キューバ革命のレジェンド・カストロ/追悼(100)
キューバ共和国の首相、大統領を務めたフィデル・カストロ前国家評議会議長が90歳で死亡した。
冷戦中の1950年代にキューバ革命で中心的役割を果たした後、49年間にわたりキューバを統治した。
日本経済新聞11月27日
カストロの評価は立場によって極端に割れている。
支持者からは、アメリカその他世界中の政治的大国に立ち向かい社会主義者の理想のために戦った英雄としてもてはやされ、批判者は、国民に対して数え切れぬほどの人権侵害を犯し、キューバ経済を崩壊させた独裁者として見られた。
トランプ次期アメリカ大統領は後者の代表であろう。
キューバのカストロ前国家評議会議長が死去したことについて、キューバとの歴史的な国交回復に踏み切ったアメリカのオバマ大統領は哀悼の意を示す声明を発表しましたが、国交回復を批判してきたトランプ次期大統領は、「残虐な独裁者が死去した。キューバ国民が自由を得られるよう全力をあげる」とする声明を発表し、対照的な反応を見せています。
カストロ氏死去 オバマ大統領とトランプ氏 対照的な反応
キューバの地政学的なポジションと革命指導者という立場から、カストロの評価に毀誉褒貶が入り混じるのは不可避であろう。
カストロ時代の統治では、全国共通の医療制度や教育といった社会改革を始めたことで賞賛されている。2011年にはキューバの識字率は99.8%だったとみられる。
2006年、当時のロンドン市長だった左派政治家ケン・リビングストンは、カストロの社会改革を賞賛している。「驚くべきことに、ほぼ半世紀にわたってアメリカから不法な経済制裁を受けていた国で、国民に最高の標準的な医療制度とすばらしい教育をもたらしたことだ」と、リビングストンは語った。「経済戦争の真っ只中で実行したのはフィデル・カストロの偉大さの証だ」
しかし、カストロが政権の座に就いていたおよそ50年の間、彼はキューバ国民に絶対の服従を求めていたとも言われている。そして、彼はこの間、報道の自由を弾圧し、反体制派の活動家、芸術家、LGBTコミュニティに属する人々など、自分が「反社会的」だとみなした人々を投獄していた。
「ほぼ50年にわたって、キューバ国民たちは、自由な表現、プライバシー、結社、集会の開催、政治・社会活動、法の適正な手続といった基本的人権を、組織的に奪われていた」と、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは2008年に報告している。「政治的服従を強めるために使われた戦略には、警察からの警告、監視、短期間の留置、自宅監禁、旅行の制限、刑事起訴、そして、政治的な動機による解雇などがあった」
カストロは、数千人の政治犯を投獄したと考えられている。彼が政権を握っていた約50年間で、100万人以上のキューバ人たちが祖国から難民となって逃亡した。
フィデル・カストロ――波乱に満ち、光と影が交差したキューバ革命指導者の生涯
光が強ければ影も濃い。
カストロの死とトランプの登場は、世界史の枠組みの転換を暗示しているようだ。
特に中南米諸国にどう影響するか?
日本経済新聞11月27日
世界が不安定化する要因が増えそうである。
キューバにとってのみならず、1つの時代が終わったのだと思う。
合掌。
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