国民栄誉賞を受賞したウルフ・千代の富士/追悼(91)
「ウルフ」の愛称で親しまれ、相撲界初の国民栄誉賞を受賞した元横綱千代の富士の九重親方(本名秋元貢)が7月31日、膵臓がんのためなくなった。
北海道福島町出身で、61歳だった。
優勝は歴代3位の31度、横綱在位は歴代2位の59場所で、通算1045勝(437敗159休)は、2011年に大関魁皇(現浅香山親方)に抜かれるまで最多記録だった。
これらの記録が示すように、「強い」という印象が記憶に残る力士だった。
千代の富士死去 小よく大を制す体現…眼光鋭く「ウルフ」
1988年夏場所から53連勝を記録し、負けるイメージが浮かばなかった。
子どものころから、身体能力は抜群で、中学時代は陸上競技でも活躍したほどだったが、相撲は好きではなかったという。
体重は軽く、幕内に上がっても100kg前後だったが、自分より一回りも二回りも大きい力士を投げ飛ばす豪快な取り口だった。
その取り口から、何回も両肩の脱臼し、肩を痛めないように、厳しいトレーニングで「筋肉のよろい」を身にまとった。
東京新聞の「筆洗」を引こう。
一九八一(昭和五十六)年一月二十五日。日曜日の夕方。夕餉(ゆうげ)じたくの家族たちは手を止める。今の時代よりはずっと小さなテレビをそろって見つめている。北の湖との優勝決定戦▼狼(おおかみ)は己よりずっと大きな壁にひるむことなく突っ込んでいく。踏ん張る。投げる。見ている者は狼の躍動に驚嘆の声を上げ、手をたたき、喜び、笑う。「さあ、明日からまた仕事だ」。つらくとも不利であろうとも踏ん張ってさえいれば、なんとかなる。良いことが待っている。素直に明日を信じたくなる時代をあの努力の横綱は背負っていた。そんな気がしてならない
強さが印象的だったが、病には勝てなかったということだろう。
昭和の記憶がまた一つ消えた。
合掌。
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