イメージとマネージ・平尾誠二/追悼(97)
「ミスター・ラグビー」と称された平尾誠二・神戸製鋼ゼネラルマネジャー(GM)が、10月20日死去した。
53歳の若さだった。
東京新聞10月21日
平尾さんは京都市生まれ。伏見工高3年の時に主将として全国高校大会で初優勝。同志社大では1982年度からの大学選手権3連覇に貢献した。同大2年の19歳4カ月の時に、当時としては史上最年少で日本代表入り。86年に神戸製鋼に入社しSOやCTBを務め、1988年度からは大八木淳史や大西一平とともに新日鉄釜石に並ぶ日本選手権7連覇を達成した。
特に3連覇までは主将を務め、監督を置かないチームの中で、練習方法や作戦などを中心となって企画。FWとバックスが区別なくボールをつないでいくプレースタイルなど独自の「神鋼ラグビー」を作り上げた。
W杯には87年の第1回大会から3大会連続で出場し、第2回大会では主将を務め、日本のW杯初勝利に貢献した。97年2月に史上最年少の34歳で日本代表監督に就任。98年1月に現役引退した。2007年3月から14年3月までは神戸製鋼の総監督も務めた。
平尾誠二さん死去…53歳 「ミスター・ラグビー」
私には、松岡正剛さんとの対談『イメージとマネージ―リーダーシップとゲームメイクの戦略的指針』集英社(1996年12月)が印象に残る。
平尾 ………やはりそれぞれのプレイヤーにはイメージがなくてはならないわけです。しかもそのイメージはかなり豊富である必要がある。ひとつだけのイメージは実はマネージと同じで、それはスキルなんです。そうではなく、たくさんのイメージを思い浮かべて、自分のアタマの中でラグビーを拡張していかなければダメなんです。イメージの多様性が拡張を生む。
松岡 うん、そうですね。しかも、それは最近のスポーツでよく言われるイメージ・トレーニングとは違うんだよね。イメージ・トレーニングというのは、どちらかというと、ひとつのサクセス・イメージを何度もアタマの中に思い浮かべて、ワンパターンの自信をつけることでしょう。なんとか自分に言い聞かせるというか、暗示をかける。しかし、それじゃない。むしろいくつものシナリオ選択能力を持つということですね。
柔軟な思考が必要なのは、スポーツもビジネスも変わりはない。
1995年のワールド・カップの予選の最終戦で、日本はオールブラックスを相手にしたが、17対145という大会ワースト記録で屈辱的な大敗を喫した。
スキル、パワー、スピードというラグビーの3大要素のすべてにおいて日本は大きく劣っている上に、状況の変化に対応する判断力もないという状態であった。
その後日本代表チームの監督に就任した平尾さんは、日本ラグビーの再興を期して「ジャパン・プロジェクト」を立ち上げた。
そして日本チームのSWOT分析を行った。
⇒2016年5月16日 (月):分ける思考(5)マトリクス②/知的生産の方法(149)
平尾さんは日本チームが強くなるために、「自分で自分を成長させていけるような、自発性と自主性をもったプレーヤーを育てる」ことを1つの目的として設定した。
「知のスピード」をもったプレーヤーであれば、どのように変化する状況のもとにおいても壁を破れるであろう、と考えたのである。
日本のラグビーさらにはスポーツ界のために、もっともっと力を発揮してもらいたかったと思うのは私だけではないだろう。
合掌。
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