浜岡原発撤退の論理と倫理(11)/技術論と文明論(58)
熊本地震は1ヶ月以上経った現在も終息していない。
50年近く前のことであるが、竹内均氏は上山春平氏との共著『第三世代の学問―「地球学」の提唱』中公新書(1977年8月)で次のように語っていた。
「自然は切れ目のない織物だ」という立場で、地球科学は、帰納的手法(第一世代の学問)と演繹的手法(第二世代の学問)により得た「地球」に関するデータを、アブダクション(直感で仮説を立てた後に検証する思索法)で総合する第三世代の学問の時代になりつつある。
予測に関しては、演繹的手法の第二世代の学問、代表例は物理学、が威力を発揮するが、地球科学には本来的に限界がある。
精緻な観測データを用い、総合的に考察するという意味でまさに「地球学」の王道というべき立場が、測量工学の第一人者・村井俊治・東大名誉教授(76)氏であろう。
村井氏が顧問を務める民間企業・地震科学探査機構(JESEA、橘田寿宏社長)は、人工衛星から見た、国内約1300カ所ある国土地理院の電子基準点の水平・上下の位置変動データを震度5以上の地震予測に活用し、週刊のメールマガジンでその情報を発信してきた。
東日本大震災でも前兆を認めていたが、情報発信できないまま2011年の発生を迎えた。歯がゆさもあって2013年1月17日、阪神・淡路大震災の記念日に橘田氏とJESEAを立ち上げ、同年2月にメルマガ配信を開始。その後も大地震の発生を言い当て続けて評判を呼んだ。当初24人だったメルマガの個人会員数(月額料金は200円プラス消費税)は現在、5.5万人に達した。
次の大地震は伊予灘・薩摩西方沖を警戒せよ
熊本地震では2年前から危険性を指摘し続けていた。
しかし2014年5月から出し続けてきた熊本・鹿児島周辺での地震発生注意情報は今年1月末まで、2月末まで、と何度も延長を続けたが、メルマガの4月6日発行号で解除した。
熊本県にある国土地理院の電子基準点22カ所のうち、明確に異常な変化を示し続けたのが2つしかなかった点も理由の一つで、「気持ちがブレた」と言う。
熊本地震でも、周辺の地体が引きちぎられるように東西南北に動いた。四国の足摺岬と室戸岬周辺の地体の動きは熊本地震によって逆方向に変わっており、歪みが溜まっている。特に中央構造線の延長線上にある伊予灘は要注意。熊本から見て逆方向に当たる薩摩半島の西方沖などでも、大地震が起きる可能性がある。
また、阿蘇山が噴火しない保証はない。江戸時代の巨大地震だった宝永の大地震(1707年)の49日後に富士山が噴火した例もある。尋常ではない動きをしていると思っている。
次の大地震は伊予灘・薩摩西方沖を警戒せよ
村井氏は、「愛媛県の佐田岬半島には休止中の伊方原発、薩摩半島の西岸には稼働したばかりの川内原発があるが、大丈夫なのか」という問に、原発の安全性は地震予測と異なる次元の話なので、コメントは控えると答えている。
どう判断するかは政治的な問題、言い換えれば国民の判断と言うことであろう。
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