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2016年8月 6日 (土)

「衆議」と「公論」/「同じ」と「違う」(96)

今回の参院選から、選挙権が18歳以上に変更になった。
⇒2016年6月22日 (水):今回参院選の意義/日本の針路(272)
2014年6月に施行された改正国民投票法により、憲法改正に必要な国民投票の資格年齢は、満20歳以上から満18歳以上へと引き下げられ、それに伴う法改正である。
選挙権の拡大は、世界的な趨勢と言えよう。

国立国会図書館の調査では、世界の190あまりの国と地域のうち、選挙権の対象の最少年齢を満18歳か、それ以下とする国は176か国である。オーストリアやアルゼンチンなどのように、満16歳以上としている国もある。また、被選挙権を含めて満18歳以上へと引き下げている国も少なくない。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

御厨貴氏の『「戦後」が終わり、「災後」が始まる。 』千倉書房(2011年11月)に、読売新聞の2011年1月31日に載った『衆議院解散の劇薬しかない』というコラムが収録されている。
東日本大震災に1ヶ月弱前で、菅政権の行き詰まりが誰の目にもはっきりした時期である。
御厨氏は次のように書いている。

 そこから大久保は「衆議」と「公論」を峻別し、「異物変則」と「本物正則」の緊張関係を自覚して〝統治〟の方法として用いることを説いた。「烏合の衆」から脱しえぬ政府に当座必要なことは、無責任かつ無定見な「衆議」から、国家のあるべき姿を映し出す「公論」を紡ぎ出し、理想としてあるべき「本物正則」を忘れることなく、あえて速攻的実現が可能な「異物変則」を用うべし、ということに他ならない。
 こうして「死の跳躍」を試みた維新政府によって、日本はアジアで唯一の近代国家となることに成功する。ところが今の日本が直面しているのは、中国や韓国をはじめとするアジア諸国の中で、唯一の停滞国家になりつつある事態だ。

18歳選挙権は、1945年(昭和20)に満25歳以上から満20歳以上に引き下げられて以来のことであるが、果たして「国家のあるべき姿を映し出す「公論」を紡ぎ出」すことに寄与するであろうか?
私は暗い気持ちにならざるを得ない。
というのは、わが国で普通選挙が実現したのは、男子については大正14年(1925)であった。
ほぼ同時に施行されたのが治安維持法であった。

1925年(大正14年)1月のソビエト連邦との国交樹立(日ソ基本条約)により、共産主義革命運動の激化が懸念されて、1925年(大正14年)4月22日に公布され、同年5月12日に施行。普通選挙法とほぼ同時に制定されたことから飴と鞭の関係にもなぞらえられ、普通選挙実施による政治運動の活発化を抑制する意図など治安維持を理由として制定されたものと見られている。治安維持法は即時に効力を持ったが普通選挙実施は1928年まで延期された。 法案は過激社会運動取締法案の実質的な修正案であったが、過激社会運動取締法案が廃案となったのに治安維持法は可決した。奥平康弘は、治安立法自体への反対は議会では少なく、法案の出来具合への批判が主流であり、その結果修正案として出された治安維持法への批判がしにくくなったからではないかとしている。
Wikipedia

安倍政権は、2013年の参院選挙後に特定秘密保護法を成立させた。
治安維持法可決の時とよく似ていることが、新聞記事からも窺える。
Photo
治安維持法制定時の新聞を見て実感、この国はまた同じ時代を繰り返す

選挙権の拡大は「公論」の形成に向かわず、「衆愚」が顕在化するように見える。

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コメント

参院選や都知事選で、10代20代の若者ほど民進や鳥越の支持率が低かったことに希望の光が感じられる。日本の進むべき確たる道を示せる稀有な政治家・安倍晋三。

投稿: | 2016年8月 8日 (月) 07時30分

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