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2016年7月30日 (土)

相模原大量殺人事件と優生思想/日本の針路(282)

相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で入居者19人が刺殺された事件には言葉を失う。
⇒2016年7月27日 (水):相模原障害者施設大量殺人事件/ケアの諸問題(26)
障害者の大量殺害計画を記した手紙を安倍晋三首相にも提出しようとしていた。
知人に朗読して内容を伝えており、断念するよう勧められた際は激しく抵抗したという。

 捜査関係者によると、植松容疑者は1月ごろ、知人らに「障害者を殺したい」と相次いで連絡。重複障害者を多数殺害する計画と具体的手口をまとめたメモを読み上げ、安倍首相に送る考えを伝えた。だが主張を否定されると「考えが分からないのか」と激怒。最終的に送付は断念したというが、その後友人と連絡を絶っていた。
 2月になり、植松容疑者は、障害者を大量殺害する計画などを記した衆院議長宛ての手紙を公邸に持参。この手紙の内容は1月に朗読していた計画と酷似していた。
 捜査本部は自宅の家宅捜索で手紙の下書きとみられるメモを押収しており、関連を調べている。
 家宅捜索では自宅から微量の植物片も見つかった。大麻の可能性があるとみて鑑定する。
 植松容疑者は措置入院中、「ヒトラー思想が降りてきた」とし、「抹殺事件をきっかけに法律が変わればいい。世界経済のためになる」と話していたことも判明。
相模原殺傷 犯行予告は首相へ送付計画 容疑者、知人に手紙朗読

大麻による影響が、どういう形で、どの程度あるのか?
「ヒトラー思想が降りてきた」とは、どういうことか?
恐ろしいと思うのは、この事件が狂気の結果ではなく、正気として行われたと考えられることである。
殺傷の対象は障害者に限定されており、職員は結束バンドで拘束されることはあっても殺傷のターゲットではなかった。

植松容疑者は確信犯として実行したのである。
「ヒトラー思想が降りてきた」という言葉から窺われるように、優生思想に基づく行為であることは間違いあるまい。
1608302

優生学についてのWikipediaの解説を見てみよう。

生殖管理により人種を改良する、という発想は、プラトンにまで遡ることもできるが、優生学の直接的な起源は、1865年のフランシス・ゴルトンの報告である。彼は従兄弟のチャールズ・ダーウィンが1859年に著した『種の起源』から影響を受けた。優生学はアレクサンダー・グラハム・ベルのような当時の有力者らによって支持された。
優生学の目的は様々であるが、「知的に優秀な人間を創造すること」、「社会的な人的資源を保護すること」、「人間の苦しみや健康上の問題を軽減すること」などが挙げられる。これらの目標を達成するための手段として、産児制限・人種改良・遺伝子操作などが提案された。この考えは、強権的な国家による人種差別と人権侵害、ジェノサイドに影響を与えた。
1930年代、エルンスト・リューディンが優生学的な言説をナチス・ドイツの人種政策に融合させる試みを開始した。当時は、アメリカや北欧諸国でも、同様の政策、研究が盛んに進められていた。例えば、カーネギー、ロックフェラーなどの財閥系企業も、アメリカの優生学協会に資金援助を行っていた。
第二次世界大戦の終結以降、優生学は、「民族衛生」や「絶滅政策」といったナチスによる蛮行と結びつけて認識されるようになり、廃れた。
イギリス、北欧、日本などで福祉政策の一環として取り入れられていた優生学的施策も20世紀末までに撤廃され、現在、公的な制度として優生学を取り入れている国は、シンガポールを例外としてほぼない。

戦後世代の私たちには余り馴染みがないが、戦後半世紀にわたり実施されてきたハンセン病患者に対する日本の強制隔離政策がある。
沼津市に生まれた明石海人は天才歌人として知られるが、ハンセン病に罹患し、隔離生活を余儀なくされた。
⇒2015年10月11日 (日):明石海人@千本松原/文学碑を訪ねる(2)

優生学は、個々人が誕生以前よりその遺伝形質に規定された不平等性を有する、という「人間不平等性論」を前提として構築されている。
人間を「尊厳 Würde」においてではなく、「価値 Wert」の優劣において理解するもので、異人種間の価値的優劣を主張する「人種主義・人種差別主義」と、同一民族内における価値的優劣を問題化する優生学は、その人間理解において思想的に通底するとされる。
日本を「神の国」などと特別視する傾向とベクトルは同じと言えよう。

植松容疑者が障害者は「安楽死」させるべきだと言っていたのは、ナチス・ドイツが障害者を「価値なき生命」と決めつけ、「国家的安楽死」と称して大量に殺害したことに影響されているのであろう。
「一億総活躍社会」とは言うが、「活躍」とはあくまで「生産活動」のことを指している安倍政権の思想がこのような犯罪を生む土壌になっているのではないか。

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