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2016年6月

2016年6月30日 (木)

自民党におけるガバナンスの喪失/日本の針路(275)

自民党のタガが緩んでいる。
と言うよりも、崩壊が始まっていると言うべきかも知れない。
有力な支持基盤であったはずの「成長の家」や「東北地方のJA系団体が離れつつある。
⇒2016年6月12日 (日):生長の家が自民党支持を取り止め/アベノポリシーの危うさ(80)
⇒2016年6月27日 (月):JA東北の自民離れはどう影響するか/日本の針路(274)

余りにでたらめな政権運営の当然の結果である。
この期に及んでまだ自民党にしがみついているような人間は救いがない。
早かれ遅かれ、退場して行くであろう。
身内の石破茂地方創生相も、盛岡の応援演説で次のように言った。

 29日午前、盛岡駅前でマイクを握った石破大臣は、アベノミクスをこう評したのだ。
「大胆な金融政策で円を安くし、輸出を伸ばし、株を上げてきた。そして、財政出動で公共事業を行い、経済が停滞しないようにした。しかし、大胆な金融緩和はいつまでもいつまでもできるものではない。財政出動もいつまでもどこまでもできるものではない」
 要するに「異次元の金融緩和」と「財政出動」で回してきたアベノミクスの限界を暴露し、「アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」とかいう主張で選挙戦を乗り切ろうとしている安倍首相を、真っ向から否定したようなものだ。
ついに本音か 石破地方相が応援演説で“アベノミクス批判”

石破氏を支持はしないが、この発言はその通りだ。
自民党のガバナンスが音を立てて崩れて行く。
今度は、都知事選に小池百合子氏が、十分な調整なしで出馬表明をした。

Img_4b4730f4fc9c2dae18b9bd7cc992d4d蓮舫氏の不出馬表明は自民、公明両党にも大きく影響した。集票力のある蓮舫氏の対抗馬として、自民党は知名度が高い小池氏を擁立することで調整していた。しかし、ここにきて「蓮舫氏以外ならば俺でも勝てる」と淡い期待を抱く関係者が続出。小池氏を擁立させたくない勢力が台頭している。
水面下の選考作業はどうなっているのか。首相官邸関係者は「いまは小池氏を推したいグループ以外に3つの勢力がある」と明かす。1つは小池氏の自民党総裁選への出馬や閣僚就任に反対してきた森喜朗元首相の意向を忖度する勢力だ。森氏は公言していないものの、森氏に近い自民党幹部は「小池氏が都知事になるのは面白くないだろう」(政府関係者)と見て別の候補擁立を模索している。
2つ目は、人気アイドルグループ「嵐」の櫻井翔氏の父親で知られる櫻井前総務事務次官の擁立に固執する勢力。櫻井前事務次官はテレビカメラの前で「都知事選には出ません」と正式に固辞したが、櫻井翔氏の人気を取り込みたい政府高官は「菅義偉官房長官が説得すれば翻意する可能性もある」と巻き返しを狙う。
3つ目の勢力は、与野党で相乗りできる候補を模索する動きを見せている。民進党の選考過程で名前があがる長島氏らに自民党サイドからも接触し、事実上の統一候補として「共闘」するというものだ。
小池百合子出馬表明! スクープ都知事選「ココでしか書けない全内幕」

こんな選び方をするから不祥事を繰り返すのだ、と思うが、近視眼になっている関係者には目に入らないだろうなあ。
まあ私は小池氏が相応しいとはまったく思わないが、「森喜朗元首相の意向を忖度する勢力」などは、森氏ともども消え去ってくれることを期待する。
まったくこの連中の挙動が報じられると胸くそが悪くなる。

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2016年6月29日 (水)

テール・リスクは意外に起こる/知的生産の方法(153)

私たちが体験する現象は、多くの場合、正規分布をしている。
正規分布とはの形は釣鐘型(ベル・カーブ)である。
つまりばらつきが、平均値を境として前後同じ程度であり、分布図が平均値を線対称軸とした左右対称になっている。
成績の分布、身長や体重の分布などは正規分布と考えられる。

正規分布の場合、分布曲線の裾野幅が広いのは、大きなバラツキがあることを表しており、その指標が標準偏差(SD)である。
SDは、簡単にいうと、平均からどのくらい離れているかの幅を示している。
受験でお馴染みの偏差値は、ある集団の中での位置を示す数値のことである。
平均点をとった人の偏差値を50として平均点より得点が上なら偏差値は51、52…となり、得点が平均点以下ならば49、48…となる。
成績を見るときは、得点、順位などを確認するが、例えば国語が60点、英語が50点だった場合、国語の方がよい成績とはいえない。
なぜなら得点は国語と英語の問題の難易度も影響するからである。

このような場合、偏差値を使えば、受験した集団の中での自分の客観的な学力位置がわかる。
例えば、国語の偏差値が55、英語が50だったら国語の方がよい成績だと言える。
偏差値=(個人の得点-平均値)÷標準偏差×10+50
Normal_distribution_and_scales
数の話  偏差値と正規分布

正規分布の両端は稀な事象である。
ところが正規分布で予想されるよりも両端の起こる確率が高いような事象がある。
ベルカーブの裾野が厚い分布であり、ファットテールと呼ばれる。
Ws000000
相場における確率/正規分布とファットテール

相場においては、予想される確率よりもずっと高い確率で、大きな変動が起こる。
リ-マンショックやBrexitショックは決して「想定外」とは言えない。
「世界経済の潜在的なリスクに備えるため」ともっともらしいことを言った安倍首相が、一方で年金原資などのリスク市場での運用を拡大している。
GPIFの損がいくらになるのか?
参院選の前には公表されない。

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2016年6月28日 (火)

BrexitはRegrexitになるか?/世界史の動向(45)

欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票で離脱派が勝利した英国で、離脱に票を投じた有権者から、結果を受けて思い直したとの声が上がっているという。
Britain(英国)とExit(退出)を組み合わせた造語「Brexit」に馴染んだと思ったら、Regret(後悔)とExitを合わせた「Regrexit」が登場した。
Brexitは世界の市場に大きな影響を与えている。

 Brexit金融市場での60年の経験をもとに断言しよう。もし離脱なら、英ポンドの下落率は1992年の通貨危機(15%)の時より大きなものとなるだろう──。米著名投資家ジョージ・ソロス氏が英紙ガーディアンにこう寄稿をしたのは、英国の欧州連合(EU)離脱(Brexit、ブレグジット)を問う国民投票の実施を2日後に控えた6月21日。英シティー(金融街)は身構えた。
 92年のポンド急落を主導したソロス氏の不気味な予言は、現実となった。24日金曜日の朝、夜通しで開票が進んだ国民投票の結果は「Leave」(離脱)。英ポンドが対ドルで約12%急落、各国で株安が連鎖し、ソロス氏が警告した「ブラックフライデー」(暗黒の金曜日)の激震が世界市場を襲った。
 直前の各種世論調査では僅差で「Remain」(残留)が上回り、英ポンドが買い戻されていた。それだけに英国のEU離脱の選択が市場にもたらした衝撃は大きいものとなった。
Brexitショック 不確実性の連鎖、世界に試練

また、国民投票の際に離脱派が語っていた「バラ色の未来」が急速に色あせている。
旗振り役の主な政治家が、投票に向けた運動で語ったことの誤りを認めたからだ。
「公約」を反故にするような動きに、残留派からは不満が噴出しているというが、後の祭りかも知れない。
このことは、参院選の参考にすべきこともあるように思う。
「公約」を反故にするような動きというよりも、安倍首相自身が「新しい判断」とか言って、公約を公然と反故にしているからだ。

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2016年6月27日 (月)

JA東北の自民離れはどう影響するか/日本の針路(274)

参院選で、福島を除く東北各県のJA系団体が、自主投票になった。
今まで自民党の有力基盤であったが、環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意に対する反発などから判断を変えたという。
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東京新聞6月26日

このような政権批判がどの程度の広がりを見せるかによって、選挙結果は大きく左右される。
今回と過去3回の参院選における推薦状況は以下のようだった。
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<参院選東北>農協系 東北5県は自主投票

先に生長の家が自民党支持を取りやめたのに続く必然的な傾向である。
⇒2016年6月12日 (日):生長の家が自民党支持を取り止め/アベノポリシーの危うさ(80)

各種メディアは、序盤戦での情勢を与党有利と伝えている。
しかしBREXIT(イギリスのEU離脱問題)がアベノミクスの脆弱性を明らかにした。
今の政策のエンジンを吹かしたら、日本の破滅である。
参院選が歴史の大きな転換点になることを期待しよう。

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2016年6月26日 (日)

格差拡大経済政策の終焉/アベノポリシーの危うさ(85)

安倍晋三首相が消費税再延期の記者会見で、「アベノミクスは順調に結果を出しているが、リスクに備えるため」と説明した。
さっそく英国のEU離脱問題によってリーマン級のリスクが炸裂した。
安倍首相の「先見性」を讃えるべきであろうか?
そんなことはない。アベノミクスと称する経済政策の限界が明らかになったと言うべきだろう。

アベノミクスの計6本の矢の中で、良いか悪いかは別として、影響力があったのは「第一の矢」の大胆な金融緩和政策である。
黒田東彦日銀総裁が自ら異次元と称する金融緩和に踏み切ったのは、2013年4月であった。
今年6月20日の講演で、「2%の物価上昇は2年でできなかった」と言った。
安倍首相や稲田政調会長は、「道半ば」と言っているが、期限内に目標を達成できないのは、「道半ば」とは言わない。
アベノミクスは失敗だったのである。

この間、大企業と中小企業の業績格差は拡大した。
国民の間の貧富の差も大きくなっている。
『日本で貧富の格差が拡大してきた本当の原因』で原因を見てみよう。

1つは労働分配率の低下である。
日本の労働分配率は、1990年代がピークになっているが、その後は低下傾向に転じている。
欧米の後追いである。
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労働分配率が低下すると、資産家は大きな財産所得を得るので速いスピードでさらに資産を増やして行くのに対して、勤労所得だけが主な収入源となっている人達は資産の蓄積速度が遅くなる。
資産格差と所得格差の相互作用で格差は雪だるま式に拡大してしまう恐れがある。
日本銀行の資金循環統計では2014年度末の家計部門の金融資産残高は約1700兆円だから、世帯数を約5000万世帯とすると一世帯当たりの金融資産は3000万円以上にもなる。
しかし、家計調査での平均貯蓄額は1798万円に過ぎず、資金循環統計から求めた平均貯蓄額とは大きな差がある。
家計調査による貯蓄保有額の中央値は1052万円に過ぎず、分布はかなり偏っているのである。
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このような正規分布ではなく、べき分布と呼ばれている。
著しい大金持ちが少数だがいることが原因である。

日本の対外純資産は名目GDP比でみても1967年末には0.7%の債務超過だったが、2014年末には純資産が77.3%にも達する規模に拡大している。
2014年度には海外との間の利子や配当の受払などの海外からの所得は名目GDP比で4.3%の黒字に拡大している。
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資産の格差が所得の格差を生み、それがまた資産格差を拡大させるという、格差の拡大再生産が起きつつある。
全く格差のない社会が理想的とは言えないことは当然である。
しかし余りに格差が大きく固定的な社会も望ましくない。
アベノミクスの金融緩和政策は限界を迎えており、出口戦略をどう考えるかが大きな課題になっている。

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2016年6月25日 (土)

イギリスのEU離脱とアベノミクスの失敗/アベノポリシーの危うさ(84)

イギリスの国民投票でEU離脱が報じられると、世界株安となった。
日経平均株価も1286円下落して、15000円を割り込んだ。
円/ドルも99円台にまで高騰した。
アベノミクスが喧伝されるようになって、円/ドルは80円から120円超にまでなったが、既にその効果の半分が失われている。
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円安を招来したのは、アベノミクスの第一の矢と言われる大胆な金融緩和政策である。
黒田東彦日銀総裁は2013年4月「2年で2%の物価上昇を目指す」として異次元金融緩和に踏み切った。
円安によって輸出中心の大企業は収益が伸びたが、中小企業は原材料の輸入コスト増に苦しんだ。
法人税引き下げや投資減税の恩恵を受けたのも黒字大企業だ。
内部留保は過去最高となったが実質賃金は低下している。
⇒2016年6月23日 (木):経済政策の前提としての現状認識/日本の針路(273)

GDPが伸びないまま高株価を演出してきたため、バフェット指数は割安から割高に転じている。
アベノミクスの限界は明らかであった。
⇒2016年6月18日 (土):参院選の争点としての虚構経済政策/アベノポリシーの危うさ(83)

大部分の家計は、円建てで営まれているはずである。
とすれば円安が好ましいとは言えないだろう。
しかしイギリスのEU離脱は少なくとも短期的にはわが国経済に影響するだろう。
以下のようなシナリオが想定されている。
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東京新聞6月25日

今政府が行うべきは、消費の低迷対策である。
消費増税などもってのほかである。
タックスヘイブンなど「違法ではないが不適切」な租税回避を防止し、所得税の累進課税や純資産への累進的な課税が必要である。

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2016年6月24日 (金)

名門の蹉跌・鳩山邦夫/追悼(86)

6月21日、鳩山邦夫氏が亡くなった。
余り好感を持った記憶はないが、やはり私よりも若い人の死には敏感になる。
十二指腸潰瘍は周りにもいるポピュラーな病気だが、それが原因でなくなったという話は余り聞かない。
しかしTVで見ると、いかにも病人のようであった。
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東京新聞6月23日

1948年(昭和23年)9月13日、鳩山威一郎氏の次男として生まれた。
東京教育大学附属高等学校(現・筑波大学附属高等学校)を経て、東京大学法学部政治学科卒業後、同公法学科に学士入学し卒業した。
典型的なエリートである。
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「4代続けて全員東大」鳩山家の教育方針 「男だったら東大が当たり前」の家庭で育った鳩山邦夫が語る

華麗なる一族であるが、由起夫、邦夫の代になると、どこか社会とずれてしまったように思える。
東大法学部卒業時の成績はトップであったという。
Wikipediaによれば、高校時代は駿台予備校の模試を5回受け、1回目は600番くらい、3回目が105番、4回目に60番、5回目に1番になった。
28歳の若さで衆院初当選し、将来を嘱望された。
総務相や法相などを歴任するが、所属政党を移り変わった。
自民党、無所属、改革の会、自由改革連合、新進党、旧民主党、民主党、無所属、自民党、無所属、自民党…

趣味のチョウは玄人まさりだったらしい。
もう少し、世のため、人のためになるような人生であったら、と思う。
合掌。

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2016年6月23日 (木)

経済政策の前提としての現状認識/日本の針路(273)

参院選の争点として、与党は経済政策(アベノミクス)を前面に掲げている。
野党共闘側は、改憲阻止などを打ち出している。
私は、野党共闘側(B)の主張の方を支持するが、与党の経済政策で国民の支持を得ないと、次回国政選挙までに改憲に手を付けるのは必至だと思う。
従って、経済政策においても支持を広げる必要がある。

アベノミクスは順調か?
安倍晋三首相は消費税再延期の記者会見で「確実に成果を上げているが、デフレ脱却を確かなものにするため」と説明した。
稲田朋美自民党政調会長も「順調だが道半ばでまだ目標は達成していない」と言った。

アベノミクスは計6本の矢を主張している。
しかしまともに放たれたのは「第一の矢」の金融政策だけであると言えよう。
⇒2016年6月22日 (水):今回参院選の意義/日本の針路(272)

黒田東彦日銀総裁は2013年4月、「2年で2%の物価上昇を目指す」として大胆な金融緩和に踏み切った。
インフレ誘導による投資・消費の喚起が狙いである。
しかし黒田総裁は6月20日の講演で「2%の物価上昇は2年ではできなかった」と言った。
つまり失敗を認めたのである。
安倍首相は稲田政調会長は、「失敗」を「道半ば」とすり替えているのである。
期限内に目標を達成できないのは、「道半ば」ではなく「失敗」と言うのではないか。

順調なのは大企業だけである。
資本金10億円以上の大企業が抱える内部留保が300兆円を超え、過去最高に達している。
一方、物価上昇を差し引いた実質賃金は、安倍政権が発足した2012年からの3年間でマイナス4.8%である。
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大企業内部留保300兆円超 大幅賃上げで景気回復を

大企業が収益をあげれば、中小企業に波及し、やがて労働者の賃金にまで滴り落ちるという「トリクルダウン」の説明は、起こるはずがない。
元旦の「朝まで生テレビ」で、竹中平蔵氏が「トリクルダウンなど起きるはずがない」という趣旨の発言をしたのは、その通りであるが、「お前が言うなよ」ということだろう。
⇒2016年1月17日 (日):いかさま経済政策の破綻(続)/アベノミクスの危うさ(68)
⇒2016年6月11日 (土):トリクルダウンの幻/アベノポリシーの危うさ(79)

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2016年6月22日 (水)

今回参院選の意義/日本の針路(272)

参院選が公示された。
18歳選挙権、合区など制度的に今までにないこともいくつかある。
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東京新聞新聞6月22日

相変わらず政党の数は多いが、大きく分ければ与党あるいは与党に賛同もしくは補完する勢力と、批判勢力になる。
前者(A)は、自・公・維・こ・改、後者(B)は民・共・社・生である。
私は後者の4党(B)で政策合意ができ、1人区で統一候補ができたのが大きいと考える。

争点は何か?
安倍首相は、アベノミクスを続けるか否かが争点だと言っている。
確かにアベノミクスをどう評価するかは大きな争点である。

アベノミクスは、「三本の矢」および「新三本の矢」と称する政策が軸である。
しかし「新三本の矢」は、大前研一氏の言うように、コメントする価値がないような空疎な言葉の羅列である。
的を示しただけだったが、批判を受けて矢の説明を補足した。
しかし実現の道筋が全く不明で、政策と言えるような代物ではない。
⇒2015年12月28日 (月):「新三本の矢」批判①介護離職0/アベノミクスの危うさ(66)

曲がりなりにも政策として影響力を持ったのは、第一の矢である金融緩和であろう。
安倍首相肝いりで日銀総裁になった黒田東彦氏は、2013年4月「2年で2%の物価上昇を目指す」として自ら異次元と呼ぶ大胆な金融緩和に踏み切った。
インフレ誘導による投資・消費の喚起が狙いである。
しかし当の黒田氏が、最近失敗を認めた。

 日銀の黒田東彦総裁は20日、都内の私大で行った講演で、日銀が掲げる2%の物価上昇目標について「2年程度での実現はできなかった」と発言。当初目標の達成に“失敗”したことを初めて認めた。
黒田総裁“失敗”認める 2%物価目標「2年程度で実現ムリ」

大胆な金融緩和で、円安と株高を招来した。
円安で輸出中心の大企業は収益が伸びたが、中小企業は原材料の輸入コスト増に苦しんだ。
法人税引き下げや投資減税の恩恵を受けたのも黒字大企業である。
結果として大企業と中小企業の業績格差は急拡大し、13年から15年の間に経常利益合計額の差が倍増した。

株高は、年金の原資のような公的資金まで投入して実現したものである。
実体経済の成長を伴わない株高であるのは、GDPと株式時価総額の比率を示すバフェット指数の推移を見ても明らかであろう。
⇒2016年6月18日 (土):参院選の争点としての虚構経済政策/アベノポリシーの危うさ(83)

家計はどうだろうか? 
死語化していたエンゲル係数という言葉が復活した。
⇒2016年5月17日 (火):実質消費支出の急減とエンゲル係数の上昇/アベノポリシーの危うさ(66)

2013年までは、エンゲル係数が25%を超える月はほとんどなかったが、2014年に入ってから25%を超える月が増え始め、2015年になるとその傾向がさらに顕著になった。昨年5月以降は、毎月25%を超える状況が続いている。
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「エンゲル係数急上昇!」が示す日本経済の意外な弱点

争点は多様であるが、大きな柱として4つに分けるのが妥当だろう。
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東京新聞6月10日

すべての争点について、安倍政権に反対である。

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2016年6月21日 (火)

高浜原発の延命は「新しい判断」か?/原発事故の真相(142)

原子力規制委員会が、運転四十年を超える関西電力高浜原発(福井県)の延長を認可した。
東京電力福島第一原発事故の後、原発の運転期間を原則40年とする制度ができてから初めてだ。
例外」とされてきた運転延長が他原発でも相次ぐ可能性が高い。

安倍首相が、消費増税再延期を表明する際、今までの説明との整合性と矛盾することから、「新しい判断だ」と言った。
規制委も「新しい判断」に変わったのであろうか?

Ws000000 規制委は高浜1、2号機について、劣化しつつある一部の配管や電気ケーブルの補強や交換を条件にした上で、60年の時点でも安全機能が維持できると判断。1号機は2034年11月、2号機は35年11月までの運転を全会一致で認めた。ただ、関電はケーブルの交換など安全対策工事に3年以上かかるとみており、再稼働は早くても19年秋以降になる見通しだ。
 今の制度では、原発の運転期間は規制委が認めれば1度だけ最長20年延長できる。1、2号機の場合、経過措置で猶予された7月7日の期限までに三つの許認可を受ける必要があった。
 関電は15年3月に新基準に基づく審査を、翌月に延長認可を申請。規制委は、期限までに許認可がそろわず「時間切れ」で廃炉を迫られる事態を避けるため、他の原発を後回しにする形で審査し、今年4月に新規制基準に基づく許可を出した。重要設備を実際に揺らして耐震性を確かめる試験を先送りして、今月10日に工事計画を認可した。
 福島の事故後、電力各社は40年前後の老朽原発6基の廃炉を決めたが、35年以上の原発は高浜以外に5基ある。関電は美浜原発3号機(福井県)についても延長を申請しているが、主な審査は終わり、期限の11月末までに認可される可能性が高まっている。
40年超の高浜原発、初の運転延長認可 例外が続く恐れ

40年という原発の法定寿命は、原子炉の圧力容器の内部が劣化する目安だという。
福島第一原発が未だ原子炉を確認できていない以上、安全サイドで考えるべきなのは当然であろう。
電力会社も原子力規制委員会も、説明責任を十分に果たしているのだろうか?

四国電力は、来年9月で運転開始40年になる伊方原発(愛媛県)1号機の廃炉を決めた。
老朽原発を廃炉にするのは世界の潮流だといわれる。
無理な延命をして得られるメリット・デメリットをどう評価したのか?

一方、運転差し止めを命じた仮処分の3、4号機について関電による執行停止の申し立ては却下された。
山本善彦裁判長は「決定を取り消す明らかな事情がない」と理由を述べた。
関電にこそ、「新しい判断」が求められるのではないか。

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2016年6月20日 (月)

伊豆と駿河の重なる風土・井上靖文学館/人物記念館(3)

井上靖は、1907年(明治40年)5月6日、軍医・井上隼雄と八重の長男として、北海道旭川市に生まれた。
井上家は静岡県伊豆湯ヶ島(現在の伊豆市)で代々続く医家で、隼雄は現在の伊豆市門野原の旧家出身であり、井上家の婿であった。
父が韓国に従軍したので伊豆湯ヶ島に戻り、両親と離れ湯ヶ島で戸籍上の祖母かのに育てられた。

湯ヶ島尋常小学校に入学の後、浜松尋常高等小学校に編入学した。
1921年(大正10年)、 静岡県立浜松中学校(現在の静岡県立浜松北高等学校)に入学、1922年(大正11年)、 静岡県立沼津中学校(現在の静岡県立沼津東高等学校)に転入した。
1927年(昭和2年) 、金沢市の旧制第四高等学校理科に入学した。
1930年(昭和5年)、九州帝国大学法文学部英文科へ入学するが、1932年(昭和7年)、九州帝大を中退して、京都帝国大学文学部哲学科へ入学した。

1936年(昭和11年)、京都帝大を卒業し毎日新聞社に入社した。
1950年(昭和25年)、『闘牛』で第22回芥川賞を受賞し、1951年(昭和26年)、毎日新聞社を退社して、作家専業となった。

作品は、現代を舞台とする『猟銃』、『闘牛』、『氷壁』等、自伝的色彩の強い『あすなろ物語』、『しろばんば』等、歴史に取材したものと幅広い。
歴史小説は、『風林火山』、『真田軍記』、『淀どの日記』等戦国時代が多く、中国では西域を題材にした『敦煌』、『楼蘭』、『天平の甍』等が多くのファンを獲得した。
スローリーテリングな構成と詩情豊かな作風で、映画・ドラマ・舞台化されたものも多い。

井上靖文学館は、北に秀峰富士、南に紺碧に輝く駿河湾を望む長泉町クレマチスの丘に建てられている。
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この地は、『あすなろ物語』で「寒月ガ カカレバ キミヲシノブカナ  愛鷹山ノフモトニ住マウ」
とうたわれてる。
文学館は沼津中学後輩の岡野喜一郎(スルガ銀行元頭取)が、1973年に設立、開館した。

竹林を主体とした閑静な森の一角にある。
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沼津中学時代には、文学へ目覚めるきっかけとなる友人たちと出会った。
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その頃を描いた『夏草冬濤』は、私の愛読書の一つである。
井上靖のアイデンティティは、伊豆と駿河の交わる沼津の風土が多分に寄与していると言えよう。

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2016年6月19日 (日)

炉心溶融と第三者委員会/原発事故の真相(141)

福島第1原子力発電所事故で原子炉の核燃料が溶け落ちる「炉心溶融)」の公表が約2カ月遅れた問題で、東京電力が設置した第三者検証委員会(委員長・田中康久弁護士)は16日、調査報告書を公表した。
当時の清水正孝社長が炉心溶融という言葉を使わないよう指示していたことがわかった。
首相官邸からの圧力の可能性も指摘した。
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指示、官邸の意向か 元社長が「炉心溶融使うな」 東電検証委   

当然のことながら、民主党政権時代に不眠不休で対応に当り、ツイッターで「#edano_nero(枝野寝ろ)」というハッシュタグまで付けられた枝野官房長官は激怒している。

 民進党の枝野幸男幹事長は17日、国会内で記者会見し、菅直人内閣の官房長官として対応した東京電力福島第1原発事故の炉心溶融判断をめぐる東電の第三者検証委員会報告書に関し「不誠実な調査結果だ。私や菅元首相への名誉毀損だ」と述べ、党として東電や検証委に対する法的措置を検討する考えを明らかにした。
 報告書は、当時の首相官邸が東電に「炉心溶融という言葉を使うな」と指示していたと推認される、との内容を盛り込んでいる。
 枝野氏は「参院選を目前にした公表は選挙妨害の疑いも免れない」と強調した。
民進・枝野幸男幹事長激怒「私や菅直人元首相への名誉毀損だ」 「炉心溶融使うな」報告書で東電に法的措置検討

真相はどうか?
現時点では東電と官邸のやり取りの実態は分からない。
芥川龍之介の『藪の中』である。

しかし、報告書から分かることは、東京電力の政権への忖度という事実である。
事故に第一義的な責任を持つのは東京電力ではないか。
東電のマニュアルでは、「原子力災害対策マニュアル」では、核燃料損傷の割合が5%を超えれば、炉心溶融と判定することになっていた。

マニュアルに従えば事故発生から3日後に、福島第一原発は、メルトダウンしたと判定され、公表されるべき状況だった。
ところが東電は今年の2月まで、「炉心損傷」と過小評価し続けた。
マニュアルがあること自体、5年もの間、気づかれていなかったのである。
⇒2016年2月25日 (木):背信の東京電力メルトダウン評価/原発事故の真相(137)

東電幹部も「隠蔽」だったと認めている。

東京電力が福島第一原発事故の当初、原子炉内の核燃料が溶け落ちる炉心溶融が起きていたのに炉心損傷と説明し続けた問題で、姉川尚史原子力・立地本部長は三十日の記者会見で「炉心溶融に決まっているのに『溶融』という言葉を使わないのは隠蔽(いんぺい)だと思う」と述べ、同社の説明が不適切だったとの認識を示した。
炉心溶融の説明不備は「隠蔽」 東電幹部が認める

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福島第1原発 炉心溶融大事故

第三者委員会のメンバーに、舛添氏が「厳格な第三者」にと繰り返し、記者会見の様子が世論の反発を昂進した「まむしの善三」こと佐々木善三弁護士の名前が見える。
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佐々木弁護士は、第三者的調査を売り物にする似ているようにも見える。

東京電力では、福島第一原発「国会事故調」への虚偽説明に関する「第三者検証委員会」の委員だった。国会事故調に玉井俊光企画部長が「今は真っ暗だ」とウソの説明をし1号機建屋の調査を断念させたことについて、佐々木弁護士らの第三者委が2013年3月に公表した報告書にはこう書かれている。
玉井が国会事故調委員や協力調査員らに対して事実に反する説明をしたのは、玉井の勘違いに基づくものであり、その説明内容には勝俣会長、西澤社長、担当役員及び担当部長が一切関与していなかったのはもちろんのこと、直属上司さえも関与していなかった。
玉井企画部長だけに責任を押しつけて、東電の会社ぐるみの隠ぺい工作を否定する内容だ。
「観劇会」をめぐる巨額の収支不一致問題で閣僚を辞任した小渕優子が自ら設置した「第三者委員会」の委員長にもなった。小渕の四つの政治団体における平成21~25年分の政治資金収支報告書で、計3億2,000万円の虚偽記入が判明したこの事件。
佐々木弁護士らの第三者委は、小渕について「監督責任があるのは当然で、責任は軽微とはいえない」と指摘しながら、「問題に関する認識をまったく有しておらず、事件にまったく関与していなかったことは明らか」と擁護し、政治資金規正法違反(虚偽記載・不記載)の罪に問われた元秘書2人のしでかした事件と片づけた。ちなみに、この委員会の委員を務めた田中康久弁護士(元仙台高裁長官)は先述した東電第三者委の委員長であった。善三さんと同じ体質をお持ちなのかもしれない。
汚職の守り神…舛添、小渕、猪瀬を擁護した「逆ギレ弁護士」の正体

当事者が委任した第三者というのが、第三者と言えるのかどうか、改めて問われることにになろう。
しかも「第三者調査」を商売にしている弁護士である。
そもそも“第三者”に検証を委ねてしまうこと自体、東電の自らを省みる力、企業倫理の欠如の表れではないのか。
これで原発再稼働を口にするのだから、国民はバカにされていると思うべきだろう。

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2016年6月18日 (土)

参院選の争点としての虚構経済政策/アベノポリシーの危うさ(83)

株式市場が不安定である。
14日(火)に日経平均は16000円割れし、17日(金)に15600円で引けた。
下値を探る展開であると言えよう。
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安倍首相はアベノミクスは順調であるが、世界経済に不安要素があるから、消費増税を延期すると言った。
「ボクは悪くない。ミンナが悪いんだ」と言う幼児のような説明である。

確かに、イギリスがEUから離脱するか否かなどの不透明要因がある。
世界の金融・資本市場で投資家のリスク回避姿勢が強まっているのは事実であろう。
しかし「異次元金融緩和政策」に限界が来ていると考えるべきだろう。
円/ドルの推移は以下のようである。
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円安への誘導によって株高を演出してきたアベノミクスの限界である。
GDPと株式時価総額の比率を示すバフェット指数という指標がある。
政府はトリクルダウンと言う表現を止め、「経済の好循環」というようにしたという。
しかし、株価が上がれば好景気のような気がするという作戦も無理があろう。

バフェットし指数の推移は下図のようである。
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バフェット指標が警告、日本株は割高-時価総額の対GDP比

アベノミクスという経済政策の虚妄性は明らかであろう。
株式市場に投入する公的資金を拡大してまで株価浮揚を図ってきた。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や公務員らが加入する共済年金は1-3月期に日本株を9654億円買い越した。世界的な株安や円高の中でも株式投資を進めた。日本銀行が17日公表した資金循環統計で明らかになった。
GPIFや3共済:日本株9654億円買い越し、株安・円高の1-3月

セコイことに、損失が見込まれるGPIFの運用実績の公表は参院選後とされた。

 公的年金積立金の運用実績の公表日が、夏の参院選後とみられる7月29日とされたことを巡り、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用委員会で、複数の委員が「公表が遅い」と指摘していたことが、31日に公表された議事要旨で分かった。民進党は「独自試算では2015年度の損失は5兆円に上り、損失隠しだ」と国会で追及していた。
 GPIFは3月31日に公表した16年度計画で、これまで決めていなかった運用実績の公表日を「7月29日」と初めて明記。しかし、過去5年の公表日は7月初旬が多かったことに加え、世界的な景気減速の影響で大幅な損失を出す可能性が高く野党からは「参院選後に先送りした」と批判の声が上がっていた。
GPIF 年金運用「公表が遅い」複数の委員が指摘

私は個人的には円高は好ましいことであると考えるが、実体経済が強化されないとどうしようもないだろう。
アベノミクスという虚構経済政策のメッキは剥がれているのだ。

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2016年6月17日 (金)

歴史の周期性と「幻の東京五輪」/アベノポリシーの危うさ(82)

歴史の周期性ということがいわれる。
例えば、地震である。
江戸時代末期の安政の大地震が1855年、関東大震災が1923年で約70年後だった。
さらに約80年後の2011年には、東日本大震災が起きた。

まあ大規模地震の場合には、プレートの運動に伴う歪みが限界に達する時間ということで納得できなくはない。
社会的な現象についてはどうか?
例えば、景気変動について、さまざまな周期性が言われている。
キチンの波と呼ばれる40ヶ月平均の消費(在庫)循環、ジュ
グラーの波と呼ばれる10年の設備投資循環、クズネツの波という20年の建設循環、そしてコンドラチェフの波と呼ばれる50年の技術革新(イノベーション)循環などである。
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景気循環の4つの波

当然波の周期には幅がある。
例えばコンドラチェフの波は、Wikipediaでは以下のように説明されている。

約50年の周期の循環。長期波動とも呼ばれる。ロシアの経済学者ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチエフによる1925年の研究でその存在が主張されたことから、シュンペーターによって「コンドラチェフの波」と呼ばれ、その要因としてシュンペーターは技術革新を挙げた。第1波の1780 - 1840年代は、紡績機、蒸気機関などの発明による産業革命、第2波の1840 - 1890年代は鉄道建設、1890年代以降の第3波は電気、化学、自動車の発達によると考えた。この循環の要因として、戦争の存在を挙げる説もある。

「幻の東京五輪」と呼ばれる五輪計画があった。
1940年のオリンピックは東京で開催することが決まっていた。
所が1937年7月に盧溝橋事件が起こり、その後日本軍と中華民国国軍の戦闘区域が拡大し「支那事変」(日中戦争)と呼ばれるようになると、陸軍が軍内部からの選手選出に異論を唱えた。
1938年に入ると日中戦争の長期化が予想されるようになったために、鉄鋼を中心とした戦略資材の逼迫を理由に、軍部が「木材か石材を使え」などと無理な注文を出した上に、陸軍大臣・杉山元が議会においてオリンピック中止を進言するなど、反対の態度を鮮明にした。
軍部からの圧力を受けた内閣総理大臣・近衛文麿は、閣議で戦争遂行以外の資材の使用を制限する需要計画を決定し、この中にオリンピックの中止が明記されていたことから、事実上オリンピックの開催中止が内定した。
幻の東京五輪である。

ゴタゴタ続きの東京オリンピック・パラリンピック準備を見ていると、この過去が頭を過ぎる。
1940年だから、2020年はちょうど80年後にあたる。
平均寿命くらいの時間である。
世代で言えば、2.5世代くらいであろうか。
かつて、人生50年と言われていたので、コンドラチェフの波に相当しようか。
技術革新が要因とすれば、より短縮されているとも考えられるが……

そもそもの発端は、招致活動時の安倍首相の虚言であろう。
安倍首相はオリンピック招致のプレゼンで、福島原発事故の影響について、「状況はコントロールされている」「汚染水は港湾内で完全にブロックされている。健康問題は今もこれからも全く問題ないことを約束する」とスピーチしたのである。
⇒2013年9月24日 (火):「嘘も方便」首相と日本の将来/花づな列島復興のためのメモ(264)

承知に係った猪瀬直樹前東京都知事と本来ならば準備の中心となり開幕を迎えるべき舛添要一都知事が不名誉な形で辞職した。
新国立競技場は設計し直したが、当選した案が聖火台を想定していないなど、大丈夫かと危惧せざるを得ない。
自民党の農林族からは、イスを木製にせよという要求が出ている。
私もゼロベースなら賛成するところだが、あれやこれやで予算オーバーになっている現状では賛成しかねる。

重要なのは、招致活動そのものの正当性であろう。
裏金が動いていたことで、フランス当局が捜査中とのことである。
⇒2016年5月18日 (水):東京五輪の裏金が示すもの/アベノポリシーの危うさ(67)

アマチュア精神が建前に過ぎないにしても、余りに生々しい利得が見えてしまうと、しらけるのではなかろうか。
電通のキーマンは安倍政権とも近いようである。
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週刊文春6月23日

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2016年6月16日 (木)

猪瀬直樹と舛添要一/「同じ」と「違う」(95)

それにしてもどうしたことだろうか。
首都東京の顔であるべき人物が、2代続けてカネの問題で辞職せざるを得なくなった。
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東京新聞6月16日

猪瀬直樹氏も舛添要一氏も、自民党(および公明党)、つまり安倍政権の下に擁立された。
猪瀬氏は石原慎太郎元知事の下で副知事を務めており、ある意味では順当なところだろう。
実際、433万8936票を獲得し、日本の選挙史上では個人としては最多得票記録で当選を果たした。

しかし、副知事と知事ではまったく違うということが分かっていなかったようである。

昔、帝人の社長を長く務めた大屋晋三氏が、社長と副社長の間の距離は、副社長と運転手の間の距離よりも大きい、という意味のことを言ったことがある。
要するに、社長と副社長は質的な懸隔があるということだろう。
リーダーとスタッフの違いである。
猪瀬氏は辞任に際して次のように語った。

まずは政策について、自分はかなり精通していると思っておりましたが、いわゆる政務ということは大変その、アマチュアだったと反省していて、政治家としてずっとやってこられた方は、常にどういうものを受け取ったらいけないかとか、そういうことについて詳しいということもありますし、皆さんに対しても非常に腰が低い。そういうところがあると思います。しかし僕の場合は、政策をちゃんとやればいいだろうと、ややそういう生意気なところがあったと反省しております。
⇒2013年12月20日 (金):猪瀬氏の決定的な勘違い/花づな列島復興のためのメモ(284)

まあ、この認識自体がバランス感覚とかリベラルアーツというものに対する無定見さを表している。
⇒2014年6月24日 (火):遠藤麟一朗とリベラルアーツ/知的生産の方法(98)
私は猪瀬氏には少し期待するところがあったので、まことに残念であった。
猪瀬氏は有能な参謀だったかもしれないが、将としては落第だったのである。

舛添氏にはもともと期待していなかった。
何の志があって都知事になるのか、まったく見えてこなかった。
だから自公両党が、舛添バッシングに走るのを、冷ややかに眺めていた。

公私混同のオンパレード(というか公の観念がないのでは?)の舛添氏は、言わば「ゲスの極み!知事」である。
⇒2016年2月12日 (金):「ゲスの極み」をアップデートする自民党/アベノポリシーの危うさ(17)

発端は週刊文春のスクープで、千葉県のホテルに家族旅行したのを、会議をした強弁して墓穴を掘った。
⇒2016年5月15日 (日):舛添都知事の醜態と支援責任/アベノポリシーの危うさ(65)
会議自体の実在性を証明できなくなって、観念したのだろう。
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週刊文春6月23日号

舛添氏のニュースは気分が悪くなるが、疑惑は解明されなければならない。

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2016年6月15日 (水)

舛添東京都知事が辞職。そして……/日本の針路(271)

大騒ぎの末に、舛添要一東京都知事が辞職願を提出した。
与党の自民、公明を含む都議会7会派全てと無所属議員2人が舛添氏の不信任案を提出する意向を固め、可決が確実視されることになったためである。
舛添氏の辞職は当然であろうが、それでコトが終わりではない。
自公両党には、推薦した責任がある。
⇒2016年5月15日 (日):舛添都知事の醜態と支援責任/アベノポリシーの危うさ(65)
⇒2016年6月 7日 (火):違法性と不適切性/「同じ」と「違う」(94)

 東京都の舛添要一知事は15日午前、政治資金流用をはじめとする公私混同問題の責任を取り、辞職する意向を固めた。
 同日午前に都議会の川井重勇議長に、21日付の辞職願を提出した。
 午後の都議会本会議で自民、公明、共産、民進各党など、全会派が共同提出した不信任決議案が可決される見通しだったが、都政の混乱を避けるため、その前に自ら身を引いた形だ。関係者によると、不信任案は取り下げる。
 舛添氏をめぐっては、高額な海外出張費や公用車を使った週末の別荘通いに加え、私的な飲食費や家族と宿泊したホテル代を、政治資金から支出していた問題などが噴出。都民や都議会からの批判が高まっていた。
 知事の辞職には議会の同意が必要。公職選挙法の規定では、辞職の申し出を受けた議長が選挙管理委員会に通知した翌日から50日以内に知事選が行われる。
 7月10日投開票の参院選と都知事選の同日選は困難とみられ、知事選の告示日は7月10日以降に設定される方向だ。具体的には「7月14日告示、同31日投開票」といった日程が候補に挙がっている。
 現金受領問題で2013年12月に引責辞任した前任の猪瀬直樹氏と同様、2代連続で「政治とカネ」の問題で辞職に追い込まれることになる。
 舛添氏は東大助教授などを経て、01年7月の参院選比例代表に自民党から出馬し、初当選。参院議員を2期務め、厚生労働相などを歴任した。
 猪瀬氏の辞職に伴う14年2月の都知事選に無所属で出馬し、自民党都連と公明党都本部の推薦を得て、約211万票を集めて初当選した。 
舛添氏が辞職願=21日付、政治資金流用で引責―都議会の不信任前に

自公両党は、参議院議員選挙への影響を考えて不信任に回ったということのようだが、そういう政局的な考えを続ける限り、同じことの繰り返しだろう。
私は舛添氏が辞職するのは当然として、どうせなら都議会を解散すればいいのに、と思う。
確かにムダな費用かも知れないが、都議会議員も総入れ替えした方が、長い目で見れば都民のためではないか。

参院選の争点をどう考えるか?
安倍首相は、アベノミクスの成果を強調し、さらに加速させようと言っている。
しかし安倍政権下で、エンゲル係数は上昇し、消費を抑制せざるを得ないのが現実だ。
⇒2016年1月18日 (月):いかさま経済政策の破綻(3)/アベノミクスの危うさ(69)

格差が拡大し、それが経済を停滞させているのだ。
⇒2016年6月14日 (火):格差を拡大する経済政策/アベノポリシーの危うさ(81)
安倍首相が自分の任期中に行うと意気込んでいるにも拘わらず、参議院議員選挙の公約を示す政策パンフレット2016では、改憲は最後に目立たないように書かれている。
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余りに姑息な争点隠しであり、セコイ舛添氏と同じ穴のムジナと言うべきであろう。

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2016年6月14日 (火)

格差を拡大する経済政策/アベノポリシーの危うさ(81)

安倍首相は、消費増税再延期を表明した記者会見で、社会保障については引き上げた場合と同じことを全て行うことはできない、と明言した。
一見もっともなように聞こえるが、前提を飛ばしてしまっている。
格差の拡大が成長のネック要因になっている。
⇒2016年6月11日 (土):トリクルダウンの幻/アベノポリシーの危うさ(79)

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東京新聞6月14日

歳出は、年金や医療費が増える一方で、今後減ることもないと予測される。
従って、税収を増やすことができなければ、借金せざるを得ない。
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日本の不平等をどうするか

税収の推移は以下のようである。
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日本の不平等をどうするか

消費税が増えているのに対し、所得税と法人税は大きく減っている。
このため、全体としての税収が増えていないのだ。
消費増税が延期されるのであれば、所得税や相続税を視野に入れて考えるべきだろう。最高税率の引き上げ、累進度の強化などである。

安倍政権は、経済活性化のために企業優遇政策をとっている。
法人税率も下げてきた。
しかし、消費増税をする、しないに拘わらず、課税体系の見直しは必要である。
法人税率の国際比較は以下のようである。
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日本の不平等をどうするか

米・仏・独に比べて十分に低い水準である。
所得税の累進性を高めたり、相続税率を高めることも、格差是正のためには必要であろう。

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2016年6月13日 (月)

フェルミ推定とマンハッタン計画/知的生産の方法(152)

イタリア出身の物理学者エンリコ・フェルミの名を冠した「フェルミ推定」という言葉は、実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を概算で推定する意味である。
要するに概算値を見積もることで、桁数の概算・order estimationは、実験をやった人間には馴染み深い。
フェルミ推定と言われるのは、フェルミがこの種の問題に対して、ずば抜けた能力を持っていたからである。
フェルミは世界初の原爆実験がトリニティ実験場で行われた時、小さな紙切れが爆発の衝撃波によって飛散する様子から、威力を推定したという。

日本では細谷功氏が、「地頭力」という言葉とセットで紹介して広まった。
外資系のコンサル会社や、公務員試験などでよく用いられるという。
私がリサーチファームに在籍していた1970年代には聞いたことがない言葉である。
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細谷功『「自分の頭」で問題解決する「地頭力」』講談社(2014年6月)

フェルミは妻のラウラ・カポーネはユダヤ人であったため、ベニート・ムッソリーニのファシスト政権下では迫害を受けた。
1938年のノーベル賞授賞式出席の機会を利用し、ストックホルムで賞を受け取った後、そのままアメリカに移住・亡命した。
1939年、コロンビア大学の物理学教授となり、1942年、シカゴ大学で世界最初の原子炉「シカゴ・パイル1号」を完成させた。
った。アメリカへの移住直後にフェルミは、オットー・ハーンがドイツで核分裂実験を成功させたと知る。
アメリカでは核分裂反応の研究に従事し、、原子核分裂の連鎖反応の制御に史上初めて成功した。
この原子炉は原子爆弾の材料となるプルトニウムを生産するために用いられた。
アメリカ合衆国の原子爆弾開発プロジェクトであるマンハッタン計画でも中心的な役割を演じ、1944年にロスアラモス国立研究所のアドバイザーとなった。

マンハッタン計画(Manhattan Project)は、第二次世界大戦中、アメリカ、イギリス、カナダが原子爆弾開発・製造のために、科学者、技術者を総動員した計画である。
計画は成功し、原子爆弾が製造され、1945年7月16日世界で初めて原爆実験を実施した。
さらに、広島に同年8月6日・長崎に8月9日に投下、合計数十万人が犠牲になり、また戦争後の冷戦構造を生み出すきっかけともなった。

オバマ米大統領の広島訪問は、核兵器を実戦で使用した唯一の国の指導者が被爆地に足を踏み入れるという意味で、歴史的機会だった。
しかし、米国民の多数派は依然として「原爆投下が戦争終結を早め、多数の米兵の命を救った」と考えている。
多くの人命を一瞬にして消し去ったキノコ雲の意味をめぐり、両国民の認識の違いはなお大きい。
広島でのオバマ演説は「71年前の雲一つない明るい朝、空から死が舞い降り、世界は変わった」と始まる。
第三者として語っているのだ。

私は、伊勢志摩サミットで安倍首相は、リーマン級などの言葉に拘らず、持続可能な社会を築くための機会にするべきだったのではないかと思う。
せっかく伊勢神宮で首脳を出迎えたのだから、式年遷宮のしくみや常若という考え方などを説明すれば、感動したに違いない。
核廃絶の訴求も、よりリアリティのあるものになったであろう。

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2016年6月12日 (日)

生長の家が自民党支持を取り止め/アベノポリシーの危うさ(80)

「日本会議」という保守系の民間団体がある。
安倍晋三内閣と極めて近い関係にあることで注目を浴びている組織である。
現在の安倍内閣の主要閣僚19人中15人と約8割が日本会議のメンバーであり、昨年夏の安保法制を合憲とした3人の憲法学者をはじめ、安倍政権の周辺のさまざまな団体・人脈が、日本会議関係者で構成されている。
⇒2015年12月26日 (土):日本をダメにする日本会議という存在/日本の針路(268)

Ws000000この日本会議の実態を詳らかにした『日本会議の研究』扶桑社新書(2016年4月)が、当の日本会議から出版差し止めの申し入れがあったという。
扶桑社と言えば、政権の御用新聞化している産経新聞と同じグループである。
「オヤッ」という感じである。

「オヤッ」という感じは、「成長の家」が安倍政権批判を明らかにしたことでさらに大きくなった。
参議院選挙で、「与党とその候補者を支持しない」方針を明らかにしたのだ。

来る7月の参議院選挙を目前に控え、当教団は、安倍晋三首相の政治姿勢に対して明確な「反対」の意思を表明するために、「与党とその候補者を支持しない」ことを6月8日、本部の方針として決定し、全国の会員・信徒に周知することにしました。その理由は、安倍政権は民主政治の根幹をなす立憲主義を軽視し、福島第一原発事故の惨禍を省みずに原発再稼働を強行し、海外に向かっては緊張を高め、原発の技術輸出に注力するなど、私たちの信仰や信念と相容れない政策や政治運営を行ってきたからです。
今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針

「成長の家」が日本会議と深い関係があることは周知の事実である。

作家の佐藤優さんから興味深い話を聞いた。KSD事件で2001年に東京地検に逮捕されるまで自民党の右派を代表する政治家だった村上正邦さんのことである。
・・・・・・
 佐藤さんによると、村上さんは九州の筑豊炭田で貧しい炭鉱労働者の子として生まれ、青年時代には炭鉱で労働運動のリーダーをしていた。幼いころには、朝鮮半島から強制連行され、炭鉱で虐待されている人たちの姿も目撃し、心を痛めたことがあるという。
 そのうえ村上さんは、かつて生長の家を支持母体にして国会議員になった人だった。
 私は村上さんのライフヒストリーを聞きたいと思った。もし、村上さんがすべてを話してくれるなら、なぜ日本会議が近年台頭したのか、その謎を解くカギが見つかるかもしれない。
日本会議を形成する生長の家人脈

しかし今や「成長の家」は自らの理念と安倍政権の政策が、根本的に矛盾することを明らかにして袂を分かった。

宗教法人「生長の家」は9日、安倍晋三首相の政治姿勢に反対し、参院選で与党とその候補者を支持しないとする方針を発表した
方針は、安倍政権を「民主政治が機能不全に陥った時代の日本社会を美化するような主張を行っている」などと批判。「日本を再び間違った道へ進ませないために、明確に『反対』の意思を表明する」とした。
生長の家は、憲法改正運動を進めて安倍政権を支持する「日本会議」の事務総局幹部らがかつて属していた。これに対し、今回の方針は「日本会議の主張する政治路線は、生長の家の現在の信念と方法とはまったく異質で、時代錯誤的だ」としている。
Ws000001
宗教法人「生長の家」、安倍政権を批判 参院選で与党を支持せず

安倍政権の軋む音が聞こえてきた。
与党を形成している公明党の支持母体の創価学会はどうか?
公明党が「平和の党」を自称するならば、安保法を推進したことで絶対矛盾に陥るだろう。
安倍政権が崩れ落ちるのも間近だと見る。

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2016年6月11日 (土)

トリクルダウンの幻/アベノポリシーの危うさ(79)

トリクルダウンという聞き慣れない言葉が、2014年の新語・流行語大賞の候補になった。
「徐々に溢れ落ちる」や「浸透する」という意味である。
「富裕層や大企業を豊かにすると、富が国民全体にしたたり落ち、経済が成長する」という考え方として、サプライサイド経済学や新自由主義の中心的な思想と喧伝された。

この考えを実行したのが、レーガノミクスという言葉で知られるロナルド・レーガン第40代アメリカ合衆国大統領だった。
レーガノミクスとは、もちろん、レーガンとエコノミクスの合成語である。

この言葉が、新語・流行語大賞の候補になったのは、安倍政権とその周辺で盛んに使ったからである。
アベノミクス効果によりトリクルダウンが起きて、国民が豊かになるという説明を繰り返した。
甘利明前経済再生担当相は、2014年11月の記者会見で、「アベノミクスの基調が頓挫したわけではないが、トリクルダウンがまだ弱い」と語っていた。
安倍政権の経済政策のブレーンである経済学者の浜田宏一氏は、「アベノミクスの最初のステージはトリクルダウン」としていた。
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【アベノミクス失敗?】トリクルダウン理論が崩壊中!

でなければ、こんな聞き慣れない経済用語が流行するはずがない。
しかし野村総研から発表された調査結果では、アベノミクスによって資産が増加しているのは富裕層だけだった。
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【アベノミクス失敗?】トリクルダウン理論が崩壊中!

2014年12月に、OECDの「格差と成長」に関する報告書の訳文が発表された。

富裕層と貧困層の格差は過去30年間で最大となっており、所得格差の趨勢的な拡大は、経済成長を大幅に抑制している。

この後、「安倍政権が目指すのはトリクルダウンではなく、経済の好循環の実現」と、表現が軌道修正されたようである。
事実、元旦に放映された「朝まで生テレビ!」では、安倍政権のブレーンである竹中平蔵慶應大学教授が「トリクルダウンなんて起こるはずがない」と言ったのだ。
⇒2016年1月17日 (日):いかさま経済政策の破綻(続)/アベノミクスの危うさ(68)

私もトリクルダウンなど、富裕層優遇の言い訳に過ぎないだろうと思っていた。
つまり富裕層優遇のように見えるかも知れないが、皆が豊かになる方向にあるのだ、と。
しかし、経済評論家の三橋貴明氏の表現を借りれば、「政府の政策で富が「滴り落ちる」のを待っている方が悪い、というニュアンス」でトリクルダウンを否定したのである。
また、稲田朋美自民党政調会長も5月15日のNHK日曜討論で、「安倍政権としてはトリクルダウンという考え方はとっていない」と発言して、話題になった。
多くの国民が、「えっ」と思ったのだろう。

安倍首相は、アベノミクスのエンジンを最大に吹かすと言っている。
まだまだ、格差を拡大し、結果として成長を阻害する気らしい。
支離滅裂である。

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2016年6月10日 (金)

新元素・ニホニウム誕生/知的生産の方法(151)

新元素発見を認定する国際純正・応用化学連合(IUPAC)は、113番元素について、8日、名称案を「ニホニウム」、元素記号案を「Nh」と発表した。
理化学研究所のチームが発見し、日本で初めて命名権を得たものである。
⇒2016年1月 2日 (土):理研が新元素の命名権を獲得/知的生産の方法(141)

 113番元素は昨年末、森田浩介九州大教授ら理研チームによる発見と認められ、今年1月に命名権が正式に与えられた。チームから名前と元素記号の案を提出されたIUPACが3月以降、非公開で妥当性を検討。今回、「推奨される案」として発表した。今後、5カ月間の意見募集を経て正式決定し、元素周期表に掲載される。
 IUPACによると、ニホニウムの名称は「日本」にちなんだもの。発見者の森田教授はこれまでに「日本の子どもたちが周期表を見たときに親近感を持つきっかけになるような名前を考えたい」などと話していた。
 このほか115番元素は共同研究の拠点であるロシアのモスクワ州にちなんだモスコビウム(Mc)、117番は発見者の研究所がある米テネシー州にちなんだテネシン(Ts)、118番は超重元素の研究者で世界をリードしてきたロシアのユーリ・オガネシアン氏の名前にちなんだオガネソン(Og)になった。オガネシアン氏は森田教授が指導を受けた第一人者でもある。ニホニウム以外の日本語の呼び名は日本化学会が改めて検討する。
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新元素、名称案「ニホニウム」発表 他の三つの名前案も

周期律表は、帰納と演繹という科学の方法の良き材料である。
ドイツのアウグスト・ケクレが、原子量や分子量などの概念が固まっていないことを問題視して1860年に開催した史上初の国際化学者会議に、ロシアの化学者・メンデレーエフが出席した。
そこでイタリアのスタニズラオ・カニッツァーロが主張する原子量を重視すべきという主張に影響を受け、化学の教科書を執筆していた際、当時63個まで発見数が増えていた元素を説明する方法に、元素名を書き込んだカードを何度も原子量順に並べ替えることを繰り返す内にひとつの表を作り上げた。
それは原子価を重視し、かつ適切に当てはまる元素が無い箇所は「エカホウ素」「エカアルミニウム」「エカケイ素」など仮の名をつけた空白とする工夫を施したものだった。

当初この表に価値を認める学者はほとんどいなかったが、マイヤーがこれに注目し、原子容の考え方を加えた論文を発表した。
メンデレーエフはマイヤーの論文も参照し、改良を加えた周期表を作成した。
これにはローマ数字IからVIIIで縦の分類が施され、うちI–VIIが基本的に1–2族および13–17族に対応し、VIIIには遷移元素群を入れ、また希ガスは反映されていなかった。
それぞれには2種類の亜族を設け、表の左右に振り分けて区分した。

メンデレーエフの周期表はすぐに認められたわけではなかったが、1875年にフランスのポール・ボアボードランが新元素ガリウムを発見し、これが「エカアルミニウム」と一致することが判明すると周期表が注目を浴びるようになった。
その後も1879年のスカンジウム(「エカホウ素」)、1886年のゲルマニウム(「エカケイ素」)がメンデレーエフの表にある空白を埋めるものだということが判明し、彼の周期表の正しさが証明された。

メンデレーエフの周期表はある規則性をもっているが、数十(当時は60)種の異なる元素が偶然にこのような規則性を持つとは考えにくい。
原子がこのような規則性を備えるためには「原子より小さな何らかの微小構造が存在するのでないか?」という疑問が提起されるようになった。
1897年、ジョセフ・トムソンによって電子が発見されたことで、原子の構造が考えられるようになった。
プラスの電荷を持った重い原子核の周りをマイナスの電荷を持った軽い電子が運動しているという、ちょうど太陽と惑星のような模型がラザフォードによって提唱され、実験ともうまく合致することが分かった。

しかしこのモデルは、「なぜ電子は原子核に落ちて行かないのか?」という疑問に答えることはできなかった。
ラザフォードのあとを継いで原子模型を理論的に解明しようとしたのがニールス・ボーアである。
ボーアの仕事が現在の「量子力学」へとつながり、現代科学の花が開いた。

「日本」が元素名に入ったのは快挙である。
この機会に、科学振興が図られることを期待する。

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2016年6月 9日 (木)

三菱東京UFJ銀行が国債入札特別資格を返上/アベノポリシーの危うさ(78)

三菱東京UFJ銀行が、国債の入札で優遇措置を受けられる「国債市場特別参加者」の資格を国に返上する検討を進めていることが分かった。
日銀のマイナス金利政策で、国債を保有し続ければ損失が発生しかねない。
資格を持ったままだと国から国債を買う義務を伴うからだというが、アベノミクスと称するもののなかで、唯一具体化していたと言ってもいい金融緩和政策はどうなるか?

国債市場特別参加者の資格は、財務省がメガバンク3行と証券会社19社に付与しているもので、資格保有者は国債の入札について財務省に意見を言ったり、臨時の入札に参加できたりする一方、入札ごとに発行予定額の4%以上を買うことなどが義務づけられる。
三菱東京UFJが資格を返上するのは、マイナス金利導入で、満期まで保有すると逆に利子を払わなければならなくなり、保有している間に金利が上昇(債券価格は下落)すれば損失が発生する。
資格を返上すれば邦銀では初めてだ。
Ws000002
東京新聞6月9日

現在は、異次元緩和を進める日銀が市場から大量の国債を購入しているため、国から買った国債を日銀に転売して利ざやを稼げるが、マイナス金利政策のもとで価値が下がりかねない国債の応札義務を負うのはリスクだ。

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問題は、日銀が金融緩和の終了に向かって国債の購入量を減らす時に、十分な買い手を確保できるかだ。銀行は国内で発行された国債残高の2割超を保有する主要な引受先。銀行の国債離れが広がって国債の安定発行に支障が出れば、政府は高い金利を付けないと国債を発行できなくなり、金利急騰が景気に打撃を与える可能性もある。
三菱UFJ銀 国債保有のリスク回避 資格返上へ

民進党の山尾志桜里政調会長は、日本銀行が異次元緩和の一環として導入したマイナス金利政策はデメリットが大きいとして撤回するよう求めた。

  山尾氏はマイナス金利の弊害として「預金者へのしわ寄せや金融機関の負担増を通じて貸し渋りとか貸しはがしとか、中小企業の皆さんは特に大きな不安を抱えている」ことを挙げた。
  日銀が黒田東彦総裁の下で進めている金融政策について「2年で2%の物価目標というのは、幾度も達成時期を修正しているが、結局達成できていない」と指摘。民進党としては、「もう少し硬直的ではない柔軟な金融政策を日銀に求めていくということをしっかり打ち出していきたい」と語った。
  安倍晋三政権はアベノミクスの第一の矢として大胆な金融緩和を掲げ、政権奪還を果たした2012年の衆院選から3回の国政選挙の公約で政府と日銀の連携強化など金融政策に言及していた。ただ、3日に発表した参院選(22日公示、7月10日投票)の公約では金融政策には直接触れなかった。
山尾民進政調会長:マイナス金利の撤回を-デメリット大きい

安倍政権は成果のないアベノミクスに固執して、さらに加速するという。
致命的な被害を被っているにもかかわらず、戦況有利と発表し続けたかつての軍部と同じである。
⇒2016年5月 3日 (火):マイナス金利という愚策/アベノポリシーの危うさ(60)

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2016年6月 8日 (水)

誤りを謝らなくてもいい口実/永続敗戦の構造(3)

安倍晋三首相は、1日の記者会見で、来年4月に予定していた消費税率の引き上げについて、「内需を腰折れさせかねない。延期すべきだと判断した」と述べ、2019年10月に再延期する方針を表明した。
首相は15年10月に予定していた10%への引き上げを17年4月に1年半延期する方針を表明した際、「再び延期することはない。はっきり断言する」と述べた。
その後、国会答弁などで「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施する」と繰り返してきた。
しかし1日の会見では、「現時点でリーマン級の事態は発生していない」として、従来の発言と整合性がないことを認め、「批判も含めて(参院選で)審判を仰ぎたい」と述べた。
⇒2016年6月 2日 (木):精神鑑定が必要な安倍首相/アベノポリシーの危うさ(75)

新しい判断だと言う。
6月6日の日本経済新聞のコラム「春秋」は言う。

 ある母親と子どもの会話――。「遊ぶのは宿題を済ませてからって、約束したでしょ」「お母さんごめん。まず遊んじゃおうって、新しい判断をしたんだ」。はたまた妻と夫は――。「あなたきょう休肝日じゃないの?」「いやいや毎日飲むぞ。これは新しい判断だよ」▼いま、ちまたでネット空間でこういうジョークがはやっている。発信源はもちろん、われらが安倍首相だ。消費増税の先送りを表明した先日の記者会見で、安倍さんは今回の展開を「新しい判断」と言いつくろった。気持ちはわからぬでもないがちょっと苦しい。今年の流行語大賞に入るのは間違いなし、なんて声もある。
・・・・・・

また、6月2日の東京新聞のコラム「筆洗」は次のようである。

失敗しない人間はいない。それでも謝らなくてもよいとは何とも魅力的な番組ではないか。会社でつまらぬミスをしては上司に叱責(しっせき)される。家庭において生ごみを出し忘れ、妻にうんざりされる。この技術を覚えれば、謝る日々とはおさらばである▼こんな場合を例にその方法を教えていた。絶対にやると言っていた約束を一方的に破る場合の対応である。耳を疑った。そんな場合に謝らないで済む方法などあるはずがない▼ところがである。その方法はあった。講師によると、まずは絶対に「約束を破った」と認めてはならないという。約束を破るのではなく、新しい判断とか、異なる判断をすると言い換える。なるほど間違いを認めなければ、謝る必要もない▼もし約束を守れば、世界の破滅が待っていると恐怖を煽(あお)るのも相手を納得させる効果があるそうだ。世界のリーダーや立派な学者も自分を支持していると加えることもお忘れなく。決めぜりふは「どっちが正しいか、町の意見を聞いてみよう」。これで、そもそも約束を破ったという事実を完全にけむに巻ける。謝らずに済む

「批判も含めて(参院選で)審判を仰ぎたい」というが、そもそも消費増税を嬉しく思う有権者は少ないだろう。
「審判を仰ぐ」と言うならば、アベノミクスと称する経済政策が期待した結果を出していないことを認めて、改めて是非を問うべきだろう。
事実誤認のままでは誤りを拡大再生産する。
戦況が不利であることを認めず、原爆投下を招いてしまった大本営の轍である。
もっとも、廃線も認めず、終戦と言い換えて来たのだから、また同じことだろう。
白井聡『永続敗戦論ー戦後日本の核心』太田出版(2013年3月)で提起された永続敗戦の構造である。
教科書問題を考える 小石川有志の会」が白井氏を招いて行った学習会のサイトに次のずがある。
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柳の下に二匹目のドジョーがいると思っているのだろう。
断固、誤りは誤りであることを認めさせなければならない。

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2016年6月 7日 (火)

違法性と不適切性/「同じ」と「違う」(94)

後醍醐天皇の頃、京都二条河原に掲げられた落書があった。

此頃都ニハヤル物 夜討 強盗 謀綸旨
召人 早馬 虚騒動
生頸 還俗 自由出家
・・・・・・

平成の世に都に流行るのは、虚言と茶番劇である。
安倍首相の、リーマンショック級の経済危機、甘利前大臣の睡眠障害が不起訴の途端の治癒、舛添都知事の第三者による厳しいチェック・・・
よくもまあ、揃いも揃って厚顔無恥である。
ここでは舛添記者会見の報道を見てみよう。

「東京都の舛添要一知事は6日、政治資金の私的流用疑惑などについて記者会見し、元検事の弁護士に依頼していた調査の結果を公表した。
調査報告書は家族旅行の宿泊費や美術品購入など複数の支出を「不適切」と指摘しながらも「政治資金の使途に制限はなく違法性はない」と結論づけた。

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 報告書の指摘を受け舛添氏は、不適切な支出とされたホテル宿泊費、飲食費、備品購入費と同額を個人資産から慈善団体に寄付する形で返済すると表明した。美術品は都の病院や福祉施設に飾ると説明した。さらに公用車での行き来が問題になった神奈川県湯河原町の別荘について「公用車の使い方で心配をかけないように売却する」と述べた。
 会見には、調査した元東京地検特捜部副部長の佐々木善三弁護士、元さいたま地検検事の森本哲也弁護士が同席した。調査対象は、舛添氏に関係する▽自民党東京都参議院比例区第28支部(2010年解散)▽新党改革比例区第4支部(14年解散)▽舛添要一後援会(11年解散)▽グローバルネットワーク研究会(14年解散)▽泰山会−−の5政治団体の支出で期間は資料がある09〜14年の6年間。
 報告書は、家族旅行でのホテル宿泊費6件(計80万2841円)と家族らとの飲食費14件(計33万6495円)について「主たる目的が家族旅行や私的な飲食だった可能性が高く政治資金の支出として不適切」と指摘した。さらに海外出張時の備品購入費3件(11万3354円)も「本人が何を買ったか記憶していない」として不適切とした。
 また、多数の美術品に関して「政治資金の使途には法的な制限がないため違法ではないが、点数や合計金額があまりに多すぎて不適切」と結論づけた。このほか、そば打ちなど趣味に関する書籍やミステリー小説、漫画などの購入は「適切とは言い難い」とした。
 報告書は、湯河原町の別荘に公用車で行き来していた問題にも言及した。「知事の行為の当否という政治的問題」としつつ、「自宅に寄って別荘に向かうのは都のルールに抵触する可能性がある」と指摘した。
 一方、舛添氏の政治団体間の資金移動や舛添氏への組織対策費の支出に違法性はないとした。
舛添都知事 政治資金「違法性なし」 第三者調査

佐々木弁護士と森本弁護士について、元検事というのが意味があるのか?
弁護士である以上、依頼人の利益第一であろう。
第三者というのがそもそも間違いである。
ちなみに佐々木氏は、小渕優子氏の時の第三者委員会の委員だった。

小渕優子元経済産業大臣の政治資金規制法違反事件において、「小渕氏には法律上の責任はない」という調査報告を上げた人物です。
ちなみになぜ「ドリル優子」なのかというと、彼女の関連団体の事務所にあった帳簿データが入ったハードディスクが「ドリルで破壊されていた」という露骨な証拠隠蔽工作がされていたため。
この時、佐々木弁護士らの第三者委員会は「故障したパソコンを引き取った業者がやったこと。捜査に支障なし」などという報告をあげていました。
小渕優子さんをかばうかのような内容で、批判を浴びていましたが、小渕さんは不起訴に。
舛添要一会見で逆ギレした佐々木善三弁護士。ドリル優子事件や東電事故調妨害事件で悪名高い元検事「マムシの善三」

こんな“実績”を持つ弁護士だから、答えも予想通りである。
調査した結果は、不適切なものはいくつかあるが、違法性はないということだ。
つまり不適切性と違法性を峻別しているわけである。
舛添氏の狙いも、違法性の有無であったのだろう。
両弁護士の仕事は、違法性がないことをどう論理構成するかだった。
しかし、違法性がないことを認めるとしたら、それは法の不備ということである。

問題は、不適切性をどう判断するかである。
これで納得する人がいるとは思えない。
通常の神経ならば、即刻辞職するとことだろう。

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2016年6月 6日 (月)

伊勢志摩サミットとは何だったのか/永続敗戦の構造(2)

伊勢志摩サミットが終わったが、祭りの後に何が残ったのか。
いろいろ問題はあるが、先ずはオバマ大統領の広島訪問は画期的なことと言えよう。
サミットがなければ実現しなかったと思われる。

サミットの評価は今後の安倍政権の動き方でも変わってくる。
現時点ではっきりしているのは、戦後レジームからの脱却を口にする安倍首相自身が、戦後レジームである永続敗戦レジームに絡め取られ、身動きできないことである。
白井聡氏『永続敗戦論ー戦後日本の核心』太田出版(2013年3月)で提起された永続敗戦の構造を、「教科書問題を考える 小石川有志の会」のサイトを参照しよう。
白井氏を招いて行った学習会の報告である。

白井氏は、「永続敗戦レジーム」は敗戦を終戦と言い換えることから始まったという。

 「敗戦の終戦へのすり替え」がなされなければならなかった最大の理由は、敗戦の責任を有耶無耶にし、敗北必至とあらかじめ分かっていた戦争(対米戦)へと国民を追い込んで行った支配層が、戦後も引き続き支配を続けることを正当化しなければならないという動機であった。
 この策動は、玉音放送において「降伏」や「敗北」といった表現が慎重に避けられたことから早くも開始され、東久邇宮内閣の「一億総懺悔」という標語の提示に見られるように、明確な意図を持って推進されたと言えよう。こうした流れの果てに、敗戦したことそのものが曖昧化され、「敗戦ではなく終戦」というイメージに、日本人の歴史意識は固着してゆく。そもそも敗戦していないのであれば、誰も責任を問われる道理がなくなるのだから、実に見事な(!)論理である。
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安倍晋三首相が、祖父・岸信介を尊敬していることは周知のことである。

 以上のような視点から見た場合安部政権は何なのか。実質は戦後レジームからの脱却ではなく、永続敗戦レジームを死守しようということだろうと思います。これをさらに支えるというのは難しいから、かなり強引な手段をとらざるを得ない。閣議決定で実質憲法を変えてしまうというあり得ないことをしてしまう。憲法改正をめざしているのだろうが、実際に戦争に入っているのではないか、他国民と殺し殺されということをやってしまうのではないか。
 戦争をやる、ということも永続敗戦を維持する一手段です。どういう形で行われるか。
護憲の立場では「憲法を変えて戦争をする国にしようとしている」といいますが順番は逆。まず戦争をする。それから憲法を変える。これが今彼らがやろうとしていることです。 彼らからすれば改憲したいが最終的に国民投票で失敗は許されない。絶対必勝。もうすでに戦争してるじゃん、という状態をつくってしまう。その状態をつくってしまえばそこに存在する矛盾は憲法 9 条と自衛隊どころではなくなります。あとは、その状況を追認する、現状追認していくということだけです。
 どうやったら戦争を始められるか。いきなり、隣国と始められない。ここに集団的自衛権が出てくるわけです。これを使うことを国家として認める状態になると、戦争を実行する可能性が飛躍的に高まる。だから最短ルートを着々と安部政権は走っていると言えます。この流れを、残念ながら日本国民の少なからざる部分が知ってか知らずか、支持しています。どうやっても支持率はある一定以下には下がりません。岩盤のように強い支持層が居るということでしょう。どうしていかなければいけないか。方策が無い。
何が起きているかわかっていない人たちを、どうやって目覚めさせていくかが大切であり、今後の課題であると思います。
教科書問題を考える 小石川有志の会

岸信介は、60年安保の立役者だ。
沖縄の米軍による不条理を存続させている日米地位協定もこのとき結ばれた。
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安倍晋三と彼のお爺様のお仕事によって、沖縄は泣いている❗

改憲も、集団的自衛権も、原発推進も、日米地位協定も、永続敗戦レジームの産物である。

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2016年6月 5日 (日)

仏像写真と古代史の謎・小川光三/追悼(85)

仏像写真家で、古代人の太陽信仰など歴史研究でも知られる小川光三さんが、5月30日亡くなった。
死因は、特発性血小板減少症、88歳だった。

私が小川さんの名前を記憶しているのは、NHKのテレビディレクターとして、古代史等の番組を制作していた水谷慶一氏の『知られざる古代史―謎の北緯三四度三二分をゆく』日本放送出版協会(1980年2月)に登場するO氏というイニシャルである。
水谷氏の文章を引用しよう。

ぼくの前には写真家のO氏がいた。O氏は父子二代、奈良に在住して仏像や大和の風物を撮影している人で、奈良国立博物館のまえの通りに店を出している。奈良をなん度か訪れたことのある人なら、ああ、あの店かと気づくはずである。
・・・・・・
仏像の写真がところせましと並んだO氏の店先で、ぼくは秋篠寺の伎芸天や山田寺の仏頭の美しさにしばしば時のたつのを忘れた。

5年ほど前の日本経済新聞に、小川氏の「太陽の道」が紹介された。

 万葉集の冒頭に登場する枕ことば「そらみつ」は「大和(の国)」にかかる。日本書紀に記された謎の言葉「空見つ日本(やまと)の国」が語源で、「大空から眺めて良い国だと選ばれた」の意だ。「天の岩船」というUFOを思わせる飛行物体に乗ったニギハヤヒノミコトが「国の中心地」に着陸し、後に神武天皇が「畝傍山の東南の橿原の地」を「ここは国の真中だ」と考えて今の奈良県橿原市に都を置いたという伝承に由来する。くしくも、大和盆地を「空から」の視点で研究した説は少なくない。多くの学者が認める定説ではないが、歴史ファンを魅了してきた「太陽の道」「聖なるライン」など、「空見つ日本」の異説を紹介しよう。
 「あれは稲作と密接につながる太陽信仰、つまり日本人の信仰の原点にかかわる話だった。だから多くの人の心に響いたのでしょう」と振り返るのは、「大和の原像」(大和書房、1973年)で「太陽の道」を提唱した小川光三さん。著名な仏像写真家でもある。「太陽の道」は80年にテレビのNHK特集「知られざる古代~謎の北緯34度32分をゆく」で紹介され、多くのファンを生んだ。Photo_3
奈良・大和盆地に「太陽の道」 一直線上に遺跡・社寺 

秋篠寺の初めて行ったのは学生時代であった。
秋の夕方、閑静な本堂で初めて対面して深い印象を覚えた。
以来、奈良を訪問する時にはできるだけコースに入れるようにしてきた。
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http://www5a.biglobe.ne.jp/~kazu_san/hyaku_akishino.htm

小川氏の写真館は飛鳥園という。
Wikipediaの解説は以下のようである。

1922年(大正11年)小川晴暘が創業。晴暘は1894年(明治27年)兵庫県姫路市生まれ。有馬温泉の日野写真館で写真術の基礎を身につけたのち、画家を志して上京。丸木利陽に入門して彼の写真館で働き、写真技術を学んだ。晴暘の号は師利陽からもらった「陽」の1字を「暘」に改めたもの。1918年(大正7年)文展に《雪解けの頃》で初入選するも、大阪朝日新聞社に写真部員として入社し、奈良に下宿。奈良で撮っていた石仏の写真が、會津八一の目に止まり、八一の勧めを受けて新聞社を退社し、飛鳥園を創業した。晴暘のあとは晴暘の三男小川光三が継いでいる。後に奈良国立博物館写真室の矢沢邑一、五味義臣、京都国立博物館の金井杜道ら文化財写真家が輩出し、現在も若松保広が所属している。1968年(昭和43年)株式会社飛鳥園を設立。晴暘は八一のほか、志賀直哉・武者小路実篤らとも親交があり、現在でも飛鳥園撮影の写真は多くの書籍・写真集・図録等に掲載されている。2001年(平成13年)には飛鳥園の写真を一般公開するため仏像写真ギャラリーがオープンした。

静かに冥福を祈るとしよう。
合掌。

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2016年6月 4日 (土)

真っ黒な甘利を取り逃がすのか/アベノポリシーの危うさ(77)

あっせん利得処罰法違反のど真ん中だった甘利明氏が不起訴処分になった。
⇒2016年6月 1日 (水):甘利不起訴という現実/アベノポリシーの危うさ(74)
ザル法であることを満天下に周知する効果はあっただろうが、法治国家としてそれで良いわけがない。
甘利氏と元秘書の男性2人をあっせん利得処罰法違反容疑などで告発した市民団体「政治資金オンブズマン」共同代表の上脇博之神戸学院大教授が3日、東京地検特捜部の不起訴処分を不服として、東京検察審査会に審査申立書を郵送した。

 申立書では「政権中枢にいる有力政治家の事務所が民間の建設会社の担当者から口利きを依頼され、都市再生機構(UR)とのトラブルに介入し報酬を受け取っており、典型的な犯罪だ」と主張。「起訴相当」の議決を求めている。
甘利・前経済再生担当相 現金授受問題 告発教授、不起訴不服申し立て

事件は、「週刊文春」1月28日号のスクープによって明らかにされた。
⇒2016年1月22日 (金):甘利明大臣に重大疑惑/アベノポリシーの危うさ(2)
テレビの記者会見では、「私の美学に反する」などと大見得を切っていた。
私の周辺にも、TPPで苦労してきたのに・・・と同情的な人もいたが、そもそもTPPが墨塗り資料など怪しいことが多い。

「三河屋、おぬしも悪よのう」
「甘利様こそ…」

そんな時代劇の1シーンが連想されるが、安倍首相の盟友であることを忘れてはならない。
不起訴処分は、検察が、甘利氏側の行為が一般の政治活動の範囲内にとどまると判断したことだという。
メディアは舛添都知事の政治資金問題で、連日大はしゃぎだが、甘利事件の方が悪質とも言える。

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このあっせん利得処罰法は、中尾栄一元建設相の収賄事件を機に、職務権限のない議員やその秘書が公共事業で不正を働くことを防止するために制定された法律なのだが、現実には刑法のあっせん収賄罪よりも適用が難しいと言われ、これまで国会議員がこの法律で摘発されたことはない。
 しかし、甘利のケースは、要件をすべて満たしており、法律の専門家も「適用は可能」と口をそろえていた。元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏は「あっせん利得処罰法のど真ん中のストライクの事案」とまで言っていた。
 検察が要件を満たしてなかったとする「権限に基づく影響力の行使」についても、「議会で追及する」といった強い脅しが必要というのは検察の勝手な後付けの解釈であり、事件発覚当初は「甘利氏は有力閣僚であり、国土交通省を通じ、URの予算や人事について影響力を行使することが可能だから要件は満たしている」(郷原氏)という見方が一般的だった。
 そして何より、特捜部じたいが国会議員秘書初のあっせん利得法違反を立件すると意気込んで捜査を行い、4月の段階では、東京地検内部でも立件することでコンセンサスがとれていたのだ。
“真っ黒”な甘利明を検察はなぜ「不起訴」にしたのか? 官邸と癒着した法務省幹部の“捜査潰し”全内幕

甘利の元公設秘書は13年8月に一色氏から500万円を受領したが、関連団体の政治資金収支報告書には200万円しか記載がなかった。
これは明らかに「規正法の虚偽記載」にあたる。
企業では、内部統制やコンプライアンスが重要課題になっている。
こんな「ゲスの極み」の政治家が無罪放免など、許されようがない。

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2016年6月 3日 (金)

山谷えり子という“輝く女性”/アベノポリシーの危うさ(76)

5月16日の衆院予算委員会で、質問に立った民進党の山尾志桜里政調会長が安倍晋三首相について「女性活躍どころか男尊女卑政権だ」と批判したことに対し、安倍首相が「山尾さん、誹謗中傷ですよ」とやりあう場面があった。
この時、安倍首相は山尾政調会長への答弁の中で「私は立法府の長であります」と発言した。
言うまでもなく、実際には行政府の長であり、安倍首相が、中学生が公民など授業で習う「三権分立」を理解していない可能性が明らかとなった。
私も単なる言い間違いだろうと思ったのだが、この言い間違いが常習的であることを知り、安倍首相の脳内では、既に緊急事態条項が存在してて、政府が立法権も持っていると考えているのではないか。

安倍首相が「女性が輝く社会」を掲げたたが、小渕優子、松島みどりという2閣僚が相次ぐ不祥事で辞任せざるを得なくなった。
⇒2014年10月24日 (金):「女性が輝く社会」と「妊娠降格」訴訟/日本の針路(58)
この時、拉致問題担当相兼国家公安委員長という要職にあったのが山谷えり子氏だ。

山谷氏は、安倍首相のお気に入りの1人であるが、レイシスト団体の在特会や統一協会と繋がりがあると言われている。
よしりんこと小林よしのり氏も次のように言っていた。

「しかし、朝鮮人差別の「在特会」と、朝鮮人・文鮮明教祖の「統一協会」の二股をかけている山谷えり子とは、一体何者だ?」
「この山谷を「国家公安委員長」に任命した安倍晋三は、一体何を考えているのか? まったく恐ろしい! 日本はカルトに支配されつつあるのではないか?」
小林よしのりも「カルト」と批判! 山谷えり子をなぜ放置するのか

安倍首相に近いことは山谷氏のホームページでも分かる。
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東大生の集団わいせつ逮捕事件が話題になっている。
まあ、東大生にもいろいろいると言うことだろうが、その集団の中に、山谷氏の従兄弟の子がいるらしい。
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週刊新潮6月9日号

国家公安委員長経験者で、教育に一家言をお持ちの方である。
山谷氏は関係ないにしても、どう考えているのだろうか。

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2016年6月 2日 (木)

精神鑑定が必要な安倍首相/アベノポリシーの危うさ(75)

安倍晋三首相は1日、国会閉会を受けて首相官邸で記者会見し、来年4月に予定していた消費税率の引き上げについて、「内需を腰折れさせかねない。延期すべきだと判断した」と述べ、2019年10月に再延期する方針を表明した。

Ws000000_2 首相は14年11月、15年10月に予定していた10%への引き上げを1年半延期する方針を表明した際、「再び延期することはない。はっきり断言する」と述べた。その後、国会答弁などで「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施する」と繰り返してきた。1日の会見では、「現時点でリーマン級の事態は発生していない」として、従来の発言と整合性がないことを認め、「批判も含めて(参院選で)審判を仰ぎたい」と述べた。
参院選の日程については「6月22日公示、7月10日投開票」を2日の閣議で決定するとした。参院選について「アベノミクスを加速するか、それとも後戻りするか。これが最大の争点だ」と指摘。そのうえで、秋に臨時国会を召集し、消費増税を再延期する関連法案を提出するとした。
 一方、増税再延期の信を問う手段として参院選と同時に衆院選を行う同日選について、首相は、民進など野党4党が国会最終盤で内閣不信任決議案を提出した際に「私の頭の中をよぎったことは否定しないが、熊本地震を考慮し、参院選で信を問いたいと判断した」と語った。
安倍首相 増税再延期を表明…「約束と異なる判断」

「この道しかない」と大見得を切ったが、とんでもない悪路だった。
⇒2014年12月25日 (木):「この道しかない」という硬直性/アベノミクスの危うさ(45)
普通は、引き返すなり、速度を緩めてみるのだろうが、「アベノミクスを加速する」と言う。
伊勢志摩サミットで、各国に財政出動を要請するため、リーマン級の経済危機とも言った。

安倍総理は「世界の商品価格」「新興国・途上国の経済指標の伸び率」「新興国への資金流入」「各国の成長率予測の推移」という4つのデータを「26日の主要国首脳会議で唐突に示した」(27日付日経電子版)と報じられている。
「世界の商品価格」の2014年後の下落率がリーマン・ショック後と同じ約55%に達したことや、2015年に入り「新興国への資金流入」がリーマン・ショック以来の流出になったことを示したようだが、「経済音痴安倍」の面目躍如といった内容。
それは、原因と結果を混同しているところ。「世界の商品価格の下落」も「新興国からの資金流出」も、リーマン・ショックの「結果」起きたもので、リーマン・ショックを引き起した「原因」ではない。
アベノミクス失敗の原因を「リーマン級危機」に責任転嫁した安倍総理=近藤駿介

さすがに各国首脳は同意せず、実質的な言質は得られなかった。
すると茶坊主のような世耕官房副長官がカバーしようとした。

世耕弘成官房副長官は31日午後の記者会見で、世界経済の現状を「リーマン・ショック前に似ている」とした主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)での安倍晋三首相の発言について、実際には首相のものではなく、記者ブリーフでの世耕氏自身の発言だったと釈明した。
安倍首相「リーマン前似ている」発言せず=世耕副長官が釈明

ところが、平成28年5月27日の「G7伊勢志摩サミット議長記者会見」で、安倍首相は繰り返しリーマンショックという言葉を口にしている。
何が何だか分からなくなっているのではなかろうか。
前回の延期の時の言葉を振り返ってみよう。

来年10月の引き上げを18ヵ月延期し、そして18ヵ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています。
増税延期の安倍総理に必要なのは二枚舌でなく「謝ること」(上)

どう考えても、アベノミクスと称するものは失敗だった。
⇒2016年5月23日 (月):消費税再延期はアベノミクスの失敗/アベノポリシーの危うさ(69)
謙虚に反省するべきである。
⇒2016年5月14日 (土):PDCAなき安倍政権の政策/アベノポリシーの危うさ(64)

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2016年6月 1日 (水)

甘利不起訴という現実/アベノポリシーの危うさ(74)

甘利明・前経済再生担当相をめぐる現金授受問題で、東京地検特捜部は5月31日、あっせん利得処罰法違反罪で告発されていた甘利氏と元秘書2人を不起訴処分(嫌疑不十分)とした。
都市再生機構(UR)への甘利氏側の働きかけは、一般の政治活動の範囲内にとどまるとし、違法性を問うのは困難と判断したとみられる。
しかし本件が立件されないとすれば、あっせん利得処罰法はあってなきが如しである。

Photo
東京新聞6月1日

 同法違反での立件には、国会議員としての「権限に基づく影響力の行使」があったことを立証する必要があるが、捜査ではそうした証拠は得られなかったとみられる。甘利氏側はこの補償の後、薩摩側から計550万円を受け取っており、うち50万円は甘利氏が13年11月に大臣室で一色氏から直接受領した。一色氏は「口利きの報酬」と証言したが、甘利氏は辞任会見で「政治資金としてきちんと処理するように指示した」と違法性を否定しており、特捜部の聴取にも同様の説明をしたとみられる。
現金授受問題 不起訴へ 東京地検、任意で聴取

安倍首相は、甘利氏が大臣を辞任する前、「甘利さんは守る」と明言していた。
甘利氏は「守られた」ことになるのだろうか?
衆参同日選にならない見通しというので、神奈川県の有権者はこの事件を風化させないで次の選挙で良識を示して欲しい。
目の粗いザル法を免れたからと言って、清廉潔白ではまったくないのだ。


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