国石・ヒスイの古代における流通/やまとの謎(115)
水晶か、翡翠か、それとも…
諸候補があった「日本の石(国石)」について、9月24日、日本鉱物科学会が翡翠を選定した。
翡翠は約5億年前に海洋プレートが沈み込む地中深くで生まれた宝石と言われる。
Wikipediaでは以下のように解説している。
日本では古代に糸魚川で産出する硬玉の翡翠が勾玉などの装飾品の材料とされ珍重されていたと推定されるが、奈良時代以降その存在は顧みられなくなっていた。日本での翡翠の産出が再発見されたのは1938年(昭和13年)のことである。2008年(平成20年)北京オリンピックのメダルにも使われている。現在では翡翠は乳鉢の材料としても馴染み深い。
国石は以前から俗説があったため、日本鉱物科学会は国鳥(キジ)や国蝶(オオムラサキ)のように学術団体として正式に選定することを決め、一般からの意見公募を行うなど選定作業を進めてきた。
金沢市で開かれた学会総会では、最終5候補の推薦者が提案理由の発表を行った後、会員による投票でヒスイ71票、水晶52票となり、国石が決定した。ヒスイの応援演説に立ったフォッサマグナミュージアム(糸魚川市)の宮島宏館長は、「プレートが沈み込む場所でしか産出されないヒスイは日本ならではの美しい宝石。縄文時代から古代人が加工して利用した世界最古の歴史もある」などと訴え、多くの会員に認められた。
「国石」にヒスイ選定…産地・糸魚川は喜びの声
現在、古代史ファンならずとも、古代の遺跡で見つかるヒスイの産地が糸魚川市の姫川流域であることは知っているだろう。
しかし、明治になって遺跡からヒスイが発掘され出した当時は、日本にはヒスイの産地は無いというのが学会の定説だったという。
当時日本に一番近いヒスイの産地は、ミャンマー北部・雲南方面であり、ここらが日本のヒスイの産地であろうというのが一般的な見方だった。
糸魚川出身で、早稲田大学に学び「都の西北」の作詞者でもある相馬御風は、記紀に記される「玉」はヒスイではないかと考えた。
イハレビコの祖先、天孫の日向三代が、アマテラスに豊葦原の瑞穂の国を治めるように仰せになった前の葦原の瑞穂の国を治めていたのは、出雲の国のオホクニヌシ(ヤチホコ)であったが、高志の国のヌナカハヒメを妻にしている。このヒメは、糸魚川の姫川のヒメであり、ヒスイの産地のヒメである。また、オホクニヌシは天孫系からも妻にしている。それは、アマテラスとスサノヲがウケヒして、アマテラスがスサノヲの十拳の剣を噛み砕いて、噴出した三女神のひとり、タキリビメである。縄文時代の出雲の国の権力者が、糸魚川のヒスイの鉱山を手に入れるため、嫁にした事になる。
翡翠勾玉から見た古代史
御風は、ヌノカワと読める勾玉の産地は糸魚川を流れる「姫川」の事ではないかと考え、これを地元の人々に説いて昭和14年、探索していた地元住民により初めて姫川支流の小滝川上流でヒスイが発見された。
糸魚川でヒスイが産出するという事が考古学会で認められて13年後(その間第二次世界大戦と戦後の混乱期をはさむ)の昭和29年、初めて糸魚川市の長者ケ原遺跡に本格的な学術調査が入った。
その結果、完成品のペンダント2個を含むヒスイの原石が250点も出土した。
さらにその多くが加工途中の半製品或いは破損品である事が判明し、長者ケ原はヒスイを中心とする石材の一大加工センターであった事が判明した。
三内丸山遺跡でもヒスイは出土している。
⇒2016年9月 9日 (金):三内丸山遺跡と縄文人のルーツ/技術論と文明論(66)
縄文時代の交易圏の広さを再認識させられる。
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