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2016年10月30日 (日)

電通「鬼十則」の功罪/日本の針路(301)

10月7日、電通の新入社員の女性が「過労自殺」だったとして労災認定された。
長時間の過重労働が原因だということである。
⇒2016年10月18日 (火):電通の光と影/ブランド・企業論(58)
労災認定を受けて、電通は深夜残業を無くすため、22時に全館消灯をするという。

 電通は、24日、昨年12月に過労自殺した新入社員の高橋まつりさん(当時24)が労災と認定されたことを受けた労務管理の改善策の一環として、深夜の残業を防止するため午後10時から全館を消灯した。
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 消灯は翌日午前5時までで、当面続ける。東京本社のほか関西支社(大阪市)などすべての事務所が対象。ほかにも、月ごとの残業時間の上限を11月から5時間引き下げ、私的な情報収集などを理由とした在社を禁止するなどの対策を取り、長時間労働の抑制を図る。
 この日、東京本社では午後10時すぎ、高層階のレストランなどの一部テナントを除き、一斉に電気が消えた。
 電通は「社員の健康維持と法令順守のために、労働環境の改善に全力で取り組む」とのコメントを出した。
電通、10時に消灯 深夜残業を防止

しかし、電通のような業務にとって、全館消灯という対策は馴染まないのではないか。
いわゆる知的生産に関わる業務は、基本的には成果は時間の関数ではない。
場所の制約も小さく、必ずしもオフィスに出勤する必要はない。
電通自体もそのことは良く知っているはずである。
全館消灯というのは、労基署等に対するアピールであろう。

問題の本質は別の所にあると思う。
有名な「鬼十則」は、ビジネスの場における「戦陣訓」である。
言い換えれば、軍隊向けの言葉である。
ビジネスは競争的環境で行われるから、戦争と似た部分があるのは事実である。
経営戦略という概念などはその典型であろう。
⇒2016年9月16日 (金):経営学における戦略概念/知的生産の方法(160)
しかし、本質において、ビジネスと戦争は異なるのだ。

戦争は統制優先になりがちである。
しかし、ポストインダストリアル社会で中心になる真にクリエイティブなビジネスは、個人の自由な創意工夫が優先されなければならない。
チームワークのために特定の価値感を押しつけるのは有害無益である。

電通は企業理念として、「Good Innovation.」を掲げている。
「『その手があったか』と言われるアイデアがある。『そこまでやるか』と言われる技術がある。『そんなことまで』と言われる企業家精神がある。私たちは3つの力でイノベーションをつくる。人へ、社会へ、新たな変化をもたらすイノベーションをつくってゆく」と説いているのだ。
そんな会社に、一律の早帰り運動、一律の残業禁止は馴染まないだろう。

もちろん、「君の残業時間は会社にとって無駄」「目が充血したまま出勤するな」「女子力がない」などというパワーハラスメント、セクシャルハラスメントは論外である。
自由闊達性を削いでしまったら、電通の優位性は消えてなくなるだろう。

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