政治の世界に住む棲むブラックスワン/アベノポリシーの危うさ(99)
金融・証券市場における不確実性が高くなっている。
7月に史上最低の年0.015%を付けた30年物国債金利が、わずか1カ月の間に0.5%に迫る勢いで急上昇(価格は下落)したのだ。
日本経済新聞9月25日
英国民投票で欧州連合(EU)離脱が決まった6月24日、世界の株式時価総額はドイツのGDPに相当する330兆円分が1日で吹き飛んだ。
株式市場で、本来は滅多に起こらないはずフラッシュ・クラッシュ(瞬間の急落)が頻発している。
金融緩和競争でマネーが世界に溢れている。
しかも市場や国が絡み合う様相はさらに複雑になっており、共振の度合いは格段に大きくなっている。
システムトレーディング、自動取引が急速に普及し、一瞬の誤動作が大きな影響をもたらす。
いわゆるブラックスワン(黒い白鳥)現象である。
⇒2016年9月 1日 (木):ブラックスワンの存在の仕方/知的生産の方法(155)
4日早朝の欧州外国為替市場で、英ポンドは急落して始まった。一時1ポンド=1.2762ドル前後まで下げ、7月につけていた1985年以来およそ31年ぶりの安値を更新した。メイ英首相が前週末に「17年3月末までに欧州連合(EU)離脱を通告する」と発言したことや英与党が移民制限を優先する姿勢を示していることなどから、市場では欧州単一市場への接続が守れるかに対して懸念が広がっている。ポンドには早朝から売りが加速した。
ポンドは対ドルで続落し、英国時間8時時点で1ポンド=1.2765~75ドルと前日の同16時時点と比べ0.0065ドルポンド安・ドル高で始まった。市場では「目立った下値のメドがなく、この先、売りがどこまで進むのか分からない」との声が出ていた。
欧州外為早朝 ポンド急落、対ドルで31年ぶり安値 ユーロは続落
11月には米大統領選が控えている。
クリントン氏もトランプ氏も不人気のようだが、仮に保護主義的な経済政策を訴えるトランプ氏が勝てば、周辺国の経済は打撃を受け、世界経済は混乱するだろう。
ブラックスワンは金融や経済だけでなく、政治の世界にも潜んでいるのだ。
9月30日に公表された総務省の「家計調査」によれば、8月の家計の消費支出が物価変動分を除いた実質で前年比4.6%も減少した。
政府は、「8月の消費は台風など天候不順で、外食やエアコンなどへの支出が減少した」と説明している。
しかし8月の消費減少は特殊要因によるものであろうか?
政府は雇用の改善に伴って賃金が増えてきたと言いますが、その一方で、税や社会保険負担が増えているために、これらを除いた家計が実際に使える「可処分所得」は増えていないことです。
8月の実質実収入は確かに前年を1.5%上回っています。しかし、その一方で税や社会保険料負担など「非消費支出」が5%も増えているため、実際に使える可処分所得は実質で0.6%しか増えていません。
しかも、このうち物価が下落してくれたおかげで0.5%押し上げられているので、名目上はほぼゼロです。今後政府日銀の物価押し上げが成功すると、その分実質購買力はマイナスになります。そればかりか、政府はこっそりとさらなる増税を企てています。それが「配偶者控除」の見直しです。
表向きは一億総活躍を目指すためと言い、働く女性と専業主婦との不公平を是正するとか、女性が十分所得を稼げるようにするとかの理由をつけて、配偶者控除を見直すことが検討されています。
これは一般に103万円の壁とか、130万円の壁とか言われるものです。例えば、配偶者の所得が年間103万円以内なら、本人は非課税でかつ夫は38万円の配偶者控除を受けられ、夫の税金は軽減されますし、また配偶者の年間所得が130万円以内なら、夫の扶養家族として社会保険料を自ら払わなくて済みます。
政府は、「女性の活躍を目指す」という理由のもとに、この配偶者控除を見直し、なくす方向で考えています。これは早い話が「増税」をしたいと言うことにほかなりません。増税というと反発を買うので、女性の活躍とごまかしています。
それでなくとも、国民年金の掛け金や、健康保険料、介護保険料などが知らぬうちに増えていて、国民の実質負担は増え、購買力がそがれています。これをさらに配偶者控除を減らし、あるいは廃止して、国民負担を高めようとしているのです。
配偶者も多少の所得増ではかえって可処分所得は減ってしまいます。子育てや介護の都合でフルに働ける人は限られています。壁にとらわれずに存分に働けと言われても、働けない人が多いのです。
なぜ政府は「家計消費4.6%大幅減」の原因を天気のせいにするのか?
民進党は機会主義者の蓮舫代表、自民党に手を貸した野田幹事長であるのをチャンスと見て、解散総選挙を検討しているという。
しかし「国民の生活が大事だなんて政治は間違っているんです」と堂々と発言する稲田朋美前政調会長(現防衛相)のような政治家が要職に座る政党・政権が続くとは思えない。
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