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2016年10月13日 (木)

小林秀雄賞とクリエイティブな着想/知的生産の方法(161)

新潮社による「小林秀雄賞」は、今年で15回目を迎えた。
Wikipediaによれば、「日本を代表する文芸評論家・批評家の小林秀雄の生誕100年を記念として新たに創設された学術賞である。日本語表現豊かな著書(評論・エッセイ)に毎年贈られる。ただし、小説・詩・フィクションは対象外である」。
今年の受賞作は、森田真生『数学する身体』新潮社(2015年10月)である。
⇒2016年9月10日 (土):『数学する身体』の小林秀雄賞受賞/知的生産の方法(156)

過去の受賞作は以下のようである。
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小林秀雄賞 過去の受賞作品

確かに「日本語表現豊かな著書(評論・エッセイ)」がラインナップされている。
しかもユニークな視点から書かれた作品が多い。
読解力の低下が問題になっている折から、高校生辺りの副読本として好適な作品群と言えよう。

18の受賞作の出版社別件数は以下のようである。
新潮社:6
筑摩書房:4
平凡社、講談社、文藝春秋、四月社、集英社、朝日出版社、祥伝社、岩波書店:各1
新潮社が多いのは当然であろうが、筑摩書房の4件が目立つ。

私は第1回の受賞作が斎藤美奈子文章読本さん江に与えられると聞いた時、我が意を得たと思った記憶がある。
「文章読本」と名のつく著書は少なくない。
思いつくだけでも、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、丸谷才一、井上ひさしなどの日本を代表する文豪、あるいは文芸界の大御所と言われる人たちが、競って書いている。
斎藤さんの『文章読本さん江』は、谷崎潤一郎以来、多くの名文家がモノにしてきた『文章読本』を見事に腑分けしてみせている。

文豪、あるいは文芸界の大御所と言われる人たちが書いた『文章読本』が、ビジネス文書作成スキルという面では役に立たないことは実感していた。
し、まあ文章のジャンルが違うのだから、当然だということでもあろう。
「伝達の文章」と「表現の文章」の差異であるが、そこに着目して明快に説明して、しかも読み物になっているのは、「芸」と言って良いだろう。
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文章読本さん江

斎藤さんは、辛口のコラムニストとして活躍しているが、特に着眼の視点がユニークである。
創造力の基礎である「異質馴化・馴質異化」の達人だと思う。
⇒2011年1月29日 (土):異質馴化-斎藤美奈子さん江/知的生産の方法(8)
⇒2011年1月30日 (日):馴質異化と異質馴化/「同じ」と「違う」(27)

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