除染廃棄物の再利用について/原発事故の真相(145)
環境省は6月30日、福島第1原発事故に伴う福島県内の汚染土などの除染廃棄物について、放射性セシウム濃度が8000bq/kg以下であれば、公共事業の盛り土などに限定して再利用する基本方針を正式決定した。
8000bq/kgの放射性セシウムが安全と見なされる迄には、170年を要する。
盛り土の耐用年数は70年とされるので、耐用期間後の安全性は、誰が担保するのか?
福島県大熊、双葉両町にまたがる中間貯蔵施設に保管される除染廃棄物は最大2200万立方メートルになると見込まれる。国は2045年3月までに県外で最終処分する方針で、できるだけ再利用して処分量を減らしたい考え。
基本方針では、再利用は管理主体などが明確な公共事業に限定し、1メートル離れた場所での追加被ばく線量を年間0.01ミリシーベルト以下に抑えると明記。同8000ベクレルの汚染土を使う場合、50センチ以上の覆土をし、さらに土砂やアスファルトで覆う対策を取るという。
ただし、原子炉等規制法では、制限なく再利用できるのは同100ベクレル以下。環境省の非公式会合で、同5000ベクレルの廃棄物が同100ベクレル以下まで低下するには170年かかる一方、試算が出ていた。
基本方針では、再利用後の管理期間の設定や、管理体制の構築について触れられておらず、原子炉等規制法との整合性を疑問視する声も上がっている。環境省側は「管理期間や方法については、モデル事業を通じ、今後検討を進める」(井上信治副環境相)との姿勢だ。
原発汚染土 「8000ベクレル以下」なら再利用を決定
安倍晋三首相が小泉内閣の官房長官だった2006年、『美しい国へ』という新書を出版した。
自民党総裁選を見据えた政権構想である。
福島原発事故は、美しい国土を毀損した。
事故後の2012年に再登板すると、アベノミクスと銘打った経済政策を掲げ、止まっていた原発の再稼働の前のめりである。
「美しい国」はどこに行ったのか?
稲が青々と伸びてきて、瑞穂の国を実感する。
モンスーンの賜物としての山紫水明の国土である。
富山和子『水と緑と土』が刊行されたのは1974年のことだった。
高度成長の結果、環境問題が顕在化した頃である。
緑は植物あるいは生態系の代名詞である。
水と土は動植物が生命を維持する基盤である。
日本は「唯一の被爆国」であるがゆえに、核エネルギーとどう向き合うのか、真剣に考えなければならないはずだ。
原発の稼働を続けていけば、先人から受け継いできた美しい国土の至る所に放射性廃棄物が拡散するだろう。
それが「瑞穂の国」なのだろうか?
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