新元素・ニホニウム誕生/知的生産の方法(151)
新元素発見を認定する国際純正・応用化学連合(IUPAC)は、113番元素について、8日、名称案を「ニホニウム」、元素記号案を「Nh」と発表した。
理化学研究所のチームが発見し、日本で初めて命名権を得たものである。
⇒2016年1月 2日 (土):理研が新元素の命名権を獲得/知的生産の方法(141)
113番元素は昨年末、森田浩介九州大教授ら理研チームによる発見と認められ、今年1月に命名権が正式に与えられた。チームから名前と元素記号の案を提出されたIUPACが3月以降、非公開で妥当性を検討。今回、「推奨される案」として発表した。今後、5カ月間の意見募集を経て正式決定し、元素周期表に掲載される。
IUPACによると、ニホニウムの名称は「日本」にちなんだもの。発見者の森田教授はこれまでに「日本の子どもたちが周期表を見たときに親近感を持つきっかけになるような名前を考えたい」などと話していた。
このほか115番元素は共同研究の拠点であるロシアのモスクワ州にちなんだモスコビウム(Mc)、117番は発見者の研究所がある米テネシー州にちなんだテネシン(Ts)、118番は超重元素の研究者で世界をリードしてきたロシアのユーリ・オガネシアン氏の名前にちなんだオガネソン(Og)になった。オガネシアン氏は森田教授が指導を受けた第一人者でもある。ニホニウム以外の日本語の呼び名は日本化学会が改めて検討する。
新元素、名称案「ニホニウム」発表 他の三つの名前案も
周期律表は、帰納と演繹という科学の方法の良き材料である。
ドイツのアウグスト・ケクレが、原子量や分子量などの概念が固まっていないことを問題視して1860年に開催した史上初の国際化学者会議に、ロシアの化学者・メンデレーエフが出席した。
そこでイタリアのスタニズラオ・カニッツァーロが主張する原子量を重視すべきという主張に影響を受け、化学の教科書を執筆していた際、当時63個まで発見数が増えていた元素を説明する方法に、元素名を書き込んだカードを何度も原子量順に並べ替えることを繰り返す内にひとつの表を作り上げた。
それは原子価を重視し、かつ適切に当てはまる元素が無い箇所は「エカホウ素」「エカアルミニウム」「エカケイ素」など仮の名をつけた空白とする工夫を施したものだった。
当初この表に価値を認める学者はほとんどいなかったが、マイヤーがこれに注目し、原子容の考え方を加えた論文を発表した。
メンデレーエフはマイヤーの論文も参照し、改良を加えた周期表を作成した。
これにはローマ数字IからVIIIで縦の分類が施され、うちI–VIIが基本的に1–2族および13–17族に対応し、VIIIには遷移元素群を入れ、また希ガスは反映されていなかった。
それぞれには2種類の亜族を設け、表の左右に振り分けて区分した。
メンデレーエフの周期表はすぐに認められたわけではなかったが、1875年にフランスのポール・ボアボードランが新元素ガリウムを発見し、これが「エカアルミニウム」と一致することが判明すると周期表が注目を浴びるようになった。
その後も1879年のスカンジウム(「エカホウ素」)、1886年のゲルマニウム(「エカケイ素」)がメンデレーエフの表にある空白を埋めるものだということが判明し、彼の周期表の正しさが証明された。
メンデレーエフの周期表はある規則性をもっているが、数十(当時は60)種の異なる元素が偶然にこのような規則性を持つとは考えにくい。
原子がこのような規則性を備えるためには「原子より小さな何らかの微小構造が存在するのでないか?」という疑問が提起されるようになった。
1897年、ジョセフ・トムソンによって電子が発見されたことで、原子の構造が考えられるようになった。
プラスの電荷を持った重い原子核の周りをマイナスの電荷を持った軽い電子が運動しているという、ちょうど太陽と惑星のような模型がラザフォードによって提唱され、実験ともうまく合致することが分かった。
しかしこのモデルは、「なぜ電子は原子核に落ちて行かないのか?」という疑問に答えることはできなかった。
ラザフォードのあとを継いで原子模型を理論的に解明しようとしたのがニールス・ボーアである。
ボーアの仕事が現在の「量子力学」へとつながり、現代科学の花が開いた。
「日本」が元素名に入ったのは快挙である。
この機会に、科学振興が図られることを期待する。
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