消費増税先送りの茶番劇/アベノポリシーの危うさ(73)
消費税増税の再延期が確定し、自民、公明両党が了承することになったため、民進党など野党を含む主要政党の立場が「再延期」でそろう。
しかし、再延期の理由を明確にすべきだろう。
安倍首相はサミットまで利用して、辻褄を合わせようと目論んだ。
首相は首脳会議で、世界経済に関し、エネルギーや食料、素材などの商品価格について、資料を示しながら「最近の14年6月〜16年1月にはリーマン・ショック前後の08年7月〜09年2月と同じく55%下落した」と指摘。さらに中国など新興国や途上国の投資伸び率については「リーマン・ショック後の09年は05年以降では最低の3.8%だったのに対し、15年は2.5%とさらに落ち込んだ」など繰り返しリーマン・ショック時との比較に言及した。
首相はこうした説明を踏まえて「リーマン・ショック直前の洞爺湖サミットで危機の発生を防ぐことができなかった。そのてつは踏みたくない」と強調。そのうえで「世界経済は分岐点にある。政策対応を誤ると、危機に陥るリスクがあるのは認識しておかなければならない」と訴えた。
首相はこれまで、消費増税について「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り実施する」と繰り返し発言していた。リーマン級にはなっていないが、その「直前の状況」に似ているとして延期を決めれば、増税延期の理由を変更することになる。延期しても「アベノミクスの失敗」ではないと主張できると考えているとみられる。
首相は14年11月に10%への引き上げの延期を表明した際に、「再び延期する必要はない」と説明していた。このため、自民党内には「再延期する場合には国民に信を問わなければならない」として、夏の参院選と同時に衆院選を行うべきだとの声がある。
安倍首相 消費増税、再延期へ 「リーマン前に似ている」
首相はこれまで、消費増税について「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り実施する」と繰り返し発言していた。
リーマン級にはなっていないが、その「直前の状況」に似ているとして延期を決めれば、増税延期しても「アベノミクスの失敗」ではないと主張できると考えているのだろう。
自民党内には「再延期する場合には国民に信を問わなければならない」として、夏の参院選と同時に衆院選を行うべきだという、いかにも胡散臭い正論風な言説をぶつ人間もいる。
麻生副首相や稲田政調会長である。
しかし、それが出来レースであることは、ミエミエだ。
官邸の御用新聞・産経が首相のリーダーシップの演出に躍起だ。
産経新聞5月30日
主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で、安倍晋三首相が「世界経済はリーマン・ショック前に似ている」との景気認識をもとに財政政策などの強化を呼びかけたことに対し、会議ではさすがに正面からの批判はなかったようだが、海外メディアの見方は厳しい。
⇒2016年5月29日 (日):首相の「リーマン級」は霞が関文学/アベノポリシーの危うさ(71)
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