伊豆と駿河の重なる風土・井上靖文学館/人物記念館(3)
井上靖は、1907年(明治40年)5月6日、軍医・井上隼雄と八重の長男として、北海道旭川市に生まれた。
井上家は静岡県伊豆湯ヶ島(現在の伊豆市)で代々続く医家で、隼雄は現在の伊豆市門野原の旧家出身であり、井上家の婿であった。
父が韓国に従軍したので伊豆湯ヶ島に戻り、両親と離れ湯ヶ島で戸籍上の祖母かのに育てられた。
湯ヶ島尋常小学校に入学の後、浜松尋常高等小学校に編入学した。
1921年(大正10年)、 静岡県立浜松中学校(現在の静岡県立浜松北高等学校)に入学、1922年(大正11年)、 静岡県立沼津中学校(現在の静岡県立沼津東高等学校)に転入した。
1927年(昭和2年) 、金沢市の旧制第四高等学校理科に入学した。
1930年(昭和5年)、九州帝国大学法文学部英文科へ入学するが、1932年(昭和7年)、九州帝大を中退して、京都帝国大学文学部哲学科へ入学した。
1936年(昭和11年)、京都帝大を卒業し毎日新聞社に入社した。
1950年(昭和25年)、『闘牛』で第22回芥川賞を受賞し、1951年(昭和26年)、毎日新聞社を退社して、作家専業となった。
作品は、現代を舞台とする『猟銃』、『闘牛』、『氷壁』等、自伝的色彩の強い『あすなろ物語』、『しろばんば』等、歴史に取材したものと幅広い。
歴史小説は、『風林火山』、『真田軍記』、『淀どの日記』等戦国時代が多く、中国では西域を題材にした『敦煌』、『楼蘭』、『天平の甍』等が多くのファンを獲得した。
スローリーテリングな構成と詩情豊かな作風で、映画・ドラマ・舞台化されたものも多い。
井上靖文学館は、北に秀峰富士、南に紺碧に輝く駿河湾を望む長泉町クレマチスの丘に建てられている。
この地は、『あすなろ物語』で「寒月ガ カカレバ キミヲシノブカナ 愛鷹山ノフモトニ住マウ」
とうたわれてる。
文学館は沼津中学後輩の岡野喜一郎(スルガ銀行元頭取)が、1973年に設立、開館した。
沼津中学時代には、文学へ目覚めるきっかけとなる友人たちと出会った。
その頃を描いた『夏草冬濤』は、私の愛読書の一つである。
井上靖のアイデンティティは、伊豆と駿河の交わる沼津の風土が多分に寄与していると言えよう。
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