八方塞がりの原発政策は転換すべき/技術論と文明論(74)
経済産業省は9月27日、有識者会合「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の初会合を開いた。
原発の廃炉に必要な費用を、全ての電力利用者に負担させるための制度設計を話し合うという。
10月から有識者会合「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」も始まる。
これらの議論を踏まえ、東電福島第一原発の廃炉や損害賠償、除染にかかる費用の国民負担も検討する予定だという。
原発は発電コストが安いということだったはずである。
それなのに、いざ事故が起きて、廃炉や損害賠償、除染にかかる費用を、国民負担するというのは道理が合わない。
私は視聴する機会を失したが、NHKが8月26深夜に放送した討論番組「解説スタジアム」では、NHKの解説委員7人が、「どこに向かう 日本の原子力政策」というタイトルで議論し、日本の原発政策の行き詰まりを赤裸々に語っていたという。
ネット上の声を拾ってみよう。
〈解説スタジアム、すごい。是非ゴールデンタイムにやってほしい〉〈国会議員は全員観てほしい〉〈これがNHKかと、わが目、わが耳を疑うこと請け合い〉〈各委員の現政権の原子力政策に対する強烈な批判内容に驚いた〉
どんな内容だったのか?
ある解説委員は、「アメリカは、地震の多い西海岸には設置しないようにしている。日本は地震、津波、火山の原発リスク3原則が揃っている。原発に依存するのは問題だ」と日本の国土は原発に適さないと指摘。
再稼働が進んでいることについても、「規制委員会が慎重に審査しているとしているが、審査の基準が甘い。アメリカの基準には周辺住民の避難計画も入っているのに、日本は自治体に丸投げだ。こんな甘い基準はない。安易な再稼働は認めるべきじゃない」と正面から批判した。
その規制委員会や政府に対しては、こんな言葉が飛び出した。
「規制委員会は(再稼働にお墨付きを与えておきながら)『安全性を保障するものではない』としている。だったら地元住民はどうすればいいのか」「政府は責任を取ると口にしているが、(事故が起きた時)どうやって責任を取るのか。カネを渡せば責任を取ったことになるのか。災害関連死も起きている。責任を取れないのに、責任を取ると強弁することが問題だ」
「もんじゅ」を中核とする核燃料サイクルについても、「破綻している」「やめるべきだ」とバッサリ斬り捨てた。
そして、最後に解説委員長が「福島原発事故では、いまだに9万人近い方が避難生活を強いられている。安全神話は完全に否定され、事故を起こすと、いかに手に負えないかを知ることになった」と締めくくっている。
安倍デタラメ原発政策を一刀両断 NHK番組の波紋広がる
まあ、当たり前のことと言えば当たり前のことではあるが、御用メディア化しつつあるNHKが、政府の原発政策を完全に否定しているのだ。
原発政策の破綻は、端的には次の3つの「行き詰まり」である。
原子力政策のほころび次々 原発廃炉の国民負担議論スタート
もはや原発政策は転換せざるを得ないだろう。
タイミングを失えば、それだけ損失は大きくなると考えるべきだ。
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