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2016年8月

2016年8月31日 (水)

カラオケ店の大量閉店・シダックス/ブランド・企業論(56)

給食・食堂運営受託大手のシダックス株式会社が、8月末に44店を一斉閉店することが明らかになったと一部メディアで報じられ、8月30日に株価が急反落した。
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東洋経済オンライン(8月30日)は次のように報じている。

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カラオケチェーン大手、シダックスが8月末に44店を一斉閉店することが東洋経済の取材で明らかになった。同社は今年4月から断続的に閉店を行っており、この8月末までに計52店舗を閉店する計算だ。閉店する店舗の中には、2004年に開業し、本社機能が置かれている「渋谷シダックスビレッジクラブ」(渋谷区)も含まれる。会社側によれば、本社機能はそのまま残り、空いたフロアの賃貸などを検討しているという。
・・・・・・
カラオケ事業の低迷に直面したシダックスは、2016年3月末に同事業の資産約25億円を減損。また収益性が低下した店舗約100店を別子会社に移し、同社株式の65%を外部の取引先などに譲渡している。
・・・・・・
現在、業界では業務用通信カラオケシステム「DAM」を販売する第一興商グループの「ビッグエコー」が首位で、シダックスは2位クラスとされていた。今年3月末時点で269店あった店舗数は、200店前後までに目減りし、存在感低下は避けられそうにない。
会社側は「カラオケ事業からの撤退はない」と否定する。ただ、同事業がグループ全体の足を引っ張っているのも事実。今回の大量閉店でリストラが完了する保証もない。かつてカラオケ業界の雄でもあったシダックスは、重大な転換点を迎えている。
発覚!カラオケ「シダックス」が大量閉店へ

シダックス(株)は、1959年に志太勤氏が創業した。
1965年、東京都調布市に学校・企業食堂の給食事業を運営する「冨士食品工業」(現・シダックスフードサービス)設立した。
カラオケ事業立ち上げのきっかけは、1984年に立ち上げたレストラン事業だった。
当時、給食調理士のマナー向上などのために東京都内を中心に8店舗を設立したが、給食業と運営とのノウハウが基本的に異なっていたため失敗に終わった。
その過程で膨らんだ店舗用の土地リース契約を何とかするために設立されたのがカラオケ事業であった。
1993年から本格的な展開を始め、1998年には業界1位に躍り出た。

カラオケ業界首位の第一興商は、2015年、上場先を東京証券取引所ジャスダックから東証第一部へ変更した。
カラオケ業界の業界規模の推移は下図のようで、飽和市場になっている。
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近年のカラオケ業界の現状と動向

一方、カラオケが脳トレに良いという説もある。

カラオケが脳を刺激する効果は、目を見張るものがあります。まずカラオケの発声は、脳トレの定番である音読と同様の効果があります。さらにカラオケでは音程やリズムを合わせる必要があり、脳を高度に活用する必要があります。
また歌詞を覚えたりすることで、記憶力を鍛えることができます。さらに大勢で行くことにより、コミュニケーション能力も鍛えられます。歌に感情が入ったり、人の歌を聴いて感動したり、泣いたり笑ったりという感情表現も得ることができます。
歌うことで認知症のリスク軽減!カラオケで認知症を予防しよう

高齢者の認知症予防という切り口は、再成長を可能にするだろうか?

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2016年8月30日 (火)

いつまでも「道半ば」の経済政策/アベノポリシーの危うさ(95)

日銀は先月末の政策声明で、金融政策の「総括的な検証」を実施する方針を示した。
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東京新聞8月29日

2013年4月3日、4日の日本銀行金融政策決定会合で、「2年で2%、物価を上げる」ことで、デフレ脱却、日本経済の再生を目指すと断言した。
「PDCAサイクル」を考えれば、目標期限の途中のチェックが重要であるが、アベノミクスと称する経済政策には「PDCAサイクル」が考えられていない。
⇒2016年5月14日 (土):PDCAなき安倍政権の政策/アベノポリシーの危うさ(64)

「2年で2%、物価を上げる」ため、「異次元金融緩和政策」の導入が決定された。
日本銀行の黒田東彦総裁が、「量的にみても質的にみても、これまでとは全く次元の違う金融緩和」を行う」と胸を張った緩和政策である。
目標とした2年後の状況はどうであったか。
経済が活性化したとはとても言えず、実体経済に対しては効果はなかったと考えられる。
⇒2015年4月 5日 (日):異次元金融緩和の効果と限界/アベノミクスの危うさ(50)

異次元金融緩和から3年半が過ぎようとして、ようやく「総括的な検証」だが、おそらくは目標未達の言い訳に終わるであろう。

日銀としては今までの政策はうまくいっているが、いろいろな事情が重なり、物価目標は達成できていない。要するに物価目標未達成の理由(というか言い訳)を論理的に説明する準備をしているものと予想される。
9月日銀会合の「総括的検証」が苦しい言い訳になる理由と本当の結論

安倍政権は「アベノミクスは失敗ではなく、道半ば」という。
目標期限を設定しているにも拘わらず、道半ばとは言い訳以外の何ものでもあるまい。
納期に間に合わないビジネスパーソンが、顧客に対して「実はまだ道半ばでして・・・」といえば、直ちに信用を失墜するであろう。

しかし、7月の参院選でも、「道半ば」のレトリックが成功した。
吉田徹『時間かせぎの政治』(「世界」9月号)によれば、それは「期待値の操作」だという。
景気回復の実感がない人ほど、いつかは自分にも恩恵が及ぶはずという思い込みである。
甘利明前経済再生担当相が、2014年11月の記者会見で、「アベノミクスの基調が頓挫したわけではないが、トリクルダウンがまだ弱い」と語っていたのは、トリクルダウンの刷り込みに一役買ったという点で罪深い。
それにしても、「トリクルダウンがまだ弱い」と「アベノミクスは道半ば」は良く似ている。

稲田朋美防衛相は、自民党政調会長職にあった5月15日、「安倍政権としてはトリクルダウンという考え方はとっていない」と発言した。
⇒2016年6月11日 (土):トリクルダウンの幻/アベノポリシーの危うさ(79)
そのうち、「安倍政権としてはアベノミクスという考え方はとっていない」と言い出すのではないか。

しかし、安倍首相は、アベノミクスのエンジンをさらに吹かすと言っている。
「二世、三世で、繁栄を受け継ぐのに疲れた人たちが「これしか道はない。みんなのためにはこれしかないんだ」と早送りボタンを押し続けている」という藻谷浩介氏の指摘が的を外していることを願う。
⇒2015年1月14日 (水):LOHASと「早送り」/日本の針路(97)

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2016年8月29日 (月)

『東京ブラックアウト』と国会質疑/原発事故の真相(147)

若杉冽『東京ブラックアウト』講談社(2014年12月)は、フィクションではあるが、原発再稼働をめぐるさまざまな動きを活写している。
著者は霞が関の現職官僚ということであり、官・政・財の関係はリアリティがある。
ただ、原発が事故を起こす状況に無理があるとの評もあった。

事故は、「第7章 メルトダウン再び」の(22)の部分で記述されている。

新崎原発(柏崎原発)で発電された電気を送る山中の送電線が、工作員によって倒される。
送電線に支障が起きると、発電した電気を送ることができず、エネルギーが蓄積されて、原発を緊急停止しても、外部電源か非常用電源で冷却し続けない限り、崩壊熱で炉心がメルトダウンする。

この設定がどの程度のリアリティを持つかは分からない。
余りリアルに描写すれば、テロの手引きになる可能性もあるわけで、現に福島原発でメルトダウンが起きているのであるから、メルトダウンの設定以外のリアリティは問題にならないと考えていた。

しかし、過去に国会で次のような質疑が行われていたのである。
2006年12月22日、第1次安倍政権当時の第165回国会における吉井英勝衆議院議員の質問と安倍晋三首相の答弁である。

Q質問1-1(質問者:吉井英勝衆議院議員/日本共産党)
 原発からの高圧送電鉄塔が倒壊すると、原発の負荷電力ゼロになって原子炉停止(スクラムがかかる)だけでなく、停止した原発の機器冷却系を作動させるための外部電源が得られなくなるのではないか。
 そういう場合でも、外部電源が得られるようにする複数のルートが用意されている原発はあるのか。あれば実例を示されたい。
 また、実際に日本で、高圧送電鉄塔が倒壊した事故が原発で発生した例があると思うが、その実例と原因を明らかにされたい。
A回答(回答者:内閣総理大臣/安倍晋三)
 我が国の実用発電用原子炉に係る原子炉施設(以下「原子炉施設」という。)の外部電源系は、二回線以上の送電線により電力系統に接続された設計となっている。また、重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器がその機能を達成するために電源を必要とする場合においては、外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計となっているため、外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である。
 また、送電鉄塔が一基倒壊した場合においても外部電源から電力の供給を受けられる原子炉施設の例としては、北海道電力株式会社泊発電所一号炉等が挙げられる。
 お尋ねの「高圧送電鉄塔が倒壊した事故が原発で発生した例」の意味するところが必ずしも明らかではないが、原子炉施設に接続している送電鉄塔が倒壊した事故としては、平成十七年四月一日に石川県羽咋市において、北陸電力株式会社志賀原子力発電所等に接続している能登幹線の送電鉄塔の一基が、地滑りにより倒壊した例がある。
・・・・・・
Q質問1-7(質問者:吉井英勝衆議院議員/日本共産党)
停止した後の原発では崩壊熱を除去出来なかったら、核燃料棒は焼損(バーン・アウト)するのではないのか。その場合の原発事故がどのような規模の事故になるのかについて、どういう評価を行っているか。
A回答(回答者:内閣総理大臣/安倍晋三)
経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。
吉井英勝VS安倍晋三→あまりに酷すぎる原発事故前の国会答弁2006年

実際に原発事故が起きてしまった後で読むと、最後の「経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである」は、ノーテンキな無責任というしかない。
安倍首相が事故に責任なしとは言えまい。

鹿児島県の三反園訓知事が、九州電力の瓜生道明社長に、川内原発を直ちに停止するよう要請した。
「県民の不安に応えるためにも、いったん止めて再点検してほしい」と述べ、熊本地震の影響や原発周辺の活断層について調査、点検するよう求めた。

しかし、知事には原発の稼働に関する権限はない。
一方、原子力規制委の審査は、原発が事故を起こした際の住民の避難計画は対象にしていず、避難は事実上、自治体任せだ。
そんな状況で原発を稼働させることはクレイジーである。
猛暑だったが、今夏の電力は不足していないのである。

政府や経済産業省など関係省庁による「電力需給に関する検討会合」の結果、9電力会社すべてで、電力会社管轄間の融通無しでも、電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3.0%以上を確保できる見通しとなった。
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震災後初の節電要請そのものの見送り……2016年夏の電力需給対策内容正式発表

四国電力は電力が余るので、他社に売るのだという。
本末転倒ではなかろうか。

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2016年8月28日 (日)

台風10号の経路と狩野川台風/戦後史断章(25)

台風10号の動きが不気味だ。
八丈島付近で発生し、南西方向に進んだ後、エネルギーを蓄えて、本州を狙っている。
あたかも意志あるものの戦略的行動のように見える。
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日本付近の進路予想

通常今頃は、日本の南の海上に太平洋高気圧が張り出すため、その北側を吹く西よりの風や、ジェット気流と呼ばれる上空の強い西風に流され、日本付近では北東方向に進む。
ところが10号は、日本付近で北西に変わると予測されている。
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台風10号 史上初ルートで本州接近・上陸へ

原因は、「いつもより東に偏った太平洋高気圧」と「寒冷渦」と言われる。
台風10号は、東日本に接近すると、寒冷渦の反時計回りの風に乗って、「東北太平洋側からの上陸」の可能性が高まっている。
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台風10号 史上初ルートで本州接近・上陸へ

史上初ルートと言われるが、本州中央に上陸した台風に狩野川台風がある。
1958年(昭和33年)9月27日、台風第22号が神奈川県に上陸した。
伊豆半島と関東地方に大きな被害を与えたが、特に狩野川流域で被害が大きかったことから、狩野川台風と命名された。
伊豆半島の状況について、狩野川台風-Wikipediaには、以下のように記されている。

雨は25日から降り始めたが、台風と前線の影響で26日にはわーとなり、台風の中心が伊豆半島に最も接近した26日20時から23時頃が最も激しく、湯ヶ島では21時からの1時間雨量が120ミリメートルにも達し、総雨量は753ミリメートルに及んだ。
この大雨のために、半島の中央部を流れる狩野川では上流部の山地一帯で鉄砲水や土石流が集中的に発生した。天城山系一帯では約1,200箇所の山腹、渓岸崩壊が発生[。旧中伊豆町の筏場地区においては激しい水流によって山が2つに割れたほどだった。同時に、所によっては深さ12メートルにもなる洪水が起こり、これが狩野川を流れ下った。この猛烈な洪水により、川の屈曲部の堤防は破壊されて広範囲の浸水が生じ、また途中の橋梁には大量の流木が堆積し、巨大な湖を作った後に「ダム崩壊現象」を起こしてさらに大規模な洪水流となって下流を襲った。旧修善寺町では町の中央にある修善寺橋が同様の状態になり、22時頃に崩壊し鉄砲水となって多くの避難者が収容されていた修善寺中学校が避難者もろとも流失した。さらに下流の大仁橋の護岸を削り、同町熊坂地区を濁流に飲み込み多数の死者を出した。この地区の被害が大きかったために、当時の首相である岸信介がヘリで視察に来るほどだった。旧修善寺町の死者行方不明は460人以上。その他、旧大仁町・旧中伊豆町など狩野川流域で多くの犠牲者が出た。
狩野川流域では、破堤15箇所、欠壊7箇所、氾濫面積3,000ha、死者・行方不明者853名に達し、静岡県全体の死者行方不明者は1046人で、そのほとんどが伊豆半島の水害による。

台風第22号は進路を北北東ないし北東に取って26日21時頃伊豆半島のすぐ南を通過し、27日0時頃に神奈川県東部に上陸した。
勢力は衰えていたが日本付近に横たわる秋雨前線を刺激し、東日本に大雨を降らせた。
27日1時には東京のすぐ西を通過して、6時には三陸沖に抜け、9時に宮城県の東の海上で温帯低気圧になった。
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狩野川台風-Wikipedia

今年の台風10号とは大分進路が異なる。
狩野川台風の被害は、静岡県では、空前絶後と言って良いだろう。
狩野川の洪水対策としては、狩野川放水路が、1951年6月に建設に着手されていたが、完成する前に狩野川台風の直撃を受けた。
完成したのは、それから7年後の1965年7月にであった。
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狩野川放水路-Wikipedia

平成27年の台風第18号では、上流域の天城山で400mm超の大雨を観測し、この放水路がなければ浸水被害もあり得たと言われる。

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2016年8月27日 (土)

核廃絶のイニシアティブを/日本の針路(293)

「フェルミのパラドックス」と呼ばれるものがある。

地球外に文明がある可能性は高いと思われているが、なぜいままでその文明との接触がないのか、という矛盾をさす。物理学者フェルミが「宇宙人がいるならなぜ連絡してこないか」という形で最初に提言したのでフェルミのパラドックスとよばれている。星間通信ができる文明の数を求めるドレイクの方程式によればさまざまな仮定が必要であるが、通信可能な文明の数は1(地球のみの場合)よりもかなり大きくてもよいと思われる。それなのになぜ、現在まで宇宙人と接触(交信)できていないのか、という疑問が起こりうる。それに対して、宇宙人(地球外知的生物)はいないという仮説から、地球外生物は存在するが通信できるまで進化できていないという仮説までいろいろ考えられている。[山本将史]
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

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いろいろな考えが提示されているが、言語起源説に新しい仮説を提示した岡ノ谷一夫氏は、「言葉を持つことが原子力の利用を可能にし、そのことで自分を滅ぼす」という1つの解釈を挙げた。
つまり、原子力を操作できるだけの知的生命体は、その故に滅びてしまうということである。
⇒2014年1月29日 (水):「フェルミのパラドックス」と「成長の限界」/原発事故の真相(103)

核廃絶というテーマについては、この「フェルミのパラドックス」に対する岡ノ谷氏の解釈が気になる。
1997年に中米のコスタリカがモデル案を提出して以来、なかなか理念の域を出なかった核兵器禁止条約が、国連の場で曲がりなりにも実現へ動き始めた。
核兵器を禁止する法的措置に関し、「幅広い支持」の下で2017年の交渉入りを国連総会に勧告する報告書がまとまった。
しかし、 核保有国と核抑止力に固執する国々は一貫して後ろ向きで、日本政府も投票を棄権した。
⇒2016年8月21日 (日):唯一の被爆国の立場で核兵器に対しどう判断するか?/日本の針路(290)

核の傘という現実と、被爆体験で核兵器の非人道性を最も良く理解しているという立場をどう整合させるか?
核兵器廃絶の方向性でなければ、人類は滅亡の道を歩むことになる。
とすれば、そのイニシアティブをとるべきポジションではないのか。
被爆地の念願であることは間違いない。
安倍首相自身は否定しているが、米紙は、オバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用政策への懸念を、ハリス米太平洋軍司令官に伝えたと報じられている。
これに対し、長崎の被爆者団体が抗議した。

Ws000005 長崎の被爆者5団体は24日、オバマ米大統領が検討しているとされる核兵器の先制不使用政策について、安倍晋三首相が米側に反対の意向を伝えたとする米紙報道を「事実であれば、極めて遺憾」とした文書を安倍首相らに宛てて郵送すると発表した。核兵器禁止条約の早期制定に力を尽くすことも求めた。
 国連の作業部会は19日、核兵器を法的に禁止する措置について、2017年からの交渉開始を国連総会に求める報告書を採択した。5団体の文書は採決を棄権した日本政府を「卑劣」と非難。「『世界唯一の核兵器被害国日本』の肩書は信頼を失っている」と指摘した。
長崎被爆者、首相に抗議文

安倍首相は否定したが、「オバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用政策への懸念を、ハリス米太平洋軍司令官に伝えた」と米紙に報じられた。
歴代の自民党政権と外務省は、先制不使用政策を米国が導入することに慎重であった。

「核の傘に守られている=先制不使用政策反対」ということであろう。
言い換えれば、核兵器を先に使用して日本を守ってくれということである。
核抑止力と言って核兵器を保有している国は、「広島、長崎で原爆を投下された日本ですら、防衛のため核兵器を先に使用することを容認しているではないか」となる。
核廃絶は夢のまた夢、「フェルミのパラドックス」を実証することにならないであろうか。

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2016年8月26日 (金)

天孫降臨と神武東征/天皇の歴史(2)

田原総一朗『日本人と天皇 - 昭和天皇までの二千年を追う』中央公論新社(2014年11月)は、日本史の骨格とも言うべき天皇と時代との関係を、非専門家として追求した労作と言えよう。
1934年生まれの田原氏は、国民学校(小学校)5年生として、1945年8月の玉音放送を聞いた。
近所の人々6~7人と一緒に聞いたが、雑音が激しくよく聞き取れなかった。
「堪ヘ難キヲ堪ヘ、忍ヒ難キヲ忍ヒ」などという言葉は現在も覚えているという。
近所の人たちの捉え方は、「戦争は終わった」という人と「戦争を継続する決意を述べた」という人に二分された。

リオ五輪は成功裡に終わったと言えるだろうが、日本がポツダム宣言を受諾して戦争が終結した後も、ブラジルを主とした南米諸国やハワイ州などの日系人社会および外国で抑留されていた日本人の中には、敗戦という現実を受け入れられずに、「日本が連合国に勝った」と信じていた人々がいた。
「勝ち組」、戦勝派などと呼ばれたエピソードを思い出させる。
それだけ聞き取りにくかったということである。

田原氏は国民学校で、天皇家の祖先は天照大神だと教えられた。
記紀神話のストーリーを、歴史として教えられたわけである。
天照大神が「豊葦原の瑞穂の国」を統治せよと、孫のニニギを地上の世界に派遣した。
天孫降臨である。
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日本の神様と神社「天孫降臨」

ニニギの曾孫にあたるのが神武天皇である。
現在、天孫降臨を事実と考える人がいるとは思えないが、「神武天皇のY染色体」などと真面目に論じている人は、神話と歴史の分界をどこだと考えているのだろうか?

天孫降臨について、古代史のパラダイムとして「南船北馬」論を提唱している室伏志畔氏は次のように書いている。

 私はこの両説を踏まえ、日本古代史の基本矛盾はこの南船系倭人と北馬系勢力の興亡にあるとし、日本古代史を東アジア民族移動史の一齣に回収し、その矛盾を「南船北馬の興亡」と呼び慣わしてきた。
 その天孫降臨を古田さんは、対馬海流上の天国領域の島々からの九州侵攻としたが、一国枠に限るかぎり、天孫降臨地にあるこの可也山の説明できないことは明らかである。私はそれを伽耶族の天国領域を橋頭堡としての九州侵攻に修正し、その時期を古田さんが「弥生前期末、中期初頭」(前二世紀中頃)の事件とするのを、「弥生中期末、後期初頭」(二世紀中頃)の事件とするほかなかった。それは天孫降臨を南船系稲作国家への北馬系勢力の侵攻とするなら、それは金印国家・委奴国への侵攻で、その征服後の姿が、「魏志倭人伝」に一大率支配下にある伊都国と見るほかなかったことによる。その一大を天の分け字とする『諸橋大漢和辞典』を踏まえるとき、一大国は天国、一大率とは天子の貴字をはばかるもので、本来の和名は天国、一天率は天率、つまり、天国軍司令官とするほかない。この意味は、女王国を邪馬壹国とした陳寿の表記はこれに倣った中国側の表記で、その和名が別に邪馬臺国としてあったことを思わせる。
 九州王朝・倭国の起源は、北馬系の天孫降臨に始まるのではなく、それに先立つ「呉の太伯の後」による南船系の委奴(倭奴)国に由来し、その南船系王統の流れに邪馬壹国、倭の五王、俀国を見るほかない。そして、この尾羽打ち枯らした姿が朝敵・熊襲となろう。
 しかし、記紀は皇統を天孫傍流の神武に始まるとした以上、皇統支配の成立は天孫本流の排除なしにありえない。記紀はそれを神武皇統に先立つ天神皇統(饒速日命皇統)を排除した欠史八代の内に隠したと私は幻視してきた。加えて記紀はその天神皇統がまた出雲王統の流れにあることを隠し、その流れを、今一つの朝敵・蝦夷として位置づけた。つまり、朝敵とは皇統に先在した出雲王統、倭国王統及び天神皇統の排除にあるので、神武皇統を戴く大和朝廷に先立つ先在王朝の排除にその起源を持っていたのだ。現在に至る部落差別の根源は、この記紀皇統の成立,天皇制の成立にその秘密をもっており、それを近世に始まったとする通説の現在の差別論の射程は根底から疑わねばならぬ。
日本列島の地名はこれら弥生王権や、それに先立つ縄文文化に彩られ多く成立した。それら歴史や地名をすべて皇統史に回収するお手軽史にたやすく乗ることなく、先在王統、先在皇統を掘り起こし記紀皇統に重層・接続する古代史の回復の内に、おのおのを独自に位置づけることなく、時代の風雪に耐えて生き延びた地名の意味回復はありえない。
南船北馬のブログー日本古代史のはてな?

室伏氏の見方は注目に値するが、現時点では検証が難しい。
天孫降臨について、「日本大百科全書(ニッポニカ)」 は以下のように解説している。

この天孫降臨の神話は、朝鮮半島の大賀洛(おおから)国の農耕祭を背景とした王者出現の神話(三国遺事(さんごくいじ))と類似するが、そこでは、春禊(しゅんけい)の日、長老たちの奉迎のなかを神霊の声のままに紅布に包まれ、金卵の形で聖なる亀峰(きほう)に天降る首露王(しゅろおう)(山の神、同時に田の神)の出現が語られている。したがってこの神話は、山岳的他界の観念を素地として、朝鮮半島から日本に受容された新しい形の神話である可能性が高い。この推定は、記紀が垂直的神降臨の記述のなかでなお、神が海上の神座に出現し、国を求めつつ、笠狭崎(かささのみさき)の波の穂に屋を建てて機(はた)織る乙女に迎えられるという水平的神出現の記述を残していることにより強められる。また『古事記』そのほかの伝承では、降臨予定であった父の天忍穂耳尊(あめのおしほみみのみこと)にかわり、出誕直後の邇邇杵命が降臨するが、その場合同時に司令神として天照大神の登場がある。これは、高皇産霊神→邇邇杵命の形に、天照大神→天忍穂耳尊の伝承を挿入するため案出された発想と考えられる。[吉井 巖]

いずれにせよ、東アジア史の中で考えることが必要だろう。
降臨した高千穂はどこか?
諸説あり、宮崎県にも2つの候補地がある。
⇒2013年1月 4日 (金):天孫降臨と高千穂論争/やまとの謎(75)
⇒2013年1月 5日 (土):2つの高千穂/やまとの謎(76)
いずれにせよ、九州のどこかであろう。

神武は日向を発って大和に進攻するわけであるが、日向が降臨の地であることには何らかの事実が投影されているのであろう。
神武の東征経路は以下のように考えられている。
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海道東征

神武東征についても、何らかの形で史実を反映していると考えるべきであろう。

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2016年8月25日 (木)

皇位の男系継承論とアマテラス/天皇の歴史

天皇陛下の生前退位のお気持ちに対して、内閣法制局などが生前退位には改憲が必要と言っているという。
理由としては「憲法第1条で天皇の地位は日本国民の総意に基づくと定めていて、天皇の意思で退位することはこれに抵触する」ということのようだ。
日本国憲法を見てみよう。

第一章 天皇 
第一条   天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第二条   皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

内閣法制局の読解は疑問である。
「日本国民の総意に基く」に掛かるのは、「この地位は」であり、それは「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」という地位のこととしか読みようがない。
皇位継承については「皇室典範の定めるところにより」とあり、憲法とは関係がない。
皇室典範では第4条に「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」とあるのみで、天皇の「生前退位」を明文的には禁じているわけでもない。
敢えて言えば、「想定外」ということだろう。

しかし内閣法制局「など」は以上のような指摘を行った上に「生前退位を今の天皇陛下にだけに限定するのであれば、特例法の制定で対応が可能」とも説明。しかし、どうして「生前退位を将来にわたって可能にするため」には改憲が必要で、今上天皇に限れば特別法の制定のみで対応できるのかの説明もされていません。
皇室典範は憲法と違って扱いは普通の法律と同等であるため、衆参両院で過半数を取っている与党がその気になれば次の国会でも十分に生前退位の条項を追加することは可能です。その最も簡単であり、今上天皇の大御心にも沿った選択をせず、敢えて無理筋な改憲を口にしたり特別法という道を選ぼうとするのはなぜなのでしょうか?そして従来の政府見解とも異なるこうした指摘を行ったのはいったいどこの誰なのでしょうか?
またも「お気持ち」の政治利用、内閣法制局「など」が天皇陛下の生前退位に改憲が必要とミスリード

皇位継承問題は、小泉内閣時に検討された。
皇室典範の第一章は、「皇位継承」であり、次のように規定している。

第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。

つまり、男系&男子が条件である。
女性天皇については、古代史で馴染み深い推古天皇や持統天皇が存在する。
推古天皇の場合は、父親が欽明天皇であり、持統天皇の場合は、父親が天智天皇であるから、男系の女性天皇である。

男系男子に限定すべき論拠は、神武天皇のY染色体を保持することが重要だという。
ヒトのY染色体というのは、男性のみが持つ染色体だから、Y染色体は、男性の系譜を通じて伝えられることになる。
だから、神武天皇のY染色体を維持するためには、現在の皇室典範が規定するように、男系の男子でなければならない、という主張である。
⇒2008年4月25日 (金):天皇家のルーツ

いかにも遺伝学を踏まえた議論であるかのようであるが、もちろん神武天皇の実在さえも疑わしい神話の中の話であって、Y染色体など議論すること自体がおかしい。
記紀神話における系譜は以下のようである。
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天照大神-Wikipedia

記紀神話のハイライトは天孫降臨であろうが、天孫とは「天(あま)つ神の子孫。特に、天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)」のことである。
特に、以下は、「天」をアマテラス、「孫」をニニギノミコトに限定していると言えよう。
⇒2012年12月25日 (火):天孫降臨と藤原不比等のプロジェクト/やまとの謎(73)
記紀神話がことさらに男系を意識しているようにも思えないのだが。

小泉内閣時の「皇室典範に関する有識者会議」は、2005年11月24日に以下のような内容の報告書を提出した。
・女性天皇及び女系天皇を認める
・皇位継承順位は、男女を問わず第1子を優先する
・女性天皇及び女性の皇族の配偶者も皇族とする(女性宮家の設立を認める)
・永世皇族制を維持する
・女性天皇の配偶者の敬称は、「陛下」とする
・内親王の自由意志による皇籍離脱は認めない
女性天皇及び女系天皇を認めるということで、現行の皇室典範を大きく変更しようとするものであったが、秋篠宮妃の懐妊が報告されると、男児誕生の場合には、第3位の皇位継承資格を有することになる。
⇒2007年12月23日 (日):血脈…③万世一系
無事悠仁親王が誕生されたわけであるが、問題の本質は解決されていないままである。

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2016年8月24日 (水)

クールジャパンと『「いき」の構造』/日本の針路(292)

クールジャパン(Cool Japan)という言葉がある。
Wikipediaでは、次のように説明されている。

日本の文化面でのソフト領域が国際的に評価されている現象や、それらのコンテンツそのもの、または日本政府による対外文化宣伝・輸出政策で使用される用語である。
1990年代に、イギリスのトニー・ブレア政権が推し進めたクール・ブリタニアを名称ごと模倣したもので、ジャパンクール(Japan Cool)と呼称される場合もある。
具体例としては、日本における近代文化、 映画・音楽・漫画・アニメ・ドラマ・ゲームなどの大衆文化を指す場合が多い。また、自動車・オートバイ・電気機器などの日本製品や産業、現代の食文化・ファッション・現代アート・建築などを指す。また、日本の武士道に由来する武道、伝統的な日本料理・茶道・華道・日本舞踊など、日本に関するあらゆる事物が対象となりうる。

リオ五輪の閉会式で、安倍首相がスーパーマリオに扮した。
任天堂がファミリーコンピュータ用ゲームソフトの「スーパーマリオブラザーズ」を発売したのは、1985年(昭和60年)だったから、もう30年を超える。
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配管工(大工)の兄弟マリオとルイージが、ピーチ姫を救出するゲームである。
Wikipedia-スーパーマリオブラザーズによれば、日本国内で681万本以上、全世界では4,024万本以上を売り上げ、「世界一売れたゲーム」としてギネス世界記録に登録されている。
『ファミ通』1000号記念に行われた「読者が選ぶ未来に伝えたいゲーム」なるアンケートでは大差で1位を獲得した。
まさに国民的キャラクターであり、クールジャパンの代表と言えよう。

しかしオリンピックで首相自身がマリオに扮するのは如何なものだろうか。
オリンピック憲章は以下のように謳っている。

オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない。

建前としては、首相の出番ではないだろう。
以下のような意見もある。

この愚行は、ナチスのヒトラーが戦前のベルリンオリンピックを最大限利用したことに匹敵する気もしました。
マリオに扮装するならば、鼻下ののチョビ髭だって必要だったはずです。
それをやったら・・・ぞっとします。まさに、「帰ってきたヒトラー」ではありませんか。パロディー映画!?
きっとそうしたら、国際的に大問題になったでしょう。
アベマリオ、オゾマシイ

私はクールジャパンとしては、九鬼周造が『「いき」の構造』岩波文庫(1979年9月)で論じた「いき」の要素も必要だと思う。
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⇒2013年1月27日 (日):『「いき」の構造』に学ぶ概念規定の方法/知的生産の方法(33)

と言っても、電通や官邸には通じないだろうなあ。

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2016年8月23日 (火)

弱者を切り捨てる福祉政策/日本の針路(291)

厚生労働省が介護保険サービスの見直しに向けた議論を始めた。
3年に1度見直しが行われるが、介護の必要度が低い利用者向けのサービスを削る方向で検討されているという。
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東京新聞8月19日

高齢化による介護保険給付額は増大している。
政府はサービスを縮小して対応しようとしているが、必要なことは介護度を上げないことであり、軽度者のサービスを縮小することは、重度化を進める可能性が高い。
安倍政権は「一億総活躍」を掲げているが、現実に行われていることは、弱者いじめとも言うべき施策である。

政府が2015年6月に閣議決定した「骨太の方針」では、福祉用具のレンタルを含む軽度者向けサービスの見直しが明記されている。
財務省は、訪問介護の生活援助やバリアフリー化の住宅改修費を介護保険の給付から外し、一部還付も念頭に置いた原則自己負担を主張し、厚生労働省社会保障審議会介護保険部会は年内の結論を目指し議論を進めているという。
弱者切り捨てでは福祉政策の名に値しない。
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東京新聞8月19日

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2016年8月22日 (月)

反戦のレジェンド・むのたけじ/追悼(94)

反戦平和を訴え続けた反骨のジャーナリストむのたけじ(本名武野武治)さんが、21日老衰のため死去した。
101歳だった。
アジア・太平洋戦争で大本営発表をそのまま報道した責任に向き合って、敗戦を機に朝日新聞社を辞めた。
1948年2月、故郷の秋田でタブロイド判2ページの週刊新聞「たいまつ」を創刊した。
同紙は米国占領下の検閲に屈せず、教育や農業問題を中心に社会の矛盾を掘り下げた。
戦後の時代を見事に生きた「反戦のレジェンド」と言えよう。
Photo
東京新聞8月22日

1936年に東京外国語学校(現・東京外大)卒業後、報知新聞、朝日新聞の社会部記者として活躍した。
1942年にインドネシア上陸作戦に従軍し、終戦日の45年8月15日に退社した。

一度は捨てたペンを握り「たいまつ」を創刊したのは、その前年の連合国軍総司令部(GHQ)が出した2・1ゼネスト中止命令への怒りだった。
「どんな悪い平和でもいい戦争に勝る。平和は意識的な戦いの中でしかつかめない」と説いた。
原点は、戦争中に3歳のまな娘を病気で亡くした経験だった。

私の高校時代からの友人で、某新聞社でジャーナリストとして活躍し、働き盛りに亡くなった友人が、高校時代に尊敬する人として、むのさんの名前を挙げていたのを思い出す。
その頃読んだ『たいまつ十六年 』が岩波現代文庫で復刊されている。
100歳を超えていたのだから、天寿を全うしたと言えよう。
合掌。

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2016年8月21日 (日)

唯一の被爆国の立場で核兵器に対しどう判断するか?/日本の針路(290)

安倍晋三首相は20日、羽田空港でオバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用政策への懸念を、自らがハリス米太平洋軍司令官に伝えたとする米紙報道について、「ハリス司令官との間において、アメリカの核の先制不使用についてのやりとりは全くなかった。どうしてこんな報道になるのか分からない」と述べ、否定した。
安倍首相は7月26日に官邸でハリス司令官と会談しており、ワシントン・ポスト紙が15日、安倍首相が「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」という趣旨の懸念をハリス米太平洋軍司令官に伝えたと報じている。
ワシントン・ポスト紙の誤報なのだろうか?

オバマ大統領がチェコの首都プラハで数万人の市民を前に演説し、「核なき世界」を訴えた。

「米国は、核兵器を使ったことがある唯一の核兵器国として、行動する道義的責任がある。私は、核兵器のない世界の平和と安全保障を追求するという米国の約束を表明する」核廃絶への国際的な制度強化を米国が主導する考えを表明したが、「核兵器が存在する限り、敵を抑止するための、効果的な核戦力を維持する」とも述べた。核実験の世界規模での禁止に向けては、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を目指すと表明。北朝鮮やイランのような核不拡散体制でのルール違反の国への対応として、罰則強化に取り組む考えも示した。
「人類の運命は我々自身が作る。我々の分断に橋をかけ、世界を、我々が見いだした時よりも平和なものにして去る責任を引き受けよう。共にならば、我々にはできるはずだ」
核なき世界 模索の8年

しかし、シリア情勢をめぐる緊張やウクライナ危機で米ロ関係は悪化し、北朝鮮も核実験を続けており、核兵器のプレゼンスは減るどころか高まっている。
ジュネーブの国連欧州本部で行われていた核軍縮に関する国連作業部会は最終日の19日、核兵器の法的禁止についての2017年の交渉入りを、「幅広い支持」を得て国連総会に勧告するとの報告書を賛成多数で採択した。
今秋の国連総会で議論が本格化する見通しで、核兵器禁止条約制定に向け大きく歩を進めることになりそうだが、日本は棄権した。
多数決の状況は、賛成68、反対22、棄権13であり、核禁止を巡る国際社会の亀裂が鮮明になった。
2160821
東京新聞8月21日

唯一の被爆国として核廃絶を訴える一方、米国の「核の傘」に依存する矛盾が現れた。
しかし、交渉入りには投票に参加しない国を含め加盟国過半数の107カ国が支持したという。
これだけの非核保有国が法規制を求めている事実を重く受け止めるべきだろう。

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2016年8月20日 (土)

SaaSとIaaSとPaaS/「同じ」と「違う」(97)

急速に市場が拡大したクラウドコンピューティング・サービスは、「提供対象」によって次のように分けられる。
(1)不特定多数を対象として提供されるパブリッククラウド(public cloud)
(2)同一企業内または共通の目的を有する企業群を対象として提供されるプライベートクラウド(private cloud)
(3)パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて利用するハイブリッドクラウド(hybrid cloud)

クラウド・サービスの代表例がSaaSと呼ばれるものである。
「SaaS」(Software as a Service:「サース」あるいは「サーズ」と発音)は、ソフトウェアをユーザー側に導入するのではなく、ベンダ(プロバイダ)側で稼働し、ソフトウェアの機能をユーザーがネットワーク経由で活用する形態を指す。
このようなサービスを従来はASP(Application Service Provider)と呼んでいた。
SaaSとASPの間に本質的な違いはない。
⇒2012年9月 2日 (日):ASPとSaaS/「同じ」と「違う」(51)

似たような概念にPaaS、IaaSがある。
PaaSは「Platform as a Service」の頭文字を取った略語で「パース」と読む。
アプリケーションソフトが稼動するためのハードウェアやOSなどのプラットフォーム一式を、インターネット上のサービスとして提供する形態のことを指す。

IaaSは「Infrastructure as a Service」の頭文字を取った略語で「イァース」と読む。
情報システムの稼動に必要な仮想サーバをはじめとした機材やネットワークなどのインフラを、インターネット上のサービスとして提供する形態のことを指す。
これまでホスティングサービスと言われてきたサービスとほぼ同じである。

IaaS、PaaS、SaaSは、ソフトウェアサービスを提供するのに必要な構成要素の提供段階によって区別することができる。
構成要素は大きく分けて、ネットワーク、ハードウェア、オペレーティングシステム(OS)、ミドルウェア、アプリケーション、の5つである。
基本的にはこの5つはこの逆順に依存関係にある。
アプリケーションはミドルウェアが無いと動作せず、ミドルウェアはOSが無いと動作しない。
Iaassaaspaas
知っておきたいIaaS、PaaS、SaaSの違い

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2016年8月19日 (金)

甘利不起訴問題と法務省人事/日本の針路(289)

あっせん利得処罰法違反容疑などで告発され、東京地検が不起訴とした甘利明・元経済再生担当相と元秘書2人について、東京第4検察審査会は、甘利氏について「不起訴相当」とし、元秘書2人については「不起訴不当」と議決した。
甘利氏は8月1日、約半年ぶりに国会に姿をあらわし、本会議場で安倍首相とにこやかにあいさつを交わしたうえで、「私の件は決着した」などと述べた。

 甘利氏は、1月末の辞任直後から「睡眠障害」の療養を理由に、半年余り国会を欠席していた。その間、東京地検は甘利氏と元秘書2人について、あっせん利得処罰法違反の罪などでの不起訴処分を決定。検察審査会は元秘書2人への再捜査を求める「不起訴不当」を議決したが、甘利氏については「不起訴相当」とし不起訴が確定した。
 甘利氏は1日、「本当に寝耳に水の事件で、青天のへきれき」と振り返った。その上で「ずっと申し上げてきた事実関係が理解されたものだと思うが、築いてきた信用は落としてしまった。今まで以上に国民のためにできることをやりたい」と話した。弁護士に依頼した元秘書2人らに関する調査は検察の再捜査後に報告書をまとめる予定だという。
甘利氏「私の件は決着した」 閣僚辞任後初めて国会登院

まったく不可解な決着であるが、この裏で、法務省の黒川弘官房長が事務次官に昇格するという人事があった。

Photo 黒川新事務次官は、甘利明前経済再生担当相の口利きワイロ事件の際、野党から事件をを握りつぶした“黒幕”として名前があがった人物だ。民進党のプロジェクトチームが法務官僚を呼んでヒアリングをした際、「黒川さん、その辺りのラインですべてを決めているんじゃないか」と名指しされたことがある。果たして、この人事は法を歪めて政権に協力した論功行賞なのか。
 この人事発表の翌16日には、東京地検特捜部が甘利氏の元秘書2人を再び不起訴処分(嫌疑不十分)とすることを発表。あまりに絶妙過ぎるタイミングである。特捜部は「総合的に判断して(あっせん利得処罰法の)構成要件に当たらない」と説明しているが、元秘書2人は約1300万円ものワイロを受け取り、甘利氏本人も大臣室で50万円の現金をもらっている。これが犯罪でなくて何だというのだ。
甘利ワイロ事件 握りつぶした“黒幕”が事務次官昇格の仰天

特捜部は同法の構成要件である「国会議員の権限に基づく影響力の行使」について、「『言うことを聞かないと国会で取り上げる』などの極めて強い圧力を指し、一般的な口利きにはあたらない」と解釈し、嫌疑不十分で不起訴としたが、政治家に甘い処分であることは明らかである。
ワイロを渡した人が「渡した」と録音テープまで残しており、もらった側も「もらった」と認めているのである。
これで不起訴になるなら、何でもアリだろう。

検察審査会の議決は、贈った側のの総務担当者から元秘書への計約1300万円にのぼる現金提供については、「請託を受けてあっせんしたことの報酬、謝礼として行われたとみるのが自然だ」と結論付け、再捜査の必要があると判断した。
一方で、甘利氏については、「元秘書と共謀していたことをうかがわせる証拠はない」とし、不起訴相当だという。
小沢一郎氏の政治資金規正法違反事案と比べ、アマリにも対照的である。
⇒2012年2月18日 (土):小沢裁判に対する疑問

菅官房長官と“蜜月関係”にある黒川氏は、裏で検察、法務省を牛耳っているという。
検察の正義は何処にありや?

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2016年8月18日 (木)

全総と共に生きた計画の人・下河辺淳/追悼(93)

元国土事務次官の下河辺淳氏が、13日亡くなった。
92歳だった。
1947年に東京大学第一工学部建築学科を卒業した。
在学中に終戦を迎えたため高山英華氏の下で戦災復興都市計画に参画し、卒業後戦災復興院に勤務した。

1961年、「工業地の立地条件 - 計画単位及び必要施設に関する研究」で、日本都市計画学会石川賞論文調査部門受賞。
1962年からは経済企画庁総合開発局。「国土の均衡ある発展」を謳い、戦後日本における国土開発の根幹をなした全国総合開発計画(通称「全総」、1962年閣議決定)の策定に携わる。以後、2000年の21世紀の国土のグランドデザイン(五全総)に至るまで、長らく国土開発・国土行政に力を及ぼし続けた。1977年、国土事務次官に就任。1979年退官し、総合研究開発機構(通称NIRA)の理事長に就任。
退官後も「多極分散型国土」を掲げる第四次全国総合開発計画(四全総)の策定にも尽力。1992年から株式会社東京海上研究所理事長。「ボランタリー経済」に取り組む。社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)裁定委員会委員などを経て1995年からは阪神・淡路大震災復興委員会委員長として復興政策の立案に参画。 2003年に下河辺研究室を設立。
下河辺淳-Wikipedia

全総の系譜は以下のようである。
Photo_2
成長戦略とガバメント・リーチ

私は、三全総の頃、リサーチャーをやっていた。
NIRAがスタートした頃、リサーチャーから転向したが、リサーチの世界の頂点にいた人と言えよう。

Photo_3米軍用地強制使用手続きを巡る代理署名訴訟で、大田県政と橋本政権との関係が緊張した際、梶山静六官房長官の要請で沖縄と政権との間を仲介した。「沖縄問題を解決するために」とする「下河辺メモ」は大田知事と橋本首相を和解に導いた。
下河辺淳氏が死去 普天間返還にも深い関わり 大田県政と政府を仲介

市場主義が優位になり、国土計画の存在感が薄くなっている。
安倍政権に至っては、「PDCAサイクル]さえない。
⇒2016年5月14日 (土):PDCAなき安倍政権の政策/アベノポリシーの危うさ(64)
⇒2016年7月25日 (月):アベノミクスの帰結としてのヘリコプターマネー/アベノポリシーの危うさ(93)

しかし政策に計画は不可避である。
今、この人が現役ならば、どう考え、行動していたであろうか。
合掌。

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2016年8月17日 (水)

野武士から評論家へ・豊田泰光/追悼(92)

元西鉄ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)遊撃手で、引退後は辛口の野球評論家として活躍した豊田泰光さんが14日、肺炎のために亡くなった。
茨城県出身で81歳だった。

Ws000001_2 1952年に水戸商高の主力として夏の甲子園に出場。選手宣誓を務め、翌年西鉄に入団。守備よりも打撃が評価され、1年目から遊撃手のレギュラーとなり、115試合で27本塁打、打率2割8分1厘で新人王を獲得。56年には巨人との日本シリーズでMVPを獲得、以後57年は優秀選手、58年は首位打者と西鉄黄金時代となった3年連続日本一に貢献した。
 62年に中西太選手兼任監督の補佐として選手兼任で助監督を務めたが、翌年は国鉄(現ヤクルト)に移籍。69年に17年の現役生活にピリオドを打った。通算成績は1814試合に出場し、1699安打、263本塁打、打率2割7分7厘。
 引退後は72年に近鉄でコーチとなった以外は、スポニチ本紙特別編集委員を務めるなど評論家として活動。ニッポン放送、文化放送、フジテレビで評論、解説を行い、93年から2013年まで「週刊ベースボール」誌上でコラム「豊田泰光のオレが許さん!」を1001回にわたって執筆した。辛口で愛情のある評論はファンにも親しまれた。
元西鉄の強打者 豊田泰光さん死去 81歳 辛口評論でも人気

西鉄の黄金時代のことは、数々の語り草を遺している。
「神様、仏様、稲尾様」と言われた稲尾和久投手をはじめ、打線は別名流線型打線である。

西鉄黄金時代の監督・三原脩は、三宅大輔などの理論をふまえ、1番に一発もあるバッティングの巧い打者を据え、2番に入っている強打者で一気に得点を挙げ、3番に最強打者を、4・5番に長距離打者を、という、それまでの野球界の常識を覆す打線論を提唱した。それがこの流線型打線である。それなりの選手が揃っていなければ組めないものであるが、当時の西鉄にはそれを可能にするだけの面々が揃っていた。流体力学から着想を得たという説もあるが、真偽のほどは不明である。
Ws000002
Wikipedia-流線型打線

2番の豊田泰光は、2番打者でありながらクリーンナップ並の成績を挙げている。
恐怖の2番打者の先駆けである。

1969年のシリーズ終了後に引退し、1973年以降、評論活動を続けている。
『週刊ベースボール』にはコラム「豊田泰光のオレが許さん!」を1993年から2013年に終了するまでに通算1001回にわたって連載し、日本経済新聞ではスポーツ欄にコラム「チェンジアップ」を1998年から2013年まで続けていた。
文武両道の人だった。
合掌。

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2016年8月16日 (火)

大文字の送り火/京都彼方此方(11)

京都の名物行事・伝統行事「五山の送り火」の日である。
京都は生憎余り良い天気ではなく、市内からは見えないところが多かったようだ。

毎年8月16日に
 ・「大文字」(京都市左京区浄土寺・大文字山(如意ヶ嶽)。20時00分点火)
 ・「松ヶ崎妙法」(京都市左京区松ヶ崎・西山及び東山。20時05分点火)
 ・「舟形万灯籠」(京都市北区西賀茂・船山。20時10分点火)
 ・「左大文字」(京都市北区大北山・左大文字山。20時15分点火)
 ・「鳥居形松明」(京都市右京区嵯峨鳥居本・曼陀羅山。20時20分点火)
以上の五山で炎が上がり、お精霊(しょらい)さんと呼ばれる死者の霊をあの世へ送り届けるとされる。
Photo
Wikipedia-五山送り火

京都では「送り火」とか「大文字さん」と呼んでいる。
よく「大文字焼き」という人がいるが、ネイティブ京都人はそういう言い方はしない。
山焼きではなく、宗教的行事である。

起源は諸説あるがはっきりしない。
1.  平安初期「空海」説
かつて大文字山のふもとにあった浄土時が火事になったときに、本尊の阿弥陀仏が山上に飛来して光明を放ったと伝えられています。
この光を弘法大師(空海)が大の字型に改めて火を用いる儀式にしたという説
2、 室町中期「足利義政」説
1499年、足利義政が近江の合戦で死亡した息子・義尚の冥福を祈るために、家臣に命じて始めたとの説。
3. 江戸初期「能書家・近衛信尹」説
1662年に刊行された書物「案内者」の中に「大文字は三藐院殿(近衛信尹)の筆画にて」の記述がある。

五山の送り火も、先祖の霊を天国に送るお盆の行事である。
自らが健康で元気な毎日を送れていることに感謝し、鎮魂の気持ちでお祈りを捧げるものと言われる。
基本的には、点火された時に大声を出したり、騒いだりするようなものではない。眺める場所は鴨川などが一般的であろう。
昔、京都大学理学部の校舎の屋上に上がって見たことがある。
左大文字の如意ケ嶽(大文字山)は目の前であり、絶好のポジションだったが、今では管理が厳しくなっているというから難しいだろうなあ。
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2016年8月15日 (月)

敗戦記念日の雑感/永続敗戦の構造(4)

天皇陛下は、全国戦没者追悼式に出席され、以下のように述べられた。

過去を顧み,深い反省とともに,今後,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
主な式典におけるおことば(平成28年)

今年のお言葉は昨年の踏み込んだお言葉から、「深い反省」のみを残し、全体は一昨年以前の「定型」に戻られた。
昨年は、安倍首相の談話等もあったので、かなり意識されたのであろう。
⇒2015年8月15日 (土):安倍首相の「70年談話」を読む/日本の針路(213)
⇒2015年8月16日 (日):追い込まれつつある安倍首相/日本の針路(214)

ゴジラ映画の最新作『シン・ゴジラ』が公開中である。
未見であるが、「シン」は「新・真・神」等の意味で、「現実対虚構」というキャッチコピーに「ニッポン対ゴジラ」というルビが振ってある。
現実の日本に対し、ゴジラは何のメタファー(隠喩)なのだろうか?

東日本大震災からの復興構想会議の議長代理を務めた御厨貴氏は、震災直後に『「戦後」が終わり、「災後」が始まる』という評論を書いた。
震災から5年半経とうとしているが、果たして「戦後」は終わったのか、また「災後」になっているのだろうか?

天皇陛下の生前退位のご意向に対し、日本会議等安倍首相に近い思考の人々が、反発しているという。
日本会議自身のサイトでは、8月2日付で以下のような見解が載っている。

◎いわゆる「生前退位」問題に関する日本会議の基本見解について
七月十三日夜のNHKニュースが「天皇陛下『生前退位』の意向示される」と報じたことを発端として、現在、諸情報がマスコミ各社によって報道されている。しかし、その多くは憶測の域を出ず、現時点で明確なのは、政府および宮内庁の責任者が完全否定している事実のみである。
この段階で、天皇陛下の「生前退位」問題に関連して本会が組織としての見解を表明することは、こと皇室の根幹にかかわる事柄だけに適当ではないと考える。確証ある情報を得た時点で、改めて本会としての見解を表明することを検討する。平成28年8月2日
いわゆる「生前退位」問題に関する日本会議の立場について

ビデオメッセージ公開から1週間経つが、サイトの更新はない。
安倍首相のお気に入り稲田朋美防衛大臣は、「国に命をかける者だけに選挙権を」という反動丸出しの主張をしている。
もちろん、「国民が国に命をかける」のではなく「国が国民の命を守る」のが第一義であるのは言うまでもない。
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福島第一原発事故の教訓を何ら生かすことなく、川内原発に続き、伊方原発を稼働させた。
⇒2016年8月13日 (土):伊方原発3号機再稼働批判/技術論と文明論(62)
福島第一原発事故で、メルトダウンした核燃料(デブリ)をどう処理するのか、未だ方針が立てられていない。
いったん記述された「石棺方式を含め、状況に応じて柔軟に対応する」という計画案が削除された。
状況把握もできていないのが現状で、原発事故はまさに進行中の事態である。
決して「災後」と言える状況ではない。

同様に「戦後」は終わっていない。
日本会議や安倍首相のシンパなどは、戦前の「国体」への回帰が悲願なのだ。
⇒2016年8月 9日 (火):天皇陛下のお気持ちと護憲/日本の針路(285)
⇒2016年8月14日 (日):日本をダメにする日本会議という存在(2)/日本の針路(288)

白井聡氏が『永続敗戦論ー戦後日本の核心』太田出版(2013年3月)で指摘した構造は、より明確になりつつある。
⇒2016年6月 8日 (水):誤りを謝らなくてもいい口実/永続敗戦の構造(3)
⇒2016年6月 6日 (月):伊勢志摩サミットとは何だったのか/永続敗戦の構造(2)

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2016年8月14日 (日)

日本をダメにする日本会議という存在(2)/日本の針路(288)

八月八日に天皇陛下が「象徴天皇としての務め」についてのお気持ちを、ビデオメッセージとして公表された。
2
天皇陛下が生前退位の意向 1年以上前から

受け止め方は人によって異なるだろうが、私は、全身全霊で象徴天皇の務めを果たしてこられたこと、高齢化でそれが困難になりつつあることを率直に語られて、深い感銘を受けた。
⇒2016年8月 9日 (火):天皇陛下のお気持ちと護憲/日本の針路(285)

ところが、お気持ちを改憲に利用しようとするフジ産経グループには仰天させられた。

「天皇陛下の生前退位『制度改正急ぐべき』70・7% 『必要なら憲法改正してもよい』84・7%」(産経ニュース8日付)
「『生前退位』可能となるよう改憲『よいと思う』8割超 FNN世論調査」(FNNウェブサイト8日付)
 天皇がビデオメッセージで「お気持ち」を表明したその日、こんな驚愕の見出しをぶったのは、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)だ。
フジ産経が「天皇の生前退位のために改憲が必要」のデマにもとづく詐欺的世論調査を実施! 安倍政権もグルか

生前退位は皇室典範の問題であって、憲法改正の必要などまったくない。
安倍政権周辺は、生前退位に反対らしい。

 実は7月にNHKが「生前退位ご希望」の第一報を打った際、菅義偉官房長官は報道に激怒し、そのあとも政府関係者からは「生前退位は難しい」という慎重論ばかりが聞こえてきていた。「国務を減らせば済む話」「摂政で十分対応できる」、さらに「天皇が勝手に生前退位の希望を口にするのは、憲法違反だ」という声も上がっていた。
 また、安倍政権を支える「日本会議」などの保守勢力からはもっと激しい反発が起こっていた。たとえば、日本会議副会長の小堀桂一郎氏は産経新聞で「生前退位は国体の破壊に繋がる」との激烈な批判の言葉を発している。
「何よりも、天皇の生前御退位を可とする如き前例を今敢えて作る事は、事実上の国体の破壊に繋がるのではないかとの危惧は深刻である。全てを考慮した結果、この事態は摂政の冊立(さくりつ)を以て切り抜けるのが最善だ、との結論になる」(産経新聞7月16日付)
 安倍政権の御用憲法学者で、日本会議理事でもある百地章・日本大学教授も朝日新聞にこう語っていた。
「明治の皇室典範をつくるときにこれまでの皇室のことを詳しく調べ、生前退位のメリット、デメリットを熟考したうえで最終的に生前譲位の否定となった。その判断は重い。生前譲位を否定した代わりに摂政の制度をより重要なものに位置づけた。そうした明治以降の伝統を尊重すれば譲位ではなくて摂政をおくことが、陛下のお気持ちも大切にするし、今考えられる一番いい方法ではないか」(朝日新聞7月14日付)
天皇が「お気持ち」で生前退位に反対する安倍政権や日本会議へ反論! 象徴天皇を強調して戦前回帰けん制も

「国体の破壊」などというアナクロニズムを、現在堂々と発言するのも驚きである。
百地章・日本大学教授は、集団的自衛権合憲説を唱えた例外的な学者(?)であるが、このような人たちと思考を一にしているのが安倍政権である。
⇒2015年6月23日 (火):不可解な百地章教授の憲法九条解釈/日本の針路(184)

小堀桂一郎や百地章などがリーダー的地位にある日本会議は、やはり亡国的だ。
⇒2015年12月26日 (土):日本をダメにする日本会議という存在/日本の針路(268)

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2016年8月13日 (土)

伊方原発3号機再稼働批判/技術論と文明論(62)

四国電力は伊方原発3号機を再稼働させた。
福島原発事故から何を教訓としたのか?
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東京新聞8月13日

福島第1原発事故から5年5カ月過ぎた。
依然として多くの人が避難生活を強いられており、収束のめどは立っていない。
東京五輪招致のため、安倍首相がコントロールされていると宣言した汚染水は深刻な事態のままである。

 福島第1原発建屋に滞留している汚染水問題で、原子力規制委員会の検討会は19日、早急に処理して量を減らすことを検討するよう東電に指示した。高濃度の放射性物質で汚染されており、再度の津波で流出すれば甚大な環境被害が生じることを懸念している。
 同原発1〜4号機の原子炉とタービンの両建屋には計約6万トンの水がたまっている。東電はポンプでくみ出し、技術的に除去が難しいトリチウム以外の放射性物質を取り除いた後に、別の場所に置いているタンクに貯蔵している。しかしタンクの増設が間に合わず大量に処理できないうえ、新たに地下水が流れこんでいるため滞留水が減っていない。東電は建屋を凍土遮水壁で囲うなどしているが効果は表れていない。
福島第1原発事故 滞留汚染水対策、東電に検討指示 規制委

山本太郎氏は以下のように言っているが同感である。

熊本地震の原因になった、日奈久断層帯と布田川断層帯は、国内最大級の活断層「中央構造線」の延長線上にあり、伊方原発もその近くに立地する。
断層帯が飛び火的に動く可能性もあり、熊本地震規模以上の地震が起こる可能性がある事は、皆さんご存知の通り。
それに耐えられる安全対策など、できるはずもない。
熊本地震で目の当たりにした家屋の倒壊、道路などの寸断。
事故が起こった際に被曝を避ける屋内退避や、車両による避難、バスでお迎えにあがります、という避難の想定事体がどれほど現実味がないか、子どもでも理解できること。
なにより、避難計画が成り立っていない事を、1番判りやすく示しているのが、伊方原発の西側、佐田岬半島の暮らす住民に対しての避難計画。
有事には、佐田岬から船で九州側に船で避難するという。
津波が来ている状況で、どうやって船で避難出来るというのか。
モーゼがやってきて海でも割ってくれるというのだろうか。
無責任を通りこして、おめでたい状況に陥っている。
避難計画でなく、現実逃避と呼ぶべきではないか?
大規模な震災、伊方原発に過酷事故が起こった場合、愛媛の人々のみならず、大分、高知、山口、 広島などの周辺自治体住民も、避難民になる恐れがある。
正気とは思えない

周辺自治体・住民の多くが避難について不安に思っているが、原子力規制委員会は、避難については審査しないし、かかわらない。
不安の生じるような場所には立地してならないのだ。

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2016年8月12日 (金)

ウナギの傾向と対策(2016年版)/日本の針路(286)

今年の「土用丑の日」は7月30日だった。
三島市はウナギの泥臭さを富士山の湧水で取り除いて提供することから、ウナギが名物食の一つになっている。
⇒2015年7月24日 (金):ウナギの傾向と対策(2015年版)/日本の針路(201)

しかしウナギが高騰していることから、最近は余りウナギを食する気にもならない。
「Wedge」の8月号が、『「土用の丑の日」はいらない』という特集記事を載せている。
「土用の丑の日」という業界最大のイベントが、密輸や密猟などの違法行為によって支えられているという。
ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されたというニュースを聞いたのは5年ほどまえであろうか。
しかし絶滅が危惧されているのは、ニホンウナギに限らない。
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Wedge2016年8月号

シラスはマリアナ海溝で生まれて黒潮にのって日本にやってくる。
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同上

黒潮が日本にやってくる手前の台湾で、日本の養鰻業者が大量に捕獲する。
シラス価格の上昇は、ウナギの価格上昇になり、消費者が負担するのだ。
そろそろウナギ狂騒曲は終焉すべきではなかろうか。



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2016年8月11日 (木)

人口変化と地域スポンジ化への対応/日本の針路(287)

少子高齢化のトレンドは一朝一夕には変化しない。
現在の出生率、死亡率を基にすれば、2010年に1億28百万人余だった日本の人口は、2060年には87百万人弱まで減少すると推計されている。
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東京新聞7月23日

人口増大期には、都市空間が急速に拡大してきたが、今は高齢者施設が次々と作られている。
都市が拡大する過程では、無秩序に拡大するスプロール化が問題になった。
1968年に、新・都市計画法が制定され、開発を促進する地域(市街化地域)と原則的に開発を認めない地域(市街化調整区域)を線引きして対処してきた。
しかし結果的には都市化と共に、土地の細分化が進むことになった。

人口減少期への移行により、都市は細分化されたままで、密度が薄くなっていく。
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人口減少化における地域スポンジ化のモデリング

それぞれの所有者の事情に応じ、随時、売却されたり空き家になったりしていく。
すなわちスポンジ化である。
スポンジ化が進むにつれ、インフラ維持は効率が低下する。
そこでコンパクトシティという考え方が重要になってきた。
街の中心部に集中的にインフラ投資をして、周辺部からの移住を誘導するのである。
首都大学東京准教授の饗庭伸氏は『都市をたたむ  人口減少時代をデザインする都市計画』花伝社(2015年12月)で、人口減少社会における都市計画のあり方のキーワードとして「たたむ」を提起している。
「たたむ」の英訳は「shut down」ではなく、「fold up」、つまり風呂敷を「たたむ」の用法である。
いずれまた「開く」かもしれないというニュアンスが込められている。
可逆性をもった計画ということであろう。

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2016年8月10日 (水)

浜岡原発撤退の論理と倫理(12)/技術論と文明論(61)

全国的に記録的な猛暑であるが、電力不足の声は聞かれない。
全国レベルの電力需要の状況を、震災前の2010年度から震災後の2015年度までグラフにすると以下の通りである。

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年間の需要電力量は2010年度の1兆66億kWh(キロワット時)から減り続けて、2015年度には10.2%少ない9041億kWhまで縮小した。震災直後の2011年度に大幅に減少した後、2012年度と2013年度は1%前後の微減にとどまったが、2014年度と2015年度には2%前後の減少率になっている。LED照明をはじめ電気製品の消費電力が着実に小さくなることを想定すると、今後も全国の需要電力量は年2%程度のペースで縮小していく可能性が大きい。
震災から5年間の電力需要、全国で10%縮小するも地域で開き

東京都は電力の大消費地であるが、エネルギー問題は都知事選の争点にならなかった。
小泉元首相と共に脱原発に尽力する数少ない経済人の吉原毅城南信用金庫相談役は次のように言っている。

「福島第一原発事故が起きてから5年が経過し、国民の間に関心が薄らいでいるといわれますが、高濃度の放射能汚染は何千年たっても解決される見通しがありません。電力会社と政府、財界が進めてきた原発政策が破綻しているにもかかわらず、目先の利権のために再稼動が行われようとしている。こうした社会的不正義を是正するのは、やはり政治の力です。
 参院選では原発とエネルギーを争点とした選挙が行われるべきでした。しかし、与党のみならず野党にも原発推進勢力が根強く存在し、意図的に争点から外しています。これが『野党共闘』に国民が信頼を置かない大きな原因となっている。
 都知事選も同じです。福島や新潟の原発の電力を使うのは東京都民で、大きな争点にならなければなりません。
吉原毅・城南信用金庫相談役「都知事選でも原発を大きな争点に!」

この夏は東日本大震災が起きてから初めて、政府が節電を呼び掛ける「節電要請」がない。
家庭や企業で節電の取り組みが広がって使う電力が少なくなったことと、太陽光発電など再生可能エネルギーが普及し電力の供給力も高まったのが理由である。
原発ゼロでも余裕があるということである。 

8今年の政府の見通しでは、沖縄を除く大手電力九社の電力の供給力は、最も消費が高まる八月でも9・1%余る計算だ。既に稼働している九州電力の川内原発1、2号機(計百七十八万キロワット)が停止し「原発ゼロ」になったとしても、7%ほどの余裕がある。電力業界が強調してきた「電力を安定して供給するためには原発が必要」との説明は、説得力を失いつつある。
 余裕が高まってきた背景には、節電が定着し電力の消費が減ってきたことがある。コンビニなどの店舗や企業、家庭では消費電力が少ない発光ダイオード(LED)の照明も増加。経産省のまとめでは、今年八月に必要な電力の予想は最大一億五千五百五十万キロワット。過去最大だった二〇一〇年より約14%減る見通しだ。
 さらに今年四月から家庭も電力会社を選べる「電力の自由化」が始まり、毎日の消費電力量を細かく見られる「スマートメーター」も普及。「家庭が電力について考え、小まめにチェックすることで節電はさらに進む」(自治体職員)と期待されている。
 供給力も増えてきた。太陽光を中心とする再生可能エネルギーの最高出力は八月時点で七百六十八万キロワットになる見通しで、三十万キロワットだった一〇年の二十五倍超。原発七~八基分に当たる。今後も出遅れている風力発電所なども含め、再生エネは増え続ける見通しだ。
「節電要請」ない夏に 再生エネ増で大震災後初

節電と再生エネ供給の増大は必然的なトレンドである。
もはや現在の状況で原子力発電の稼働を急ぐべき理由はない。

二酸化炭素の排出量を減らすために、原発を稼働すべきだという声もあるが、二酸化炭素と地球温暖化の因果関係についてはもっと検証すべきだ。
気温を変化させる要因としては昔から、ミランコビッチ・サイクル、太陽活動、黒点の増減、
宇宙線、地磁気、エルニーニョ、ラニャーニャ、偏西風、太平洋震動、ダイボールモード現象、水蒸気、火山の噴火、エアロゾル、太陽光線を反射するアルベド効果など諸説ある。
原発震災の危険性を指摘した広瀬隆氏は、『二酸化炭素温暖化説の崩壊』集英社新書(2010年7月)において、アラスカ大学国際北極圏研究センター所長・赤祖父俊一氏の『正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために』等の文献も引用して、
二酸化炭素の増加と気温の上昇になんの関係もないことを主張している。

二酸化炭素と核廃棄物と処理の容易性や影響の大きさを考えれば、核を是とすることには絶対にならない。
とりわけ危険な浜岡原発は、真剣に廃炉を検討すべきではないか。

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2016年8月 9日 (火)

天皇陛下のお気持ちと護憲/日本の針路(285)

昨日発表された天皇陛下のお気持ちのビデオメッセージは、さまざまなことを考えさせられるものであった。
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東京新聞8月9日

「国民の理解を得られることを、切に願っています」と結ばれている。
どう理解すべきであろうか?

先ず「このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」とある。
長い天皇の歴史において、「象徴天皇」として即位されたのは初めてである。
日本国憲法にそう規定されているからである。

このことを「アメリカが決めた」という人もいる。
しかし、象徴天皇は国民の間に定着しているのではないか。
象徴とはいわゆるシンボルであるが、具体的にはどう考えるか?
天皇ご自身は「私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」のである。
そして、「天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じ」、「日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて」行ってきたのである。

真摯に「天皇の象徴的行為」を考え、履行してきたという自負である。
決して、アメリカに押しつけられ、嫌々ながらやってきたと言うことではない。
もし、現憲法が押しつけだから、改憲すべきだという人たちは、天皇陛下のお言葉をどう受け止めるのであろうか?

ちなみに自民党の憲法草案では、「元首」と明記されているが、「日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」の部分は変わっていない。
「象徴天皇」であることは、同じであると考えられる。

特に、高齢化社会との関係について触れられていたのが印象的であった。
「社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか」、「高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処し」、「健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念され」ると語られた。

「健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合」とは、例えば昭和天皇のことを考えれば、思い至るのではないか。
私は、国民が過度の「自粛」にならないよう、戒めたものと受け止めた。
それは、「天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ二ヶ月にわたって続き、その後喪儀(そうぎ)に関連する行事が、一年間続き」とあることからも窺える。

徹頭徹尾、憲法を尊重する立場から、「天皇の務めとは何か、それをどう履行するか」を考えておられるのだ。
改憲に利用しようなどと言うのは、不敬以外の何ものでもあるまい。

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2016年8月 8日 (月)

誕生日の雑感

天皇陛下が、象徴としての務めに関するお気持ちをビデオメッセージで表明された。
保阪正康氏は、「現代の玉音放送」と語っていたが、確かに天皇自身の思いが強く滲んだものであった。

「天皇は国政に関する権能を有しない」との憲法の規定からも、制度に関わる具体的な文言は避けられ、同時に現行の憲法を遵守するという強い姿勢の表れが感じられるものでもあった。
生前退位の制度上の問題はこれからしかるべき形で検討されるであろうが、憲法に規定されている象徴天皇のあり方を真摯に追求されていることが伝わってきた。

今日は私の誕生日であるが、この日に玉音放送がされるということも感慨深い。
8月はお盆と敗戦の日があって、否応なしに来し方行く末を意識させられる。
今年は特に7月に、親しい人との永訣が続いた。
2人とも私より幾分か若年であり、必然的に自分の「死」も考えざるを得ない。
また、永六輔、大橋巨泉など、電波時代を牽引してきた才人たちが相次いで亡くなったことも時代の変わり目を感じさせる。

今日で満72歳になるが、親しい同級生も2割くらいは亡くなった。
この間まで、話をしていた人が、もうこの世の人ではないというのは不思議というか受容し難い気がするが、生あるものは死すということである。

私自身は脳梗塞の発症から6年半ほどが過ぎた。
幸いにして今のところ再発せず、後遺症はほぼ症状固定しているが、少しずつではあるが改善していることも自覚できる。
特に顕著なのは歩容である。
麻痺足が外を回るようにしか出せなかったものが、だいぶ真っ直ぐ前に出せるようになってきた。
もちろん、上肢は依然として不自由であり、見れば脳梗塞患者であることは直ぐ分かる。

ADL(日常生活活動)は辛うじてではあるが、自立でできる。
昨日まで、同世代のグループで3泊4日の旅行をしてきた。
発症後の最長記録である。
日常的には使用していない杖を持って出かけたが、やはり杖があった方が身体の負担は軽減される。
その一方、健常側の手を杖で占有されるので、不便なことも多い。
不自由であることは当然であるが、まあ良しと考えるしかないだろう。

日本人の寿命は依然として延伸している。

Photo_3 二〇一五年の日本人の平均寿命は女性八七・〇五歳、男性八〇・七九歳で、いずれも過去最高を更新したことが、厚生労働省が公表した簡易生命表で分かった。女性は一四年まで三年連続で長寿世界一だったが、一五年は香港(八七・三二歳)に次ぎ世界二位となった。男性は前年の三位から四位に下がった。一四年に比べ女性は〇・二二歳、男性は〇・二九歳延びた。
日本人の平均寿命が過去最高を更新 女性は世界2位に

世界一は譲っても、寿命が延伸している事実に変わりはない。
7月に亡くなった2人は共に女性で、死因はガンである。
もし、ガン検診で早期に発見できていれば、事態は変わっていたかも知れない。
60歳代後半と70歳であり、平均寿命が87歳から見るとやはり「未だ・・・」と思わざるを得ない。
日本人の年代別死因は下図のようである。
Photo_3Photo_4

男女年齢別死因

70歳前後はやはり悪性新生物(ガン)が50%程度である。
残りの生がどれ位かは神のみぞ知るであろうが、今更ではあるにしても悔いなきようにしたいとは思う。

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2016年8月 7日 (日)

ゲーム理論と「囚人のジレンマ」/知的生産の方法(154)

ハンガリー生まれの数学者のジョン・フォン・ノイマン提唱した「ゲーム理論」という数学がある。
ゲーム理論とは、複数のプレイヤーが択するそれぞれの戦略が、当事者や当事者の環境にどのように影響するかを分析する理論である。
2人以上のプレイヤーが利害関係にあるとき、どのような結果が生じるかを示し、どのように意思決定するべきかを教えてくれる理論である。
1926年に誕生した。

プレイヤーは国家、組織、個人等々である。
最も有名な例は「囚人のジレンマ」と呼ばれるものであろう。

共同で犯罪を行ったと思われる囚人A、Bを自白させるため、検事は2人に次のような司法取引をもちかけた。
• もし、お前らが2人とも黙秘したら、2人とも懲役1年だ。
• だが、お前らのうち1人だけが自白したらそいつはその場で釈放してやろう(つまり懲役0年)。この場合自白しなかった方は懲役10年だ。
• ただし、お前らが2人とも自白したら、2人とも懲役5年だ。

この時、2人の囚人は共犯者と協調して黙秘すべきか、それとも共犯者を裏切って自白すべきか、というのが問題である。
なお彼ら2人は別室に隔離されており、相談することはできない状況に置かれているとする。
囚人A、Bの行動と懲役の関係を表(利得表と呼ばれる)にまとめると、以下のようになる。
Photo
「囚人のジレンマ」からみる他者の視点、顧客目線 その2

囚人2人にとって、互いに裏切り合って5年の刑を受けるよりは互いに協調し合って1年の刑を受ける方が得である。
しかし囚人達が自分の利益のみを追求している限り、互いに裏切り合うという結末を迎える。すなわちジレンマである。

このようなジレンマが起こるのは以下の理由による。
まずAの立場で考えると、Aは次のように考えるだろう。
• Bが「協調」を選んだ場合、自分 (=A) の懲役は1年(「協調」を選んだ場合)か0年(「裏切り」を選んだ場合)だ。
だから「裏切り」を選んで0年の懲役になる方が得だ。
• Bが「裏切り」を選んだ場合、自分 (=A) の懲役は10年(「協調」を選んだ場合)か5年(「裏切り」を選んだ場合)だ。
だからやはり「裏切り」を選んで5年の懲役になる方が得だ。

以上の議論により、AにとってはBがどのような行動をとるかによらず、Bを裏切るのが最適な選択ということになる。
よってAはBを裏切ることになる。
以上の事情はBにとっても同じであるため、BもAと同一の考えによってAを裏切るのが最適な選択である。
したがって実現する結果は (裏切り, 裏切り) 、すなわち両者とも5年の懲役となる。

重要なのは、相手に裏切られるかもしれないという懸念や恐怖から自分が裏切るのではなく、相手が黙秘しようが裏切ろうが自分は裏切ることになるという点である。
このため仮に事前に相談できてお互い黙秘をすると約束していたとしても(それに拘束力が無い限りは)裏切ることになる。

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2016年8月 6日 (土)

「衆議」と「公論」/「同じ」と「違う」(96)

今回の参院選から、選挙権が18歳以上に変更になった。
⇒2016年6月22日 (水):今回参院選の意義/日本の針路(272)
2014年6月に施行された改正国民投票法により、憲法改正に必要な国民投票の資格年齢は、満20歳以上から満18歳以上へと引き下げられ、それに伴う法改正である。
選挙権の拡大は、世界的な趨勢と言えよう。

国立国会図書館の調査では、世界の190あまりの国と地域のうち、選挙権の対象の最少年齢を満18歳か、それ以下とする国は176か国である。オーストリアやアルゼンチンなどのように、満16歳以上としている国もある。また、被選挙権を含めて満18歳以上へと引き下げている国も少なくない。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

御厨貴氏の『「戦後」が終わり、「災後」が始まる。 』千倉書房(2011年11月)に、読売新聞の2011年1月31日に載った『衆議院解散の劇薬しかない』というコラムが収録されている。
東日本大震災に1ヶ月弱前で、菅政権の行き詰まりが誰の目にもはっきりした時期である。
御厨氏は次のように書いている。

 そこから大久保は「衆議」と「公論」を峻別し、「異物変則」と「本物正則」の緊張関係を自覚して〝統治〟の方法として用いることを説いた。「烏合の衆」から脱しえぬ政府に当座必要なことは、無責任かつ無定見な「衆議」から、国家のあるべき姿を映し出す「公論」を紡ぎ出し、理想としてあるべき「本物正則」を忘れることなく、あえて速攻的実現が可能な「異物変則」を用うべし、ということに他ならない。
 こうして「死の跳躍」を試みた維新政府によって、日本はアジアで唯一の近代国家となることに成功する。ところが今の日本が直面しているのは、中国や韓国をはじめとするアジア諸国の中で、唯一の停滞国家になりつつある事態だ。

18歳選挙権は、1945年(昭和20)に満25歳以上から満20歳以上に引き下げられて以来のことであるが、果たして「国家のあるべき姿を映し出す「公論」を紡ぎ出」すことに寄与するであろうか?
私は暗い気持ちにならざるを得ない。
というのは、わが国で普通選挙が実現したのは、男子については大正14年(1925)であった。
ほぼ同時に施行されたのが治安維持法であった。

1925年(大正14年)1月のソビエト連邦との国交樹立(日ソ基本条約)により、共産主義革命運動の激化が懸念されて、1925年(大正14年)4月22日に公布され、同年5月12日に施行。普通選挙法とほぼ同時に制定されたことから飴と鞭の関係にもなぞらえられ、普通選挙実施による政治運動の活発化を抑制する意図など治安維持を理由として制定されたものと見られている。治安維持法は即時に効力を持ったが普通選挙実施は1928年まで延期された。 法案は過激社会運動取締法案の実質的な修正案であったが、過激社会運動取締法案が廃案となったのに治安維持法は可決した。奥平康弘は、治安立法自体への反対は議会では少なく、法案の出来具合への批判が主流であり、その結果修正案として出された治安維持法への批判がしにくくなったからではないかとしている。
Wikipedia

安倍政権は、2013年の参院選挙後に特定秘密保護法を成立させた。
治安維持法可決の時とよく似ていることが、新聞記事からも窺える。
Photo
治安維持法制定時の新聞を見て実感、この国はまた同じ時代を繰り返す

選挙権の拡大は「公論」の形成に向かわず、「衆愚」が顕在化するように見える。

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2016年8月 5日 (金)

金融政策の限界と「新しい現実」/アベノポリシーの危うさ(94)

日銀が追加の金融緩和を決めた。
政府の「28兆円超」と称する経済政策に、歩調を合わせたのだろうが、市場の反応はイマイチというしかない。

「これだけか。」
追加緩和第一報を聞いた米国ヘッジファンドの反応だ。
ただちに、円買いを加速させている。
市場全般でも、ETF買い入れ拡大にとどまり、失望感が強い。
朝方、消費者物価指数が、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数で前年同月比0.5%下落との報道も流れ、あらためてデフレが意識されただけに、緩和不足と見られている。
金融政策の限界、円買い加速

しかし、「2年で2%程度の物価上昇目標を達成する」と宣言してから3年余り経ったが、6月の消費者物価指数は、前年同月比で0.5%下落と4カ月連続のマイナスである。
もはや金融政策が効果がないことははっきりしていると見るべきであろう。

金融機関のビジネスモデルは、相対的に金利が低い短い資金を調達して、相対的に金利が高い長い資金を貸し出すことによって、その利鞘(=長期金利-短期金利)を得るものである。
イールドカーブという概念がある。
満期の異なる債券の利回りを、縦軸に債券の利回り、横軸に満期(償還)までの期間をとりグラフ化すると、以下のようになる。
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債券の利回りは、期間の短いもののほうが低く、長期になればなるほど高くなるのが普通で、緑色の線のようになる。
期間の長いもののほうが高利回りになるのは、将来のことは分からないという、リスクプレミアムがあるからである。

異次元金融緩和というには、日銀によるイールドカーブのフラット化である。
金融機関は、「金利リスク」を負ってでも必要な利鞘を確保するか、「金利リスク」を避けて利鞘を放棄するかの選択肢が考えられるが、「金利リスク」を避けて利鞘を放棄するというのは、座して死を待つ行為ですから、「金利リスク」を負ってでも利鞘を求める道しかない。
金融機関は、「金利リスク」に応じた自己資本の積み増しを求めるということになるが、日銀の政策目的が金利を下げることで投資を促進させることであるならば、全く意味がないことになる。

投資家が自己資本に求める期待利回りは、概ね8%程度だとされる。
であれば、金融機関にとっては、8%の資本コストをかけて、住宅ローンなど利鞘が薄いものに資産を増やすことは合理的な判断ではない。
全体としては逆ザヤになってしまいかねない。
金融機関が期間の長い融資を行わなくなってしまえば、異次元の金融緩和と称してイールドカーブをフラットニングさせる意義がないことになろう。

デフレ経済に入って既に20年以上である。
もはや、このような状況を「新しい現実」として受け止め、その現実に即した経済政策をとるべきだ。
アベノミクスと称するアホな政策(アホノミクス)は一刻も早く脱却すべきである。

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2016年8月 4日 (木)

都知事選の暫定総括(3)小池百合子の詐術/日本の針路(284)

小池百合子都知事の誕生によって、増田寛也氏を擁立した自民党東京都連はダメージを受けるだろうが、安倍首相ら自民党執行部にとってはまことに好都合な状況が生まれたと言えよう。
なにしろ首都に、右派の中核に位置する人物が座るのである。
右派色が鮮明な改造内閣も発足し、小池氏と連携しつつ、右傾化に突き進むのであろうか。

小池氏が超のつくタカ派であることは、つとに知られていることではあった。
例えば日本会議の国会議員懇談会の副会長も務めている。
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Wikipedia

新防衛大臣の稲田朋美氏と並び、メスのタカの代表であろう。
ところが、公式サイト上のプロフィルでは、このような事実は隠されている。

 小池氏は、「日本会議」とともに行動してきた議連「日本会議国会議員懇談会」の副幹事長や副会長を歴任してきました。衆院選出馬のさいにも日本会議の機関誌『日本の息吹』で「ご健闘を期して」と氏名を紹介されるなど、同会議の事実上の“推薦候補”として活動してきました。
 小池氏の公式サイト上のプロフィルには、「日本エジプト友好議連」など対外友好議連の会長職や、「婚活・街コン推進議連」会長、「無電柱化議連」会長代理など、15もの議連の役職を列挙。ところが、安倍晋三首相や麻生太郎副総理ら自民党政権の中心人物も加盟する「日本会議国会議員懇談会」について、小池氏のプロフィルでは触れられていません。
 小池氏のプロフィルに各議連の役職一覧が記載され始めた昨年5月当時から、同「懇談会」については除外されてきました。
 日本の過去の侵略戦争は「アジア解放」の「正義の戦争」だったと主張し、「緊急事態条項」創設などの憲法改悪や首相の靖国神社参拝を要求する日本会議との関わりこそ、改憲右翼政治家としての本性を示す真の「横顔」といえます。
小池都知事候補“改憲右翼隠し”「日本会議」系議連の役職「横顔」に明記せず

あまつさえエコシステムの象徴である緑をシンボルカラーにする演出で、環境派である如く演出した。
⇒2016年7月22日 (金):緑を冒涜する小池百合子/日本の針路(277)
このような広告代理店的な演出に手もなく乗せられる有権者もどうかとは思うが、それが現実である。

追い風となったのが、石原親子の失策である。
「親族が小池百合子を応援した議員は除名」という時代錯誤の締め付けを図った石原伸晃自民党都連会長。
あたかも迫害に立ち向かうジャンヌダルクのようなイメージを与えることにもなった。
⇒2016年7月21日 (木):ほとばしる無能コンビ、増田寛也と石原伸晃/日本の針路(276)

加えて、「厚化粧の大年増」と言い放った石原慎太郎氏。
親子揃って、見事なアナクロニズムである。
本来的には女性の敵というべき小池氏に、圧倒的に有利な風となった。
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都知事選、小池氏に幅広い支持 朝日新聞出口調査

無党派層の過半、共産党支持層からも2割近い投票先になっている。
小池都知事誕生の第一の殊勲者は石原親子かも知れないが、タカ一族としては本分だったのかも知れない。

しかし、タカの爪隠しは、あっと言う間のことであった。
山本一郎というブロガーの「小池百合子「都庁に着いたら5分で極右」の衝撃(訂正とお詫びあり)」にあるように、都知事に就任して真っ先に行ったのが「政務担当特別秘書に野田数元都議」を採用したのである。
野田数元都議とはかつて「日本国憲法を無効とし、大日本帝国憲法は現存するとの都議会決議を求める請願」を都議会に提出したことのある人物なのである。
「幅広い支持」を集めた新知事の素顔である。

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2016年8月 3日 (水)

都知事選の暫定総括(2)野党共闘の敗因/日本の針路(283)

都知事選は、結果的には、小池百合子氏の鮮やかな勝利であり、残念ではあるが、野党共闘は不発に終わったと言わざるを得ない。
野党共闘のあり方をめぐってさまざまな議論湧いてくるであろうが、野党が分裂しているようでは、選挙で「安倍的政治」を打破することはできず、日本という国は地獄へ一直線となりかねない。
何としてでも、野党共闘の枠組みを再構築すべきであり、そのために真摯な反省と戦略の練り直しが必要であろう。

都知事選の敗因をどう考えるか?
一般論として、リベラルは多様性を好むので、バラバラになりがちなのは避けがたい。
しかし、力を結集できなければ負け続けることは必須である。
先ず反省しなければならないのは、野党の安易な取り組み方である。
有権者の直近の投票行動からすれば、自民党が割れて、宇都宮健児氏が立候補を取りやめた時点では、野党共闘側が圧勝してもおかしくはない状況であった。
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大英断! 宇都宮健児さん出馬取り下げ鳥越支持表明! 賞賛の声続々、副知事の声も!

野党4党は、究極の後出しジャンケンと言われるような形で、鳥越俊太郎氏を擁立した。
しかし、余りにも準備不足であったことは否めない。
知名度に頼るだけでは迫力が生まれないのは当然であろう。
鳥越氏にも準備ができていなかったし、それをカバーすべき政党にも準備がなかった。
しかし、準備期間がないことを言い訳にはできない。
条件は皆同じである。
準備できなければ、立候補などしなければ、あるいは擁立しなければいいだけの話である。

鳥越氏には選挙妨害と呼ばれても仕方がないような週刊誌による報道もあった。
⇒2016年7月24日 (日):真昼の暗黒か、ゲスの極みか/日本の針路(279)
影響は小さくはないだろうが、それだけでは説明できない大差である。
たとえ鳥越氏以外の候補者であっても、結果は変わらなかった可能性の方が高い。

都知事選というのは、東京都という膨大な選挙区をすべてひっくるめた1127万人余の有権者に訴えて支持を取り付けなければならない独特の選挙である。
しかも2週間という非常に短い期間にである。
知名度を優先させざるを得ないのは理解できる。
特に今回のように、舛添要一前知事の辞任という「想定外」の事態を受けての選挙であれば、自ずから知名度頼りにならざるを得ない。
21人の立候補者がいても、事実上知名度に勝る3人による戦いということだ。
あらかじめ高い知名度を持っていない候補者は、土俵に上ることすらできないのだ。
しかし、知名度は必要条件であっても十分条件ではない。

十分条件が何であるか、それを満たすためにはどうすればいいか。
簡単には答えは見出せないだろう。
例えば、鳥越氏でなくて宇都宮健児氏が野党の統一候補になっていれば十分条件を満たせただろうか。
政策的な練度は鳥越氏よりも遙かに錬磨されていたと思う。
しかしそれでも不十分なような気がする。
是非は別として、東京全体を選挙区とするような選挙では、ポピュリズムに乗らなければ勝つことは難しいだろう。

民進党の岡田代表は、次の代表戦には出馬しない意向だという。
良いチャンスであるから、ある程度ポピュリズムに乗れる代表を選ぶべきだろう。
長島昭久氏や細野豪志氏のような、自民党と無差別とは言わないまでも、違いがはっきりしない人では意味がない。
蓮舫氏や山尾志桜里氏のような女性を選ぶのも一案であろう。

「民主主義は、ベストを選ぶシステムではない。ワーストを避けるための知恵だ」とも言われる。
その意味でも、野党共闘側は負けたのだ。
純正の自民党候補と、より反動的な自民籍候補の戦いで、後者に軍配が上がった。
ワーストを避けられなかったということだ。
共闘のシンボルとなるような人材を擁立し、着実に戦っていくしかないと思う。

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2016年8月 2日 (火)

国民栄誉賞を受賞したウルフ・千代の富士/追悼(91)

「ウルフ」の愛称で親しまれ、相撲界初の国民栄誉賞を受賞した元横綱千代の富士の九重親方(本名秋元貢)が7月31日、膵臓がんのためなくなった。
北海道福島町出身で、61歳だった。

優勝は歴代3位の31度、横綱在位は歴代2位の59場所で、通算1045勝(437敗159休)は、2011年に大関魁皇(現浅香山親方)に抜かれるまで最多記録だった。
これらの記録が示すように、「強い」という印象が記憶に残る力士だった。
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千代の富士死去 小よく大を制す体現…眼光鋭く「ウルフ」

1988年夏場所から53連勝を記録し、負けるイメージが浮かばなかった。
子どものころから、身体能力は抜群で、中学時代は陸上競技でも活躍したほどだったが、相撲は好きではなかったという。
体重は軽く、幕内に上がっても100kg前後だったが、自分より一回りも二回りも大きい力士を投げ飛ばす豪快な取り口だった。

その取り口から、何回も両肩の脱臼し、肩を痛めないように、厳しいトレーニングで「筋肉のよろい」を身にまとった。
東京新聞の「筆洗」を引こう。

一九八一(昭和五十六)年一月二十五日。日曜日の夕方。夕餉(ゆうげ)じたくの家族たちは手を止める。今の時代よりはずっと小さなテレビをそろって見つめている。北の湖との優勝決定戦▼狼(おおかみ)は己よりずっと大きな壁にひるむことなく突っ込んでいく。踏ん張る。投げる。見ている者は狼の躍動に驚嘆の声を上げ、手をたたき、喜び、笑う。「さあ、明日からまた仕事だ」。つらくとも不利であろうとも踏ん張ってさえいれば、なんとかなる。良いことが待っている。素直に明日を信じたくなる時代をあの努力の横綱は背負っていた。そんな気がしてならない

強さが印象的だったが、病には勝てなかったということだろう。
昭和の記憶がまた一つ消えた。
合掌。

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2016年8月 1日 (月)

『シン・ゴジラ』と福島原発事故/技術論と文明論(60)

東日本大震災が発生した時、大津波のTV映像から先ず連想したのは、小松左京の『日本沈没』だった。
そして福島第一原発が容易ならざる事態だと分かった時、なぜか昔見たゴジラの映画のことが気になった。
⇒2011年3月16日 (水):『日本沈没』的事態か? 静岡県東部も震源に/因果関係論(9)
⇒2011年5月 9日 (月):誕生の経緯と香山滋/『ゴジラ』の問いかけるもの(1)

『シン・ゴジラ』が、7月29日公開された。
邦画としては2004年以来で、シリーズ29作目になる。
29作を網羅したコレクションも刊行中で、ゴジラ人気は根強い。

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「シン」は「新・真・神」等の意味だという。
「現実対虚構」というキャッチコピーに「ニッポン対ゴジラ」というルビが振ってある。
現実の日本に対し、ゴジラは何のメタファー(隠喩)なのだろうか?

『ゴジラ』の第一作が公開されたのは1954年11月だった。
前年の3月に第五福竜丸が、ビキニ環礁で操業中に、アメリカの水爆実験の死の灰を浴びて乗組員の久保山愛吉さんが亡くなるという事件が起きた。
東宝は、新たな特撮路線の開拓のため、世界唯一の被爆国という立場と、第五福竜丸事件、自衛隊発足などを背景として、南海で生まれた水爆大怪獣が日本に来襲するという設定にした。

小学生だった私は、背景的情報のことにはまったく無知だったが、芹沢という隻眼の化学者(平田昭彦)の苦悩する姿が印象的だった。
ゴジラから国民を守るため、自分が開発したオキシジェン・デストロイヤー(酸素破壊剤)という最終兵器を使用することを決断し、資料が拡散して再び使用されないよう棄却し、自ら命を断つのだ。

ゴジラ論は数多いが、佐藤健志氏の『震災ゴジラ! 戦後は破局へと回帰する』VNC(2013年9月)が、震災との関係を詳細に論じている。
冒頭に「二〇一一年、ゴジラは架空の存在ではなくなった」と書いてある。
つまり「3・11:東日本大震災and/or福島第一原発事故」を「ゴジラ的なもの」の出現と見ているわけで、私の連想もあながち的外れではなかったと言えよう。

東日本大震災直後の「復興構想会議」の議長代理を務めた御厨貴氏は、震災直後に「『戦後』が終わり、『災後』が始まる」という評論を書き、後に『戦後」が終わり、「災後」が始まる。千倉書房(2011年11月)という単行本としてまとめた。

戦後の世界史は、軍事利用にせよ平和利用にせよ、核エネルギー開発と不可分であった。
ゴジラを核エネルギーの象徴と考えた場合、果たして「戦後」は終わったのか?
あるいは原発事故をもたらした災害は、「災後」の時代に入ったと言えるだろうか。
「戦後レジームからの脱却」を唱えて政権に復帰した安倍晋三氏は、憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を可能にした。
政府の公式見解も「自衛のための核兵器は保有できる」である。

オバマ大統領は核廃絶を訴求したプラハ演説でノーベル平和賞を受賞したが、核兵器のプレゼンスはむしろ増大している。
戦後は終わっていない、というよりも敗戦が続いている(=永続敗戦)のだ。
⇒2016年6月 6日 (月):伊勢志摩サミットとは何だったのか/永続敗戦の構造(2)

原発はどうか?
ドイツのように脱原発に舵を切った国もあれば、日本やアメリカやフランスのように原発依存を続けている国もある。
福島第一原発事故で、メルトダウンした核燃料(デブリ)をどうするのか?
原子力損害賠償・廃炉等支援機構は13日、溶融したデブリをコンクリートなどで建屋内に閉じ込める「石棺方式」を、将来の選択の余地として残すことを盛り込んだ初めての計画書をまとめた。

石棺方式では事実上、第一原発が極めて高い放射線を出し続けている燃料デブリの最終処分場になる。
このため、地元が猛反発して、この文言は削除されることになった。
要するに、状況把握もできていないのが現状で、原発事故はまさに進行中の事態なのだ。

再稼働が既成事実化しているが、見切り発車で再稼働させる前に、事故の検証を徹底し、収束させるのが先であろう。

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