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2016年9月11日 (日)

岡潔の不定域イデアル理論/知的生産の方法(157)

森田真生『数学する身体』新潮社(2015年10月)は、岡潔の考え方にアプローチすることにより、数学という抽象的な営みと身体との関係を考察している。
⇒2016年9月10日 (土):『数学する身体』の小林秀雄賞受賞/知的生産の方法(156)

岡潔が大学を辞めて数学の研究に沈潜したのが、紀見峠にある生地であった。
岡の数学的業績を的確に紹介する能力はないが、生地の橋本市に次のような顕彰碑が建立されている。

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 岡の研究した分野「多変数複素函数論」についての問題は20世紀の初めに注目され始めていましたが、あまりに難しいため世界の数学者は手をつけられずにいました。岡のためにとっておかれたようなこの問題の解として、岡は10編の論文を書き上げます。生涯で10編の論文というと非常に少ない数ですが、補足的な1編を除き、9編すべてが珠玉の傑作と言われています。あまりに素晴らしい論文のため、一人の人間が書き上げたとは信じられない程です。日本の数学者が神様のように尊敬するドイツの数学者ジーゲルは『オカとはニコラ・ブルバキのように数学者の団体の名前だと思っていた』と語ったそうです。ジーゲル本人やブルバキの主要メンバーのヴェイユ、カルタンらは、はるばる奈良まで岡潔を訪ねました。
文化勲章受章者 世界的数学者「岡 潔」数学に対する熱意と偉業、情緒という日本人の心の大切さを未来に引き継ごう

上記のように、岡が生涯に発表したのは10編の論文に過ぎなかった。
わずか10編の論文によって、現代数学に聳え立つ業績を成したのである。
いかに精魂を傾けた論文であるかが感得されよう。
岡の業績を端的に表せば、次のようであると言われている。
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近現代日本人数学者列伝~イントロダクション~

多変数複素函数論はドメイン、上空移行の原理は方法論であって、「不定域イデアルの理論」が岡の業績である。
不定域イデアルは、現代数学のキー概念である「層」の理論の先駆と考えられる。
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不定域イデアルの理論と多変数代数関数論への道

不定域イデアルについて、世界大百科事典では次のように説明されている。

…もともとは,1940年代後半に岡潔が多変数関数論の研究の中で,現在の前層にあたるものを利用した。岡はそれを不定域イデアルと呼んだが,他方同じころ,これとは独立にルレーJ.Leray(1906‐ )が同様なものを考えた。その直後,H.カルタンらが層の一般論を展開し,多変数関数論に有効に利用した。…

しかし岡自身は、カルタンらの整理に不満だったという。
カルタンは、数学者の集団であるニコラ・ブルバキの一員であり、その構造主義が岡の数学観とは相容れなかったのであろう。

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