唯一の被爆国の立場で核兵器に対しどう判断するか?/日本の針路(290)
安倍晋三首相は20日、羽田空港でオバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用政策への懸念を、自らがハリス米太平洋軍司令官に伝えたとする米紙報道について、「ハリス司令官との間において、アメリカの核の先制不使用についてのやりとりは全くなかった。どうしてこんな報道になるのか分からない」と述べ、否定した。
安倍首相は7月26日に官邸でハリス司令官と会談しており、ワシントン・ポスト紙が15日、安倍首相が「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」という趣旨の懸念をハリス米太平洋軍司令官に伝えたと報じている。
ワシントン・ポスト紙の誤報なのだろうか?
オバマ大統領がチェコの首都プラハで数万人の市民を前に演説し、「核なき世界」を訴えた。
「米国は、核兵器を使ったことがある唯一の核兵器国として、行動する道義的責任がある。私は、核兵器のない世界の平和と安全保障を追求するという米国の約束を表明する」核廃絶への国際的な制度強化を米国が主導する考えを表明したが、「核兵器が存在する限り、敵を抑止するための、効果的な核戦力を維持する」とも述べた。核実験の世界規模での禁止に向けては、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を目指すと表明。北朝鮮やイランのような核不拡散体制でのルール違反の国への対応として、罰則強化に取り組む考えも示した。
「人類の運命は我々自身が作る。我々の分断に橋をかけ、世界を、我々が見いだした時よりも平和なものにして去る責任を引き受けよう。共にならば、我々にはできるはずだ」
核なき世界 模索の8年
しかし、シリア情勢をめぐる緊張やウクライナ危機で米ロ関係は悪化し、北朝鮮も核実験を続けており、核兵器のプレゼンスは減るどころか高まっている。
ジュネーブの国連欧州本部で行われていた核軍縮に関する国連作業部会は最終日の19日、核兵器の法的禁止についての2017年の交渉入りを、「幅広い支持」を得て国連総会に勧告するとの報告書を賛成多数で採択した。
今秋の国連総会で議論が本格化する見通しで、核兵器禁止条約制定に向け大きく歩を進めることになりそうだが、日本は棄権した。
多数決の状況は、賛成68、反対22、棄権13であり、核禁止を巡る国際社会の亀裂が鮮明になった。
東京新聞8月21日
唯一の被爆国として核廃絶を訴える一方、米国の「核の傘」に依存する矛盾が現れた。
しかし、交渉入りには投票に参加しない国を含め加盟国過半数の107カ国が支持したという。
これだけの非核保有国が法規制を求めている事実を重く受け止めるべきだろう。
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