高レベル放射性廃棄物をどうするのか?/技術論と文明論(65)
原子力発電所は、事故のない正常運転でも「核のごみ(高レベル放射性廃棄物)」を生成する。
放射性廃棄物は次の3つのレベルに区分される。
L1:制御棒など
L2:原子炉圧力容器など
L3:建屋内部のコンクリートなど
L1について、原子力規制委は、電力会社に300~400年間保管させ、その後10万年間政府が管理する方針だという。
民間事業者が300~400年間責任をもって管理することが可能であろうか?
300年前の1716年は、紀州藩主であった徳川吉宗が、第8代将軍となり、享保の改革を始めた年だ。
かつて「企業の寿命は30年」と言われたことがあった。
30年で終わると言うことではなく、盛期はせいぜい30年程度、ということであるが、私企業にとっては無限とも言うべき時間である。
さらに10万年という時間は、人類史という観点で考える尺度である。
生き続けた? ネアンデルタールのDNA―――人類の進化
新人(現生人類)以前である。
縄文時代は新石器時代であり、三内丸山遺跡でさえ、‘わずか’5500~4000年前だと言われる。
日本列島にも旧石器時代はあったが、遺跡捏造事件で大問題になって、実態はまだ良く分かっていない。
豊富な電力は現代文明の前提であるが、負の遺産を後世に残さないように適切・的確な処分ができるだろうか?
地層処分について、経済産業省は年内に科学的に有望だとする場所を示す方針だ。
高レベル放射性廃棄物とは、使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出す際に生じる高レベル放射性廃液をガラスで混ぜて固めたものだ。これを金属筒と粘土で覆って、300メートル以上の深さの地下に10万年間は安定的に埋めて地層処分する。日本では2000年に法律ができ、国内の各自治体を対象に候補地の公募を始めた。
しかし、この間、正式に応募があったのは高知県の東洋町だけ。その動きも、その後、町を二分する問題になり、応募が取り下げられてしまった。
放射性廃棄物が何らかの理由で、周辺の環境を汚染する懸念はなかなか払拭(ふっしょく)することはできなかった。水面下で検討する自治体の動きもあったが、東日本大震災もあり、そうした動きは止まった。欧州では、適地を政府が示す試みもあり、政府も、国は積極的に科学的有望地を提示して、理解活動を進めていくことを柱にする方針に転換した。
経産省作業部会の報告書案では、各地に分布する火山や活断層を避けることや、地下の酸とアルカリの度合いを表すpH(ぺーハー)や温度の上がり具合など、考慮すべき条件を挙げた。
処分場の操業が始まれば、青森県六ケ所村の再処理工場から年間に約1千本もの高レベル放射性廃棄物の輸送が必要になる。このため海上輸送をメインに地上輸送も港湾からの距離が20キロ程度の範囲内が望ましいことなどが挙げられた。
10万年埋める核のごみ、候補地どこへ
地震と大規模噴火は日本列島の宿命である。
10万年間の日本列島の地学には、まだまだ不明なことがある。
日本学術会議は、経済産業省が12月にも最終処分地に適した地域を色分けして示す日本地図を公表するとしたことについて、「拙速で、国民の理解を得るのは難しいだろう」と批判している。
核のごみを地中に10万年「理解得られぬ」 今田名誉教授、拙速な計画を批判
Wikipediaによれば、日本には既に19,000トンの使用済み核燃料がストックされている。
電力を使って利便性を享受し、「後は野となれ山となれ」では済まされない。
これ以上「核のごみ」を増やすべきではないことは明らかだろう。
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コメント
CO2による温暖化で破壊されたオゾン層、溶け出した南極の氷…これらは10万年経っても元に戻らない。そこらへんのことには一切触れずに核燃料のデメリットのみを論じているだけでは、「文明論」と大きく出た割には視野狭窄に過ぎるのでは?
投稿: | 2016年9月 8日 (木) 20時15分