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2016年7月 1日 (金)

一億総活躍というペテン政策/アベノポリシーの危うさ(86)

安倍晋三首相は、アベノミクスをさらに加速させると言っている。
「3本の矢」が効果が十分でないと思ったのだろうか、『新3本の矢』を掲げた。
(1)強い経済:GDP600兆円達成を目指す。
(2)子育て支援:希望出生率1.8を目指す。
(3)社会保障:仕事と介護が両立できる社会づくり。

「仕事と介護が両立できる社会づくり」の現実はどうか?
特別養護老人ホーム(特養)の入所待機者(要介護3以上)は13年度で約15万人で、厚生労働省の試算では、特養の定員は25年度までに20万人増える見込みだった。
しかし、厚労省は在宅中心の介護に力点を置いており、施設の大幅増設には消極的だ。
⇒2015年10月16日 (金):介護離職対策の理想と現実/ケアの諸問題(25)

在宅化などの結果であろうか、数年間の入所待ちが当たり前だった特別養護老人ホームの待機者が大幅に減り始めた。

 「“営業”しないと入所者数を維持できない」。東京都青梅市の特養「和楽ホーム」の宮沢良浩施設長は打ち明けた。ホームは都心から1時間の山あいにある。かつては都心から希望者が来たが今、待機者は最盛期の300人から100人弱に。このため5人の相談員が毎月、在宅介護の関連施設を回り入所を働きかけている。
 資金も十分で入所要件を満たすのは、100人中3人しかいない。「今は結構です」。入所を告げても断られることが増えた。空きを待つうちに他施設に移る人も少なくない。青梅市は地価が安いため特養が約23カ所も建ち、競争は厳しい。
 待機者が減るとスムーズに入所が進まず、施設に空きが出る。東京都高齢者福祉施設協議会の調査では、回答の4割にあたる95の特養が「稼働率が下がった」と述べた。昨年4〜10月の平均稼働率は94・9%で、都内で2200人分のベッドが空いていた計算になる。
要介護者、奪い合い 施設空き出始め

特別養護老人ホーム(特養)は、寝たきりや認知症などで常に介護が必要で、自宅での生活が難しい高齢者を対象にした施設のことだ。
社会福祉法人や自治体が運営する公的な施設で、生活全般の介護を受けながら、人生の最期まで長期間入所できる。
都の待機者減が明らかになるのは初めてのことである。

Ws000000 (高齢者福祉施設)協議会は原因に▽要介護1、2の人が昨年4月から原則、入所できなくなった▽有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅が激増した▽特養の自己負担額が高くなった−−をあげる。西岡修会長は「要介護度が低くても世話の大変な人の行き場がなくなった」という。中部地方の女性(60)の母(84)は認知症だが要介護2で、特養に入れる見込みはない。一切家事ができず1人にはしておけない母を「どこに入れるというのか」と悩む。
 厚生労働省高齢者支援課は「要介護3以上に(入所を)『重点化』したのは限られた資源を真に必要な人に使ってもらうためだ」と説明した。2016年2月時点で全国に9498施設あり、14年3月の入所待機者は約52万4000人。複数の施設に申し込む人も含み、実際の待機者はこれより少ないとみられている。
待機者が急減 「軽度」除外策、介護難民増加か

口先だけの「一億総活躍社会」である。
在宅化の名目で、公的施設の充実を図らず、介護人材の育成にも力を入れないので、家族の負担は重くなる一方である。
私の知っている介護福祉士養成校は、どこも入学希望者が集まらず、苦戦している。
卒業しても、苦労が目に見えているからだ。

「仕事との両立」とまったく逆の方向性なのだ。
「一億総活躍社会」どころか「介護棄民」が大きな問題になってくるはずである。
アベノミクスのエンジンを吹かすというのは、公害というべきであろう。

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