人脳と人工知能/「同じ」と「違う」(99)
中国語でコンピュータのことを電脳という。
人工知能とは電脳であるが、電脳とヒトの脳(人脳)はどう違うか?
この問題に1つの指針を与えたのが、アラン・チューリングであった。
チューリングが興味を持ったのは、脳の構造と機能であった。
ケンブリッジ大学のキングス・カレッジに入学して数学を専攻した彼は、1936年に「計算可能な数について(原題:On computable numbers, with an application to the Entscheidungsproblem)」という論文を書いた。
人間の論理思考を機械に喩えたモデルを考えた。
「チューリング・マシン」と呼ばれるものであるが、これは現在のコンピューターの基本的なアーキテクチャーを決めたと言って良い。
⇒2015年6月18日 (木):チューリングと『イミテーション・ゲーム』/技術論と文明論(27)
1)無限に続くテープ。このテープ上には離散的にデータを書き込んだり読んだりできる領域がある。
またテープは左と右に動く。
2)そのテープ上にデータを書いたり読んだりできる機械。
構成は上記述べた物だけ。あたかも簡単な算盤みたいな物を想像してください。
アラン・チューリング(1):コンピュータサイエンスの父
現在実用化されているコンピュータは、事実上チューリングとフォン・ノイマンという2人の天才科学者に負っていると言って良い。
チューリングが提案した方法は、2台のチャットシステムを用意し、1台は人間が回答し、もう1台は人工知能が回答する。
複数の人間がチャットを介していくつかの質問を行い、どちらが人間でどちらが人工知能か識別できるかどうかで、人工知能と人脳の判別するということである。
チューリングテスト
囲碁は最高の知能ゲームとして、コンピュータが人間には当分適わないだろうと言われていた。
しかし、グーグルのグループのアルファ碁が、世界最強と言われるイ・セドル九段を下したことが囲碁界を震撼させた。
⇒2016年2月21日 (日):AIはクリエイティブ分野でもヒトに勝つか?/技術論と文明論(41)
分野を限定すれば、明らかに電脳(人工知能)は人脳を凌駕している。
それはディープラーニング(深層学習)という手法によってもたらされた。
⇒2016年5月24日 (火):ディープラーニングの発展と脳のしくみ/知的生産の方法(150)
ロボットいう言葉は、チェコの作家カレル・チャペックが戯曲『R・U・R』(Rossum's Universal Robots:ロッサム世界ロボット製作所)で使ったのが最初である。
チャペックは、進化したロボットが人間に反乱を企て、掃討するというストーリーを創作した。
⇒2010年5月23日 (日):「恐竜の脳」の話(4)山椒魚
⇒2011年7月28日 (木):小松左京氏を悼む/追悼(13)
チャペックの着眼は、AIの発展を100年ほど先取りしたとも言える。
しかし、フレキシブルに汎用に考えるという点では、未だに人間の方が優位であることは間違いないだろう。
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