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2016年9月23日 (金)

破綻しているのは「もんじゅ」and/or「核燃料サイクル」/技術論と文明論(70)

政府は21日、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について関係閣僚会議を開き、「廃炉を含め抜本的な見直しをする」とした。
ようやく廃炉に向かうことになるのであろうか。
原子力規制委員会が運営者を代えるよう、文部科学省に勧告してから、11カ月余りである。
「見切り千両」のコトワザの説くように、意思決定が遅れる分だけ、損失は大きくなる。
⇒2015年11月 6日 (金):もんじゅは廃炉にして原発政策を見直すべき/原発事故の真相(135)

一方で核燃料サイクルは維持し、新設の「高速炉開発会議」で、年末までに今後の方針を出すという。
核燃料サイクルは、原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、再利用する。
1609222
東京新聞9月22日

プルトニウムを燃やすもんじゅはサイクルの柱だ。
Ws000000
池上彰『行き詰まった核燃料サイクル』週刊文春9月15日号

もんじゅは、危険なナトリウムを冷却材に用いる必要があり、構造も複雑で、1994年に本格稼働したものの1995年にはナトリウム漏れ事故を起こして停止した。
その後もトラブルが相次ぎ、稼働日数は20年以上の期間の累積で250日にとどまっている。
停止状態でも5000万円/日の維持費が必要だとされる。

「もんじゅ」を中心とした核燃料サイクルには、少なくとも12兆円以上が費やされてきた。
施設の維持・運営費で年間約1600億円が必要である。
廃炉も、もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構の試算によると、30年の期間と3000億円の費用がかかる。
「もんじゅ」の実態を知ったら、文殊菩薩も怒るだろう。
一方、地元福井県の西川知事はこの方針に憤っている。

 原子力関係閣僚会議の終了後、松野文部科学大臣は福井県庁を訪れ、福井県の西川知事らに「もんじゅ」について廃炉を含め抜本的に見直す方針を伝えました。
 「今回の決定を地元として見ていると、目先にとらわれた場当たり的な方針と思われてならない」(福井県 西川知事)
 さらに、西川知事は「無責任極まりない対応であり、県民には理解できない」と強く抗議し、地元への説明責任を果たすよう求めました。
文科相が福井県知事に説明、西川知事「無責任極まりない対応」

ボタンを掛け違うと損失は計り知れない。
破綻しているのは「もんじゅ」なのか「核燃料サイクルなのか」。
自民党の河野太郎行政改革推進本部長(前行政改革担当相)は22日、東京新聞のインタビューで、「『もんじゅ』だけでなく核燃料サイクル全体をやめるべきだ」と述べた。

 河野氏は、使用済み核燃料を再処理し通常の原発で再利用する「プルサーマル」についても「コストが高いことは確実だ」と指摘した。政府は「プルサーマル」を、もんじゅとともに核燃サイクルの柱の一つと位置付けている。
 その上で、政府が二十一日の関係閣僚会議でもんじゅ以外の核燃サイクル維持の方針を打ち出したことを批判。「党行革本部で核燃サイクルなど原発予算を洗い出し、国民に合理的に説明できないものは認めない」と強調した。
自民・河野行革推進本部長「核燃料サイクル中止を」 不合理予算認めず

廃炉のコストを国民全体で負担することが検討されているという。
原発は低コストだというのならば、原発事業者が廃炉コストまで賄うのが当然だろう。

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