「鬼十則」と「戦陣訓」/「同じ」と「違う」(98)
電通の新入女性社員・高橋まつりさんが昨年末に自殺したのは、過労が原因であるとして「労災」が認められた。
「電通」に対して、当局が立ち入り検査する事態となり、電通も深夜残業の禁止などの改善策を講じている。
⇒2016年10月18日 (火):電通の光と影/ブランド・企業論(58)
そんな中で、第4代社長が定めた「鬼十則」といわれる規範がやり玉に挙がっている。
特に電通においては、「過労体質」とも言うべきフィロソフィーが根深く存在していた。それを如実に示しているのが、電通の4代目社長・吉田秀雄によって1951年に作られ、電通の行動指針として伝えられている「鬼十則」である。
「電通」過労死の背後にある「鬼十則」! もはや「KAROSHI」は世界共通語に
女子社員の過労死が報じられた時、私は反射的に「鬼十則」が頭に浮かんだ。
上記記事などのように、根源に「鬼十則」の存在を考えた人は多いのではないかと思う。
同時に、「鬼十則」を「戦陣訓」と同じであると見なす人も多いようである。
戦陣訓は、1941年(昭和16年)、陸軍大臣・東条英機の名の下に出された将兵のための道徳書である。
特に本訓其の二第八の『生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ』は有名で、結果的に全将兵に死を強制する役割を果した。つまり、戦死者は英雄だが、捕虜になることは最大の屈辱であるという価値観の形成だった。捕虜になった者は、「非国民」と非難された。
1月8日、『戦陣訓』の布告
確かに、多分にファナティックな精神主義への傾斜など、共通性は多いように感じる。
特に第5条などが評判が悪いようだ。
しかし、本質において、ビジネスと戦争は異なる。
電通は企業理念として、「Good Innovation.」を掲げている。
⇒2016年10月30日 (日):電通「鬼十則」の功罪/日本の針路(301)
『その手があったか』と言われるアイデアがある。『そこまでやるか』と言われる技術がある。『そんなことまで』と言われる企業家精神がある。私たちは3つの力でイノベーションをつくる。人へ、社会へ、新たな変化をもたらすイノベーションをつくってゆく。
「Good Innovation.」のためには、自由闊達な風土が重要であり、およそ「戦陣訓」の世界とは遠いと言うべきだろう。
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