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2016年10月20日 (木)

自殺した人は忌むべきか?/日本の針路(299)

痛ましい自殺のニュースが報じられている。
写真コンテストを実施した青森県黒石市の「黒石よされ実行委員会」が、いじめ被害を訴えて8月に自殺した青森市の中2女子生徒が被写体だったため、いったんは最高賞を内定していた作品への授賞を事実上撤回したのだ。
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東京新聞10月19日

授賞は遺族も了承していたが、内定を取り消した市側の対応に遺族が不信を抱き、撮影者の了解を得て、受賞予定だった写真と氏名(葛西りま)を公表した。
すると黒石市の高樋憲市長が記者会見し「慎重さを欠く部分があり、撮影者や被写体の家族に誤解を与え、混乱を生じさせた。深くおわび申し上げる」と謝罪し、実行委は遺族と撮影者の同意が得られれば、市長賞を授与したいとした。

 実行委によると、入賞作品を内定した11日、市長賞の被写体が葛西さんと分かり、写真の公表について遺族の許可を得た。報告を受けた市長が13日、担当者に「亡くなっているのであれば再考すべきだ」と伝達。協議して内定取り消しを決めた。担当者は撮影者と遺族に経緯を説明し、コンテストの結果は17日、「市長賞なし」と発表した。
 高樋市長は「生徒が亡くなった経緯は調査中で、名前や顔写真が公表されていなかった。遺族の許可は得たが、こちらの判断で取り消した。苦渋の決断だった」と語った。
 葛西さんは8月25日、青森県藤崎町のJR奥羽線北常盤駅で列車にはねられ死亡した。スマートフォンのメモに「二度といじめたりしないでください」などと書いた遺書を残していた。無料通信アプリLINE(ライン)に悪口を書かれたり暴言を吐かれたりしていると、昨年6月から何度か学校に相談していた。
<自殺中2写真>入賞取り消し 再び授与へ

先日は、電通新入社員の過労自殺が話題になったばかりだ。
⇒2016年10月18日 (火):電通の光と影/ブランド・企業論(58)
また、関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の運転延長を巡り、原子力規制委員会の審査対応をしていた同社課長職の男性が4月に自殺していた。
1月の残業が200時間に達することもあり、敦賀労働基準監督署労基署は過労自殺と判断し、労災認定していた。

世の中には、自決は敗北であるというように、忌むべきこととする見方がある。
黒石市の元黒石観光協会会長や高樋市長もそう考えての判断だろう。
しかし、遺族にとっては、死者の名誉が大事である。

過労自殺とは、過労死に至るまでに精神的・肉体的に追い込まれて精神的破滅を迎え遂には自殺するに至ることをいう。
過労自殺か否かは法的概念であって、例えば法廷で判定されるようなものであるが、「自分で勝手に死んだ」(=私的な自殺)のではなく、仕事という「公」的な理由で死を選んだ(=過労死の一種)のだ、という判定が重要になる。
過労死ならば、イジメと同様に、死の原因は他人にあり、極論すれば一種の他殺である。

江藤淳が自死した時に山田潤治という弟子筋の人が論じていたことが思い出される。
過労自殺は過労死の一変種である。
過労死は肉体的破滅であるが、過労自殺は精神的破滅である。

そう整理した上で、山田氏は、「過労自殺=過労死」とすることが本当の意味での死者の名誉につながるのか、と問いかける。
「過労自殺=過労死」とは、「自殺」を「自殺」とみなさないということである。
自らの意思で死んだその意思をどう考えるのか。
(私的な)自殺は果たして忌むべきことなのか。

過労自殺という判断を、公的に(例えば裁判所で)認定することによって、「公的な自殺=善」、「私的な自殺=悪」という枠組みはより強化されるであろう。
その結果として、私的な自殺に対する偏見はますます強くなる可能性もある。
死者の名誉毀損という社会的偏見を晴らすために起こす裁判が、社会的偏見を助長するという悪循環を招くのではないか。

イジメ、パワハラ、過労等によって自殺に追い込まれたという場合、もちろん否定されるべきは、イジメ、パワハラ、過労等の原因であって、自殺者が咎められる筋合いではない。
過労自殺について、武蔵野大学の長谷川秀夫教授が次のような投稿をし、炎上した。

月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない。会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない。自分で起業した人は、それこそ寝袋を会社に持ち込んで、仕事に打ち込んだ時期があるはず。更にプロ意識があれば、上司を説得してでも良い成果を出せるように人的資源を獲得すべく最大の努力をすべき。それでも駄目なら、その会社が組織として機能していないので、転職を考えるべき。また、転職できるプロであるべき長期的に自分への投資を続けるべき。
長谷川秀夫教授「残業100時間超で自殺は情けない」 投稿が炎上、のち謝罪

長谷川氏は投稿を削除した上で、「私のコメントで皆様に不快な思いをさせてしまい申しわけございません」と謝罪のコメントを投稿したが、往々にして長谷川氏のようなことを言いがちである。
特に、過酷な労働や競争を体験してきた人に多い。
典型は軍隊である。

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コメント

クルミが脳梗塞の改善やリハビリに効果がありますよ!
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クルミで早く良くなって下さい!

投稿: moon | 2016年10月21日 (金) 16時25分

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