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2016年9月 9日 (金)

三内丸山遺跡と縄文人のルーツ/技術論と文明論(66)

この夏、三内丸山遺跡を見学する機会を得た。
5500~4000年前に存在したと推計されている縄文遺跡で、「北のまほろば」などと言われる。
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三内丸山遺跡:Wikipedia

有名な6本柱は、柱穴の間隔、幅、深さがそれぞれ4.2メートル、2メートル、2メートルで全て統一されている。
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世界遺産劇場~縄文あおもり 三内丸山遺跡~

当時すでに測量の技術が存在していたことを示すものである。
他の遺跡でも確認されている35cmの倍数の4.2mが使われていることから、「縄文尺」ともいうべき長さの単位が、広範囲にわたって共通規格として共有されていた可能性が考えられる。
材質は栗であるが、DNA分析などから、栽培されていたことが分かっている。
まさに世界の最先端であった。

これほどの集落がなぜ終焉を迎えたのかは謎とされている。
気候の寒冷化などが考えられるが、果たしてどうか。

縄文人のルーツに関して、興味あるニュースが、総合研究大学院大学や国立科学博物館などのチームによって、人類学の専門誌ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクスに9月1日発表された。

 福島県北部の三貫地貝塚で出土した約3千年前の縄文人2人の歯から、細胞核のゲノム(全遺伝情報)解読を試みた。約30億個ある塩基のうち、約1億1500万個の解読に成功した。縄文人の核DNAの解読は初めて。
 世界各地の現代人のDNAと比較したところ、中国南部の先住民や中国・北京の中国人、ベトナム人などは互いに近い関係にあるのに対し、縄文人はこれらの集団から大きく離れていた。
 現生人類ホモ・サピエンスは、4万~5万年前にアジア地域に到来し、その後、各系統に分かれたとされる。今回のDNA解読で、少なくとも1万5千年前よりも古い時期に縄文人につながる系統ができ、東アジアや東南アジアの集団は、別の系統の中から生まれたと考えられるという。
 日本人では、遺伝的にはアイヌ人が最も縄文人と近い関係にあり、沖縄の琉球人、東京周辺の人と続いた。
 頭骨と歯の特徴から、現在の日本人は、縄文人と、弥生時代以降に大陸から渡ってきた渡来人が混血して形成されたと、されていた。チームの国立科学博物館の神沢秀明研究員は「日本人が、縄文人と弥生系渡来人の混血という説が、DNA解読でも裏付けられた」としている。
縄文人の核DNA初解読 東アジア人と大きく特徴異なる

日本人の先祖は、どうして日本列島にやってきたのだろうか。
以下に、縄文人のルーツ(本土・沖縄)を要約する。

人類のルーツは、アフリカにあるが、アフリカから出た人類は、南方ルートと北方ルートを経て、東アジアに達した。
北方ルートを通った古モンゴロイドは、かなり複雑である。長い過程で、何度も分岐した。
1.北方ルートを通った古モンゴロイドの一部は、かなり古い時期にベーリング海峡を渡って、北米・南米に達した。これらが、北米・南米の先住民となった。
2.北方ルートを通った古モンゴロイドの一部は、樺太経由で、アイヌとなった。さらに、本土にも達したようだ。これは縄文人となった。
3.北方ルートを通った古モンゴロイドの一部は、朝鮮半島経由で、日本本土にも達したようだ。これも縄文人となった。
4.北方ルートを通った古モンゴロイドの一部は、かなり古い時期に、台湾経由で、沖縄に達した。これが沖縄の縄文人となった。当然ながら、遺伝子的には、アイヌと似ている。
5.北方ルートを通った古モンゴロイドの一部は、かなり古い時期に新モゴロイドになり、中国南部に達してから、朝鮮半島経由と琉球半島経由の双方を経て、日本の本土に達した。
特に、琉球半島経由の方は、沖縄に留まることはなく、沖縄の先の本土にまで達した。
こうして、新モンゴロイドの遺伝子が本土に大量に流入した。

さらに、新モンゴロイドは原住民である縄文人を駆逐していって、人口比では多数派を形成するようになった。
現代の本土人では、新モンゴロイドの遺伝子が 88%で、古モンゴロイドの遺伝子が 12%という結果になった。
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