金融政策の限界と「新しい現実」/アベノポリシーの危うさ(94)
日銀が追加の金融緩和を決めた。
政府の「28兆円超」と称する経済政策に、歩調を合わせたのだろうが、市場の反応はイマイチというしかない。
「これだけか。」
追加緩和第一報を聞いた米国ヘッジファンドの反応だ。
ただちに、円買いを加速させている。
市場全般でも、ETF買い入れ拡大にとどまり、失望感が強い。
朝方、消費者物価指数が、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数で前年同月比0.5%下落との報道も流れ、あらためてデフレが意識されただけに、緩和不足と見られている。
金融政策の限界、円買い加速
しかし、「2年で2%程度の物価上昇目標を達成する」と宣言してから3年余り経ったが、6月の消費者物価指数は、前年同月比で0.5%下落と4カ月連続のマイナスである。
もはや金融政策が効果がないことははっきりしていると見るべきであろう。
金融機関のビジネスモデルは、相対的に金利が低い短い資金を調達して、相対的に金利が高い長い資金を貸し出すことによって、その利鞘(=長期金利-短期金利)を得るものである。
イールドカーブという概念がある。
満期の異なる債券の利回りを、縦軸に債券の利回り、横軸に満期(償還)までの期間をとりグラフ化すると、以下のようになる。
債券の利回りは、期間の短いもののほうが低く、長期になればなるほど高くなるのが普通で、緑色の線のようになる。
期間の長いもののほうが高利回りになるのは、将来のことは分からないという、リスクプレミアムがあるからである。
異次元金融緩和というには、日銀によるイールドカーブのフラット化である。
金融機関は、「金利リスク」を負ってでも必要な利鞘を確保するか、「金利リスク」を避けて利鞘を放棄するかの選択肢が考えられるが、「金利リスク」を避けて利鞘を放棄するというのは、座して死を待つ行為ですから、「金利リスク」を負ってでも利鞘を求める道しかない。
金融機関は、「金利リスク」に応じた自己資本の積み増しを求めるということになるが、日銀の政策目的が金利を下げることで投資を促進させることであるならば、全く意味がないことになる。
投資家が自己資本に求める期待利回りは、概ね8%程度だとされる。
であれば、金融機関にとっては、8%の資本コストをかけて、住宅ローンなど利鞘が薄いものに資産を増やすことは合理的な判断ではない。
全体としては逆ザヤになってしまいかねない。
金融機関が期間の長い融資を行わなくなってしまえば、異次元の金融緩和と称してイールドカーブをフラットニングさせる意義がないことになろう。
デフレ経済に入って既に20年以上である。
もはや、このような状況を「新しい現実」として受け止め、その現実に即した経済政策をとるべきだ。
アベノミクスと称するアホな政策(アホノミクス)は一刻も早く脱却すべきである。
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辺野古移転を決めた鳩山内閣、メルトダウンを隠して放射能を撒き散らした菅内閣、原発を再稼働させて消費税上げを決めた野田内閣…日本を沈没させようとした地獄の民主党政権三年半よりは遥かに平和主義かつ弱者に優しい自公政権。現安倍内閣。
投稿: | 2016年8月 6日 (土) 12時42分