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2016年7月 8日 (金)

石油元売り再編と出光家の反旗/ブランド・企業論(54)

石油元売り業界が再編成されようとしている。
出光興産と昭和シェル石油が合併による経営統合で基本合意したのに続き、JX日鉱日石エネルギーを傘下に持つJXホールディングス(HD)と東燃ゼネラル石油が統合に向けた交渉に入った。
2つの統合が実現すれば、石油元売りは今の5社体制から3社体制に集約されることになる。
背景にはガソリンの需要低迷で一層のコスト削減を迫られていることや石油以外の事業育成に耐える体力が必要になっている事情がある。
しかし、出光興産が28日に開いた株主総会で、昭和シェル石油との合併に対して創業家が反旗を翻すという予想外の展開になった。

 総会が始まって1時間10分が経過した時だった。「出光と昭シェルの経営統合に意見があります」。元衆院議員で出光家の顧問弁護士を長年務めている浜田卓二郎氏が挙手し、話し始めた。総会で出光名誉会長の出光昭介氏など創業家に代わって質問するためだ。浜田氏は総会直前に創業家の資産を管理する日章興産の代表取締役に就いていた。「質問することも知らなかった」という会社側にとっては青天のへきれきだった。
 「出光と昭シェルの合併に反対する」「2015年11月12日、出光昭介名誉会長にきちんとした説明が行われずに出光と昭シェルの合併を決めた」「異質な企業間の合併の苦労は簡単な話ではない。出光独自で合理化、販売努力をすべき時期だ」。浜田氏は4分にわたって持論を展開した。「質問は短めにお願いします」。会社側が制止するほどの熱弁ぶりだった。
 「出光の良さが統合で失われることはない」。株主総会議長の月岡隆社長はていねいな口調を保ちながらも懸命に反論した。「昭シェルとの統合は日本のエネルギーの安定供給につながる。創業家の皆様にもご理解をいただいていると認識している」
 創業家は約34%の株式を保有し、合併などの重要案件を総会で否決できる立場にあるとする。突然の翻意にみえるが、水面下では昨年12月から約半年にわたって、出光と創業家との間で綱引きが続けられてきた。
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出光家、突然の反旗 合併で影響力の低下危惧か

経営統合に至る経緯は大略次のようである。
14年末ごろまで出光はTOB(株式公開買い付け)方式での昭シェル買収案を軸に考えていた。
しかし昭シェル側に抵抗感が強く行き詰まり、別の方式として、15年7月に出光が英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから昭シェル株を取得し、経営統合すると発表した。
11月には両社は合併すると発表し、さらに一歩踏み込んだ。
しかし創業家としては、「合併によって(株主としての)影響力をそがれることへの懸念」を拭えなかった。

創業家側は、株式保有比率は日章興産、出光文化福祉財団、出光美術館などを合わせて33.92%に達すると説明する。経営の重要事項を諮る特別決議を株主総会で拒否できる高い保有比率だ。
TOBによる買収なら、出光の発行済み株式数は変わらないが、合併による経営統合なら、存続会社の株式を非存続会社の株主に割り当てるため、発行済み株式数は大幅に増える可能性が高い。
その結果、創業家は株式の「3分の1超」を持つ特別な地位を失い、経営への影響力が薄れる恐れがある。
つまり質的に変わってしまうのだ。

出光興産は百田尚樹の『海賊と呼ばれた男』講談社文庫(2014年7月)がベストセラーになったことで創業家のことが広く知られている。
しかし私は、石原慎太郎の若い時の作品『挑戦』新潮文庫(1971年1月)の方が優れていると思う。
⇒2013年9月19日 (木):海賊と呼ばれた男/戦後史断章(14)

出光興産の歴史は以下のようである。
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出光創業家の乱…「向きあってもらうの遅かった」


出光興産幹部は「経営統合について創業家の理解を得てきたつもりだった。残念だが、引き続き丁寧に説明していきたい」と述べている。 
創業家が納得するかどうか、まあ、出光経営陣の失態だろうなあ。

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