炉心溶融と第三者委員会/原発事故の真相(141)
福島第1原子力発電所事故で原子炉の核燃料が溶け落ちる「炉心溶融)」の公表が約2カ月遅れた問題で、東京電力が設置した第三者検証委員会(委員長・田中康久弁護士)は16日、調査報告書を公表した。
当時の清水正孝社長が炉心溶融という言葉を使わないよう指示していたことがわかった。
首相官邸からの圧力の可能性も指摘した。
指示、官邸の意向か 元社長が「炉心溶融使うな」 東電検証委
当然のことながら、民主党政権時代に不眠不休で対応に当り、ツイッターで「#edano_nero(枝野寝ろ)」というハッシュタグまで付けられた枝野官房長官は激怒している。
民進党の枝野幸男幹事長は17日、国会内で記者会見し、菅直人内閣の官房長官として対応した東京電力福島第1原発事故の炉心溶融判断をめぐる東電の第三者検証委員会報告書に関し「不誠実な調査結果だ。私や菅元首相への名誉毀損だ」と述べ、党として東電や検証委に対する法的措置を検討する考えを明らかにした。
報告書は、当時の首相官邸が東電に「炉心溶融という言葉を使うな」と指示していたと推認される、との内容を盛り込んでいる。
枝野氏は「参院選を目前にした公表は選挙妨害の疑いも免れない」と強調した。
民進・枝野幸男幹事長激怒「私や菅直人元首相への名誉毀損だ」 「炉心溶融使うな」報告書で東電に法的措置検討
真相はどうか?
現時点では東電と官邸のやり取りの実態は分からない。
芥川龍之介の『藪の中』である。
しかし、報告書から分かることは、東京電力の政権への忖度という事実である。
事故に第一義的な責任を持つのは東京電力ではないか。
東電のマニュアルでは、「原子力災害対策マニュアル」では、核燃料損傷の割合が5%を超えれば、炉心溶融と判定することになっていた。
マニュアルに従えば事故発生から3日後に、福島第一原発は、メルトダウンしたと判定され、公表されるべき状況だった。
ところが東電は今年の2月まで、「炉心損傷」と過小評価し続けた。
マニュアルがあること自体、5年もの間、気づかれていなかったのである。
⇒2016年2月25日 (木):背信の東京電力メルトダウン評価/原発事故の真相(137)
東電幹部も「隠蔽」だったと認めている。
東京電力が福島第一原発事故の当初、原子炉内の核燃料が溶け落ちる炉心溶融が起きていたのに炉心損傷と説明し続けた問題で、姉川尚史原子力・立地本部長は三十日の記者会見で「炉心溶融に決まっているのに『溶融』という言葉を使わないのは隠蔽(いんぺい)だと思う」と述べ、同社の説明が不適切だったとの認識を示した。
炉心溶融の説明不備は「隠蔽」 東電幹部が認める
第三者委員会のメンバーに、舛添氏が「厳格な第三者」にと繰り返し、記者会見の様子が世論の反発を昂進した「まむしの善三」こと佐々木善三弁護士の名前が見える。
佐々木弁護士は、第三者的調査を売り物にする似ているようにも見える。
東京電力では、福島第一原発「国会事故調」への虚偽説明に関する「第三者検証委員会」の委員だった。国会事故調に玉井俊光企画部長が「今は真っ暗だ」とウソの説明をし1号機建屋の調査を断念させたことについて、佐々木弁護士らの第三者委が2013年3月に公表した報告書にはこう書かれている。
玉井が国会事故調委員や協力調査員らに対して事実に反する説明をしたのは、玉井の勘違いに基づくものであり、その説明内容には勝俣会長、西澤社長、担当役員及び担当部長が一切関与していなかったのはもちろんのこと、直属上司さえも関与していなかった。
玉井企画部長だけに責任を押しつけて、東電の会社ぐるみの隠ぺい工作を否定する内容だ。
「観劇会」をめぐる巨額の収支不一致問題で閣僚を辞任した小渕優子が自ら設置した「第三者委員会」の委員長にもなった。小渕の四つの政治団体における平成21~25年分の政治資金収支報告書で、計3億2,000万円の虚偽記入が判明したこの事件。
佐々木弁護士らの第三者委は、小渕について「監督責任があるのは当然で、責任は軽微とはいえない」と指摘しながら、「問題に関する認識をまったく有しておらず、事件にまったく関与していなかったことは明らか」と擁護し、政治資金規正法違反(虚偽記載・不記載)の罪に問われた元秘書2人のしでかした事件と片づけた。ちなみに、この委員会の委員を務めた田中康久弁護士(元仙台高裁長官)は先述した東電第三者委の委員長であった。善三さんと同じ体質をお持ちなのかもしれない。
汚職の守り神…舛添、小渕、猪瀬を擁護した「逆ギレ弁護士」の正体
当事者が委任した第三者というのが、第三者と言えるのかどうか、改めて問われることにになろう。
しかも「第三者調査」を商売にしている弁護士である。
そもそも“第三者”に検証を委ねてしまうこと自体、東電の自らを省みる力、企業倫理の欠如の表れではないのか。
これで原発再稼働を口にするのだから、国民はバカにされていると思うべきだろう。
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