日本社会の価値意識の転換/技術論と文明論(73)
東日本大震災によって、私たちの生活のあり方を根本的に問い直さざるを得なくなった。
特に、福島原発事故によって、エネルギー政策が厳しく問い直されるていると言えよう。
2010年6月、民主党政権下で閣議決定したエネルギー基本計画は、CO2を排出しない原子力に比重を置かざるを得ないという判断のもと、2030年までに原子力発電所を14基新増設し、電力の53%を賄うという目標を設定した。
しかしフクシマの事故以前に、この計画のロジックはすでに破綻していたのである。
地球温暖化防止というエコロジーのために、原子力利用を推進するという論理は成り立たない。
エネルギー制約、環境制約の中で、人類はどのような針路を目指すべきか?
LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability :健康と持続可能性の、またこれを重視するライフスタイル)が言われるが、政策としてどう位置づけるか?
ブータンでは「国民総幸福度」という概念が使われているという。
「成長の限界」が真剣に問われた1960年代末から70年代初頭にかけての時代と似ているような気がする。
⇒2011年12月24日 (土):『成長の限界』とライフスタイル・モデル/花づな列島復興のためのメモ(15)
『新しい幸福論』岩波新書(2016年5月)を上梓した橘木俊詔京都女子大客員教授が、東京新聞のインタビューに応えている(9月24日掲載)。
内閣府の世論調査では、「物質的な豊かさよりも、心の豊かさ」を重視する人が増えている。
国民が人口減を選択したということは、経済減速の道を選んだのと同義である。
財界からも、「2%成長(実質)などもう無理」という声が出ている。
人口減で、労働力も家計の需要も減っていく。
経済が弱くなると、アジアの中で発言力が低下するという声があるが、脱覇権主義で行くべきだ。
ヨーロッパでは世界的な覇権などと無関係なデンマーク、スウェーデン、スイス、オーストリアは経済的に豊かで、幸福度が高い生活を送っている。
日本は成熟した経済だから、脱経済成長に舵を切るべきだ。
日本の格差や貧困は深刻である。
格差を是正した方が経済を強くできる。
米国流の公助に頼らない自立の道を選ぶか、ヨーロッパ流の福祉国家の道を選ぶのか。
「トリクルダウン」という言葉が、2014年の新語・流行語大賞にノミネートされた。
甘利経済再生担当相(当時)などアベノミクスを喧伝する人たちが盛んに使ったためである。
しかしそれが幻でしかないことは既にはっきりしたであろう。
⇒2016年6月11日 (土):トリクルダウンの幻/アベノポリシーの危うさ(79)
エネルギー開発に限っても、再生可能エネルギー技術、省エネルギー技術、廃炉技術など取り組むべきテーマは多い。
大艦巨砲主義に失敗を繰り返すべきではない。
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