実質消費支出の急減とエンゲル係数の上昇/アベノポリシーの危うさ(66)
エンゲル係数という言葉を学習したのは中学生の時だっただろうか。
家計支出に占める食費の割合を指し、ドイツの統計学者エルンスト・エンゲルが労働者世帯の家計簿を分析し、所得が少ない世帯ほど家計の消費支出に占める食費の割合が高くなる傾向を示したことから、生活水準を示す「エンゲルの法則」として広がった。
その「エンゲル係数」が日本で急上昇している。
安倍政権の経済政策・アベノミクスが始まった二〇一二年末以降、円安や消費税増税を背景に食品が値上がりしたのに、賃上げが追いつかないためだ。戦後長らく「生活水準」の指標とされたエンゲル係数が、いま再び注目を集める時代になるのか。
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新日本スーパーマーケット協会(東京)によると、食品の価格は一三年半ばから目立って上がり始めた。一方で、物価の伸びを超えて賃金が本当に上がったかを示す「実質賃金指数」は一五年は前年比0・9%減で四年連続で下がった。収入が伸びない中で食品が値上がりし、エンゲル係数が高くなった実態が浮かぶ。
食料品の値上げは一二年末から進んだ円安で食料の原料や輸入商品が値上がりしたためだ。一四年四月に消費税率を8%へと引き上げた増税が追い打ちをかけた。一九九七年四月に消費税率を5%に上げた際はエンゲル係数に大きな変化はなく、まだ家計にはゆとりがあった可能性がある。現在の状況を、みずほ証券の末広徹氏は「低所得者は食費の上昇を賄うために、他の支出を切り詰めており格差も広がっている」とみる。
エンゲル係数 急上昇 食品値上げ 賃金追いつかず
アベノミクス称する経済政策がいかにインチキ・虚構のものであったかは、トリクルダウンという用語取り扱いが示している。
昨年の1月、気鋭の経済学者トマ・ピケティが来日した。
ピケティ氏来日の前日28日の参院本会議で松田公太議員が、ピケティ氏が格差解消の処方箋としてあげる世界的な資産課税強化について問うと、「執行面でなかなか難しい面もある」とそっけなく否定するだけだった。
ところが、直後に側近から「人気の経済学者なので反論ではなく、アベノミクスの恩恵をアピールすべき」とアドバイスされたらしい。29日の衆院予算委員会での民主党・長妻昭氏との質疑では、「ピケティ氏も成長は否定していない」とまずピケティ人気にあやかったうえで「成長せずに分配だけを考えていけば、ジリ貧になる」と持論を語り、2日の参院予算委員会では「(アベノミクスは)全体を底上げする政策だ」と力説した。
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1月29日のシンポジウム後半のパネルディスカッションでは西村康稔内閣府副大臣がパネリストとして登壇した。政府の「雇用者100万人増」や「トリクルダウンの試み」などについてパワーポイントの資料を何枚も使って説明し、「アベノミクスで格差が拡大しているというのはまったくの誤解」とドヤ顔を見せた。
しかし、データ分析ではピケティ氏の方が2枚も3枚も上手だった。
「確かに日本の格差はアメリカほどではない。しかし、上位10%の富裕層の所得は国民所得全体の30~40%まで上がってきており、さらに上昇傾向にある。しかも、日本はゼロに近い低成長なのに上位の所得が増えているということは、実質的に購買力を減らしている人がいるということだ。おまけに累進課税の最高税率も低い。国際的水準で見ても、日本の過去の税率と比べてみても。つまり、トップの所得シェアが増えているのに以前より低い税率しか納めていないということだ」
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アベノミクス最大のキモは、まず富裕層を優遇して儲けさせ、その富の一部がやがて低所得者層にまで"したたり落ちてくる"トリクルダウン理論にある。ピケティ氏はこれを、「過去を見回してもそうならなかったし、未来でもうまくいく保証はない」(東大講義講義)と一蹴した。
世界が注目する経済学者・ピケティが来日して“アベノミクス“をケチョンケチョンに!
⇒2015年2月19日 (木):ピケティVS アベノミクス/アベノミクスの危うさ(48)
甘利明経済再生担当相は2014年11月14日、消費増税判断のための点検会合後の会見で次のように語った。
消費増税を延期した場合、日本売りを起こさせない決意と手当てをどうしていくかだと指消費増税を延期する場合の理由として、企業収益が上がっている一方で実質賃金が上がっていない点を指摘。「アベノミクスの基調が頓挫したということではないが、トリクルダウンがまだ弱い。引き上げを延期するとしたら、企業業績が賃金に跳ね返る2巡目、3巡目を起こす時間的猶予が必要になるという判断だ」との考えを示した。
増税延期なら日本売り起こさせぬ決意と手当て必要=経済再生相
大晦日から元旦にかけて放映された「朝まで生テレビ」で、竹中平蔵氏は次のように発言した。
「アベノミクスは理論的には百%正しい」と太鼓判を押した竹中平蔵氏。アベノミクスの“キモ”であるトリクルダウンの効果が出ていない状況に対して、「滴り落ちてくるなんてないですよ。あり得ないですよ」と平然と言い放ったのである。
⇒2016年1月17日 (日):いかさま経済政策の破綻(続)/アベノミクスの危うさ(68)
そして5月15日放送の「NHK日曜討論」である。
共産党の藤野は、中間層を応援するために正社員を増やし賃上げを上げるなど、働く人が安心できる社会が経済に繋がるとコメント。社民党の吉川は、非正規社員を正規に置き換え、正規社員を長時間労働の働き方にしていると指摘。これに対し、自民党の稲田は、問題解決について解雇が無効となった場合、戻るか金銭解決かを選択できる制度で、お金を払って解雇しやすくなる制度ではないと反論し、安倍政権はトリクルダウンの考え方を取っていないとした。
「トリクルダウン」 に関するテレビ情報
もう支離滅裂の政権である。
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