原子力を死守する東芝の未来/ブランド・企業論(55)
東芝は7月6日、機関投資家やアナリストに対して、「カンパニー別IR説明会」を開催した。
4つの社内カンパニーの各社長が事業計画を説明し、業績目標を「コミット」した。
改めて鮮明になったのは、東芝における原子力事業の重みが増していることだ。エネルギー部門を担当する「エネルギーシステムソリューション社」の社長に就任したダニー・ロデリック氏は、「原子力事業におけるシェアを守り続ける」と述べ、国内外で廃炉ビジネスを積極展開するとした。
米ウエスチングハウス(WH)の会長も兼務するロデリック氏は「WHが2015年度に過去最高益を更新した」と強調し、他社が建設した原子力発電所に対してもサービス・燃料事業を拡販することで、今後も利益を伸ばすと意気込んだ。原子力事業では2016年度に400億円の営業利益を見込むが、2018年度には670億円を稼ぐ計画を掲げている。
原発の新規受注に関しては今年6月、インドのモディ首相と米国のオバマ大統領が会談。WHがインド国内に6基の原発を新設することで基本合意した。この件についてロデリック氏は「2017年に最終契約する予定」だとした。
説明会ではさらに、英国でも3基を受注できる予想を明らかにした。トルコや中国でも受注活動を強化しているという。東芝は2030年までに45基以上の受注を目標としているが、WHは「もっとアグレッシブな計画を掲げている」(ロデリック氏)。
東芝初の事業部門別IR、「原子力のシェア守る」
東芝は、不適切会計(粉飾)の発覚により屋台骨が揺らいでいる。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)
IR説明会は、日立製作所、ソニー、パナソニック、三菱重工など、多角化事業では当たり前に行われているが、東芝では初めての試みだという。
実際、冒頭の挨拶を行った綱川智代表執行役社長は、今回のIR説明会の位置付けを「情報開示の充実とカンパニーの自主自律経営の強化により、カンパニー自らが市場と対話しコミットすることにある」と説明しました。
特に注目されたのは、“質疑応答”も含めた説明会の内容を、開催翌日からIRサイトの動画配信でも行うとした点です。こうしたミーティングでは、会社側と証券アナリストとの対話に、より価値があるからです。IR説明会に参加できなかった個人投資家の皆さんも、ぜひ視聴してみてください。
このイベントに関する新聞等のメディア報道は原子力と半導体に関連するものばかりでしたが、これまであまり注目もされず、情報発信の機会も少なかったインフラシステムソリューション社(空調、昇降機、鉄道、水処理等)や、インダストリアルICTソリューション社(システムインテグレーション、デジタルソリューション等)についても詳細な説明が行われています。
厳しい実態をありのまま示した東芝、そこに希望はあるか?
半導体は市況のブレが激しいし、原子力はもはや花形ではないだろう。
巨艦・東芝の前途は容易なものではないだろうが、ナショナルフラッグ企業である。
何とか立ち直って欲しいものだ。
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