこまでも生身の人間であったヒトラーを信奉したドイツ国民にくらべても極めて異常な国民、国家であった。
香月信彦はこのようにつづける。
「現人神・天皇という虚構は立憲君主国家を目指す伊藤博文と兵営国家を作り上げようとした山形有朋の妥協の産物として生まれた。(略)明治維新からたった六十八年間で日本がこれだけの強国となったのはこの虚構のお陰だ」
香月信彦はしかし「現人神・天皇」を否定しているのではない。国体明徴運動が天皇機関説を排撃すればするほど、天皇とはなにかという問題につきあたり、論理的説明が必要になってくる。するとどうなるか。「最高の虚構」が暴露されてしまう。
「馬鹿げているとは思わないか? 虚構は虚構としてそっとしておかなきゃならない。最高の虚構はなおさらだ」

吉本隆明の「共同幻想論」を想起するが、「日本国の象徴」「国民統合の象徴」を、自然人としてどう具現化して行き続けるか?
するか?
一部の専門家が言うように、「宮中でお祈りするだけ」でいい、ということではないだろう。

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2016年12月22日 (木)

もんじゅ廃炉を脱原発依存のチャンスに/アベノポリシーの危うさ(114)

政府は21日、原子力関係閣僚会議を開き、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉を正式に決めた。
施設の安全基準を満たすには多額の費用がかかるなど再稼働は難しいと判断した。
「夢の原子炉」と期待されたもんじゅは1兆円超を投じたものの、事故や不祥事が相次ぎ、22年で250日しか運転できないまま幕を下ろすが、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策は維持し、高速炉開発を続ける方針だという。
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読売新聞12月20日

高速増殖炉は結局、「夢」でしかなかった。

 核燃サイクルは、高速増殖炉を中心にしたサイクルと、ウランとプルトニウムによる混合酸化物(MOX)燃料を原発で使うプルサーマル計画による二つのサイクルがある。廃炉で増殖炉サイクルは破綻状態となったが、プルサーマルのサイクルも東京電力福島第1原発事故以降、原発の再稼働が進まず、MOX燃料を使って稼働しているのは四国電力伊方原発3号機(愛媛県)だけにとどまる。
 青森県の使用済み核燃料再処理工場も原子力規制委員会の安全審査中で、全国の原発の使用済み核燃料プールの貯蔵量も満杯に近づき、全国平均で容量の7割に迫る。核兵器に転用できるプルトニウムはたまり、日本が国内外に保有する量は昨年末時点で47・9トンに達する。
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もんじゅ廃炉決定 「破綻」サイクル継続 政府、反省なく次の夢

だいたい、熱力学第2法則に反するようなことが成功するとは思えない。
にもかかわらず、核燃料サイクルを延命させるのは、「盗人に追銭」のようなものではないか。
ここにも安倍政権の非論理性が現れている。
論理的に無理をした政策は、いずれ破綻するのである。

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2016年12月21日 (水)

トルコ ロシア大使が警察官に撃たれ死亡/世界史の動向(50)

トルコの首都アンカラで19日夜、トルコに駐在するロシア大使が式典でスピーチをしていたところ、警察官の男に銃で撃たれて死亡した。
男はその場で射殺されたが、トルコ語で「アレッポを忘れるな。シリアを忘れるな。この弾圧に加担している者は誰もがツケを払わなければならない」と叫んだほか、アラビア語で「神は偉大なり」と繰り返していたという。

シリア北部のアレッポ県に属する都市アレッポは、シリア最大の都市である。
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シリアは、1946年のフランスの植民地支配から独立後、宗教に基づかない近代西洋的な国民国家を範とする国造りが行われた。
2000年に「先代」ハーフィズの後を襲うかたちで次男のバッシャールが大統領に就任し、実に40年以上にわたってアサド一家による独裁政治が続いていた。
2011年3月、「アラブの春」がシリアにも飛び火した。チュニジアとエジプトでの政変を受けて、シリアでもアサド政権に対して市民が政治改革を要求する声を上げた。

アサド政権は憲法改正など一定の政治改革を行うこと市民の声に応えようとしたが、市民による民主化運動は全国規模へと拡大して行った。
政権は軍・治安部隊を用いて民主化運動を弾圧し、民主化運動も武装して行く。
2011年9月の「自由シリア軍」の結成とそれに続く各地の武装組織の出現である。
シリアにおける「アラブの春」の民主化運動は、アサド政権の軍事的な打倒を目指す革命闘争へと変質したのである。

反体制派には次の3勢力のバックアップがあった。
1.米国、欧州連合、トルコ、サウジアラビアなどの湾岸産油国
2.シリア国外で活動してきた反体制派の諸組織
3.過激なイスラーム主義者

アサド政権側には、欧米諸国の影響力拡大を嫌うロシアと中国と中東政治でサウジアラビアと競合関係にあるイランが支援した。
また、レバノンのイスラーム主義組織・政党ヒズブッラー(ヒズボラ)が、アサド政権側で「内戦」に参戦した。

シリアでの「内戦」は国際的な代理戦争の様相を呈することになったのだ。
国際政治では欧米と露中、中東政治ではサウジアラビアとイラン、そして、国内政治では反体制諸派とアサド政権という三層構造の対立図式ができ上がったのだ。
そして今年12月、内戦が続くシリアの激戦地アレッポから、反体制派が完全に撤退することでアサド政権側と合意した。
しかし、国連の人権機関は政権軍側の兵士がアレッポ市内の反体制派から奪還した地域で、女性や子どもを含む市民少なくとも82人を殺害したと発表している。

まさに泥沼としか言いようのない状態である。
事件に対し、トルコのエルドアン大統領、プーチンロシア大統領、トルコ外務省、米国務省報道官、トランプ米次期大統領、シリア政府などが非難声明を出している。
しかし、アサド政権がほぼ全域を制圧したアレッポに取り残された住民の避難をどう図るかなど、課題は残されたままである。
解決はどのような形でやってくるのであろうか。

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2016年12月20日 (火)

米軍のオスプレイ飛行再開を追認/永続敗戦の構造(8)

在沖縄米軍は19日、米軍普天間飛行場所属の新型輸送機オスプレイの飛行を再開した。
13日夜に沖縄本島北部沿岸部で起きた事故からわずか6日後である。
⇒2016年12月15日 (木):オスプレイ事故と根拠ない安全主張/永続敗戦の構造(7)

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東京新聞12月20日

在沖縄米軍トップのニコルソン沖縄地域調整官は「安全性と信頼性に米軍は高い自信を持っている。そのことを日本国民が理解することが重要だ」との談話を発表した。
事故直後の「感謝すべきだ」という発言同様の上から目線の言い方である。
菅義偉官房長官も記者会見で、米側が「オスプレイの機体自体に問題はない」としている点を踏まえ「米側の説明は防衛省、自衛隊の専門的知見に照らし合理性が認められる。再開は理解できる」と強調したが、「安全性と信頼性に米軍は高い自信を持っている」と言っても、繰り返し起きている事故が事実を示している。

翁長雄志知事は「一方的に再開を強行しようとする姿勢は、信頼関係を大きく損ね、到底容認できない」と猛反発した。
オスプレイは陸上自衛隊も17機導入し、千葉県の陸自木更津駐屯地では普天間に配備された米軍の24機の定期整備も始まる。
米軍横田基地(東京都)にも米空軍特殊作戦用機が配備され、オスプレイは日本の空を飛び回る。
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オスプレイの飛行再開 事故6日後、原因究明を後回し 政府追認


危険にさらされるのはもはや沖縄県だけではない。
すべての国民が直視すべき現実であり、米軍の見解を一方的に追認する政府は、民意と大きな乖離がある。

安倍晋三首相は原因の徹底的な究明を求めるとしていたが、米軍は事故原因の全容を明らかにする前に、オスプレイの飛行を再開した。
稲田朋美防衛相は、「抑止力の向上」を優先させ、再開を了承したが、「頼りない稲田防衛大臣」の印象を益々強めたと言えよう。
⇒2016年12月 4日 (日):不適格大臣列伝(4)・稲田朋美防衛相-2/アベノポリシーの危うさ(111)

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2016年12月19日 (月)

マツダの復活/ブランド・企業論(60)

マツダが好調である。
プロ野球の広島カープは、リーグ優勝を果たしたものの 日本シリーズでは日本ハムに敗れた。
しかし、カープのシンボルカラーを思わせる深紅のマツダ車が街頭で目立つ。
相次ぐ不正隠しによって、日産自動車の傘下入るした三菱自動車と対照的である。

マツダは長い間、日本の自動車業界のお荷物的な存在であった。
12月18日の日本経済新聞が、マツダ復活の舞台裏を探っている。

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 金井には秘策があった。部下でエンジンのスペシャリストとして知られる人見光夫(62)は改良点を7つに絞り込むと提言していた。フォードなどと比べ限られた人員で世界一を目指すため、取り組むべき課題をあえて限定した。特にこだわったのがエンジンの燃焼効率に直結する圧縮比。人見は既存技術を活用して世界一を実現できるという。金井は「最後はあいつの目を見て考えた。賭けてみようと」と振り返る。
 後にHV並みの燃費を達成した実力を認めたのがトヨタ自動車だ。マツダに車両供給を打診し、15年の包括提携につながった。
 翌10年には中国政府から「マツダ切り」の要請を受けたフォードがあっさり保有株を売却し、実質的に提携を解消した。後ろ盾を失ったマツダ。尾崎はこの後、金策に駆け回った。
 「何とか3年連続の最終赤字は回避できそうです」。井巻から社長を引き継いだ山内孝(71)に尾崎が報告した日の午後、大震災が東日本を襲った。広島が本拠の同社に直接の被害はなかったが11年3月の震災で部品供給が停止。起死回生に向けいよいよ開発陣へのプレッシャーは高まった。
 結局、12年3月期まで4年連続の赤字になった。増資を繰り返したためマツダの発行済み株式数は2倍にまで膨らんだ。それでもぶれなかった。山内は何度も繰り返した。「(世界の)3%のお客様に支持してもらえる車づくりに徹する」
 「もうこれ以上の赤字は許されませんよ」。主力取引銀行から最後通告とも取れる連絡が入った前後の12年2月、スカイアクティブ技術をフル搭載した小型SUV(多目的スポーツ車)「CX―5」を発売するとヒットを連発して赤字を帳消しにしていった。
 フォードという「大樹の陰」を捨ててまで独自路線を貫いたマツダ。対照的なのは巨大メーカーのトヨタの傘下に入ることで復活した富士重だ。08年に16.5%の出資を受け入れた。
 同社もここから選択と集中で復活を果たす。だが大樹の陰に入るリスクが見え隠れする出来事もあった。
 「もし御社がトヨタと同じ領域に入ってきたら、即座にたたきつぶします」。トヨタとの提携交渉の初回会合。経営企画部長として出席した富士重社長の吉永泰之(62)は、トヨタ幹部の言葉に息をのんだ。立ち位置を間違えれば富士重の将来はない。その制約は恐らく、今後も続く。
危機から復活 マツダ、エンジン一点突破の凄み

自動車産業は典型的な装置産業であり、規模の経済が大きく効く。
独自路線で成功しているマツダだが、独自路線と規模の経済は背反的である。
独立性と合従連衡策のバランスの舵取りが問われることになるだろう。

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2016年12月18日 (日)

辺野古訴訟と司法の政治・行政への従属/日本の針路(314)

オスプレイが海上に「墜落(不時着)」した事故について、在沖縄海兵隊トップが「感謝されるべきだ」と発言したことが報道されている。
日本が未だに敗戦状態にあることを図らずも全国民に知らしめることになったと言えるだろう。
⇒2016年12月15日 (木):オスプレイ事故と根拠ない安全主張/永続敗戦の構造(7)

沖縄県民の忍耐も限界を超えることと思われる。
にもかかわらず、政府はアメリカの発表を追認して「不時着」と表現している。
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東京新聞12月18日

辺野古埋め立て訴訟で、最高裁は弁論も開かず、沖縄県敗訴判決を確定した。
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東京新聞12月13日

われわれが学校で学んだ三権分立という仕組みは、現実には機能していないことが明確に示された。
最高裁が政治・行政に従属せざるを得ない現実を、元判事の瀬木比呂志氏が『黒い巨塔 最高裁判所』(講談社)で描いている。

 小説では、福島原発事故が起こる以前の80年代後半、ある原発が稼働停止に追い込まれる。この原発では、大津波により非常用電源が喪失されるというシミュレーション結果が出されていた。にもかかわらず、電力会社がこの事実を握りつぶしていたことが発覚。また、制御棒6本が脱落し臨界状態が8時間も続くという重大事故の隠蔽なども明らかになったことで、稼働停止を余儀なくされていた。
 一方、こうした事態に電力会社は再稼働へ向け躍起になるが、しかし住民による原発再稼働差し止め訴訟が起こされ、その結果、地裁は再稼働差し止めの仮処分を決定する。時代は違うが、福島原発事故後の原発停止、そして再稼働の動きや、数々の住民訴訟を彷彿とさせるものだ。
 だが、これに危機感をもったのが最高裁判所だった。
・・・・・・
〈須田は、念のため、全国の原発訴訟係属裁判所について、再度人事局に担当裁判長についてのチェックをさせ、また、民事局や行政局にも調査をさせ、原発訴訟で原告側に有利な心証を表に出したことがある者や、過去に行政訴訟や国家賠償請求訴訟で目立った原告側請求容認判決を出している者については、四月に、目立たない形で、つまり、いわゆる左遷人事ではない形で、異動させていた(略)。早急に仮処分を取り消させるために、先の支部長、またこの四月が異動時期であった右陪審の後任には、事務総局経験者の中なら、取り消し決定を出すことに絶対間違いのない者を選んで送り込んだ〉
・・・・・・
 2014年5月、福井地裁において大飯再稼働を認めないよう命じる仮処分が出された。この判決を出したのは同地裁の樋口英明裁判長(当時)。樋口裁判長はその後、高浜原発差し止め仮処分も担当することになるが、一方、裁判所は15年4月1日付で樋口裁判長を名古屋家裁に異動させる決定を行う。
 裁判所は、住民側の訴えを聞き入れた樋口裁判長に、原発裁判にかかわらせないような人事を発令したのだ。
・・・・・・
 問題は、樋口裁判長に代わって最高裁が福井地裁に送り込んだ林潤裁判長の存在だ。林裁判長は1997年の最初の赴任地が東京地裁で、2年後に最高裁判所事務総局民事局に異動。その後も東京、大阪、福岡と都市圏の高裁と地裁の裁判官を歴任しているスーパーエリート裁判官。司法関係者の間でも、将来を約束され最高裁長官まで狙えると言われている人物である。
 これはもちろん、最高裁の“意思”を忖度することを見込んでの人事だった。目論見通り、林裁判長は15年12月24日、高浜原発再稼働を容認する仮処分決定の取り消しを行った。このとき、林裁判長の左右陪席の2人の裁判官もまた最高裁判所事務局での勤務経験があるエリート裁判官だった。
辺野古訴訟の県敗訴は最高裁と政府の癒着だ! 原発再稼働でも政府を追従し続ける司法の内幕を元裁判官が暴露

瀬木氏は、『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』(ともに講談社)などで、裁判所と裁判官の腐敗を告発し続けてきた人だ。
司法の腐敗を糺すのは最終的には国民であろう。

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2016年12月17日 (土)

日ロ首脳会談も空振り/アベノポリシーの危うさ(113)

北方領土問題の解決に向け、新たな展開が期待された安倍晋三首相とプーチン露大統領との会談は、ロシア側の厳しい姿勢を印象づける結果に終わった。
首相自身が「解決には困難な道が続く」と戦略の練り直しを迫られることになったと言えよう。
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東京新聞12月17日

少なからぬ国民が領土問題の進展を期待していたであろう。
例えば、森永卓郎氏は、次のように書いていた。

私はこの会談で北方領土問題の歴史的進展があるだろうと予想している。その理由は、いまこそが、北方領土問題解決の絶好のチャンスだからだ。
 クリミア半島併合にともなう経済制裁だけではなく、原油価格の暴落で、ロシア経済は苦境に陥った。昨年のロシアの国家予算は、歳入の半分を原油売却収入が占めていた。しかし、一昨年の夏には1バーレル当たり100ドルを超えていた原油価格が、昨年末には30ドルに下がってしまった。
 その結果、ロシアの財政は大幅な赤字を抱え、経済も4%近いマイナス成長に転落。今年に入って原油価格は横ばいになったものの、経済制裁は続いているため、今年の経済成長率もマイナスになりそうだ。つまり、ロシアは喉から手が出るほど、日本の援助が欲しいのだ。
 領土を買うわけではないが、日本にとってこれは、絶好の環境と言える。しかも、OPECの減産合意で石油価格に上昇の気配がみられるため、来年はロシア経済が復活する可能性がある。つまり、チャンスはいまなのだ。
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 北方領土解決の好機

しかし結果はロシアの主張の範囲であった。
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北方領土共同経済活動 日露「共存」道険し 法適用、食い違い

もちろん領土問題がそんなに容易に進展するとは私も思わない。
しかし北海道大名誉教授・木村汎氏は、完敗と言う。

 会談は日本側の完敗だった。平和条約交渉は事実上行われず、同条約に関する声明や文書が出なかったばかりか、四島での「共同経済活動」の協議開始にすら合意してしまった。今後日本は、これらの「負の遺産」をもとにして、対ロ交渉を行わねばならなくなった。
・・・・・・
 今回ロシア側は大きな成果を収めた。プーチン訪日それ自体によりG7による包囲網を突破した事実を全世界に喧伝(けんでん)できたからだ。
 安倍首相が前のめりの姿勢を示した結果として、プーチン氏は、ロシアが得意とする焦(じ)らしやどう喝、まず高値を吹っかける「バザール商法」などの交渉戦術を縦横に駆使し、最高首脳間の「信頼」関係の存在だけにすがる日本側を子供のように翻弄(ほんろう)した。
「日本完敗、合意は負の遺産」 北海道大名誉教授・木村汎氏に聞く

会談終了直後に配信されたロシア国営「タス通信」は次のように報道した。

 小人数の会談に出席したロシアのウシャコフ大統領補佐官(外交担当)のコメントとして、「両首脳は北方領土での共同経済活動の協議開始に向けた共同声明の内容で合意した」と伝えた。
 問題は具体的な合意の中身で、ウシャコフ補佐官が「共同経済活動はロシアの法律だけに基づいて行われる」と強調したことだ。
北方領土献上も同然 ロシア報道が伝えた安倍首相の裏切り

ロシアの法律の下での活動合意は、ロシアの主権を認めることになる。
「不法占拠された北方領土の主権回復」という原則は崩れたのだ。
アベノミクスの失敗は明らかであるし、TPPの行方も不透明だ。
⇒2016年11月25日 (金):安倍外交は大きな成果か崩壊か/アベノポリシーの危うさ(108)
日ロ首脳会談をステップにして、年明け解散という目論見(解散権の濫用)も雲散霧消せざるを得ないだろう。

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2016年12月16日 (金)

人文知と技術競争/知的生産の方法(164)

坂井修一氏は現在活躍中の歌人にして、情報理工学者として東京大学大学院情報理工学研究科の教授である。
かなり対極的な両分野で、一流の業績を挙げている。
二足の草鞋であるが、どちらが本業ということもないのであろう。

歌人としては、短歌結社「かりん」に所属して、現在「かりん」編集人であり、現代歌人協会理事を務めている。
1987年、歌集『ラビュリントスの日々』で第31回現代歌人協会賞を受賞した他、2006年に歌集『アメリカ』で第11回若山牧水賞、2007年に『斎藤茂吉から塚本邦雄へ』で第5回日本歌人クラブ評論賞、2010年に歌集『望楼の春』で第44回迢空賞等の数々の受賞歴がある。

情報理工学者としては、電子技術総合研究所(現:産業技術総合研究所)時代に、汎用性があるという意味で世界初といわれている高並列データ駆動計算機「EM-4」の開発に携わり、筑波大学助教授等を経て現職という履歴である。
1989年に情報処理学会研究賞を受賞した他、1991年に日本IBM科学賞、1995年に市村学術賞、IEEE論文賞元岡記念賞、2012年に『ITが守る、ITを守る―天災・人災と情報技術』で第21回大川出版賞などの受賞歴がある。

坂井氏が12月6日付の東京新聞に、『技術競争と文化』という一文を寄稿している。
10年ほど前に、東京大学の文系理系併せて200名ほどの新入生について講義したことがあった。
情報セキュリティについての話題で、「インターネットの向こうにスタヴローギンがいたら」と考えてみようと投げかけたところ、皆ポカンとしていたというのである。
スタヴローギンはドストエフスキーの『悪霊』の主人公の名前であるが、ドストエフスキーを読んだことがあるか、という質問には2人手を挙げた。

Wikipediaではスタヴローギンを次のように説明している。

類い稀な美貌と並外れた知力・体力をもつ全編の主人公。徹底したニヒリストで、キリーロフ曰く「彼は自分が何も信じていないということさえ信じていない」。

坂井教授の目論見は、「人間の悪意がサイバー攻撃にどう反映されるか」を考えて見ようということだったが、そこまで行かなかった。
科学技術は人間を幸せにするか?
ロボットいう言葉を造語したチェコの作家カレル・チャペック以来、幾度となく繰り返されてきた質問であるが、永遠の問かも知れない。
チャペックは、戯曲『R・U・R』(Rossum's Universal Robots:ロッサム世界ロボット製作所)で、進化したロボットが人間に反乱を企て、掃討するというストーリーを創作した。
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⇒2016年11月11日 (金):人脳と人工知能/「同じ」と「違う」(99)

坂井教授は、フロイトの「人間から攻撃的な性格を取り除くなど、できそうもない。攻撃性を和らげるには文化の作用が必要だ」という言葉を引用し、フロイトの言う「文化」の中軸を成すのは、人文知を中核とする教養であろう、とする。
そして、技術競争が激しくなればなるほど、教養が高められなければならないと結論づける。

わが意を得たような思いである。
文科省が文系軽視のような通達を出しているが、今必要なのは、教養すなわちリベラルアーツである。
⇒2015年6月19日 (金):文科省の国立大学改革通知はナンセンス/日本の針路(181)
⇒2016年11月 8日 (火):教えられた通りの答だけが正解だとは!/知的生産の方法(163)
⇒2016年11月18日 (金):「東ロボくん」とリベラル・アーツ/知的生産の方法(164)

トランプ米次期大統領や安倍首相に相応しい言葉ではなかろうか。

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2016年12月15日 (木)

オスプレイ事故と根拠ない安全主張/永続敗戦の構造(7)

起こるべくして起きた事故と言えよう。
沖縄県名護市沖で米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイが「不時着」した。
米側は「コントロールを失った状況でなく自発的に着水した」と墜落の可能性を否定するが、大破した姿を見れば、墜落に限りなく近いだろう。

米海兵隊は報道発表文で「キャンプシュワブ沿岸の浅瀬に着水した」と発表し、防衛省も広報文で「不時着水」との表現を使っている。しかし現場の海岸浅瀬に横たわっている事故機をみると、真っ二つに機体が折れて大破し、回転翼も飛び散って原形をとどめていない。制御不能で墜落したとしか考えられない状態だ。米軍準機関紙「星条旗」は今回の事故を「墜落(クラッシュ)」と報じ、琉球新報も紙面では当初から事故を「墜落」と報じている。
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これが不時着? 機体真っ二つ 沖縄名護東沿岸のオスプレイ事故

オスプレイは、米国本土やアフガニスタン、ハワイなどでは墜落、不時着事故が相次いでいる。
安全性と効率性は、一般論として、トレードオフの関係と言えよう。
軍用が効率優先になるのは分からないでもないが、十分な安全性が確保できないものを、生活圏の中でオペレーションするというのは狂気の沙汰である。
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東京新聞12月15日

現場は米側が規制線を張り、機動隊は米軍の意向に沿って立ち入りを制限する。
絵に描いたような「永続敗戦の姿」である。
取材しようとする記者たちもそれに阻まれている。
オスプレイは、沖縄だけの問題ではない。
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東京新聞12月15日

安全性を強調してきた政府の信頼性が失墜した。
今こそ、アメリカとの軍事同盟のあり方を再検討すべきではないだろうか。

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2016年12月14日 (水)

原発の事故対応コストを社会化するな/原発事故の真相(151)

経産省が2016年12月9日に示したところによると、福島原発事故のコストが21.5兆円になる。
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東京新聞12月13日

にもかかわらず、世耕・経産大臣は、原発は安いとの発言を2016年12月7日におこなっている。

世耕経産大臣:「色んな費用を全部、含めたとしても発電単位あたりのコストは原発が一番、安いと考えている」
世耕大臣「原発コスト安い」強調…廃炉費用増加でも

いつまでこんなことを言っているのだろうか。
大島堅一立命館大学国際関係学部教授(環境経済学)の説明を見よう。

原発のコスト計算の方法には、1)実績コストを把握する方法と2)モデルプラントで計算する方法の2つがある。
2)の方法で計算した値は、政府のコスト検証ワーキンググループが2015年に試算したものが最新だ。ここでは、原発のコストを10.1円/kW時としている。おそらく世耕大臣は、この計算結果を言っているのだろうと思われる。
政府の計算には、いくつもの前提があって問題点もあるが、長くなるのでここでは詳しくは述べない。さしあたってこの計算方法の特徴を一言でいえば、想定や計算式で数値は変わってくる。
原発の実績コスト
これに対して、実績コストは、想定も何もないので誰が計算しても同じになる。過去の原発のパフォーマンスを知るのに最適だ。
では、原発の実績コストはどれくらいなのだろうか。
まず、発電コスト。これは、電気料金の原価をみれば把握することができる。データは、電力各社の有価証券報告書にある。また計算方法は、電気料金を算定する際にもちいる省令に書いてある。この2つをもちいて計算する方法は、室田武・同志社大学名誉教授が開発した。計算すると、8.5円になる。
次に、政策コスト。原発には、研究開発費や原発交付金といったものに国費が投入されている。つまり国民の税金だ。財政資料を丹念にひろうとこの費用も計算できる。これは1.7円。
最後に、事故コスト。これは経産省により21.5兆円という数値がでた。そこで、これまでの原発の発電量で割って単価を計算すると、2.9円となる。
つまり、原発のコスト=発電コスト+政策コスト+事故コストで、13.1円(kW時当たり)となる。
他の電源は
原発以外の電源も計算すると、火力は、発電コスト9.9円、政策コスト0.0円(値が小さいので四捨五入するとこうなる)で合計9.9円。
一般水力は、発電コスト3.86円、政策コスト0.05円で合計3.91(ほぼ3.9)円だ。
これらのコストも原発のコストと同じように計算できる。
計算結果のまとめ
以上をまとめると、原発(13.1円)>火力(9.9円)>水力(3.9円)。つまり、過去の実績(1970-2010年度)でみると、原発は安い、どころか、原発は最も経済性がない電源だったと言える。
それでも安いのなら電力会社が払うべき
原発は、政策コストと事故コストが大きい。これは、結局、ほとんどを国民が払っている。
「原発が安い」というのは何故か。それは、原発のコストを電力会社が全て負担しているわけではないからだ。
最終的に負担しているのは国民。つまり、電力会社にとっては安くても、国民にとっては高いのが原発、ということになる。
もし仮に、今でも原発が安いというのであれば、原発に対する国の支援を全て止めるべきだ。東京電力を含む電力会社は、事故コストを含む全てのコストを自分で払うべきだろう。それが資本主義のルールなのだ。
原発は高かった~実績でみた原発のコスト~

科学は基本的に倫理によっている。
原発は、科学の精華であるといっても良い。
しかし、(自民党の)政治家は、原発になると、とたんに非論理的である。
社会的費用を内部化しないで、「安い、安い」と言うのは、1960年代の公害と同じ構造である。
半世紀以上、自民党のアタマは停滞したままのようだ。

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2016年12月13日 (火)

「日本死ね」の流行語大賞選出をめぐって/日本の針路(313)

1日に発表された「自由国民社『現代用語の基礎知識』選2016ユーキャン新語・流行語大賞」で「保育園落ちた日本死ね」がトップテン入りした。
これに対し、「ひどい言葉を選ぶな」「反日企業か」とユーキャンへの非難が殺到しているという。
批判者の代表的な声は以下のようなものである。

「人に教育する人が『死ね』って言葉を選ぶのは最悪」「ユーキャン生涯教育受講して試験に落ちたら『ユーキャン死ね』でいいんですね?」「『日本死ね』なんて言葉は流行っていないし、聞いていて不愉快」
・・・・・・
タレントのつるの剛士(41)はツイッターで「『保育園落ちた日本死ね』が流行語。。しかもこんな汚い言葉に国会議員が満面の笑みで登壇、授与って。なんだか日本人としても親としても僕はとても悲しい気持ちになりました」とツイートした。
「日本死ね」流行語大賞トップテン入りに非難殺到

今年2月に国会で取り上げられた際にもいろいろな議論があったが、改めて大きな話題になった感じである。
私は、ストレート過ぎるという声もあるだろうが、必死で悲痛な母親の声を感じるのが普通の感性であろう、と書いた。
⇒2016年3月 1日 (火):筋の通らない安倍首相の強弁/アベノポリシーの危うさ(28)

しかし、曽野綾子氏は「「このブログ文章の薄汚さ、客観性のなさを見ていると、私は日本人の日本語力の衰えを感じる」と書いた。
対蹠的な見方である。
私は、本件については、小林よしのり氏の「いくら文章を生業にする者でも、やはり老化すると感性は衰えるという真実を証明している。」という言葉(「亡国の徒」曽野綾子の老化した感性) に全面的に賛成する。
⇒2016年11月26日 (土):曽野綾子の悲惨な耄碌ぶり/人間の理解(19)

12月6日の東京新聞がこの問題を扱っている。
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デスクのコメントは次のようであった。
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騒動の本質を衝いているのではないか。
同感である。

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2016年12月12日 (月)

カジノとクールジャパン/日本の針路(312)

自民党は8日、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案について、13日に参院内閣委員会で採決し、会期末の14日に参院本会議で可決、成立させる方向で調整に入った。
当初は9日に成立させる日程を描いていたが、連立を組む公明党や参院内閣委の委員長ポストを握る民進党が慎重審議を求めていることを踏まえて断念した。
今までの審議は拙速というよりも、後ろめたさが目立つものであった。
⇒2016年12月 7日 (水):後ろめたさ全開のカジノ法案審議/アベノポリシーの危うさ(113)

安倍首相は、蓮舫民進党代表との党首討論で、カジノ解禁に向けた「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)について「IRに対する投資があり、それが雇用につながっていくのは事実だ」と意義を強調したが、カジノはゼロサムゲームである。
与党公明党は、選挙区事情と世論の板挟みで、結局自主投票せざるを得なかった。
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週刊文春12月15日号

安倍首相名義の著書に『美しい国へ』文春新書(2013年1月)がある。
相模原市障害者施設大量殺人事件の犯人は、「世界が平和になりますように。beautiful Japan!!!!!!」とツイッターに書き、安倍首相に並々ならぬ親近感を抱いているようだ。
⇒2016年7月27日 (水):相模原障害者施設大量殺人事件/ケアの諸問題(26)

美しい国で連想するのは「クールジャパン」である。
日本の優れた文化を世界に向けて発信しようという意図である。
安倍政権の掲げた「地方創生」の主要な柱になるはずであった。
しかし一向に目覚ましい成果をあげたということを聞かない。
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『クールジャパンの不都合な真実』Wedge2016年12月号

まあ安部首相がマリオに扮して得意になっているのだから、高度なコンテンツを期待する方が間違いというものであろう。
⇒2016年8月24日 (水):クールジャパンと『「いき」の構造』/日本の針路(292)
「クールジャパン」の内実はカジノだった?
であれば、いっそのことカジノを、かつての東映任侠路線の美意識で演出すれば良いのでは?

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2016年12月11日 (日)

不適格大臣列伝(5)・石原伸晃TPP担当相/アベノポリシーの危うさ(112)

トランプ次期米大統領が、就任初日に離脱すると公言して、発効の可能性はかぎりなくゼロに近い。
⇒2016年11月25日 (金):安倍外交は大きな成果か崩壊か/アベノポリシーの危うさ(108)
にもかかわらず、安倍首相はTPPに異常な固執を見せた。
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東京新聞11月25日

そして日本は承認した。
国益を損なうことが予想される。
⇒2016年12月10日 (土):TPPこそ大山鳴動して・・・/日本の針路(311)

石原伸晃TPP担当相も、22日の閣議後会見で「立ち止まることはできない」と述べた。
なぜ「立ち止まることはできない」のか?
石原氏は「我が国が主導して、ブロック経済に対峙していく」と勇ましいが、客観情勢を無視した蛮勇であると思われる。

父・慎太郎氏について、私は、2年半ほど前につくづく老境に入ったことを実感した。
⇒2014年3月 9日 (日):石原慎太郎の耄碌/人間の理解(3)
その後、田中角栄氏のモノローグの体裁で『天才』幻冬舎(2016年1月)を上梓して、結構な売れ行きを見せたらしいが、私には駄作としか思えなかった。
モノローグといっても、セリフがナマな石原語であって、誰かの評言にあったように角栄のコスプレのような感じである。
文章にキレもコクもないのだ。
⇒2013年1月17日 (木):「キレ」の思考と「コク」の思考/知的生産の方法(28)
文末に「~が。」「~と。」が多用される文体を、「高校生の作文の域」と評したAmazonのレビューがあったが、同感である。

それでも慎太郎氏は、かつては優れた文芸作品を書いていたという実績がある。
親の七光り、叔父(裕次郎)の国民的人気で政界入りした伸晃氏は、どういう志を持っていたのか。
親が耄碌してしまった状態では、見ているのが痛々しいほどの頓珍漢ぶりである。

東京都知事選では、自民党都連会長として、ドンこと内田茂幹事長と共に、見事にマイナスイメージを形成した。
両人ともに役職を辞したが、それだけではケジメにも何にもなっていない。
あろうことか、小池氏は自民党籍のままという茶番である。

TPPの審議については、自民党の「ゆるみ」が目立つ。
先の通常国会の審議中、「TPP交渉の内幕暴露本」問題が発覚し、野党から批判を浴びた西川公也氏、「西川(公也)先生の思いを強行採決という形で実現するように頑張る」と発言した衆院特別委理事だった福井照氏、そして山本有二農水相を、TPPをめぐる「しくじり先生」三人衆と呼ぶらしい。
石原氏を入れて、カルテットにしたら如何?

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2016年12月10日 (土)

TPPこそ大山鳴動して・・・/日本の針路(311)

小池百合子都知事が2日の会見で、東京五輪会場見直し問題に関し、自身が目指した案すべてが実現しなかった場合、「大山鳴動して鼠一匹」に終わると指摘され、「ちょっと、それは失礼なんじゃありませんか」と、気色ばんだ。
コスト削減を目的とした会場見直しで、ボート、カヌー・スプリントは「長沼ボート場」(宮城県登米市)での開催案は競技団体の反発が強く断念せざるを得なかった。
水泳の「五輪水泳センター」(江東区)も座席数こそ減らしたが、会場変更には至らなかった。
残るバレーボール会場は、有明アリーナを新設するか、横浜アリーナを活用するかであるが、横浜案は困難との見方が強く、有明に決まる見通しだ。

「見直しの問題提起でコスト削減がさらに進んだ」という知事の言葉は、負け惜しみの観が強い。
五輪会場問題はともかく、環太平洋連携協定(TPP)は、9日の参院本会議で与党と日本維新の会などの賛成多数で可決、承認された。
しかし、TPPの発効には、交渉参加12カ国のうち経済規模が大きい日米両国の承認が必要だが、米国のトランプ次期大統領が就任直後の脱退を表明し、発効の可能性が事実上消滅している。
こちらこそ「大山鳴動して鼠一匹」と言うべきではないか。
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東京新聞12月10日

 参院本会議の採決では、民進、共産、自由、社民四党が反対。日本のこころを大切にする党は賛成した。
 通常国会から始まった審議では、交渉過程の情報開示を巡り、政府の後ろ向きな姿勢が問題となった。また、農業や食の安全など幅広い分野で懸念が示されたが、議論は深まらなかった。発効の可能性が事実上ないにもかかわらず、政府・与党は国民に十分な説明をしないまま承認を急いだ。
 九日の参院本会議に先立ち、安倍晋三首相は参院TPP特別委員会で「発効が不透明になっても、公正な経済圏を作るという戦略的な意義を世界に発信する」と承認の意義を強調した。
 TPPは参加国間の貿易と投資の自由化に加え、サービスや知的財産のルールを決める包括的な経済連携協定(EPA)の一種。国内総生産(GDP)で世界の約四割を占める巨大経済圏を目指す。
 関連法は、TPP承認に合わせた国内法の整備と影響を受ける畜産農家の支援策など計十一本の法改正。ほとんどが施行日をTPPの発効日としており、施行の見通しは立っていない。
TPP発効見通しなく承認 トランプ氏、2国間交渉の意向

国内にも反発が強かった関税や非関税障壁の緩和といった合意事項は、二国間交渉では、さらなる譲歩を求められる可能性がある。
今国会最大の課題と位置づけていたTPPに誤算が生じ、安倍政権は大きな岐路を迎えている。

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2016年12月 9日 (金)

「基礎科学は文化」by大隅良典/知的生産の方法(165)

今年のノーベル生理学・医学賞を受賞した東京工大の大隅良典栄誉教授が、オートファジーの解明に寄与したとして生命科学ブレイクスルー賞を受賞した。
生命科学ブレイクスルー賞は、アップル会長のアーサー・レヴィンソン氏やグーグルの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏等を設立者とする生命科学ブレイクスルー賞財団が、2013年に創設した賞で、難病治療や延命に関する顕著な研究を行った研究者に対し贈られる。
2012年には、同じくノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授も同賞を受賞している。

大隅教授の業績は、下記で見た。
⇒2016年10月 3日 (月):大隅良典氏にノーベル医学生理学賞/知的生産の方法(161)
生命の本質の一環を明らかにしたものと言えよう。

大隅教授はノーベル賞授賞式を前に、スウェーデンで恒例の記念講演を行った。
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東京新聞12月9日

講演で大隅教授は、自身の研究が、「役に立つとは思わなかった」と振り返り、基礎科学の重要性を力説した。
オートファジーは実用によって大きな効果が期待されているが、実用研究はまだ緒についたばかりと言えよう。
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謎多い「オートファジー」 ノーベル賞・大隅氏の研究最前線

実用研究に目が行きがちなわが国の行政や教育に対する強い批判を感じる。
知的好奇心をベースにしないと、真に独創的な研究は生まれないであろう。
⇒2016年10月10日 (月):応用に傾斜し過ぎている研究費の配分/日本の針路(294)
⇒2016年11月 8日 (火):教えられた通りの答だけが正解だとは!/知的生産の方法(163)

わが意を得た思いがする。

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2016年12月 8日 (木)

「大東亜戦争」開戦とメディア/日本の針路(310)

「大東亜戦争」の開戦から75年目である。
しかし、開戦の当日は未だ名称が決まっていなかった。

大日本帝国と英国・米国・オランダ・中華民国などの連合国との間に発生した戦争に対する呼称。1941年(昭和16年)12月12日に東條内閣が、支那事変(日中戦争)も含めて「大東亜戦争」とすると閣議決定した。
敗戦後にはGHQによって「戦時用語」として使用が禁止され、「太平洋戦争」などの語がかわって用いられた。GHQの指定は現在では失効しているが、1960年頃から一種のタブー扱いとされメディアでの使用は控えられている。一方で大東亜戦争の用語を用いるべきであるとする主張も存在し、歴史認識問題などでこの戦争の呼称については議論が多数なされている。
Wikipedia:大東亜戦争

安倍首相が真珠湾を慰霊のために訪問することにケチをつけるつもりはないが、あの戦争をどう総括するかという歴史観が問われている。
⇒2016年12月 6日 (火):真珠湾訪問を意義あるものにするために/アベノポリシーの危うさ(112)
首相は昨年8月、「戦後70年談話」を発表したが、首相自身の言葉とか思いは伝わらないものだった。
⇒2015年8月15日 (土):安倍首相の「70年談話」を読む/日本の針路(213)

「大東亜戦争」は、侵略戦争でもあり自衛戦争でもあった。
植民地解放のための戦争でもあり、遅れてきた帝国主義戦争でもあった。
この両面を見据えつつ、どちらに力点を置くかが、歴史観の軸であろう。
残念ながら、安倍首相および取り巻いている人たちの基本的な認識は、自衛戦争であり植民地解放戦争であったということであろう。

開戦の日、日本国中が高揚した気分に包まれていたことは良く知られている。
例えば、高村光太郎の『十二月八日』という詩を見よう。

「12月8日」

記憶せよ、12月8日。
この日世界の歴史改まる。

アングロサクソンの主権、
この日東亜の陸と海とに否定さる。
否定するものは彼らのジャパン、
眇(びょう)たる東海の国にして
また神の国たる日本なり。

そを治(しろ)しめたまふ明津御神(あきつみかみ)なり。
世界の富を壟断(ろうだん)するもの、強豪米英一族の力、我らの国に於いて否定さる。
我らの否定は義による。

東亜を東亜にかへせといふのみ。

彼らの搾取に隣邦ことごとく痩せたり。
われらまさにその爪牙(そうが)を砕かんとす。
われら自ら力を養ひてひとたび起つ。
老若男女みな兵なり。

大敵非をさとるに至るまでわれらは戦ふ。

世界の歴史を両断する。

12月8日を記憶せよ 。

当時発行された切手が一種のリアルタイムの世相を映すアーカイブとなっている。
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東京新聞12月8日

よほど自覚的にならないと、表層的な情報に振り回されることになる。

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2016年12月 7日 (水)

後ろめたさ全開のカジノ法案審議/アベノポリシーの危うさ(113)

カジノを含む「統合型リゾート施設(IR)」整備推進法案(カジノ解禁法案)が、6日の衆院本会議で、自民党と日本維新の会などの賛成多数で可決し、参院に送付した。
Photo
カジノ法案の衆院通過 審議6時間弱 「時間余った」質疑で般若心経

審議時間は6時間足らずで、与党内からも審議「不十分」の声が上がっている。
中谷元・前防衛相が採決前に退席し、取材に対し「依存症対策が議論できていなかったので、賛成できない」と述べている。
丹羽雄哉元厚生相、村上誠一郎元行政改革担当相も退席した。

自民党が衆議院内閣委員会で採決に踏み切るまでわずか6時間足らずだったが、その中で以下のようなシーンがあった。

 「一応質問は終わったんですが、あまりにも時間が余ってるんで、例えば宗教について一つ触れると私は禅宗なので禅の勉強を40の記念に3年やったんですが、般若心経というのがあるんです。観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄」(自民党 谷川弥一衆院議員)
 自民党の谷川弥一議員が、自分の質問の持ち時間が余ったと述べて、法案とは直接関係ない般若心経などを唱えました。
 さらに・・・
 「実は漱石が好きなんです。全巻12回くらい読みました。心を耕す仕事って何だというと、文学であり彫刻であり陶芸であり・・・、それが宗教なんです」(自民党 谷川弥一衆院議員)
Ws000001
IR法案が衆院通過、自民議員は質問で「お経読み」

政権・自民党の劣化を如実に示していると言えよう。
安倍首相は「結党以来、強行採決したことはない」と言っているが、強行採決のオンパレードである。
それでも安倍内閣の支持率は落ちていないと言うが、Facebookでのアンケートでは以下のような結果である。
Facebook

この違いをどう解釈するか?

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2016年12月 6日 (火)

真珠湾訪問を意義あるものにするために/アベノポリシーの危うさ(112)

安倍首相が今年末真珠湾を訪問し、犠牲者の慰霊をするという。
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東京新聞12月6日

もちろん日米双方のいろいろな思惑が交錯しているのであろうが、安倍首相が、日本の奇襲攻撃による犠牲者を慰霊するのは良いことであろう。
たとえ、米側からの話であったとしても。
開戦に至る経緯についてはさまざまな考え方があるにしても、現実にリメンバー・パールハーバーが米国の戦意を搔き立ててきたのは事実である。
Ws000000
オバマ広島訪問後の日米関係

NHKは通常番組を変更してまで報道した。
それほどの突然の発表であったということであるが、背景に何があるのだろうか?
安倍首相に近い産経新聞の見方は、次のようである。

 安倍晋三首相は、敗戦後の日本が引きずり続けた「戦後」という一つの時代を、終わらせようと試みているのではないか。
 今年5月には日本に原爆を落とした米国の現職大統領が初めて被爆地、広島を訪ね、今度は日本の現職首相が初めて日米戦争の象徴である真珠湾を訪れる。過去の歴史をめぐる日米の「和解」が、徹底的に演出されたといえる。
 安倍首相は戦後70年以上が過ぎても、日本と世界各国との関係が、敗戦国と戦勝国との枠組みに閉じ込められ、未来へと目が向けられないことに納得がいかなかったのだろう。
【安倍晋三首相真珠湾訪問】首相、「戦後」終わらせる試み 昨年4月から検討

戦後に区切りを付けたいということは分からないでもないが、ならば就任前のトランプ氏にいち早く面談したのだろうか?
⇒2016年11月25日 (金):安倍外交は大きな成果か崩壊か/アベノポリシーの危うさ(108)
オバマ政権が強い不快感を表明したと報じられたばかりである。
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東京新聞12月5日

また、昨年12月の慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった日韓合意もその一環だという。
しかし朴大統領が風前の灯火であり、次の大統領がどう出るかは分からない。
真珠湾訪問は結構なことだと思うが、日本は大東亜戦争という意識で戦争に入ったことを忘れてはならないであろう。
対米意識だけでは片手落ちである。
日中戦争のきっかけとなった盧溝橋なり南京に出向いて習金平氏とも共同で前向きの談話を発表すべきだろう。

真珠湾訪問発表をサプライズ的に行ったのは、岸田外相の訪ロではかばかしい成果が得られなかったからだと見る向きもある。
いずれにしろ、重厚な歴史観に基づいた行動が求められているが、安倍首相にそれがあるのだろうか?
⇒2016年12月 2日 (金):安倍外交の悲惨/アベノポリシーの危うさ(109)

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2016年12月 5日 (月)

退位に関する有識者会議に対する疑問/天皇の歴史(12)

天皇陛下の退位に関する安倍晋三首相の私的諮問機関「天皇の公務負担軽減等に関する有識者会議」(座長・今井敬経団連名誉会長)が、計3回、16人におよぶヒアリングを終了した。
有識者会議のメンバーは以下の通りである。
Ws000001
官邸サイト

何を基準に選んだのであろうか?
それぞれ社会的地位はあるのだろうが、天皇制に関して造詣が深いわけではなさそうである。
一般社会を代表しているとも言えない。
この有識者会議で見解を披歴したメンバーおよびそれぞれの意見は以下のようである。
Photo
退位、専門家の賛否拮抗…計16人の聴取終了

全員を知っているわけではないが、×印の意見を表明した平川祐弘、大原康男、渡部昇一、桜井よしこ、八木秀次氏らは、産経新聞御用達として知られる。
日本会議と親和性の高い人たちと言っても良い。
有識者会議の人選も分からないが、「専門家」の基準も分からない。
八木秀次氏の『「女性天皇容認論」を排す』清流出版(2004年12月)の一部である。
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八木氏は、「神武天皇のY染色体が継承されていることが天皇たるゆえん」と、いかにも生物学的な根拠のあるように語る。
Y染色体などというといかにも科学的な認識に基礎を置いたような議論であるが、「皇祖」が神武天皇ではなく天照大神とされてきたことはどう説明するのであろうか?
神武の実在性、継体天皇の出自、壬申の乱の実態等をどう説明するのか?

確かにY染色体は、男系を通じて継承される。
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DNAでわかった 日本人のルーツ (別冊宝島 2403)』宝島社(2016年11月)

しかし、遺伝的要素の影響は、7代経れば1%以下である。
遺伝以外のファクターが圧倒的に大きいのである、Y染色体の継承を声高に論ずる人の認識を疑う。
⇒2007年12月23日 (日):血脈…③万世一系

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2016年12月 4日 (日)

不適格大臣列伝(4)・稲田朋美防衛相-2/アベノポリシーの危うさ(111)

思わず笑ってしまった。
「稲田防衛大臣(女性)は少々頼りないですが」と、自衛隊秋田地方協力本部大館出張所の40代の男性隊員が、稲田大臣を評した。
Photo_3
「稲田防衛相は頼りない」 自衛官募集ビラに滲むホンネ

ブリッコというのか、TPOをわきまえないファッションを見れば、「少々」というのは「思いやり」だろう。

 この女、アタマがおかしいのではないか。こんなイカレタ格好をして、意気揚々とタラップを上った。極右と「仲良し写真」を撮るファシストだから、イカレテイルのは知っていたが、これほど礼儀知らずとは思っていなかった。ビックリ箱の玉手箱ってやつだ。
 この姿が正真正銘の、ニッポンの、現役の大臣さまだ。こんな愚か者に1億2500万人の日本人の命と財産を預けていると考えたら、怖くて仕方がない。
 ネットには防衛相の稲田朋美を非難する声が行列している。これもそれも、こんな恥知らずを「子分だから」と閣僚に起用した安倍晋三の責任だ。それにしても、前代未聞のスタイルだ。
Photo_2
イカレタ格好をして意気揚々の稲田朋美

稲田氏はチラシの件で、すぐに「事実関係を確認して」と指示を出した。
しかし、頭に血が上った稲田氏とは対照的に現場は冷静のようだ。

「チラシ問題をこれ以上、深追いしても無意味だし、逆に騒ぎを大きくしかねない。そもそも、稲田大臣はハイヒール姿で部隊を視察したり、リゾート地を訪れるような格好で海外出張したりと緊張感がなさ過ぎます。このチラシが示している意味は、女性差別でも何でもなく、女性であることを必要以上に強調するかのごとく振る舞っている稲田大臣に対する痛烈な皮肉です。『こんな気の緩んだ大臣の命令で俺たちは、駆け付け警護など命懸けの任務に行くのか』という怒りも込められているのです」(防衛省職員)
 このまま稲田氏が隊員の処分に踏み切れば、さらに現場の怒りの火に油を注ぐのは避けられない。かといって、こぶしを振り上げた以上、放置したままでは、現場からますますナメられるだけだ。どっちにしても稲田氏が防衛大臣のイスに座っていられる時間はそう長くない。
自衛官募集ビラに激怒 稲田大臣の処分方針に防衛省大揺れ

私だって、自分の上司が稲田氏のような人間だったら、揶揄したくなる。
いくら自分へのゴマすりが上手だとしても、安倍首相のミスマッチ人事は明らかである。

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2016年12月 3日 (土)

カジノ法案強行採決は焦りの表れ/アベノポリシーの危うさ(110)

昨年の5月、自民、維新、次世3党がカジノなどの統合型リゾート(IR)推進法案を衆院に再提出した。
現行法では、カジノを開くことは刑法で賭博の罪に当たる。
推進法案によれば、認定された区域に限って合法化し、ホテル、娯楽・商業施設、国際会議場などと一体の統合型リゾートの整備を目指す。
具体的な整備構想を自治体が申請し、国が認定する仕組みで、施設を建設・運営するのは自治体が選定する民間事業者だ。競馬、競輪などの公営ギャンブルとは違う「民設民営」方式だ。

私も海外出張の折など、カジノに出入りしたことはあるし、アナザーワールドとしての面白さも理解はする。
しかし、今、そんなに慌ててカジノ法を成立させることには大きな違和感がある。

 カジノ法案は自民党などの議員立法で、刑法が禁じているカジノを合法化して大型娯楽施設を整備し、経済の活性化を図るよう政府に促すもの。ギャンブル依存症の防止策やマネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪対策は、政府が1年後をめどに提出する実施法案に盛り込む。
 政府は成立を待って実施法案の検討を本格化させる。自民党幹部は2日、法案提出が2018年になるとの見通しを示したうえで、国内に開設されるカジノは「5カ所以下になるのではないか」と語った。
 内閣委の審議は2日間で6時間強で、多くの論点が積み残された。提案者の西村康稔氏(自民)は「20年東京五輪・パラリンピック前後の経済活性化策として意味がある」と述べ、成長戦略としての意義を強調。緒方林太郎氏(民進)はカジノ合法化で「射幸心を助長する恐れは解消されるのか」とただしたが、西村氏は「政府の実施法案で適切に規定される」などと述べるにとどめた。
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カジノ法案課題山積 衆院委可決、審議6時間

殊に大阪府は、大阪湾の人工島・夢洲でカジノを含む目論見からして熱心である。
維新の会を抱き込む狙いで、安倍政権はカジノ法案に積極的という見方もある。

昨年6月に安保法制をめぐって維新を抱え込むべく安倍・菅が橋下・松井と会談した際、「菅さんは大阪にカジノをつくると手形を切って説得した」(「週刊ポスト」15年7月3日号/小学館)といわれたが、今回のカジノ法案も、「大阪招致をダシにしたかたちで、安倍政権は維新と憲法改正での協力を取り付けた」(永田町関係者)と囁かれている。
カジノ法案が審議2日で強行採決! 背後に安倍首相とカジノ利権狙う“パチンコのドン”セガサミー会長の癒着

夢のようなパースも描かれている。
しかし以下のような見方が現実的ではないだろうか。

実はこのイメージ映像が発表された当時、友人のゼネコン社員にこの規模の開発を行った場合、どのくらいの開発費用がかかるかをザックリと目算で示して貰ったことがあるのですが、彼の返答は「埋立地である夢洲の中央をわざわざ掘り込んで改めてラグーン(池)を作ることの必然性や、その技術的な難点を差し引いたとして、どうやっても2兆円を下回ることはない」というものでした。
(注釈:彼の名誉の為に一応補足しておくと、本推計は本来「目算」だけでの試算は難しいものを、「あえていうならば経験的にザックリとどの位?」と僕が無理やり聞き出したものです。)
一方で、今回発表された大阪におけるIR市場規模から逆算して推計を行った同地域における開発規模は、関西経済同友会の発表によると6759億円。昨年1月に発表した開発イメージの4分の1程度の開発費にしかおよびません。となると、実際の夢洲のIR導入イメージは、例えば下記の画像の中の色を付けた部分程度にしかならないこととなります。(あくまでイメージ)
Photo
さて、上で色の付いていない部分は完全なる空地として残ってしまい、リゾート地としては非常に残念な状況になってしまうのですが、さて一体どう処理をしましょうかね?
大阪夢洲カジノ構想の悲劇

なぜカジノ法を急ぐのか?
アベノミクスの破綻が明らかであるからだろう。
公明党の自主投票というのが、同党の曖昧さを示している。
同党の支持母体の創価学会員の多くは反対しているのであろうが、与党の味を忘れることはできないのだ。
あわよくば使い道のないことになるかも知れない豊洲を?
まあ、当初からそういう声が聞こえてはいたが、まさに「毒皿」である。

共産党の志位和夫委員長は、与党の採決強行を次のように批判した、

普通は野党第1党も第2党も反対している議員立法を強権的なやり方で進めるということはない。国会運営としても異常な事態だ。
カジノ強行「異常な事態」=志位共産委員長

まあ、ギャンブル依存症は自己責任であろうが、現在の制度的な枠内でも依存症によって家庭を崩壊させている例も聞く。
依存症は別としても、裏社会と関係が深いのは当然であろう。
元警察官僚の平沢勝栄議員は安倍首相の家庭教師だったことで知られるが、パチンコ業界と関係が深い。

カジノ、原発、兵器産業……
わが国の首相は、国民の福祉や厚生よりも、その破壊の方が好きなようだ。
「やればできる」という精神主義は、かつての陸軍そっくりである。

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2016年12月 2日 (金)

安倍外交の悲惨/アベノポリシーの危うさ(109)

Yahoo知恵袋に、「安倍首相ってどうして国内では「お金がないから社会保障削減」とか言ってるのに海外にはばら撒きまくるんですか? 」という質問があった。

安倍首相って国内では借金が~とかお金がないとか言って社会保障を削ったり、増税したりしてますよね。
けど中東へ2億ドルを支援したり、ウクライナに360億円?くらい追加支援をしたりしてますよね。
そして中東へ支援した結果、イスラム国というテロ組織から敵に認定され、人質を取られてしまいましたね。
しかし、どうして海外にばら撒くお金があるのに国内には使わないんですかね?
安倍首相ってどうして国内では「お金がないから・・・

ベストアンサーに選ばれた回答の一部を引用しよう。

自民党と経団連などの癒着が原因です。
税金を海外にばらまくのは、国民から搾取されただけの問題にとどまらずもっと恐ろしい狙いがあります。何千億の供与で感謝されるのは人件費が低い国だからです。安倍首相が回っているのは一部例外を除いて人件費の低い国ばかり。つまり大企業に便宜をはかり人件費の低い国から移民を受け入れやすくする下心のはずです。
インドの人件費は日本の約20分の1です。
ありとあらゆる安倍政権の政策が国民の生活を圧迫すると考えて良いです。
消費税8%増税だけでなく、配偶者控除廃止、相続税増税、軽自動車税増税、個人所得税控除枠縮小、株式譲渡益税増税、医療負担増、年金支給引き下げ、負担を増やす項目が多すぎます。そのくせ天下りなど全くの手付かずで特殊法人などで渡りを繰り返し一人当たり億を超える税金を食い逃げしている人達はそのまま温存されています。増税は福祉関係の予算が確保されると思っている方がいますがそれも違います。国民を納得させるためにそのような建前が取られていますが、目的税ではないので震災の復興増税の流用のように関係のない税金の使い方はできますしそうでなくても国民負担が増えて株価に悪影響を与えて年金運用が悪化することも予想されます。

まったくその通りだと思うが、未だ就任もしていないトランプ氏の下に馳せ参じたことをもって「安倍外交の大きな成果」などと評する頓珍漢もいる。
⇒2016年11月25日 (金):安倍外交は大きな成果か崩壊か/アベノポリシーの危うさ(108)

安倍政権は外政・内政共に行き詰まりつつあることは、虚心に見れば明らかであろう。
12月1日の東京新聞が鋭く裁断している。
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情勢把握能力もなく、手当たり次第にバラマキを続けても、条件がなければ無駄になるだけである。
トランプ氏に対する態度を安倍首相とメルケル独首相を比較した評言を引用する。

米国の圧倒的な軍事力をアテにしたいのは、中国を潜在的な脅威とする安倍政権と、ロシアを潜在的な脅威とするメルケル政権も状況的には似ている。だが、両者の間で、決定的に違うのは、人権や地球環境といった、普遍的な価値感を堅持するか否か、という姿勢の明確さだろう。その点において、安倍首相はトランプ氏との会談で世界に恥をさらし、メルケル首相はリーダーとしての格の違いを見せつけた、と言える。
安倍トランプ会談で世界にさらした恥―ドイツ・メルケル首相が見せた格の違い

安倍首相は、大局観の欠如という点で、石原莞爾と衝突し、日本を肇国以来の国難に陥らせた東條英機元首相に似ているのではないか。

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2016年12月 1日 (木)

水原秋櫻子句碑@十里木高原/文学碑を訪ねる(4)

水原秋櫻子は、近代俳句の代表者の1人と言って良い。
東京帝国大学医学部を卒業し、昭和医専の教授になり、家業を継ぐと共に、宮内庁の典医になって多くの皇族の子供を取り上げるというエスタブリッシュメントであったが、東大在学中から俳句に取り組み、大正末期の1924年から「ホトトギス」に参加した。
昭和初期には、山口誓子、阿波野青畝、高野素十と共に、頭文字をとって「4S」と呼ばれ、高浜虚子からも大いに嘱望されていた。

「ホトトギス」でエース級の活躍をしていた秋櫻子は、客観写生と唱える虚子やそれを支持する素十と作句観を巡って対立し、1931(昭和6)年に「ホトトギス」を脱退して独立した。
1934(昭和9)年には、主宰誌の「馬酔木」を創刊し、「ホトトギス」に対抗する新興勢力の拠点となったが、秋櫻子が「ホトトギス」を脱退した理由は、以下のようだった。

ホトトギスには「客観写生」といふ標語があった。
……
まづ客観写生を修練させるといふ教育法はよいのであるが、ホトトギスに於てはいつまで経つても客観写生の標語だけが掲げられていて、そのさきの教育はなかつた。つまりどこまでも大衆教育であり、凡才教育であつて、その中から傑れた作者を出さうといふ教育ではなかつた。

つまり、秋櫻子は、高浜虚子が、みな一様に大衆教育、凡才教育の対象とみることに対し、大衆とは異なる存在として自覚している自身が満足しなかったということだろう。
さらに、虚子自身は、必ずしも客観写生の領域に留まっているわけではないのに、「ホトトギス」同人たちは、異を唱えることなく従っていることにも不満だったはずだ。
「ホトトギス≒俳壇」に対する反逆であり、新興俳句の烽火であった。
⇒2007年12月26日 (水):当麻寺…③秋櫻子

裾野市の十里木という別荘地に、秋櫻子の句碑が建っている。
十里木で開かれた句会で詠まれた句だという。
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十里木高原は、源頼朝が巻狩(大勢での動物の狩り)をした舞台であり、頼朝の井戸と称する遺跡がある。
秋櫻子の句碑は、頼朝の井戸の敷地内にある。
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