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2016年8月29日 (月)

『東京ブラックアウト』と国会質疑/原発事故の真相(147)

若杉冽『東京ブラックアウト』講談社(2014年12月)は、フィクションではあるが、原発再稼働をめぐるさまざまな動きを活写している。
著者は霞が関の現職官僚ということであり、官・政・財の関係はリアリティがある。
ただ、原発が事故を起こす状況に無理があるとの評もあった。

事故は、「第7章 メルトダウン再び」の(22)の部分で記述されている。

新崎原発(柏崎原発)で発電された電気を送る山中の送電線が、工作員によって倒される。
送電線に支障が起きると、発電した電気を送ることができず、エネルギーが蓄積されて、原発を緊急停止しても、外部電源か非常用電源で冷却し続けない限り、崩壊熱で炉心がメルトダウンする。

この設定がどの程度のリアリティを持つかは分からない。
余りリアルに描写すれば、テロの手引きになる可能性もあるわけで、現に福島原発でメルトダウンが起きているのであるから、メルトダウンの設定以外のリアリティは問題にならないと考えていた。

しかし、過去に国会で次のような質疑が行われていたのである。
2006年12月22日、第1次安倍政権当時の第165回国会における吉井英勝衆議院議員の質問と安倍晋三首相の答弁である。

Q質問1-1(質問者:吉井英勝衆議院議員/日本共産党)
 原発からの高圧送電鉄塔が倒壊すると、原発の負荷電力ゼロになって原子炉停止(スクラムがかかる)だけでなく、停止した原発の機器冷却系を作動させるための外部電源が得られなくなるのではないか。
 そういう場合でも、外部電源が得られるようにする複数のルートが用意されている原発はあるのか。あれば実例を示されたい。
 また、実際に日本で、高圧送電鉄塔が倒壊した事故が原発で発生した例があると思うが、その実例と原因を明らかにされたい。
A回答(回答者:内閣総理大臣/安倍晋三)
 我が国の実用発電用原子炉に係る原子炉施設(以下「原子炉施設」という。)の外部電源系は、二回線以上の送電線により電力系統に接続された設計となっている。また、重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器がその機能を達成するために電源を必要とする場合においては、外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計となっているため、外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である。
 また、送電鉄塔が一基倒壊した場合においても外部電源から電力の供給を受けられる原子炉施設の例としては、北海道電力株式会社泊発電所一号炉等が挙げられる。
 お尋ねの「高圧送電鉄塔が倒壊した事故が原発で発生した例」の意味するところが必ずしも明らかではないが、原子炉施設に接続している送電鉄塔が倒壊した事故としては、平成十七年四月一日に石川県羽咋市において、北陸電力株式会社志賀原子力発電所等に接続している能登幹線の送電鉄塔の一基が、地滑りにより倒壊した例がある。
・・・・・・
Q質問1-7(質問者:吉井英勝衆議院議員/日本共産党)
停止した後の原発では崩壊熱を除去出来なかったら、核燃料棒は焼損(バーン・アウト)するのではないのか。その場合の原発事故がどのような規模の事故になるのかについて、どういう評価を行っているか。
A回答(回答者:内閣総理大臣/安倍晋三)
経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。
吉井英勝VS安倍晋三→あまりに酷すぎる原発事故前の国会答弁2006年

実際に原発事故が起きてしまった後で読むと、最後の「経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである」は、ノーテンキな無責任というしかない。
安倍首相が事故に責任なしとは言えまい。

鹿児島県の三反園訓知事が、九州電力の瓜生道明社長に、川内原発を直ちに停止するよう要請した。
「県民の不安に応えるためにも、いったん止めて再点検してほしい」と述べ、熊本地震の影響や原発周辺の活断層について調査、点検するよう求めた。

しかし、知事には原発の稼働に関する権限はない。
一方、原子力規制委の審査は、原発が事故を起こした際の住民の避難計画は対象にしていず、避難は事実上、自治体任せだ。
そんな状況で原発を稼働させることはクレイジーである。
猛暑だったが、今夏の電力は不足していないのである。

政府や経済産業省など関係省庁による「電力需給に関する検討会合」の結果、9電力会社すべてで、電力会社管轄間の融通無しでも、電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3.0%以上を確保できる見通しとなった。
2016gn2016051315
震災後初の節電要請そのものの見送り……2016年夏の電力需給対策内容正式発表

四国電力は電力が余るので、他社に売るのだという。
本末転倒ではなかろうか。

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コメント

福島の事故前は歴代の政府が言ってきたことだからね。安倍「元」首相の責任論を持ち出してもね〜。倒したいお気持ちは分かりますけどちょっと無理があるかな。

投稿: | 2016年8月30日 (火) 06時35分

原発再稼働問題の核心は米国との外交問題なのだから、そこの論点を外して一生懸命クレイジーだの何だのってわめいたところで何の意味もない。

投稿: | 2016年8月30日 (火) 14時17分

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