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2016年6月11日 (土)

トリクルダウンの幻/アベノポリシーの危うさ(79)

トリクルダウンという聞き慣れない言葉が、2014年の新語・流行語大賞の候補になった。
「徐々に溢れ落ちる」や「浸透する」という意味である。
「富裕層や大企業を豊かにすると、富が国民全体にしたたり落ち、経済が成長する」という考え方として、サプライサイド経済学や新自由主義の中心的な思想と喧伝された。

この考えを実行したのが、レーガノミクスという言葉で知られるロナルド・レーガン第40代アメリカ合衆国大統領だった。
レーガノミクスとは、もちろん、レーガンとエコノミクスの合成語である。

この言葉が、新語・流行語大賞の候補になったのは、安倍政権とその周辺で盛んに使ったからである。
アベノミクス効果によりトリクルダウンが起きて、国民が豊かになるという説明を繰り返した。
甘利明前経済再生担当相は、2014年11月の記者会見で、「アベノミクスの基調が頓挫したわけではないが、トリクルダウンがまだ弱い」と語っていた。
安倍政権の経済政策のブレーンである経済学者の浜田宏一氏は、「アベノミクスの最初のステージはトリクルダウン」としていた。
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【アベノミクス失敗?】トリクルダウン理論が崩壊中!

でなければ、こんな聞き慣れない経済用語が流行するはずがない。
しかし野村総研から発表された調査結果では、アベノミクスによって資産が増加しているのは富裕層だけだった。
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【アベノミクス失敗?】トリクルダウン理論が崩壊中!

2014年12月に、OECDの「格差と成長」に関する報告書の訳文が発表された。

富裕層と貧困層の格差は過去30年間で最大となっており、所得格差の趨勢的な拡大は、経済成長を大幅に抑制している。

この後、「安倍政権が目指すのはトリクルダウンではなく、経済の好循環の実現」と、表現が軌道修正されたようである。
事実、元旦に放映された「朝まで生テレビ!」では、安倍政権のブレーンである竹中平蔵慶應大学教授が「トリクルダウンなんて起こるはずがない」と言ったのだ。
⇒2016年1月17日 (日):いかさま経済政策の破綻(続)/アベノミクスの危うさ(68)

私もトリクルダウンなど、富裕層優遇の言い訳に過ぎないだろうと思っていた。
つまり富裕層優遇のように見えるかも知れないが、皆が豊かになる方向にあるのだ、と。
しかし、経済評論家の三橋貴明氏の表現を借りれば、「政府の政策で富が「滴り落ちる」のを待っている方が悪い、というニュアンス」でトリクルダウンを否定したのである。
また、稲田朋美自民党政調会長も5月15日のNHK日曜討論で、「安倍政権としてはトリクルダウンという考え方はとっていない」と発言して、話題になった。
多くの国民が、「えっ」と思ったのだろう。

安倍首相は、アベノミクスのエンジンを最大に吹かすと言っている。
まだまだ、格差を拡大し、結果として成長を阻害する気らしい。
支離滅裂である。

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