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2016年8月27日 (土)

核廃絶のイニシアティブを/日本の針路(293)

「フェルミのパラドックス」と呼ばれるものがある。

地球外に文明がある可能性は高いと思われているが、なぜいままでその文明との接触がないのか、という矛盾をさす。物理学者フェルミが「宇宙人がいるならなぜ連絡してこないか」という形で最初に提言したのでフェルミのパラドックスとよばれている。星間通信ができる文明の数を求めるドレイクの方程式によればさまざまな仮定が必要であるが、通信可能な文明の数は1(地球のみの場合)よりもかなり大きくてもよいと思われる。それなのになぜ、現在まで宇宙人と接触(交信)できていないのか、という疑問が起こりうる。それに対して、宇宙人(地球外知的生物)はいないという仮説から、地球外生物は存在するが通信できるまで進化できていないという仮説までいろいろ考えられている。[山本将史]
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

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いろいろな考えが提示されているが、言語起源説に新しい仮説を提示した岡ノ谷一夫氏は、「言葉を持つことが原子力の利用を可能にし、そのことで自分を滅ぼす」という1つの解釈を挙げた。
つまり、原子力を操作できるだけの知的生命体は、その故に滅びてしまうということである。
⇒2014年1月29日 (水):「フェルミのパラドックス」と「成長の限界」/原発事故の真相(103)

核廃絶というテーマについては、この「フェルミのパラドックス」に対する岡ノ谷氏の解釈が気になる。
1997年に中米のコスタリカがモデル案を提出して以来、なかなか理念の域を出なかった核兵器禁止条約が、国連の場で曲がりなりにも実現へ動き始めた。
核兵器を禁止する法的措置に関し、「幅広い支持」の下で2017年の交渉入りを国連総会に勧告する報告書がまとまった。
しかし、 核保有国と核抑止力に固執する国々は一貫して後ろ向きで、日本政府も投票を棄権した。
⇒2016年8月21日 (日):唯一の被爆国の立場で核兵器に対しどう判断するか?/日本の針路(290)

核の傘という現実と、被爆体験で核兵器の非人道性を最も良く理解しているという立場をどう整合させるか?
核兵器廃絶の方向性でなければ、人類は滅亡の道を歩むことになる。
とすれば、そのイニシアティブをとるべきポジションではないのか。
被爆地の念願であることは間違いない。
安倍首相自身は否定しているが、米紙は、オバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用政策への懸念を、ハリス米太平洋軍司令官に伝えたと報じられている。
これに対し、長崎の被爆者団体が抗議した。

Ws000005 長崎の被爆者5団体は24日、オバマ米大統領が検討しているとされる核兵器の先制不使用政策について、安倍晋三首相が米側に反対の意向を伝えたとする米紙報道を「事実であれば、極めて遺憾」とした文書を安倍首相らに宛てて郵送すると発表した。核兵器禁止条約の早期制定に力を尽くすことも求めた。
 国連の作業部会は19日、核兵器を法的に禁止する措置について、2017年からの交渉開始を国連総会に求める報告書を採択した。5団体の文書は採決を棄権した日本政府を「卑劣」と非難。「『世界唯一の核兵器被害国日本』の肩書は信頼を失っている」と指摘した。
長崎被爆者、首相に抗議文

安倍首相は否定したが、「オバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用政策への懸念を、ハリス米太平洋軍司令官に伝えた」と米紙に報じられた。
歴代の自民党政権と外務省は、先制不使用政策を米国が導入することに慎重であった。

「核の傘に守られている=先制不使用政策反対」ということであろう。
言い換えれば、核兵器を先に使用して日本を守ってくれということである。
核抑止力と言って核兵器を保有している国は、「広島、長崎で原爆を投下された日本ですら、防衛のため核兵器を先に使用することを容認しているではないか」となる。
核廃絶は夢のまた夢、「フェルミのパラドックス」を実証することにならないであろうか。

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