ゲーム理論と「囚人のジレンマ」/知的生産の方法(154)
ハンガリー生まれの数学者のジョン・フォン・ノイマン提唱した「ゲーム理論」という数学がある。
ゲーム理論とは、複数のプレイヤーが択するそれぞれの戦略が、
2人以上のプレイヤーが利害関係にあるとき、
1926年に誕生した。
プレイヤーは国家、組織、個人等々である。
最も有名な例は「囚人のジレンマ」と呼ばれるものであろう。
共同で犯罪を行ったと思われる囚人A、Bを自白させるため、検事は2人に次のような司法取引をもちかけた。
• もし、お前らが2人とも黙秘したら、2人とも懲役1年だ。
• だが、お前らのうち1人だけが自白したらそいつはその場で釈放してやろう(つまり懲役0年)。この場合自白しなかった方は懲役10年だ。
• ただし、お前らが2人とも自白したら、2人とも懲役5年だ。
この時、2人の囚人は共犯者と協調して黙秘すべきか、それとも共犯者を裏切って自白すべきか、というのが問題である。
なお彼ら2人は別室に隔離されており、相談することはできない状況に置かれているとする。
囚人A、Bの行動と懲役の関係を表(利得表と呼ばれる)にまとめると、以下のようになる。
「囚人のジレンマ」からみる他者の視点、顧客目線 その2
囚人2人にとって、互いに裏切り合って5年の刑を受けるよりは互いに協調し合って1年の刑を受ける方が得である。
しかし囚人達が自分の利益のみを追求している限り、互いに裏切り合うという結末を迎える。すなわちジレンマである。
このようなジレンマが起こるのは以下の理由による。
まずAの立場で考えると、Aは次のように考えるだろう。
• Bが「協調」を選んだ場合、自分 (=A) の懲役は1年(「協調」を選んだ場合)か0年(「裏切り」を選んだ場合)だ。
だから「裏切り」を選んで0年の懲役になる方が得だ。
• Bが「裏切り」を選んだ場合、自分 (=A) の懲役は10年(「協調」を選んだ場合)か5年(「裏切り」を選んだ場合)だ。
だからやはり「裏切り」を選んで5年の懲役になる方が得だ。
以上の議論により、AにとってはBがどのような行動をとるかによらず、Bを裏切るのが最適な選択ということになる。
よってAはBを裏切ることになる。
以上の事情はBにとっても同じであるため、BもAと同一の考えによってAを裏切るのが最適な選択である。
したがって実現する結果は (裏切り, 裏切り) 、すなわち両者とも5年の懲役となる。
重要なのは、相手に裏切られるかもしれないという懸念や恐怖から自分が裏切るのではなく、相手が黙秘しようが裏切ろうが自分は裏切ることになるという点である。
このため仮に事前に相談できてお互い黙秘をすると約束していたとしても(それに拘束力が無い限りは)裏切ることになる。
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