福島原発事故の調査はまだ途上だ/原発事故の真相(143)
東京電力が、福島第一原発事故当時の社内マニュアルに、核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)を判定する基準が明記されていたが、その存在に5年間気付かなかったと発表し、謝罪したのは2月24日のことであった。
⇒2016年2月25日 (木):背信の東京電力メルトダウン評価/原発事故の真相(137)
これに関連して、東京電力が設置した第三者検証委員会(委員長・田中康久弁護士)はに6月16日、調査報告書を公表し、当時の清水正孝社長が炉心溶融という言葉を使わないよう指示していたことがわかった。
なお、これに関して首相官邸からの圧力の可能性も指摘した。
⇒2016年6月19日 (日):炉心溶融と第三者委員会/原発事故の真相(141)
当時の政権は民主党であり、印象操作を感じる。
また、第三者委員会というと公正な第三者というイメージであるが、東電が設置した私的機関であることに留意する必要がある。
委員会メンバーに、舛添氏が「厳格な第三者」にと繰り返した、した「まむしの善三」こと佐々木善三弁護士が入っていることも何やら因縁めいている。
事故については、主要な調査委員会だけでも「国会」「政府」「民間」「東電」の4つが報告書を出している。
⇒2013年9月11日 (水):人災と不起訴の間/原発事故の真相(84)
この内明確に「人災」としたのは国会事故調である。
問題は「予見可能性」であるが、検察のように、「一般通常人の能力を基準」として判断するのは誤りではないか?
原発というのは、高度の専門性に基いて運転されるべきだからである。
国会事故調は、原因の未解明部分の究明や、事故収束のプロセスを審議するため、電力会社や政府から独立した第三者機関「原子力臨時調査委員会(仮称)」を国会に設置するよう提言した。
だが、設置の動きは鈍い。自民党は、原発事故を含めた東日本大震災の初動対応を再検証する党内のチームが五月に報告書をまとめ、原発事故では「今なお新しい事実が出てきている」と指摘。にもかかわらず、国会への調査機関設置を求める声は一部にとどまり「原発利用を進める議論が優先され、機運が高まらない」(若手議員)という。
事故をめぐっては六月、東電が弁護士に依頼した調査の報告書で、当時の清水正孝社長が「炉心溶融」という言葉を使わないよう社内に指示していたことが判明。広瀬直己(なおみ)社長は隠蔽(いんぺい)を認めて謝罪した。事故当日、原子炉水位が下がっていた1号機で炉心が露出すると予測しながら、法律で義務付けられた政府や福島県への報告を怠っていたことも、本紙の取材などで明らかになっている。
政府や国会の事故調による調査時点では、こうした事実は出ていなかった。現在、事故の継続的な検証作業の場は、東電柏崎刈羽原発がある新潟県の「原発の安全管理に関する技術委員会」など一部に限られ、委員を務める田中三彦・元国会事故調委員は「(東電の対応は)重要なことを伝達していなかった点で通底している。国会事故調の提言を速やかに実行し、検証を続けてほしい」と求めた。
原発事故究明 動かない国会 検証機関設置せず
検証機関も置かず、再稼働に走る神経が私には理解しかねる。
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