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2016年11月

2016年11月30日 (水)

韓国朴大統領が辞意表明/世界史の動向(49)

韓国の朴槿恵大統領が、29日、国民向け談話で2018年2月の任期満了前の辞任を受け入れる意向を表明した。
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東京新聞11月30日

韓国大統領の末路は暗いという印象である。
以下のようなマンガがあった。
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韓国大統領の末路の巻

任期途中で大統領を辞任することになれば1987年の民主化以降初めてである。

 朴氏は13年2月に韓国初の女性大統領に就任。今年10月24日になって、40年来の親友、崔順実(チェ・スンシル)被告(60)に演説草稿を見せていたことが報じられ、朴氏が翌日に認め謝罪した。その後も崔被告を巡るさまざまな疑惑が噴出。検察は今月20日、財団設立に際し企業に巨額の資金拠出を強要したり、朴氏元側近を通じ大統領演説文や外交文書を不正入手したりしたとして、崔被告や朴氏元側近ら計3人を職権乱用罪などで起訴した。朴氏の共謀も起訴状に記され、現職大統領として初めて「容疑者」となった。25日発表の韓国ギャラップの世論調査では朴氏の支持率は歴代大統領の最低記録を更新。韓国の憲法では現職大統領が欠位となった場合、60日以内に次期大統領選を実施すると定められる。在任中、大統領は内乱罪などを除き起訴されない。
朴・韓国大統領 任期満了前の辞任受け入れ 国民向け談話

朴大統領は、若い頃に両親を亡くし、側近に裏切られ、人を信じられなかったらしい。
そばに置いたのがチェ・スンシル被告だったのだが、人を見る目がなかったことは別としても、非常に強力な大統領制度の下で、率直に耳が痛い意見を言ってくれる人がいなかったのがは悲劇の根本であろう。
「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」のである。

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2016年11月29日 (火)

非合理な制度設計は受容されない/日本の針路(309)

東京電力福島第1原発の事故炉の処分費用、廃炉費用が当初の想定以上に膨れ上がり、積立金の不足見込まれる。
そのため、政府は原発の廃炉費用を、電力小売りの全面自由化で新規参入した電力会社(新電力)に負担させる方針ことを考えた。
⇒2016年10月 6日 (木):電力自由化と廃炉費用の負担/技術論と文明論(75)

ところが、世論や有識者の反発などから断念し、東電の経営努力で捻出した資金を廃炉費用として積み立てることで対応することにしたらしい。
当然であろう。
原発非依存の新電力にとっては、まったく納得できない政策だからである。

ソフトバンクグループの孫正義社長は次のように批判していた。

考え方は根底からおかしいのではないかと思う。古い業界を守るために過去の遺産を新しいところに押し付けることを意味していて、新しく伸びるべき分野の芽を摘んでしまうのではないかと危惧する。 
孫社長「根底からおかしい」 原発廃炉費用負担で   

福島原発事故関連費用は、現在、以下のように推定されている。
Ws000000
福島第1原発事故 廃炉費、新電力除外 賠償費は上乗せ 経産省

制度設計の基本は、不合理を正し、合理へ誘導すべきである。
原因者負担、受益者負担等の原則に照らし、合理的な費用負担のあり方を検討すべきではないか。
安倍政権は、あえて非合理な制度を考えているように思える。

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2016年11月28日 (月)

足利義政と銀閣寺/京都彼方此方(12)

京都では、西より東の方が馴染みがある。
銀閣寺にはかれこれ数え切れないくらい行っているが、それも昔のことだ。
直近では、2年前の紅葉シーズンが最後である。
銀閣寺(東山慈照寺)は、室町幕府八代将軍の足利義政によって造営された山荘東山殿を起原とし、義政の没後、臨済宗の寺院となり義政の法号慈照院にちなんで慈照寺と名付けられた。 

華やかな金閣寺とは対照的に、いかにも侘び・寂を感じさせる佇まいである。
京都に17か所ある世界文化遺産の一つである。
京都五山第二位の格式を誇る禅寺・相国寺の境外塔頭(相国寺の境内の外にある相国寺に所属する小院)である。
金閣寺(鹿苑寺)も同様に相国寺の境外塔頭である。

疎水沿いの「哲学の道」の起点(終点)が、銀閣寺道バス停付近の白川通今出川交差点である。
京都学派の哲学者・西田幾多郎や田辺元らが好んで散策したことから名付けられた。
思索しながら歩くには好適であるが、最近は観光客で賑わっているので、思索に向かないかも知れない。
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エントランスは、「銀閣寺垣」で誘導される。
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「銀閣寺垣」は、低い石垣、低い建仁寺垣、それに樫、椿などの常緑樹の高い生垣からなっているが、左右の造りが異なっている。
国宝の銀閣(観音殿)は、一層目の心空殿は書院風の建築様式で、二層目の潮音閣は花頭窓をしつらえた唐様仏殿の様式の建物である。
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花頭窓は炎をかたどった禅寺で良く見かける窓なので、当初は「火頭窓」という字が使われていたが、戦国の動乱期などがあったことなどから火は災いを連想されるので「花」という漢字が使われるようになったらしい。
建物の閣上の鳳凰は日が昇る方角・東を向いていて、観音菩薩を祀る銀閣を守護している。
ます。

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東求堂は初期書院造りの住宅建築遺構として、国宝に指定されている。
四畳半の空間は当時としては画期的なしつらえで、プライバシーか確保された小さな部屋に住むようになったのはこの頃からと言われ、これが後の書院造に発展していった。
東求堂の出現が生活様式を変えるきっかけとなったと考えられている。

本堂の前の庭園には二つの盛り砂がある。
波紋を表現した銀沙灘と白砂の円錐形の盛り砂・向月台である。
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銀沙灘は、白砂を段形に盛り上げて造られたもので、月の光を反射させて銀閣を照らすために造られたと言わる。
向月台は、その上に座って正面にある月待山から昇る月を眺めるためのものと言われている。

義政は東山にあった浄土寺という寺の墓地を没収し無断でこの地に東山殿を造営したと言われている。
造営のために民衆に多額の臨時税を課して、それを財源として東山殿の造営に暴走した。
幕府の権力が衰退すると同時に地方の武士が台頭し、情勢が不安定な時期で、義政は気の休まる東山殿という別荘を創建するために突き進んでいった。
しかし、戦乱と大飢饉で資金は集まらなかったので、京都や奈良の寺社などから優れた石や樹木を略奪したともいう。

義政は、夢想疎石が建てた苔寺(西芳寺)に憧れていた。
夢想疎石は名作庭家として知られており、苔寺を模倣して、下段を池泉回遊式庭園、上段を枯山水庭園とした。
両脇が植栽の壁で覆われていて、途中で直角に曲がる参道などは同じ様式となっている。

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2016年11月27日 (日)

キューバ革命のレジェンド・カストロ/追悼(100)

キューバ共和国の首相、大統領を務めたフィデル・カストロ前国家評議会議長が90歳で死亡した。
冷戦中の1950年代にキューバ革命で中心的役割を果たした後、49年間にわたりキューバを統治した。
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日本経済新聞11月27日

カストロの評価は立場によって極端に割れている。
支持者からは、アメリカその他世界中の政治的大国に立ち向かい社会主義者の理想のために戦った英雄としてもてはやされ、批判者は、国民に対して数え切れぬほどの人権侵害を犯し、キューバ経済を崩壊させた独裁者として見られた。

トランプ次期アメリカ大統領は後者の代表であろう。

キューバのカストロ前国家評議会議長が死去したことについて、キューバとの歴史的な国交回復に踏み切ったアメリカのオバマ大統領は哀悼の意を示す声明を発表しましたが、国交回復を批判してきたトランプ次期大統領は、「残虐な独裁者が死去した。キューバ国民が自由を得られるよう全力をあげる」とする声明を発表し、対照的な反応を見せています。
カストロ氏死去 オバマ大統領とトランプ氏 対照的な反応

キューバの地政学的なポジションと革命指導者という立場から、カストロの評価に毀誉褒貶が入り混じるのは不可避であろう。

カストロ時代の統治では、全国共通の医療制度や教育といった社会改革を始めたことで賞賛されている。2011年にはキューバの識字率は99.8%だったとみられる。
2006年、当時のロンドン市長だった左派政治家ケン・リビングストンは、カストロの社会改革を賞賛している。「驚くべきことに、ほぼ半世紀にわたってアメリカから不法な経済制裁を受けていた国で、国民に最高の標準的な医療制度とすばらしい教育をもたらしたことだ」と、リビングストンは語った。「経済戦争の真っ只中で実行したのはフィデル・カストロの偉大さの証だ」
しかし、カストロが政権の座に就いていたおよそ50年の間、彼はキューバ国民に絶対の服従を求めていたとも言われている。そして、彼はこの間、報道の自由を弾圧し、反体制派の活動家、芸術家、LGBTコミュニティに属する人々など、自分が「反社会的」だとみなした人々を投獄していた。
「ほぼ50年にわたって、キューバ国民たちは、自由な表現、プライバシー、結社、集会の開催、政治・社会活動、法の適正な手続といった基本的人権を、組織的に奪われていた」と、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは2008年に報告している。「政治的服従を強めるために使われた戦略には、警察からの警告、監視、短期間の留置、自宅監禁、旅行の制限、刑事起訴、そして、政治的な動機による解雇などがあった」
カストロは、数千人の政治犯を投獄したと考えられている。彼が政権を握っていた約50年間で、100万人以上のキューバ人たちが祖国から難民となって逃亡した。
フィデル・カストロ――波乱に満ち、光と影が交差したキューバ革命指導者の生涯

光が強ければ影も濃い。
カストロの死とトランプの登場は、世界史の枠組みの転換を暗示しているようだ。
特に中南米諸国にどう影響するか?
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日本経済新聞11月27日

世界が不安定化する要因が増えそうである。
キューバにとってのみならず、1つの時代が終わったのだと思う。
合掌。

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2016年11月26日 (土)

曽野綾子の悲惨な耄碌ぶり/人間の理解(19)

安倍首相の盟友・曽野綾子氏の言動がひどい。
11月16日付の産経新聞で、大阪府警機動隊員の「土人」発言について次のように書いている。

 私は東京の八丁堀生まれの父の娘である。私は父のことを「東京土人」とか、「東京原住民」とかよく書いている。私を含めてすべての人は、どこかの土人、原住民なのだが、それでどこが悪いのだろう。「沖縄の土人」というのは、蔑称だと思う蓮舫氏の方こそ、差別感の持ち主だと思われる。
・・・・・・
 土人も原住民も、それなりに自然な郷土愛や文化への自負を持っている。ましてや沖縄ほどの、料理にも焼き物にも染色にも、個性豊かな文化を持っている土地ならなおさらだ。父が生まれた土地の「土人」だと言われたら、「人の言うことなんざ、気にすることはないよ」と笑うだろう。
なぜ曽野綾子氏は「土人」発言を擁護するのか

「土人問題」については、鶴保庸介・沖縄北方相の発言に関連して、「土人」には辞書的には次の2通りの説明が載っているが、どちらであるかは文脈で決まり、機動隊員は②としては使わないだろう、と書いた。

① 原住民などを軽侮していった語。
② もとからその土地に住んでいる人。土着の人。
三省堂『大辞林』
⇒2016年11月13日 (日):不適格大臣列伝・鶴保庸介沖縄北方相/アベノポリシーの危うさ(104)

曽野氏は、②の用法があるから問題ないし、①の用法だと言って問題にするのは、その人の中に差別感があるからだ、と言う。
詭弁にもなっていない言い種である。

『月刊日本』編集部によれば、『最新 差別語・不快語』(にんげん出版)では「土人」について、次のように解説されている。

 大和民族の社会において、「土人」は古い時代から、「土地の人々」「現地の人々」という意味で、異民族・外国人に対する蔑称は「夷人」でした。アイヌ民族が「夷人」と呼ばれたのも、また幕末の外国人打ちはらいが「攘夷運動」と呼ばれたのも、そのためです。ところが、1855年の日露和親条約で、日本政府は、アイヌ民族をほんらいの日本国民とし、アイヌ民族の居住地域を日本の領土だと主張するようになります。この論理からいえば、アイヌ民族を「夷人」と呼称しつづけることは、領土権をみずから放棄することになります。そこで、日本政府は、アイヌ民族の呼称を「土人」に切り替えたのです。これが、その後アイヌ民族が、「土人」「旧土人」と呼ばれる原因にもなります。
 そして、この切り替えによって、「土人」という言葉の実体的な意味が「土地の人々」から「未開で野蛮な異民族」にすり替えられることになります。日本の植民地主義や侵略戦争が展開するなか、とくに、アイヌ民族に使われたことから、先住民族への蔑称として使われるようになりました。明治時代の初期には、琉球人に対して「土人」という呼称が使われ、また日本が委任統治領とした南洋群島などでも「土人」という呼称が使われました。1997年に「北海道旧土人保護法」が廃止されるまで、「土人」という差別語は、行政用語としても定着していたといえます。
 言葉には文脈や歴史というものがあります。曽野氏のようにそこから切り離した議論をしても意味がありません。そのようなことさえ理解できないのは、作家として致命的と言わざるを得ません。

上記のような歴史的な知識が無くても、機動隊員が発した「土人」を差別語と感ずるのは成熟した大人にとって当たり前であろう。
曽野氏には『人間にとって成熟とは何か』幻冬舎新書(2013年7月)という著書があるが、ブラックジョークのようなタイトルである。
同書に、
野田聖子氏が自分の障害を持つ子供に高額医療を受けている件について、曽野氏の周囲に「どうしてそんな巨額の費用を私たちが負担するんですか」という声があることが紹介されている。
医療保険制度が迷惑であるかのような声であるが、曽野氏がそれをたしなめたという話ではないのだ。

野田氏が自民党総裁選に立候補しようとした際、自民党のネット応援サイトには、障害児を持ちながら立候補するような「自分勝手な人間が増えたのも日本国憲法のせいで、だからこそ自民党は天賦人権論を否定する憲法案を出した」という趣旨の複数のアカウントによる投稿があった。
こういう考え方と、相模原市の障害者施設を襲い、大量殺人を実行した植松某だ地続きであることは明らかであろう。
⇒2016年7月30日 (土):相模原大量殺人事件と優生思想/日本の針路(282)

曽野氏はもはやファシストに親近的と言って良い。
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曽野綾子さん、戦時の英知って何だ?

曽野氏の言葉に反応した以下のようなツィートがあった。

ISの残虐よりISの英智を伝えよ。泥棒の非道より泥棒の勇気を伝えよ。バカなクリスチャンの戯言より敬虔なクリスチャンの祈りを伝えよ。
Kusaka Arato  @KusakaArato 2015年2月12日

また、いじめを受けて自殺をした子供を次のように言っている。

自殺した被害者は、同級生に暗い記憶を残したという点で、彼自身がいじめる側にも立ってしまったのである。
曽野綾子氏「(いじめで)自殺した被害者は、同級生に暗い記憶を残したという点で、いじめる側にも立った」

原発避難者をイジメるのはこういう大人がいるからであるが、これ位にしておかないと気分が悪くなってくる。

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2016年11月25日 (金)

安倍外交は大きな成果か崩壊か/アベノポリシーの危うさ(108)

安倍首相が世界の首脳に先駆けて、ドナルド・トランプ次期大統領と会談したことをどう評価するか?
私は就任前のトランプ氏に焦って会うことが、トランプ氏の本質がディール(駆け引き)だと言われていることを勘案すると、足元を見透かされるようなものではないか、と思った。
⇒2016年11月19日 (土):進化と深化/「同じ」と「違う」(101)

しかし、世の中にはまったく違い見方をする人がいる。
北野幸伯という経済ジャーナリストだ。
安倍総理の行動を「神速」と持ち上げ次のように書いている。

皆さんの人生で、何か良いことが起こった。親しい友人は、即座に電話してきて、嬉しそうに「おめでとう!」と言います。「即座に」電話してくるので、「大切にしてくれているな~」と感じるのです。
しかし、遠い知人は、「10日後」に電話してきて、あまり嬉しそうでもなく、「おめでとう」と言います。祝ってもらった本人も、「義理で電話してきたな」と思うので、低いトーンで「ありがとう」と言います。
即座に電話してきた親友は、こう言います。「会って、お祝いしようよ!」。10日後に電話してきた知人は、言います。「いつかお祝いしましょう」。そして、そのいつかは、決してやってこない。
安倍外交の大勝利。トランプ会談に出遅れた中国は皮肉と焦りの発言

分かりやすい表現ではあるが、余りに素朴過ぎるたとえで、説得性を感じることができない。
東洋経済オンラインで、薬師寺克行東洋大学教授は、安倍首相が華々しい外交を展開しているが、第二次安倍内閣の発足以後、時間と労力をかけて作り上げてきた重要な外交的成果が次々と崩壊し始めていると指摘している。

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安倍首相がトランプ氏と会談したわずか5日後の11月22日、トランプ氏は公開した動画で、大統領就任初日に実施する政策として真っ先にTPPを取り上げ、「脱退を通告する」と一方的に発言したのだ。大統領就任前でもあり、TPPに参加している他の11カ国との事前の調整など何もない一方的な発表である。
特にトランプ氏との会談後に「会談は非常にうまくいった。これは大丈夫だなと感じた。彼は人の話をよく聴くタイプで、うまくやっていけると思った」と語っていた安倍首相にとってはショックだったろう。
日本にとってTPPは二つの意味がある。
一つは日本経済の再活性化の起爆剤になるという期待である。アベノミクスが思うような成果を上げていないだけに、TPP合意の実施によって米国や東南アジアに自由度の高い市場を作れば、貿易を拡大し日本経済を復活させることができると考えられていた。またTPP合意を契機に労働規制や農業などの改革と規制緩和に弾みをつけ、産業構造を転換していくという狙いもあった。こうした目論見はトランプ氏の発言で潰れてしまった。
もう一つの意味は経済面での対中包囲網の形成だった。アジア重視に傾斜していたオバマ政権と歩調を合わせ、東南アジア諸国も加わった強固なグループを形成することで、中国の経済的な影響力拡大に対抗する意図があった。その枠組みの中核を担う米国が離脱すれば、逆に中国にとって有利な状況が生まれることになる。安倍首相にとっては景気対策に加え、対中政策の観点からもかなり深刻な問題である。
安倍外交の「成果」が次々と崩壊し始めている

TPP以外に、日韓両国政府間の従軍慰安婦問題の合意も、朴大統領が40年来の知人である崔順実(チェ・スンシル)氏に国家の機密情報書類などを渡していたとするスキャンダルが浮上し、国内で大統領の辞任を求める声が一気に噴出して、朴大統領が瀕死の状態である。
また、南シナ海に関する仲裁裁判所の判決が空文化してしまった。
7月に出された判決は、中国の主張について、「国際法上の法的根拠がなく、国際法に違反する」と全面的に否定しており、フィリピンの完全な勝利だった。
ところが判決が出る直前の5月に行われたフィリピンの大統領選挙でドゥテルテ氏が当選し、大統領就任後いち早く中国を訪問して習近平国家主席らと会談した。
ドゥテルテ大統領はフィリピンに対する2兆円を上回る経済援助の約束を取りつけたが、首脳会談で仲裁裁判所の判決に触れることはなかった。
東アジア戦略の見直しを迫られているのだ。

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2016年11月24日 (木)

舒明天皇の「国見の歌」の謎/天皇の歴史(11)

舒明天皇の『万葉集』2番の「国見」の歌は有名であるが、謎の歌でもある。
⇒2016年9月29日 (木):象徴の行為としての「国見」/天皇の歴史(8)

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万葉の旅 大和三山

大和には 群山あれど 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は

率直に言って、大和に「海原は 鴎立ち立つ」とは理解しがたい。
一般には次のように解説されている。

江戸初期の学者契沖も、「和州には海なきを、かくよませ給ふは、彼山より難波の方などの見ゆるにや」と訝しがっています。標高150メートル前後の香具山から、大阪湾が見えるなんてことがあるのでしょうか。
 契沖の疑問に対し、少し後の時代の国学者たちは、香具山の麓にある埴安(はにやす)の池を海といったのだ、と解答しました。この説は広く受け入れられ、以来、この「海」は埴安の池ということにほぼ落ち着いているようです。
 最も新しい個人万葉全注釈である伊藤博氏の『萬葉集釋注』でも、この句について次のように注記しています。

香具山の周辺には、埴安、磐余など、多くの池があった。「海原」はそれを海とみなしたものであろう。「かまめ」は「かもめ」の古形で、その池のあたりを飛ぶ白い水鳥をかもめと見なしたのか。

 そして、舒明天皇の国見歌は、「海と陸によって成る"日本国"全体の映像を」大和にになわせたもの、と見ています。奈良盆地の小風景に日本国全体を幻視している、というわけです。
天の香具山と「海原」

苦しい解釈である。
別解としては、吉本隆明が『ハイ・イメージ論』で紹介した樋口清之の説がある。

樋口氏は、地下の地質調査から判明した事実として「ほぼ長方形をしている現在の大和平野は、今から約一万年余り前、即ち洪積期の最終末の頃、山城平野に口を開いている海湾であった」ことを指摘しています。同書に載っていたランドサット映像からの想像図をたよりに、約1万年前の畿内地方の概念図を作ってみました。
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 上の図の水色の部分が、当時海湾であったと推定される領域です。樋口氏の説をさらに聞きましょう。

海の塩水は大阪湾を満し、山城平野を満し、現在の奈良市の北にある奈良山の丘陵はなくて、それを越えて大和湾に北から南へ湾入していた。後に紀伊半島の地盤隆起に従って、大和平野の地盤は次第に海面から離れて行くことになった。(中略)つまり、大和盆地はもと湖であったが、地盤の隆起につれて排水が進行すると湖面が次第に低下し、最後には干上がって浅い摺鉢状の盆地になったと理解されます。(樋口清之「日本古典の信憑性」『国学院大学日本文化研究所紀要』第十七輯)

 簡単にまとめると、洪積世末期から沖積世にかけて、大和(奈良)盆地は、

 海湾→海水湖→淡水湖→盆地

と移り変わったことになります。
 奈良盆地の標高45メートル線以下には、奈良時代以前の住居跡や遺物は発見されておらず、それ以下の低地は大和盆地湖の名残りで、湖水や湿潤地であった、と樋口氏はいいます。そして舒明天皇の国見歌に言及し、何十回も香具山に登ってみたが、埴安の池は見えなかった、とのべ、「むしろここから見える海原は、国原に対して海原と表現したもので、かつての盆地湖の名残りとして、丁度今の郡山の東の方が奈良朝まで湿潤の地であり、香具山からはこれが見え、また鴎の立つ姿も見えたと思う」と論じます。
天の香具山と「海原」

舒明天皇は、Wikipedia によれば推古天皇元年(593年) - 舒明天皇13年(641年)とされる。
この頃には大和には鴎が群れ飛んでいたのだろうか?

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2016年11月23日 (水)

「3.11」は終わっていない/原発事故の真相(150)

昨日の福島沖地震は、「3.11」が未だに渦中にあることを認識させた。
確かに、福島第二原発の使用済み燃料プールの冷却水が一時的に停止したものの、大事に至らずに済んだ。
⇒2016年11月22日 (火):福島原発事故の汚染水対策を急げ/原発事故の真相(149)

しかしそれは、多分に僥倖だったと考えるべきではないのか。
復興庁復興推進委員会委員長代理を務めた政治学者の御厨貴氏は、復興の指針として「災後」の概念を提唱し、単行本として『 「戦後」が終わり、「災後」が始まる』千倉書房(2011年11月)を著した。
しかし、「戦後」は終わっていない、というよりも敗戦が続いている(=永続敗戦)。
⇒2016年6月 6日 (月):伊勢志摩サミットとは何だったのか/永続敗戦の構造(2)

福島第一原発事故も、メルトダウンした核燃料(デブリ)の最終処分をどうするか、方針さえ決まっていないのだ。
⇒2016年8月 1日 (月):『シン・ゴジラ』と福島原発事故/技術論と文明論(60)

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東京新聞11月23日

福島原発事故はまさに現在進行中の事態であることを再認識すべきであろう。
私は、「自然の怒り」だとか「神の意思」のような表現は使いたくない。
しかし、自然に対して敬虔な態度を失ってはならないだろう。
福島原発事故が収束していないままで、原発を再稼働させたり、他国に輸出したりする神経を持ち合わせていない。

奇しくも斎藤美奈子氏が『シン・ゴジラ』や『君の名は』のヒットを自然災害の記憶と関連づけて論じている。
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東京新聞11月23日

自然災害に対して、「怖れ」を失ってはならないだろう。

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2016年11月22日 (火)

福島原発事故の汚染水対策を急げ/原発事故の真相(149)

今払暁、福島県沖でかなり大きい地震があった。

 22日午前5時59分ごろ、福島県沖を震源とする地震があり、福島、茨城、栃木3県で震度5弱、北海道から中国地方までの広い範囲で震度4~1を観測した。津波警報や注意報が青森県から千葉県にかけての太平洋岸と伊豆諸島に出され、沿岸部の住民らが避難。同8時3分に仙台市の仙台港で最大1.4メートルの津波を観測した。気象庁によると、震源地は福島県いわき市の東北東沖約70キロで、深さは約25キロ。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.4と推定される。
福島震度5弱  仙台津波1.4m 「東日本」以降最大

いやでも東日本大震災のことが頭を過る。
関係はどう考えられるか?

Ws000000 気象庁の中村浩二・地震情報企画官は記者会見で、「東日本大震災以後、陸側のプレートが東側に伸ばされる形で動いている影響で、福島県沖や茨城県沖などの地域では正断層型の地震が増加する傾向にある」と指摘。「大震災の1カ月後に発生した福島県浜通りの地震(M7.0)と同じタイプ」と説明した。
 今回の津波について、安倍祥(よし)・東北大災害科学国際研究所助手(津波工学)は「震源が浅く、地震の規模も大きかったため津波が高くなった」と話した。政府の地震調査委員会委員長を務める平田直・東京大教授は「今後も同規模の地震が起こる可能性もある。地震や津波に十分な警戒を続けてほしい」と呼びかける。
福島震度5弱 震源浅い正断層型

幸いにして大きな被害は出なかったようであるが、肝を冷やした人も多かったのではなかろうか。
福島第二原発の使用済み核燃料プールの冷却装置が自動停止した。

 原子力規制庁によると、午前6時10分ごろ、福島第2原発3号機の使用済み核燃料プールの冷却装置が自動停止し、核燃料を冷やす水の循環ができない状態となった。
 3号機の使用済み核燃料プールには2544本の核燃料が貯蔵されており、うち184本が新燃料。停止当時のプールの水温は28.7度で、1時間に0.2度ずつ上がると予想され、運転上の制限値である65度に達するまでには1週間程度の余裕があった。
 核燃料の発熱量が少なかったため、すぐさま危険な状態には至らなかったが、午前7時47分に冷却用のポンプが再起動し、冷却が再開されるまで実に1時間半にわたって現場には緊張が走った。
早朝の列島に悪夢再び…福島第2核燃料冷却装置が一時停止

安倍首相が東京五輪招致のプレゼンで、汚染水はコントロールされていると世界に発信してから2年半が経つ。
⇒2014年5月17日 (土):汚染水は完全にブロックされている?/原発事故の真相(113)
しかし汚染水は外洋に垂れ流されているのである。
⇒2015年2月26日 (木):汚染水はコントロールされていない/原発事故の真相(128)

東京電力が、21日に福島第一原発1~4号機の周囲に造られた凍土遮水壁の地中の様子を報道陣に公開したばかりである。
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東京新聞11月22日

凍土壁の運用開始から8カ月経つが、効果は疑問である。
ケーブルや配管を収納する地下トンネルによって凍結管が貫通できず、その部分が凍結できないため、汚染水が抜けるのだ。
建屋への地下水流入は下図のようである。
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東京新聞11月22日

東電は山側の凍結を増やすと言うが、効果は限定的であろう。
今朝の地震では被害が出なくても、いつもそうとは限らない。
一刻も早く汚染水を止めるべく、事故を収束させる対策を優先させるべきである。

見せられた地点の土は確かに凍っていた。しかし、凍結が進むにつれ、減っていくはずの建屋地下への地下水の流入は一向に減らない。運用開始から八カ月、三百四十五億円の税金を投じた対策の効果は表れていない。

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2016年11月21日 (月)

不適格大臣列伝(3)・稲田朋美防衛相/アベノポリシーの危うさ(107)

稲田朋美防衛相が、南スーダンに派遣している国際平和維持活動(PKO)の陸上自衛隊第11次隊に対して「駆け付け警護」を任務に加える自衛隊行動命令を出した。

稲田氏は南スーダンを視察してきたが、その視察がお粗末すぎる。
帰国後、稲田氏は「現地の状況は落ち着いていた」と国会で答弁し、派遣期限の先月末にも新判断が下されるはずだった。
ところが、稲田氏が駆け足で視察をした同じ日に、ジュバ近くでトラックが攻撃され、市民21人が死亡する戦闘が起きた。
そこで月内の判断が見送られたといういきさつがある。
⇒2016年10月16日 (日):稲田防衛大臣の資質と適性/人間の理解(18)
⇒2016年10月22日 (土):南スーダンの安全と危険/アベノポリシーの危うさ(102)

南スーダン視察のレポートは下図のように真黒だという。
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泥憲和氏のFacebook

そんな稲田氏に「全責任は私にある」と言われてもなあ、と思うのは私だけではないだろう。。
内戦状態のとろろに行けば、自衛隊は「敵」とみなされる。
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東京新聞11月19日

稲田氏は、ジブチに視察に行くとき、リゾートに出かけるようなラフな格好で出かけて批判を浴びたことがある。
好みの問題と言ってしまえばそれまでであるが、私には単に若者ファッションをしたつもりの醜悪なオバチャンにしか見えない。
少なくとも、良いセンスとは言い難いであろう。
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勘違いファッションは内面の現れ 稲田朋美と皇后陛下

戦争体験のない若い政治家が、自分は安全地帯に居ながら危険な号令を発する。
世の中どんどん暗い方向へ進んでいるようだ。

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2016年11月20日 (日)

不適格大臣列伝(2)・山本有二農林水産相/アベノポリシーの危うさ(106)

トランプ次期アメリカ大統領は、TPPからの離脱を明言している。
それぞれの思惑が交錯しているが、行方が混とんとしていることは間違いないだろう。
日本政府は積極推進の構えだが、政権の内側からかく乱しているのが、山本有二農林水産相である。
⇒2016年11月 2日 (水):政権はなぜTPPの承認を急ぐのか/永続敗戦の構造(6)

本人はリップサービスのつもりかも知れないが、笑えぬ冗談であることが分かっていない。
高知県高知市の出身で、土佐高等学校から早稲田大学法学部を卒業した。
弁護士の後。1990年、第39回衆議院議員総選挙に高知県全県区(定数5)から自由民主党公認で出馬し当選した。
第1次安倍内閣で内閣府特命担当大臣(金融担当)に就任、2016年、第3次安倍第2次内閣で農林水産大臣に就任した。

特筆すべきなのは、崇教真光の神組み手(信徒)であることであろう。
崇教真光は、岐阜県高山市に本部を置く新宗教である。

安倍是意見が「働き方改革」を謳う中で、山本事務所がブラックであると報道されている。
「週刊文春」10月27日号が、秘書への残業代の不払いや雇用契約書を交付しないなど労働基準法に違反してると報じているのだ。
複数の元秘書が、山本事務所は労基法第15条1項に定められた雇用契約書を作成していなかったと証言している。
「給料は全部込みで約17万円」などとされていたというが、残業代や深夜手当が一切支払われないとすれば、労基法37条違反になる。

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安倍政権は、こんな大臣を閣内に置いたままで「働き方改革」を本気で標榜しているのか。
政権の不真面目さを体現しているような男と言えよう。

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2016年11月19日 (土)

進化と深化/「同じ」と「違う」(101)

安倍首相が17日夕(日本時間18日朝)、米ニューヨークでドナルド・トランプ次期大統領と会談した。
首相が就任前の次期米大統領と会談するのは極めて異例なことだ。
トランプ氏が選挙戦などで環太平洋連携協定(TPP)離脱の意向を示したり、日本に米軍駐留経費の負担増を求めたりしており、しかも官邸はヒラリー勝利を確信していたらしく、大慌てで駆け付けたという感じだ。

そこで早期にトランプ氏の真意を確かめる必要があると判断したという。
首相はトランプ氏を「信頼できる指導者」と評価し、トランプ氏も「素晴らしい友人関係を始められた」との所感を示した。
しかし会談の内容は公開されていない。
トランプ氏の本質はディール(駆け引き)にあると言われている。
就任前のトランプ氏に焦って会うのは足元も見透かされるようなものではないか。

安倍首相の日米の同盟関係を「深化」させたいという気持ちが一刻も早くトランプ氏と絆を築きたいという行動になったのだろう。
しかし、トランプ氏が言ってきた基本的な立場と日本との間には大きな隔たりがある。
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東京新聞11月19日

この懸隔を埋めるためには、高度に戦略的な思考が必要だろう。
日米の関係を安全保障面の同盟「深化」だけを追求するのではなく、他の分野を含めて関係を「進化」させる必要があるだろう。
世界の首脳に先駆けて会談をしたからには、「個人的な」ものとは必ずしも言い切れない。
安倍首相は、会談内容をできる範囲で説明する責務があろう。

特に、日米安全保障条約については、米国に日本防衛義務を、日本には米軍への基地提供義務を課している。
米軍の日本駐留費用は条約上、米政府の全額負担だが、日本政府は支払い義務のある土地の借料などに加え、本来支払わなくてもよい費用を含めて約6000億円を毎年負担している。
特に沖縄の基地負担は偏って重く、県民の意思を無視して高江にヘリパッドを移設する問題は、解決の糸口さえ見えない。
このまま強行すれば、深刻な分断を招くだろう。

安全保障以外にも日米が協力して取り組むべき課題は多い。
核拡散、テロ、地球温暖化、難民、貧困などのグローバルな問題にこそ日米が協力して取り組むべきだろう。
安全保障同盟を深化させるのではなく、多様な関係性を進化させるべきだろう。

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2016年11月18日 (金)

「東ロボくん」とリベラル・アーツ/知的生産の方法(164)

東京大学合格を目指して、国立情報学研究所などが開発してきた人工知能「東ロボくん」が東大合格を諦めた?

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 2011年に国立情報学研究所が開始した「ロボットは東大に入れるか」プロジェクト。2016年度までに大学入試センター試験で高得点を取り、2021年度に東大入試を突破することを目標に「東ロボくん」というAI(人工知能)の開発が進められていた。
「東ロボくん」はこのほどセンター試験模試で、英国数理(物理)社(世界史)5教科でいずれも平均点を上回り、総合偏差値57.1をマーク。MARCH、関関同立や複数の国公立大学に合格する実力に到達した。
 しかし、東大二次試験を受けるための足切りの点数には届かなかった。さらに点数を伸ばすには、東ロボくんが文脈や複雑な文章の意味を理解することが必要で、このまま開発を進めても、その点を突破できないため、2021年度を待たずしてプロジェクトは、東大受験に関しては一旦凍結した。
「東ロボくん」が偏差値57で東大受験を諦めた理由

東ロボくんは、短い一文の中の一部が空欄になっていて、適切な単語を選んで入れる問題は、ほぼ完璧に答えられたが、ストーリー性があったり、因果関係のある複数の文を読んで文脈を理解したうえで、解答する問題は苦手ということが分かった。
例えば、「A.彼は報告書をまた出し忘れた」「B.おまけに会議に遅刻した」という文章のあとに、続く文として以下3つの選択肢があった場合
(1)私は寝坊した。
(2)会議には報告書が必要だ。
(3)彼は社会人として自覚がない。
東ロボくんは、A、Bと同じ単語が入っている(2)や、遅刻という単語と同じ文章に入っている確率が高い「寝坊」が含まれる(1)を選んでしまうというのだ。
文脈を理解できず、自分のデータにある単語の組み合わせの頻度から推定して答えてしまうためだ。

これを克服するには、“人間としての常識”のデータや膨大な量の複数の文のセットを用意せねばならない。
コストと労力がかかりすぎ、現段階ではその方向で進化させることは物理的に不可能だと言う判断になった。
要するに、東ロボくんは、問題を解き、正解も出すが、読んで理解しているわけではないということだ。
現段階のAIにとって、文章の意味を理解することは、不可能に近いのだという。

しかし、偏差値が57点強ということは、東ロボよりも、得点の低い高校生が大勢いるということだ。
東ロボくんよりも成績の悪い高校生は、文章の意味を理解できているのだろうか?

文科省は、文科軽視としか解釈しようのない通達を出した。
⇒2015年6月19日 (金):文科省の国立大学改革通知はナンセンス/日本の針路(181)
しかし、東ロボプロジェクトが示しているのは、理科とか文科という区分を超越した知の追及である。
⇒2016年11月 8日 (火):教えられた通りの答だけが正解だとは!/知的生産の方法(163)

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2016年11月17日 (木)

原発避難者いじめは社会の反映/原発事故の真相(148)

東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒(13)がいじめを受けていた。
代理人の弁護士が15日、男子生徒の手記を公表し、代読した。
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東京新聞11月16日

 手記は不登校になっていた昨年7月、小6の時に書いた。小2で自主避難した直後から名前に菌を付けて呼ばれるなどのいじめを受けており、「ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。福島の人はいじめられるとおもった」とつづった。
 小5の時に「(原発事故の)ばいしょう金あるだろ」と言われ、同級生らの遊興費などを負担したことについては「ていこうするとまたいじめがはじまるとおもってなにもできずにただこわくてしょうがなかった」としている。
 いじめの内容では「いつもけられたり、なぐられたりランドセルふりま(わ)される、かいだんではおされたりしていつもどこでおちるかわかんなかったのでこわかった」と訴えた。
 学校側に何度訴えても対応してもらえなかったことにも触れ、「いままでいろんなはなしをしてきたけどしんようしてくれなかった」「(先生に)むしされてた」と悔しさをにじませた。
 手記の後半では「いままでなんかいも死のうとおもった」としつつ、「でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」と書いている。
生徒が手記公表「しんさいでいっぱい死んだからいきるときめた」 弁護士が涙の代読

日本という国は、弱者に対して、冷たい国になってしまったのだ。
福島県は自主避難者に対する住宅無償提供を打ち切る方針を発表している。21611092
東京新聞11月9日

2つの出来事には因果関係はない。
しかし自主避難者に対して冷たい公的な対応が、子供社会におけるイジメにまで繋がっているのだろう。
それにしても教師たちは、生徒の行動の何を見ているのだろうか?
多少注意力を発揮すれば、分かるはずのことが分からないで過ぎて行く。

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2016年11月16日 (水)

南スーダンPKOの新任務/アベノポリシーの危うさ(105)

船戸与一氏の畢生の大作『満州国演義』は、満州事変から第二次世界大戦終結まで、架空の人物、敷島四兄弟を中心に、それぞれの視点から満州国の興亡を描いた歴史小説である。
7500枚の大作で、現在読んでいる最中であって読了していないが、満州国という現代日本にも影響を残している「幻の国」の歴史小説が、近未来の出来事を描いているかのような錯覚に陥りそうである。
⇒2016年11月 5日 (土):TPPは強行採決ではないのか/日本の針路(305)

15日、南スーダンPKOの陸上自衛隊への新任務「駆け付け警護」が閣議決定された。
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東京新聞11月16日

政府は南スーダンの現状を「落ち着いている」と説明している。
稲田防衛相は、13日のNHK日曜討論で、「反政府勢力のマシャール前副大統領は海外にいて、現在、南スーダン国内では、国家組織に準じたような系統だった反政府勢力は存在しない」と発言していた。
しかし今や、南スーダンは内戦状態と言ってもよく、政府軍の方が国連側の“敵”のようであると言われる。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏が言う。
「南スーダン政府の中には、UNMISSが反政府勢力を支援しているとみている人もいて、疑心暗鬼です。妨害行為はその表れ。7月にジュバで起きた“大規模衝突”の際、政府軍とUNMISSのPKO部隊との間で、一時交戦があったと南スーダンのルエス情報相が認めています」
 一方、反政府勢力も大将は海外でも、戦車や機関砲を持った強い実力組織は残っている。つまり、南スーダンには敵か味方か不明な武装勢力だらけで、自衛隊が救援要請を受けて駆け付けても、どの勢力から襲われているか行ってみないと分からない状況なのだ。すでに中国やケニアなどは救援要請をネグレクトするケースが出てきている。
「司令官を解任されたケニアは、国連の問題すり替えだと怒って撤退を決めました。そういう中、駆け付け警護の新任務を付与された自衛隊が出発するのです。現地で活動を始めるのは12月。救援要請をいきなりネグレクトはできないでしょう。市民を襲っていたのが政府軍なら、南スーダンとの交戦になります」(世良光弘氏)
国連文書が暗示 自衛隊と南スーダン政府軍“交戦”の現実味

既成事実の積み重ねが引き返し不能な事態に至る。
満州事変の鮮やかな軍事的成功が、手痛い政治的敗北を導いたのだ。
『満州国演義』の第三巻『群狼の舞』新潮文庫(2015年9月)に次のような文章がある。

あの若僧は陸士を卒業してすぐに関東軍として渡満して来たんだろうよ。それも熱河侵攻とか東北抗日義勇軍殲滅とかの派手な作戦に従事しているわけじゃねぇ。・・・・・・戦闘経験のねえ軍人ほど始末に悪いものはねえ。おれは確信してる。あの若僧は戦果を挙げたくてうずうずしてるとな。

表現を借りれば、戦争体験のない若い政治家が、好戦的になるほど始末に悪いものはない、と言えるかも知れない。

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2016年11月15日 (火)

奇蹟と奇跡/「同じ」と「違う」(100)

映画『奇蹟がくれた数式』を観た。
インド生まれの天才的数学者・シュリニヴァーサ・アイヤンガー・ラマヌジャン(Srinivasa Aiyangar Ramanujan)の物語である。
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ラマヌジャンは、1887年12月22日生まれで 1920年4月26日に亡くなったから32年の短い生涯だった。
映画にも描かれているが、次のような逸話が残されている。

ある日、ラマヌジャンの才能を見出した ケンブリッジ大学の数学者Hardy (ハーディ)は、病床のラマヌジャンにこういいました。
「1729はつまらない数字だ。」
ラマヌジャンは飛び起き、
「ハーディ先生、1729は大変面白い数字です。」と反論します。
「1729は3乗数の2つの和として、2通りに表すことができる最小の数です。」
つまりこういうことです。
1729という数字は10の3乗と9の3乗の和でもあり、12の3乗と1の3乗の和でもあるのです。
1729
1729が最小であると即座に判断できるラマヌジャンの天才ぶりが伺える話です。
ハーディは後に伝記の中で「ラマヌジャンはすべての自然数と親友であった」と述べています。
神秘的な数字「12」の謎!インドが生んだ天才数学者ラマヌジャン。

1729はハーディが乗ってきたタクシーのナンバーである。
ラマヌジャンは、インドからケンブリッジ大学に招聘されたが、第1次世界大戦が勃発し、植民地のインド出身だということで、偏見を持たれ差別される。
ハーディは例外的な理解者だったが、敬虔なヒンドゥー教の信者と無神論者のハーディは、宗教的な考え方においてはすれ違う。

証明の重要性を説くハーディに対し、ラマヌジャンは「神の恩寵によってもたらされた」と説明し、それで十分ではないかと言う。
証明など、時間のムダだ。

タイトルの『奇蹟がくれた数式』は、ラマヌジャンの立場を説明している。
「奇跡」が「常識で考えては起こりえない、不思議な出来事・現象」の意味であるのに対し、「奇蹟」は「キリスト教など、宗教で、神の超自然的な働きによって起こる不思議な現象」を意味する。
「週刊新潮」の竹内薫氏のコラムに紹介があった。
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週刊新潮10月13日号

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2016年11月14日 (月)

高齢者の自動車事故にどう対応するか/日本の針路(308)

高齢者の自動車事故が続いている。
東京都立川市の病院敷地内で12日昼、乗用車が突然暴走し、2人の命が奪われた。

Ws000002 立川署には亡くなった2人の家族らが駆けつけた。「まだ40歳手前なのに本当に悔しい」。安和(あわ)竜洋さん(39)の義理の父親(66)は声を詰まらせ、「少しこわもてだけど優しくて思いやりがあった。旅行に行くといつもおみやげを買ってきてくれた。涙が止まらない」と話した。安和さんが勤務する会社の社長(46)は「彼は役員でうちの仕事の要。惜しい人を亡くしてしまった」と語った。
・・・・・・
 一方、事故を起こした乗用車を運転していた上江洲(うえず)幸子さん(83)は、夫が8月から入院し、ほぼ毎日、見舞いのために車で病院へ通っていた。近くに住む女性(75)によると、夫は高熱が続いて肺炎になり「ここ2、3日が山」と言われていたという。「1人で面倒を見て、疲労がたまっていたんだと思う。11日は徹夜で看病し、『ゆうべは大変だった。お父さんの冬支度を取りに来た』と話していた」と振り返り、ショックを隠せない様子だった。
「本当に悔しい」遺族悲しみに暮れる 立川の車暴走

高齢者の自動車運転事故の例は次のようである。
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高齢者運転事故  相次ぐ 04年以降、毎年400件超

10月の横浜市港南区の事故は、87歳の男が運転する軽トラックが児童の列に突っ込み、小学1年の男児を死亡させた。
神奈川県警によると、男は「どうやってぶつかったか覚えていない」と話したという。
一晩中運転していて、その記憶が明確でないともいう。

素人診断でも、明らかに認知症である。
運転を辞めさせる家族はいなかったのだろうか。
亡くなった小学生も余りに無残だし、遺族が怒りをぶつけようにも、責任能力があるのかどうか分からない。

 警察庁は認知症に重点を置いた対策も進めている。現行では、75歳以上の免許更新時に認知機能検査を行い、「認知症の恐れがある」(1分類)▽「認知機能低下の恐れがある」(2分類)▽「低下の恐れがない」(3分類)に分ける制度を実施。1分類のドライバーが交通違反をすると医師の診断を受けさせ、認知症と診断されると免許を取り消す。
 しかし1分類でも交通違反がなければ免許取り消しがないうえ、2、3分類については違反をしても次の免許更新時まで認知症検査を受けることがないという点に、チェック体制の「甘さ」があると指摘されている。このため来年3月施行の改正道交法では、1分類であれば交通違反がなくても医師の診断を求め、2、3分類についても交通違反があれば診断を義務づけるという内容に制度を変えた。
高齢者運転事故  相次ぐ 04年以降、毎年400件超

認知症のテストは、身の回りの受験者には余り評判が良くない。
しかし、「クルマは凶器になり得る」という原点に戻って厳しいチェックが必要だろう。
免許証に、高速道路除外とか、自動停止装置付き限定などの制限を設けることが必要なのかも知れない。

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2016年11月13日 (日)

不適格大臣列伝・鶴保庸介沖縄北方相/アベノポリシーの危うさ(104)

安倍首相の人事は不可解である。
鶴保庸介・沖縄北方相は、沖縄県東村の米軍ヘリパッド建設現場付近で、大阪府警の機動隊員が抗議活動をしている人に「土人」と叫んだ問題について、「差別と断定できない」等の発言を繰り返している。

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鶴保沖縄相、「土人」発言に持論繰り返す 野党は追及

辞書を見ると、「土人」には次のような説明が載っている。

① 原住民などを軽侮していった語。
② もとからその土地に住んでいる人。土着の人。
三省堂『大辞林』

①のつもりなら差別語、②のつもりなら差別語ではない、と一応は言えるだろう。
鶴保氏は、どちらだか断定できないということであろうか?

多義的な言葉の意味は、文脈で決まる。
常識的に考えて、機動隊員は②としては使わないだろう。
沖縄の現地では、反対運動側から機動隊員に対して、侮辱的な発言もあると聞く。
だからどっちもどっちだ、とは言えない。

鶴保氏が、機動隊員が②の意味で使った可能性があるというのは、屁理屈というものだ。
現地メディアは次のように書いている。

 「土人」発言が明らかになった直後、菅義偉官房長官は「許すまじきことだ」と批判した。松本純国家公安委員長は「発言は不適切だ」とし、金田勝年法相は差別用語に当たるとの認識を示した。政府は「極めて遺憾」とする答弁書を閣議決定している。
 担当相の発言とは明らかに食い違っており、閣内不一致と言われても仕方ない。
 安倍晋三首相は任命権者として「土人」発言と鶴保氏発言について、考えを明らかにすべきである。
■    ■
 県民との信頼関係を壊す発言はこれだけではない。
 鶴保氏は担当相就任の会見で「消化できないものを無理やりお口を開けて食べてくださいよでは、全国民の血税を無駄遣いしているという批判に耐えられない」と述べた。侮辱的な言い回しで、予算消化できない場合の減額をにおわせたのだ。
 県出身自民党議員のパーティーでは、選挙で勝つことと振興策はリンクするという話を持ち出し、辺野古違法確認訴訟の高裁判決前には、「早く片付けてほしいに尽きる」と県民に不快感を与える言葉を発した。
 振興策の窓口となってリーダーシップを発揮するのが担当相の役割である。そのために重要なのは県民の声を幅広く吸い上げることだ。
 県民と信頼関係が築けない担当相が、沖縄振興にプラスになるはずがない。
社説[鶴保氏放言]よくもまあ次から次に

翁長知事も記者会見で次のように発言した。

「担当大臣として沖縄への理解が進んでいないのではないか。沖縄の歴史がわかれば、そういう発言は出てこないと思うし、なぜ沖縄担当大臣という役職があるのかも含めて議論する機会があれば、しっかりとお伝えしたい」と述べ、今後、鶴保大臣に認識を改めるよう働きかけていく考えを示しました。
翁長知事 鶴保大臣の発言「大変遺憾」

私は「早く片付けて欲しい」などと発言する人を大臣に据えておく任命者の感覚が理解できない。

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2016年11月12日 (土)

日印原子力協定批判/アベノポリシーの危うさ(103)

日印両政府は11日、原子力協定に署名した。
日本国内の原発新増設が見通せない中で、政府は成長戦略を原発輸出に求めるということだろう。
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東京新聞11月12日

しかし、核拡散防止条約(NPT)未加盟国との協定署名となり、核拡散に繋がる蓋然性は高い。

Photo_5 安倍晋三首相とインドのモディ首相が署名した日印原子力協定により、安倍政権が成長戦略の一環として進める原発の海外輸出は核拡散防止条約(NPT)の非加盟国に広がっ
た。国連で先月、核兵器禁止条約の制定を求める決議案に反対したのに続き、被爆国として核兵器廃絶を訴えるべき立場に逆行する行動が続いている。
 日本が原発輸出を決断したのは、米国の存在が大きい。米国など主要先進国でつくる「原子力供給国グループ(NSG)」は二〇〇八年にインドが核実験の自発的な凍結を続ける声明を出したことを受け、原発輸出を特例的に解禁。米国は同年に協定を結び、今年六月には六基の原発建設で基本合意した。
 安倍首相は協定署名後の共同記者発表で、協定について「核兵器のない世界を目指すわが国の立場に合致する」と強調した。だが、今回の協定では、原発技術を軍事転用する懸念が消えたわけではない。
 協定には、インドが国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れることも盛り込まれたが、査察できる施設は一部に限られる。日本の協力分野には、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理や高濃縮ウランの生産など、核兵器開発にすぐに転用できる技術もある。
 NPT体制の弱体化が指摘される中、今回の協定が核軍縮に逆行する動きにつながれば、被爆国としての訴えの説得力は大きく揺らぐ。
被爆国「核なき世界」に逆行

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日印原子力協定 拭えぬ核拡散の懸念

自国の原発事故の収束の見通しがつかない状況で、経済のために原発輸出をするのには反対せざるを得ない。

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2016年11月11日 (金)

人脳と人工知能/「同じ」と「違う」(99)

中国語でコンピュータのことを電脳という。
人工知能とは電脳であるが、電脳とヒトの脳(人脳)はどう違うか?

この問題に1つの指針を与えたのが、アラン・チューリングであった。
チューリングが興味を持ったのは、脳の構造と機能であった。
ケンブリッジ大学のキングス・カレッジに入学して数学を専攻した彼は、1936年に「計算可能な数について原題:On computable numbers, with an application to the Entscheidungsproblem」という論文を書いた。
人間の論理思考を機械に喩えたモデルを考えた。
「チューリング・マシン」と呼ばれるものであるが、これは現在のコンピューターの基本的なアーキテクチャーを決めたと言って良い。
⇒2015年6月18日 (木):チューリングと『イミテーション・ゲーム』/技術論と文明論(27)

1)無限に続くテープ。このテープ上には離散的にデータを書き込んだり読んだりできる領域がある。
またテープは左と右に動く。
2)そのテープ上にデータを書いたり読んだりできる機械。
構成は上記述べた物だけ。あたかも簡単な算盤みたいな物を想像してください。
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アラン・チューリング(1):コンピュータサイエンスの父

現在実用化されているコンピュータは、事実上チューリングとフォン・ノイマンという2人の天才科学者に負っていると言って良い。
チューリングが提案した方法は、2台のチャットシステムを用意し、1台は人間が回答し、もう1台は人工知能が回答する。
複数の人間がチャットを介していくつかの質問を行い、どちらが人間でどちらが人工知能か識別できるかどうかで、人工知能と人脳の判別するということである。
Turingtest
チューリングテスト

囲碁は最高の知能ゲームとして、コンピュータが人間には当分適わないだろうと言われていた。
しかし、グーグルのグループのアルファ碁が、世界最強と言われるイ・セドル九段を下したことが囲碁界を震撼させた。
⇒2016年2月21日 (日):AIはクリエイティブ分野でもヒトに勝つか?/技術論と文明論(41)
分野を限定すれば、明らかに電脳(人工知能)は人脳を凌駕している。
それはディープラーニング(深層学習)という手法によってもたらされた。
⇒2016年5月24日 (火):ディープラーニングの発展と脳のしくみ/知的生産の方法(150)

ロボットいう言葉は、チェコの作家カレル・チャペックが戯曲『R・U・R』(Rossum's Universal Robots:ロッサム世界ロボット製作所)で使ったのが最初である。
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チャペックは、進化したロボットが人間に反乱を企て、掃討するというストーリーを創作した。
⇒2010年5月23日 (日):「恐竜の脳」の話(4)山椒魚
⇒2011年7月28日 (木):小松左京氏を悼む/追悼(13)

チャペックの着眼は、AIの発展を100年ほど先取りしたとも言える。
しかし、フレキシブルに汎用に考えるという点では、未だに人間の方が優位であることは間違いないだろう。

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2016年11月10日 (木)

「鬼十則」と「戦陣訓」/「同じ」と「違う」(98)

電通の新入女性社員・高橋まつりさんが昨年末に自殺したのは、過労が原因であるとして「労災」が認められた。
「電通」に対して、当局が立ち入り検査する事態となり、電通も深夜残業の禁止などの改善策を講じている。
⇒2016年10月18日 (火):電通の光と影/ブランド・企業論(58)

そんな中で、第4代社長が定めた「鬼十則」といわれる規範がやり玉に挙がっている。

 特に電通においては、「過労体質」とも言うべきフィロソフィーが根深く存在していた。それを如実に示しているのが、電通の4代目社長・吉田秀雄によって1951年に作られ、電通の行動指針として伝えられている「鬼十則」である。
「電通」過労死の背後にある「鬼十則」! もはや「KAROSHI」は世界共通語に

女子社員の過労死が報じられた時、私は反射的に「鬼十則」が頭に浮かんだ。
上記記事などのように、根源に「鬼十則」の存在を考えた人は多いのではないかと思う。
同時に、「鬼十則」を「戦陣訓」と同じであると見なす人も多いようである。
戦陣訓は、1941年(昭和16年)、陸軍大臣・東条英機の名の下に出された将兵のための道徳書である。

特に本訓其の二第八の『生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ』は有名で、結果的に全将兵に死を強制する役割を果した。つまり、戦死者は英雄だが、捕虜になることは最大の屈辱であるという価値観の形成だった。捕虜になった者は、「非国民」と非難された。
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1月8日、『戦陣訓』の布告

確かに、多分にファナティックな精神主義への傾斜など、共通性は多いように感じる。
特に第5条などが評判が悪いようだ。

5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。

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東京新聞11月9日

しかし、本質において、ビジネスと戦争は異なる。
電通は企業理念として、「Good Innovation.」を掲げている。
⇒2016年10月30日 (日):電通「鬼十則」の功罪/日本の針路(301)

『その手があったか』と言われるアイデアがある。『そこまでやるか』と言われる技術がある。『そんなことまで』と言われる企業家精神がある。私たちは3つの力でイノベーションをつくる。人へ、社会へ、新たな変化をもたらすイノベーションをつくってゆく。

「Good Innovation.」のためには、自由闊達な風土が重要であり、およそ「戦陣訓」の世界とは遠いと言うべきだろう。

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2016年11月 9日 (水)

アメリカ大統領選はトランプ氏が勝利/世界史の動向(48)

激戦と伝えられてきた米大統領選は、共和党候補の実業家ドナルド・トランプ氏が、大差で勝利した。
ニューヨークの陣営本部で勝利宣言を行ったトランプ氏は、クリントン氏から電話があり、祝福されたことを明らかにした。
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米大統領選挙(アメリカ大統領選挙)2016

トランプ氏は、選挙期間中から、過激と思える政策を訴えてきた。
各国との同盟関係について「米国は世界の警察官ではいられない」と見直しに言及し、「日本の核保有は悪いことだとは思わない」とも主張した。
その発言が実際の政策としてどう具現化するかは未知数で、そのアマチュア感が期待感となったのではないか。

しかし何が起きるか分からないという不安感は大きく、トランプ優勢が伝えられるに連れ、日本の株式市場は暴落した。

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トランプ氏は、TPPに反対しており、離脱を公言している。
TPP承認を強行しようとしている安倍政権は、どう対処すろのであろうか。

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2016年11月 8日 (火)

教えられた通りの答だけが正解だとは!/知的生産の方法(163)

Twitterで話題になっているツイートがある。
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元投稿者は小学2年生の母親。
子供が宿題を先生に提出して、答え合わせをして返却された。

「なにこれ?」という赤字のコメントは、教師による。
教師の説明は
Ws000001
https://vipper-trendy.net/sansuu-huseikai/

この教師の中では、「(8+8+8+8+8+8+8)+17」が正解で、その通りでないと不正解だということらしい。
Facebookに以下のようなコメントがあり、深く同意。

 でもこれ、教師だけがおかしいのではないと思います。
 文科省や地方自治体が教師および教師集団の主体性や発言権や決定権をどんどん削減し、校長の権限を強め、意見さえ言わさないようにして、逆らったら見せしめにきつい処分をくらわすということを何十年も続けてきた、その成果だとしか思えません。
 教師の個性や自由裁量を許さないんだから、上からいわれるとおりのことを、決められた枠の中でそつなくこなすのがカシコイ教師だという風潮になってしまいますよね。
.
 そういう管理手法が強められたのは、もとは教師の政治活動を抑制するためだったと思います。
 しかしそのやり方が結果として教師全体に無気力な事なかれ主義を蔓延させ、クラス運営も授業の進め方も、民間教育会社のマニュアルどおりにしかできないバカ教師を生み出すことになったのでしょう。
https://www.facebook.com/norikadzu.doro?fref=ts

人工知能が職を奪うのではないかと議論されている折である。
自発的に考える力を養わないと、人工知能に駆逐されることは目に見えていると言えよう。
必要なのは、リベラル・アーツではないか。
⇒2013年5月24日 (金):「成熟の喪失」とリベラル・アーツ/知的生産の方法(56)
⇒2014年6月24日 (火):遠藤麟一朗とリベラルアーツ/知的生産の方法(98)
⇒2015年7月12日 (日):「文化芸術懇話会」におけるリベラルアーツの欠落/日本の針路(195)

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2016年11月 7日 (月)

「驕るお友達」は久しからず/日本の針路(307)

韓国の朴槿恵大統領が窮地に陥っている。
親友の崔順実(チェ・スンシル)容疑者を国政介入させた疑惑である。
検察の捜査に応じると表明したが、朴氏が事件の「主犯」だった疑いも浮上しており、支持率が急降下している。

安倍首相も、第1次政権は、「お友達内閣」と評されたように、親しい友人中心の人事で失敗した。
その経験を生かしているだろうか?
一強を謳歌している安倍首相だが、今井尚哉筆頭秘書官がアキレス腱ではないかと言われる。

政局対応、官邸広報、国会運営、あらゆる分野の戦略を総理の耳元で囁く。決断するのは総理だが、その影響力は計り知れない》(「プレジデントオンライン」より)
《今井には何より『総理独り占め』のカードがある。首相のアポは思いのまま、入れたい情報は耳打ちし、入れたくない情報は握りつぶす》(「FACTA」より)
《安倍総理の右腕とも言われ、スケジュールを一手に握っていることから、大物政治家も一目置いている。一方で今井氏の機嫌を損ねると、面会を取り次いでもらえないとの悪評も多い》(「週刊文春」より)
《『戦後70年談話』の草稿は、首相と今井氏らごく少数で作成したという》(「フライデー」より)

実際のところどうなのかは良く分からないが、取材する側の評判は芳しいものとは言えない。

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週刊新潮11月10日号

権勢をかざす人間は、足をすくわれて哀れな末路を辿る可能性が高い。
「驕る〇〇は久しからず」である。

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2016年11月 6日 (日)

9条を提案したのは幣原喜重郎だった/日本の針路(306)

戦争放棄を盛り込んだ憲法九条は、日本側の意思でつくられたのか、それとも連合国軍総司令部(GHQ)に押し付けられたものなのか。
ツイッター等で話題になっていたテーマに関し、今朝の東京新聞がスクープした。
読者からのFAXがきっかけで取材に取り組み、この問題の発見者であるドイツ人歴史学者・クラウス・シルヒトマン氏にインタビューしている。
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 学習漫画は「少年少女日本の歴史」。第一巻が一九八一年から刊行されているロングセラーだ。指摘された場面は第二十巻「新しい日本」の中で、四六年一月二十四日の幣原・マッカーサー会談を描いた一コマ。出版時期が違うものを探して比べたところ、絵柄はほぼ同じなのに発言内容が変わっていた。
 具体的には、九三年三月発行の第三十三刷は、戦争放棄を憲法に入れるよう提案したのは幣原としていたが、九四年二月発行の第三十五刷はマッカーサーの提案となっていた(第三十四刷は見つからず)。現在発行されている増補・改訂版は二十一巻で現憲法制定に触れているが二人の会談場面は描かれていない。
 漫画の表現変更は昨年夏ごろからツイッター(短文投稿サイト)で話題になっていた。その中から「国会前で『憲法は米国に押しつけられたのではなく、日本側が戦争放棄を提案したのです』と訴えるチラシをもらった。配っていたのはシルヒトマン氏」との書き込みを見つけた。
 その人は埼玉県日高市のドイツ人平和歴史学者、クラウス・シルヒトマン氏(72)。幣原や九条について何十年も研究し、日本語やドイツ語、英語で本も出している。幣原提案説に立つ。漫画の表現変更に気づき、新旧の描写を著書に載せたり、はがきにして首相官邸前デモで配ったりした。それが拡散したようだ。
 漫画の表現変更の理由は知らないという。記者も手を尽くしたが、監修した学習院大学元学長の児玉幸多(こうた)氏は二〇〇七年に死去。小学館広報室も「記録が残っていない。
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入れ替わった9条提案 学習漫画「日本の歴史」 

シルヒトマン氏は次のように語っている。

-表現が変わった理由をどう考えるか。
 「日本が湾岸戦争で国際的な批判を受けた後、漫画の表現が変わった。日本人が、改憲を現実的な問題として真剣に考え始めた証しではないか」
 -改憲勢力には、九条も時代に合わせて変えるべきだという意見がある。
 「九条は本来、国連が世界連邦として機能し、世界中で武装解除が進むという理想を見据えて策定された。現実はそうなっていないが、今は過渡期。変えたらすべて終わってしまう」
 -九条はむしろ世界に広げていくべきなのか。
 「戦力不保持を明記した九条は際立っている。この条文を各国の憲法に生かすことができれば、大きな起爆剤となるはずだ」
入れ替わった9条提案 学習漫画「日本の歴史」 

シルヒトマン氏の意見に賛成する。

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2016年11月 5日 (土)

TPPは強行採決ではないのか/日本の針路(305)

安倍晋三首相は、10月17日の国会で、「我が党においては(1955年の)結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」と言った。
山本有二農水相が「TPPは強行採決する」などと発言したことに対し、野党が追及を強めていることに関しての言葉である。
山本氏は発言を撤回し陳謝したが、どちらが本心かは、その後の経緯でも明らかである。
⇒2016年11月 2日 (水):政権はなぜTPPの承認を急ぐのか/永続敗戦の構造(6)

安倍首相の舌はどういう構造になっているのだろうか?
舌の根がまだ乾いていない2週間後の11月4日に、TPPの承認と関連法案の委員会での採決を強行した。
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東京新聞11月5日

TPPについては徹底して情報が秘匿されてきた。
4月5日に、衆院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会の理事懇談会で示された甘利明前経済再生担当相と米国のフロマン通商代表による閣僚協議などTPP関連文書は、表題を除いて黒く塗りつぶされていた。
⇒2016年4月 8日 (金):秘密のヴェールに包まれたTPPと甘利前大臣/アベノポリシーの危うさ(50)
⇒2016年4月10日 (日):TPPで何が決まったのか?/アベノポリシーの危うさ(51)
その甘利氏は、金銭疑惑の渦中に睡眠障害を理由に国会を欠席し、ほとぼりが冷めるのを待って政治活動に復帰した。
しかし詳細な内容については未だに開示されていない。

民進、共産、自由、社民の野党4党は、農相不信任決議案の提出を検討しているというが、任命責任の問題である。
安倍内閣によって日本は完全に戦前に戻った。
船戸与一氏の文字通りの畢生の大作『満州国演義』の第1巻『風の払暁』新潮文庫(2015年8月)の「解説」で、馳星周氏は次のように書いている。

『満州国演義端』の前半は、太平洋戦争に突入する前の日本を描いて、その様相は現在の日本とあまりに酷似している。
 理性ではなく情緒に流れる世論。声の大きいものの意見がまかり通り、目的のためには手段を選ばずという輩が跋扈する。
 在特会やネトウヨといった声のでかい反知性主義者が大きな顔をし、目的達成のためのためには数の力に頼って憲法解釈を無理矢理変えて恥じることのない安倍政権。
 まるで双子を見ているかのようではないか。
 七十数年前の情緒に支配された日本は破滅へとひた走った。現代の日本はどこに向かおうとしているのだろう。
 小説家とは予言者でもある。
 船戸のおっちゃんは、安倍晋三が返り咲くとはだれも思っていない時期に、二十一世紀の日本が、戦前と同じ空気に侵されていくなどとは誰も考えていなかった時期にこの小説を書きはじめた。

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2016年11月 4日 (金)

原発事故の損害賠償を新電力に負担させる非合理/日本の針路(303)

経済産業省は大手電力会社が持つ原発の廃炉にかかる費用を、新電力会社(小売電気事業者)にも負担させる方針を固めているが、さらに福島原発事故の損害賠償費用も、新電力に負担させる方向で検討している。

 経済産業省は二日、東京電力福島第一原発の事故被災者への賠償費を工面するため、自由化で新規参入した電力会社(新電力)も含めた幅広い電力利用者に「過去に原発の電気を利用した分」として追加負担を求める方向で検討に入った。同日の有識者会合「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の作業部会で方針を示した。上限の見えない負担を過去にさかのぼって全国の電力利用者に費用請求する方針には「分かりにくい」として委員から異論が噴出した。
 原発事故の賠償費用は、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に東電など原発を持つ大手電力会社が「一般負担金」などを納めて用意する仕組み。同機構は福島第一原発事故後の二〇一一年八月につくられ、同事故の被災者への賠償金もここから出している。
 一般負担金は電気料金を通じ消費者が負担。一方、新電力など原発を持たない会社は負担義務がなく、電気料金にも含まれない。
 経産省は「本来は電力会社が原発事業を始めた(一九六〇年代)時から、事故に備えて一般負担金を積み立てておくべきだった」と説明。大手から新電力に移行した消費者も含め負担金を請求する考えだ。福島原発事故賠償、新電力も負担案 電気代に上乗せか 経産省方針

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東京新聞11月3日

これはまったく合理性を欠く判断だろう。
消費者が原発に依存しない電源選択をしようと思ってもそれが反映できなくなる。
電力会社は、原発が安いという判断で原発を推進してきたのではないのか。
⇒2016年10月 6日 (木):電力自由化と廃炉費用の負担/技術論と文明論(75)

福島原発事故に対して、東電は大きな責任を負うべきだ。
賠償金を国民に押し付けるのは、どう考えても理屈が通らないだろう。

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2016年11月 3日 (木)

「明治節」復活を目論むアナクロニズム/日本の針路(303)

「文化の日」である。
国民の祝日に関する法律(祝日法)第2条によれば、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ことを趣旨としている。
1946年(昭和21年)に日本国憲法が公布された日であり、日本国憲法が平和と文化を重視していることから、1948年(昭和23年)に公布・施行された祝日法で「文化の日」と定められた。
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東京新聞11月3日

ところが、11月3日を、明治天皇の誕生日であることから「明治の日」、昔の「明治節」にしようと、祝日法改正運動を進める動きがある。
明治維新から150年の節目にあたる2018年の実現に向け、超党派での国会議員連盟発足を目指し、1日に国会内で集会を開いたが、、国会議員の参加は14人で、うち自民党以外は2人にとどまった。

 この日の集会には約140人が参加。明治の日の実現を求める約63万8千筆の署名が自民党の古屋圭司選対委員長に手渡された。安倍晋三首相に近い古屋氏は「かつての『明治節』がGHQ(連合国軍総司令部)の指導で大きく変わることを強いられた。明治の時代こそ大切だったと全ての日本人が振り返る日にしたい」と決意を述べた。
 稲田朋美防衛相も「神武天皇の偉業に立ち戻り、日本のよき伝統を守りながら改革を進めるのが明治維新の精神だった。その精神を取り戻すべく、心を一つに頑張りたい」と語った。民進党からは鷲尾英一郎衆院議員が参加した。
「明治の日」制定求め、自民議員ら国会内で集会

「文化の日」は、現憲法公布の重要な日である。
現憲法が不磨の聖典とは考えないが、大日本帝国憲法(明治憲法)に比べれば遥かに進歩している。
「神武天皇の偉業」に立ち戻り、明治節を復活させようというのは、歴史の歯車を逆回転させようということである。
古屋氏や稲田氏など、安倍首相に近いとされる人々が共有しているのは、恐るべきアナクロニズムと言わざるを得ない。

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2016年11月 2日 (水)

政権はなぜTPPの承認を急ぐのか/永続敗戦の構造(6)

山本有二農相が1日夜の自民党議員のパーティーで、TPP承認案に関する自身の「強行採決」発言を念頭に「冗談を言ったら首になりそうになった」と述べ、与野党から批判を浴びている。
山本氏は10月18日夜、佐藤勉衆院議院運営委員長のパーティーで、TPP承認案などの衆院審議を巡り「強行採決するかどうかは佐藤氏が決める」と発言し、その後、撤回して謝罪している。
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東京新聞11月2日

「冗談も休み休み言え」とはこのことだろう。
さすがに公明党の漆原良夫中央幹事会会長も記者会見で、「不誠実な言動の積み重ねが安倍晋三内閣の体力を奪っていくということを認識してもらいたい。猛省を促したい」と指摘し強い不快感を露わにした。
まったく驕りという以外にないが、安倍内閣の本質を示したという意味では、勲一等かも知れない。

こんな状況にもかかわらず、政府・与党は、環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案を4日の衆院本会議で採決する方針を固めたという。
賛成多数で可決され、同日中に参院に送られる見通しで、政府・与党が目標に掲げてきた8日の米大統領選前の衆院通過によって、承認案と関連法案の今国会での成立が濃厚になった。

承認案と関連法案の審議時間は参考人質疑を含め、与党が当初、めどとした40時間を上回ったことをもって、審議を尽くしたということのようであるが、全体として不透明感が漂っていることは否めないであろう。
しかし、承認案は参院の審議がずれ込んでも、憲法の規定に基づき、衆院通過から30日で自然成立するから、11月30日に会期末を迎える臨時国会を小幅延長すれば自然成立する。
政府が関係国に承認書を出すことで国内の締結手続きは終わる。

しかし、アメリカの世論はTPPに批判的で、有力大統領候補のトランプもヒラリーも反TPPの姿勢を強調している。
さらにオバマ大統領が任期中にTPP発効の承認を議会で得ることは難しく、アメリカが批准する可能性はゼロに近づきつつある。
他の国の状況はどうか。
TPPを批判するニュージーランド・オークランド大のジェーン・ケルシー教授が講演し、参加12カ国の批准に向けた国内手続きの現状を説明した。

Tpp_2 ケルシー氏は、米国による批准が見通せないため、ベトナムは年内完了を予定していた国内手続きを来年に先送りしたと指摘。さらに、オーストラリア、カナダ、ペルー、メキシコ、チリの五カ国も米国の政治状況を見極める姿勢を取っていると述べた。「(米国以外の)過半数が先に進まない状況だ」と強調した。
 国内手続きを急ぐ国としては、日本とニュージーランドを挙げ「オバマ政権のチアリーダーのようだ。なぜ米国がどうなるのか見極めようとしないのか」と疑問を投げ掛けた。ニュージーランドでは国内関連法案が来週にも成立する見通しだと明らかにした。
 外務省によると、TPP参加十二カ国のうち、日本のように協定本体の国会承認が必要な国は七カ国。国内関連法案の成立が必要なのは十一カ国。ブルネイは国会の関与は不要だが、別の国内手続きが必要。参加十二カ国の中で、国内手続きを終えた国はない。
 TPPは「十二カ国の国内総生産(GDP)の85%以上を占める六カ国以上」が国内法上の手続きを終えると発効するため、経済規模一位の米国の国内手続きは不可欠。しかし、米国では民主、共和両党の大統領候補がそろってTPPに反対を表明。国内手続きのめどが立っていない。
TPP承認「日本なぜ急ぐ」 NZの教授が講演で説明

なぜ安倍政権はTPPに前のめりになっているのだろうか。
TPPはアジア版北大西洋条約機構(NATO)との見方がある。

安倍首相は、去年6月の国会で、江崎孝議員(民主党・参議院議員)の質問に対して、「私がアジア版NATOと言ったか、証拠を見せろ!」と激高する醜態を演じました。
よほど、痛いところを突かれたのでしょう。みるみる顔を紅潮させて唇を震わせる様は、視聴者にとって、「見てはいけないものを見てしまった」ような心境だったでしょう。
事実、江崎議員が指摘する3ヶ月前に、「目指せ『アジア版NATO』 首相、石破氏に調整指示 実現へ3つの関門」という見出しの記事が出ているように、自衛隊を「日本版NATO」にすることは、アメリカから安倍内閣に与えられた重要なミッションなのです。
さらに、江崎議員が追及する前の月には、NATOと新連携協定に調印しているのです。
オバマは、「TPP大筋合意」の後、「米主導の貿易ルール作り実現できる」とコメントしましたが、いったい誰がTPPを貿易ルールだと思っているのでしょう。
TPPと安保法制は、「アジア版NATO」を実現するための、なくてはならない両輪なのです。
ウソだったTPPの経済効果。安倍政権の狙いは「環太平洋の軍国化」だ

確かにTPPは、Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement の略である。
Strategicという言葉はあるが、自由貿易を意味するような語はない。
結党以来強行採決したことはないという安倍首相の下で、日本国は軍事化していき、いつか通った道を再び通るのであろうか。

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2016年11月 1日 (火)

陸上自衛隊の新エンブレム/日本の針路(302)

陸上自衛隊が記念品などに使うために作った新しいエンブレムが物議を醸している。
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エンブレムについて

陸上自衛隊は、以下のように説明している。

 我が国の平和と独立を守るという陸上自衛隊の使命を踏まえ、上段に日の丸を、下段に陸上自衛隊を象徴するモチーフとして従来から制服等に装飾している桜星を配置するとともに、古来より武人の象徴とされてきた日本刀を中央に配置して、その「刃」に強靭さ、「鞘」に平和を愛する心を表現しました。
  刃と鞘にかかる帯には、陸上自衛隊の前身である警察予備隊の創隊時期を記して創隊以来の伝統を表現するとともに、奥に刃、手前に鞘、帯を配置することで、陸上自衛隊が「国土防衛の最後の砦」であること、そして、国家危急の時に初めて戦う意思を表現しました。
  陸自(桜星)が前進する姿を国鳥である雉(きじ)の翼(羽の枚数は都道府県数と同じ47)でイメージ化しました。また、「焼け野の雉、夜の鶴」という諺は、「巣を営んでいる野を焼かれた雉子が自分の身を忘れて子を救う」(広辞苑)という意味ですが、それらは、事に臨んでは危険を顧みず我が国の防衛にあたる陸上自衛官に通じるものがあると感じています。
  縁取りは、陸上自衛隊をイメージする緑を基調として、その上に白字で「日本国陸上自衛隊」の文字を漢字と英語で併記しました。
エンブレムについて

何とも違和感のあるデザインだ。
デザイン的な観点から、次のような指摘がある。

1:日本刀(抜刀)が描かれていること
これは、「描かれている」という浅い意味あいではアニメや時代劇でも同じことかなと。引っかかるのはこれが「陸上自衛隊のエンブレム」に描かれているというただ1点。伝統・文化としての日本刀の存在意義ももちろんあるとは思うが、これが鞘から抜かれた状態だからさぁ大変。
これが単純に「恐さ」に直結してるんじゃないかな。
単純に時代劇の話であれば、城下町をあるくお侍さんが鞘に刀を収めた状態で歩いている。これにはおおよそ大衆は驚くことはないけど。
では、刀を抜いた状態で、しかも鞘とクロスさせながら歩いたらどうだろう。これはお侍であっても、町民は「おや!?なにごとだ?」となるはず。
人は無意識に刃物=切れるものをつつみ隠さずに手に持ち歩くことは、少なからず「危険」を感じる生き物だと思うので、この刃物から連想させる危険なイメージが、背景やそれを掲げる組織イメージと相まって、恐さにつながっているんじゃなかろうか。
・・・・・・
2:刀と鞘がクロスする構図
これはよくエンブレムで見られる構図。交差する中心を中央にもってくることで、不安定な図案もほどよく安定する。いろんなところで見られるデザイン上の処理だ。これがクロスする意味、つまり交わる、乗算、関わりあう、コラボレーションなど、意味や意図も比較的容易に想像できる。
今回のエンブレムにおいては、いくら自分の刀と鞘とはいえ、単純に「刀を交えている」=交戦を連想させやすい。軍旗やエンブレムにおいてこの構図で武器をクロスさせる表現は珍しいものではないんだろうけど
陸上自衛隊のエンブレムについてデザイナーが思うこと

当然、かつての日本軍を思い起こさせるとして、「アジア諸国への配慮が足りないのでは」との見方もある。

 これに対し「国内のみならず海外でも大きな反発を引き起こす」と主張し、エンブレム撤回を求める活動を始めた人もいる。埼玉県ときがわ町の市民団体代表世話人、篠原陽子さん(66)は6月、オンライン署名サイト「Change.org」で署名集めを開始。約3週間で2万2千人以上の署名が集まった。「軍刀は帝国日本軍の略奪や脅迫を思い起こさせるシンボル。自衛隊のエンブレムにふさわしいとは思えない」
 民主党政権時に観光庁の事業につくエンブレムの監修に関わった劇作家、平田オリザさんは「アジアの人がどう考えるかといった調査をしたのだろうか」と疑問視する。観光庁のエンブレムについては事前に、日の丸入りのデザインへの反応を探るため、在外公館を通じて中国や韓国の反応を探ったという。
 デザインの観点からの苦言も。2020年東京五輪・パラリンピックのエンブレムの白紙撤回後、仕切り直しのエンブレム委員会で委員を務めた柏木博・武蔵野美術大教授は「刀の細さ、翼の大きさなど、すべての要素がコントロールされていない。すっきりしないデザインで、アナクロな感じがする」。美術評論家で多摩美術大教授の椹木野衣さんも「刀剣を記号化せず、具象的に扱っており、現代のデザインとして洗練されているとは言い難い」と厳しい。
(ニュースQ3)陸自エンブレムに日本刀、なぜ?

今までは、自衛官募集などのため下図のようなシンボルマークが使われていた。
Ws000000

まあ、率直に言えば、訴求性に欠ける。
自衛隊はデザインオリエンテッドではないのだろうか?

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