大隅良典氏にノーベル医学生理学賞/知的生産の方法(161)
今年のノーベル医学生理学賞を、東京工業大栄誉教授の大隅良典氏が受賞することが決まった。
大隅氏は生物が細胞内でたんぱく質を分解して再利用する「オートファジー(自食作用)」と呼ばれる現象を分子レベルで解明し、この働きに不可欠な遺伝子を酵母で特定して、生命活動を支える最も基本的な仕組みを明らかにした。
オートファジーは、ヒトのがんや老化の抑制にも関係している。
大隅氏は、疾患の原因解明や治療などの医学的な研究につなげた功績が高く評価された。
東京大助教授だった1988年、微生物の一種・酵母を栄養不足で飢餓状態にすると、液胞と呼ばれる小器官に小さな粒が次々とたまっていく様子を顕微鏡で見つけた。
酵母が自らの細胞内にあるたんぱく質などを液胞に運び込み、さまざまな酵素を使って分解するオートファジーの過程だった。
さらに1993年、飢餓状態にしてもオートファジーを起こさない酵母を14種類見つけ、正常な酵母と比較することで、オートファジーを起こす遺伝子を突き止めた。
大隅良典氏 オートファジー研究をリード
この遺伝子は酵母以外の動植物の細胞でも相次いで見つかり、この分野の研究は大きく進展した。
オートファジーは酵母のような単細胞生物からヒトなどの高等生物に至るまで共通して持っており、生物が生き延びるための基本戦略となっている。
大隅氏の発見を機に、年間数十本だった関連論文は今や同4000本にまで急増。近年最も発展している研究領域の一つとなっている。
大隅良典氏 オートファジー研究をリード
日本のノーベル医学生理学賞受賞は、昨年の大村智・北里大特別栄誉教授に続き連年である。
ノーベル賞の候補者とされる「トムソン・ロイター引用栄誉賞」は、崇城大学DDS研究所特任教授・熊本大学名誉教授前田浩氏と国立がん研究センター先端医療開発センター新薬開発分野分野長松村保広氏、京都大学客員教授本庶佑氏が受賞対象となった。
⇒2016年9月24日 (土):新薬探索とAIの可能性/技術論と文明論(71)
大隅氏も類似分野であり、分子生物学の医学生理学への応用分野における日本の研究者のレベルが際立っている。
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