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2016年5月

2016年5月31日 (火)

消費増税先送りの茶番劇/アベノポリシーの危うさ(73)

消費税増税の再延期が確定し、自民、公明両党が了承することになったため、民進党など野党を含む主要政党の立場が「再延期」でそろう。
しかし、再延期の理由を明確にすべきだろう。
安倍首相はサミットまで利用して、辻褄を合わせようと目論んだ。

 首相は首脳会議で、世界経済に関し、エネルギーや食料、素材などの商品価格について、資料を示しながら「最近の14年6月〜16年1月にはリーマン・ショック前後の08年7月〜09年2月と同じく55%下落した」と指摘。さらに中国など新興国や途上国の投資伸び率については「リーマン・ショック後の09年は05年以降では最低の3.8%だったのに対し、15年は2.5%とさらに落ち込んだ」など繰り返しリーマン・ショック時との比較に言及した。
 首相はこうした説明を踏まえて「リーマン・ショック直前の洞爺湖サミットで危機の発生を防ぐことができなかった。そのてつは踏みたくない」と強調。そのうえで「世界経済は分岐点にある。政策対応を誤ると、危機に陥るリスクがあるのは認識しておかなければならない」と訴えた。
 首相はこれまで、消費増税について「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り実施する」と繰り返し発言していた。リーマン級にはなっていないが、その「直前の状況」に似ているとして延期を決めれば、増税延期の理由を変更することになる。延期しても「アベノミクスの失敗」ではないと主張できると考えているとみられる。
 首相は14年11月に10%への引き上げの延期を表明した際に、「再び延期する必要はない」と説明していた。このため、自民党内には「再延期する場合には国民に信を問わなければならない」として、夏の参院選と同時に衆院選を行うべきだとの声がある。
安倍首相 消費増税、再延期へ 「リーマン前に似ている」

首相はこれまで、消費増税について「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り実施する」と繰り返し発言していた。
リーマン級にはなっていないが、その「直前の状況」に似ているとして延期を決めれば、増税延期しても「アベノミクスの失敗」ではないと主張できると考えているのだろう。
自民党内には「再延期する場合には国民に信を問わなければならない」として、夏の参院選と同時に衆院選を行うべきだという、いかにも胡散臭い正論風な言説をぶつ人間もいる。
麻生副首相や稲田政調会長である。
しかし、それが出来レースであることは、ミエミエだ。

官邸の御用新聞・産経が首相のリーダーシップの演出に躍起だ。
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産経新聞5月30日

主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で、安倍晋三首相が「世界経済はリーマン・ショック前に似ている」との景気認識をもとに財政政策などの強化を呼びかけたことに対し、会議ではさすがに正面からの批判はなかったようだが、海外メディアの見方は厳しい。
⇒2016年5月29日 (日):首相の「リーマン級」は霞が関文学/アベノポリシーの危うさ(71)

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2016年5月30日 (月)

息子と絶縁し安保法に反対する母/アベノポリシーの危うさ(72)

南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に第10次隊として順次派遣される陸上自衛隊北部方面隊(総監部・札幌)の先発隊127人が5月22日、新千歳空港から現地に向けて出発した。
3月の安全保障関連法の施行後初めての派遣部隊だ。
新たな派遣部隊の主力となる陸上自衛隊北部方面隊第7師団がある北海道千歳市で暮らし、20代の自衛官の息子を持つ女性が、安保法に反対の声を上げ始めた。
息子に迷惑をかけぬよう、「縁を切った」上での街頭活動で、「恨まれるよりも死なれる方がつらい」との思いに突き動かされている。

新宿駅前で全国のママが安保関連法廃止を訴えた「ママの新宿ジャック」で、平和子さん(50代、仮名)は安倍首相への手紙を読み上げた。
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東京新聞5月19日

個の言葉を紹介した泥憲和(元自衛官)さんのFacebookに次のようなコメントがあった。

消防署員の母親が、
「火災現場は危険なのに、何かあったらどうするの」
警察署員の父親が、
「拳銃持って犯罪者に立ち向かうなんて、危険すぎる」
山岳救助や海難救助関係者の肉親が、
「自業自得なんだから、救助なんて必要ない」
と言うようなものですね、気持ちは良く分かります。

まったくゲスな心情というべきだろう。
私の近い人の中にも、自衛隊に入った若者を持つ母親がいる。
彼女の心境はどうだろうか?

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2016年5月29日 (日)

首相の「リーマン級」は霞が関文学/アベノポリシーの危うさ(71)

27日閉幕した主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で、安倍晋三首相が「世界経済はリーマン・ショック前に似ている」との景気認識をもとに財政政策などの強化を呼びかけた。
これについて、エコノミストから異論が相次いでいる。
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東京新聞5月28日

各国首脳からも「危機」という言葉に異論が出た。
⇒2016年5月27日 (金):伊勢志摩サミットは選挙のツールか?/アベノポリシーの危うさ(70)
海外メディアからも批判的な論調が相次いでいる。

 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「世界経済が着実に成長する中、安倍氏が説得力のない(リーマン・ショックが起きた)2008年との比較を持ち出したのは、安倍氏の増税延期計画を意味している」と指摘した。
・・・・・・
 英BBCは27日付のコラムで「G7での安倍氏の使命は、一段の財政出動に賛成するよう各国首脳を説得することだったが、失敗した」と断じた。そのうえで「安倍氏はG7首脳を納得させられなかった。今度は(日本の)有権者が安倍氏に賛同するか見守ろう」と結んだ。
 仏ルモンド紙は「安倍氏は『深刻なリスク』の存在を訴え、悲観主義で驚かせた」と報じた。首相が、リーマン・ショックのような事態が起こらない限り消費税増税に踏み切ると繰り返し述べてきたことを説明し、「自国経済への不安を国民に訴える手段にG7を利用した」との専門家の分析を紹介した。首相が提唱した財政出動での協調については、「メンバー国全ての同意は得られなかった」と総括した。
 米経済メディアCNBCは「増税延期計画の一環」「あまりに芝居がかっている」などとする市場関係者らのコメントを伝えた。
 一方、中国国営新華社通信は「巨額の財政赤字を抱える日本が、他国に財政出動を求める資格があるのか?」と皮肉った。首相が新興国経済の減速を世界経済のリスクに挙げたことへの反発とみられ、「日本の巨額債務は巨大なリスクで、世界経済をかく乱しかねない」とも指摘した。
伊勢志摩サミット「リーマン級」に批判相次ぐ

海外からも「消費増税延期の口実」と見透かされている。
側近の稲田政調会長も見ていないと言う。
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【身内さえも】自民・稲田朋美政調会長「サミットで首相が示した資料は一度も見ていない」


霞が関官僚が首相の意を汲んで作成したいわゆる霞が関文学の一種であろうが、何ともセコイのではなかろうか。
⇒2012年10月10日 (水):「霞ヶ関文学」と「東大話法」はメダルの表裏/花づな列島復興のためのメモ(149)

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2016年5月28日 (土)

浜岡原発撤退の論理と倫理(11)/技術論と文明論(58)

熊本地震は1ヶ月以上経った現在も終息していない。
50年近く前のことであるが、竹内均氏は上山春平氏との共著『第三世代の学問―「地球学」の提唱』中公新書(1977年8月)で次のように語っていた。

「自然は切れ目のない織物だ」という立場で、地球科学は、帰納的手法(第一世代の学問)と演繹的手法(第二世代の学問)により得た「地球」に関するデータを、アブダクション(直感で仮説を立てた後に検証する思索法)で総合する第三世代の学問の時代になりつつある。

予測に関しては、演繹的手法の第二世代の学問、代表例は物理学、が威力を発揮するが、地球科学には本来的に限界がある。
精緻な観測データを用い、総合的に考察するという意味でまさに「地球学」の王道というべき立場が、測量工学の第一人者・村井俊治・東大名誉教授(76)氏であろう。
村井氏が顧問を務める民間企業・地震科学探査機構(JESEA、橘田寿宏社長)は、人工衛星から見た、国内約1300カ所ある国土地理院の電子基準点の水平・上下の位置変動データを震度5以上の地震予測に活用し、週刊のメールマガジンでその情報を発信してきた。

東日本大震災でも前兆を認めていたが、情報発信できないまま2011年の発生を迎えた。歯がゆさもあって2013年1月17日、阪神・淡路大震災の記念日に橘田氏とJESEAを立ち上げ、同年2月にメルマガ配信を開始。その後も大地震の発生を言い当て続けて評判を呼んだ。当初24人だったメルマガの個人会員数(月額料金は200円プラス消費税)は現在、5.5万人に達した。
次の大地震は伊予灘・薩摩西方沖を警戒せよ

熊本地震では2年前から危険性を指摘し続けていた。
しかし2014年5月から出し続けてきた熊本・鹿児島周辺での地震発生注意情報は今年1月末まで、2月末まで、と何度も延長を続けたが、メルマガの4月6日発行号で解除した。
熊本県にある国土地理院の電子基準点22カ所のうち、明確に異常な変化を示し続けたのが2つしかなかった点も理由の一つで、「気持ちがブレた」と言う。

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熊本地震でも、周辺の地体が引きちぎられるように東西南北に動いた。四国の足摺岬と室戸岬周辺の地体の動きは熊本地震によって逆方向に変わっており、歪みが溜まっている。特に中央構造線の延長線上にある伊予灘は要注意。熊本から見て逆方向に当たる薩摩半島の西方沖などでも、大地震が起きる可能性がある。
また、阿蘇山が噴火しない保証はない。江戸時代の巨大地震だった宝永の大地震(1707年)の49日後に富士山が噴火した例もある。尋常ではない動きをしていると思っている。
次の大地震は伊予灘・薩摩西方沖を警戒せよ

村井氏は、「愛媛県の佐田岬半島には休止中の伊方原発、薩摩半島の西岸には稼働したばかりの川内原発があるが、大丈夫なのか」という問に、原発の安全性は地震予測と異なる次元の話なので、コメントは控えると答えている。
どう判断するかは政治的な問題、言い換えれば国民の判断と言うことであろう。

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2016年5月27日 (金)

伊勢志摩サミットは選挙のツールか?/アベノポリシーの危うさ(70)

主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は27日午前、首脳宣言を採択し、オバマ大統領と安倍首相は広島で慰霊をした。
安倍首相は前日の経済討議でリーマン危機と現在の商品価格や新興国経済を比べる「参考データ」を示し、危機再発への警戒感を表明した。
「危機」という言葉には首脳間で異論も出たが、首脳宣言は安倍首相の意向を映し、「新たな危機(クライシス)を回避するため」という表現を盛った。
議長への配慮であろう。
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東京新聞5月27日

民進党の岡田代表は、安倍首相が伊勢志摩サミットの全体会合で現在の経済状況をリーマン・ショック前になぞらえたことについて、「消費増税先送りの言い訳に使えるよう(サミットを)利用していると言われても仕方がない。非常に恥ずかしい」と批判した。
まったくその通りであって、アベノミクスの失敗が明らかになっているにもかかわらず、経済指標の良い部分は、「アベノミクスの果実」と言い、都合が悪いことは環境のせいにする。
消費税を上げる環境でないのは、世界が悪いのか?
⇒2016年5月23日 (月):消費税再延期はアベノミクスの失敗/アベノポリシーの危うさ(69)

岡田氏は、「金融機関の破綻が相次いだのが、リーマン・ショック前。(現在は)国際通貨基金の予測でも世界経済はプラス成長だ」とも述べた。
「ボクちゃん悪くないのに、みんなが悪いんだよう」という幼児のようである。
知的劣化と幼児性は分かっているけど、やっぱり恥ずかしいなあ。
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教科書問題を考える           小石川有志の会

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2016年5月26日 (木)

伊勢志摩でサミットをやるならば/技術論と文明論(57)

主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開幕した。
安倍晋三首相は26日午前、三重県伊勢市の伊勢神宮で、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に参加する主要7カ国(G7)首脳らを出迎えた。
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G7開幕、各国首脳が伊勢神宮に

議論すべき課題は山積しているが、最大のテーマとされるのは世界経済である。
昨年来の中国の景気減速や原油価格の低下を背景に不透明感が増す中、いかに力強い成長への道筋を示すか。
「パナマ文書」がえぐり出したタックスヘイブン(租税回避地)と課税逃れの問題も避けては通れまい。

伊勢志摩は風光明媚な場所であり、世界の首脳を迎えるに相応しい場所だ。
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「ひととき」2016年6月号

1946年、戦後初の国立公園に指定された。
「志摩のリアス海岸」「伊勢の神宮林」という豊かな自然に恵まれ、伊勢神宮の代表されるように、神の住まうところであった。
また、海の宝石である真珠の養殖技術は、志摩のリアス海岸で確立されたが、真珠は、自然の力を生かす努力を怠らなければ、いつまでも生み出すことができる。

伊勢神宮といえば、式年遷宮で有名だ。
直近では2013年に行われた。
⇒2013年10月 3日 (木):伊勢神宮の起源/やまとの謎(88)

 伊勢神宮には常若(とこわか)という考え方があり、二十年に一度、内宮、外宮の正殿はもとより、六十棟に及ぶ神殿をすっかり新しくする。
 その式年遷宮のために木を植えて、山を手入れする。解体で出る廃材は再利用される。
 木を切り、建てて、土に返す、そこにまた新しい命が宿り、芽を吹き、育つ…。こうして伊勢神宮は千数百年にも及ぶ循環と再生の歴史を築いてきた。
 伊勢志摩は、つまり、循環する自然の力を生かし、持続可能な風土を築いてきたのである。
 オバマ米大統領の広島訪問が決まって内外の注目を集めるが、かといって、伊勢志摩という舞台の意義を忘れてはなるまい。
 そもそも、なぜ、サミットを開くのだろう。それは結局、世界を持続させるためではないのか。
 議題があふれんばかりとなった日程表は、G7各国も今の世界の先が見通せない、つまり、持続可能性にそれぞれ不安があることを象徴しているのかもしれない。
伊勢志摩サミット 「持続可能」の決意示せ

日本精神などと抽象的なことを言わずに、伊勢志摩の持つ現代的意味を伝えるべきだろう。

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2016年5月25日 (水)

沖縄女性死体遺棄事件と安倍政権の対応/永続敗戦の構造(1)

沖縄県うるま市の会社員島袋里奈さんが、米国籍で米軍属のシンザト・ケネフ・フランクリン容疑者に殺害され、同県恩納村の雑木林に遺棄されたという悲劇的な事件が発生した。

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安倍内閣の閣僚の一人は「タイミング的にまずい。大変なことになった」と嘆く。サミットやオバマ氏の広島訪問など重要な日米間の外交日程が続く中、友好ムードに水を差すことになるからだ。公明党幹部は「日米首脳会談でも触れざるを得ないかもしれない」とみる。
沖縄・女性遺棄事件で閣僚困惑、オバマ氏の広島訪問控え「タイミング的にまずい」

どうだろうか、安倍内閣の閣僚や公明党幹部の認識はこんな程度なのだ。
国民が殺されて死体が遺棄されているのに、「タイミングがまずい」「日米首脳会談でも触れざるを得ないかもしれない」だと。
殺されるのに良いタイミングなどあろうはずもないし、日米首脳会談では先ず第一に触れるべきだろう。

しかし菅官房長官は、「これまでも運用の改善に取り組んできており、常日頃、必要なものはアメリカ側と折衝しながら改善に努め、安倍政権になって環境補足協定も締結した。さまざまな意見があることは承知しているが、今後も個々の問題について、効果的に機敏な形で目に見える改善を積み上げて、在るべき姿を追求し、国民の理解を得ていきたい」と語るに留めた。
要するに、問題の根幹である日米地位協定の改訂には踏み込まないで、運用の改善を図るというのだ。

今回の事件は、公務外であり、地位協定が壁となって捜査が進まない状況ではない。
しかし沖縄県内では地位協定の存在が米兵らに特権意識を生み、凶悪犯罪を誘発したとの厳しい見方がある。
翁長雄志沖縄県知事は安倍晋三首相との会談で、独自の法的地位が与えられていることで生じる在日米軍の「占領意識」を変えない限り、犯罪は繰り返されるとして、日米地位協定の改定を求めた。

在日米軍の法的地位を定める地位協定は1960年、日米両政府の安全保障条約改定にあわせて発効した。
公務中の犯罪に関する裁判は米側が行うことや、公務外でも米側が先に容疑者を確保していれば日本側の起訴まで身柄を引き渡さなくていいことなどが盛り込まれている。
尊敬する祖父の岸信介が結んだ協定は、安倍首相には神聖不可侵なものなのかも知れない。

この事件は、白井聡氏の『永続敗戦論ー戦後日本の核心』太田出版(2013年3月)の典型のように思える。
白井氏自身の解説を引用しよう。

 ゆえに、アメリカにとって日本は、助けてあげるべき対象というよりもむしろ収奪する対象に変ってくる。そのことを露骨に告げているのがTPP問題である。それにもかかわらず、冷戦崩壊以降、「日米関係のより一層の緊密化」というスローガンが結局のところ優ってきて、今日ますますそうなっているのは、異様な光景である。真の基礎は変わっているのであるから。
 こうして真の基礎が変わるなかで、「暴力としてのアメリカ」の姿が、見える人にははっきりと見えてきた。あの戦争で日本を打ち負かしたところの「暴力としてのアメリカ」である。戦後直後、一九五〇年代には砂川闘争に代表されるように、「暴力としてのアメリカ」の姿は、多くの国民の視界に入って来ざるを得ないものだった。しかし、その後、六〇年安保という危機を乗り越えて、「アメリカ的なるもの」は国民生活のなかに広く深く浸透しつつ、その過程で暴力性を脱色されて文化的なものへと純化されてゆく。だからと言って、アメリカそのものが暴力的でなくなったわけではない。依然として「暴力としてのアメリカ」であった。
 ただし、その暴力が日本へと向くことはなく、ベトナムやイラクへとそれは向けられていた。ゆえにわれわれは、それを見ないで済ますことができてしまった。「ウチに向かってくるんじゃないからいいや、さあどうぞ、大人しく基地も提供しますから、よそのどこかで暴れてきてください」、という態度を日本はとり続けた。「暴力としてのアメリカ」の「暴力」が日本に向けられるかもしれないということはそれこそ「想定外」であり、そのために、そのような事態が現実に起こっているのにもかかわらずそれを認識できないのである。
 無論、いま述べた構図に当てはまらないのが沖縄である。そこでは復帰以前も以後も一貫して「暴力としてのアメリカ」のプレゼンスがはっきりとしていた。ゆえにいま、沖縄は日本の本土に対する強烈な批判者になっているのと同時に、唯一物事の客観的次元を把握できる立場にいる。これに対して、日本社会の大勢は、沖縄のメッセージを理解していないし理解しようとしてすらいない。よくて、「可哀そうに」とか「申し訳ない」くらいにしか思っていない。つまり、他人事なのだ。ここで見落とされているのは、今日の沖縄の姿は、明日の本土の姿であるということにほかならない。
永続敗戦論からの展望/白井聡

安倍首相は、戦後レジームからの脱却をいいながら、最も強く永続敗戦の構造に縛られている。
それは、安倍首相が岸信介の幻影に捉えられているかである。
「敗戦の終戦へのすり替え」がなされたのは、敗戦の責任を有耶無耶にし、敗北必至とあらかじめ分かっていた戦争(対米戦)へと国民を追い込んで行った支配層(その代表が、岸信介や賀屋興宣など)が、戦後も引き続き支配を続けることを正当化しなければならなかったためである。

翁長氏は安倍首相との会談で、地位協定の不平等さに関し「米国から『日本の独立は神話だ』と言われているような気がする」と不満を示した。
永久敗戦の構造下では占領状態が継続しているのだ。

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2016年5月24日 (火)

ディープラーニングの発展と脳のしくみ/知的生産の方法(150)

AI(人工知能)に関する話題が賑わっているが、人の脳に関する関心も盛り上がっているようだ。
最近手にした雑誌でも、「週刊エコノミスト」(毎日新聞出版)の5月17日号が『人工知能・AIの破壊と創造』という特集を、「一個人」(KKベストセラーズ)の6月号が、『脳を鍛える』という特集を組んでいる。

グーグルの人工知能(AI)「アルファ碁」が囲碁のプロ棋士と対戦して初勝利を挙げたのが大きい。
「アルファ碁」は、ディープラーニングによって急速に腕を上げたと言われる。
⇒2016年2月21日 (日):AIはクリエイティブ分野でもヒトに勝つか?/技術論と文明論(41)

ディープラーニングについて、4月10日の日経新聞に解説記事が載っていた。
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ディープラーニングとは、コンピューターによる「機械学習」の一種で、人間の脳をモデルに考えられた「ニューラルネットワーク」を改良し、画像や音声などの認識や、自動運転などの複雑な判断に有効な方法である。
機械学習とは、人間がプログラムコードをすべて書くのではなく、学習するシステム(ここではニューラルネットワーク)を作り、それにさまざまな情報を与えて認識などの処理を行うシステムを構築することとされる。

脳は、生物とともに進化してきた。
長さ2mm、直径0.2mmほどのチューブである「神経管」がつくられることから、脳の形成は始まる。
神経管の内側で神経細胞がつくられ、膨らんで脳がつ くられていくが、神経管はどの脊椎動物でも共通で、その起源をさかのぼっていくと、約5億年前に出現した原索動物であるホヤの幼生に行き着くという。

魚類、両生類、爬虫類では、脳幹が脳の大部分を占めている。
脳幹は反射や、えさを取ったり交尾するといった本能的な行動をつかさどっている。
小脳は、小さ な膨らみにすぎず、大脳も小さく、魚類と両生類では、生きていくために必要な本能や感情をつかさどる「大脳辺縁系」のみである。
大脳辺縁系は、進化的に 古いことから「古皮質」と呼ばれる。爬虫類では「新皮質」がわずかに出現する。

鳥類や哺乳類になると、小脳と大脳が大きくなる。
特に大脳の新皮質が発達し、「感覚野」「運動野」といった新しい機能を持つようになる。
霊長類では新皮質 がさらに発達して大きくなり、「連合野」が出現し、より高度な認知や行動ができるようになった。

ヒトでは、新皮質が大脳皮質の90%以上を占めている。
脳の進化は、基本構造が変化するのではなく、新しい機能が付け加わるように進化してきた。
つまり、ヒトの脳には生物の進化の歴史が刻まれているのである。
⇒2013年4月20日 (土):脳の3層構造とコミュニケーション/知的生産の方法(49)

これらの概略は、回復期リハビリ専門病院における主治医から教えられた。
⇒2010年4月25日 (日):「恐竜の脳」の話(1)最近の政局をめぐって
「もう6年」と言うべきか、「まだ6年」と言うべきか分からないが、まだ右手は使えないがADLは何とかしている。

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2016年5月23日 (月)

消費税再延期はアベノミクスの失敗/アベノポリシーの危うさ(69)

安倍首相は、2014年12月の総選挙の際に、「この道しかない。再延期は絶対にしない。消費税を上げられるような環境に必ずする」と宣言した。
⇒2014年12月25日 (木):「この道しかない」という硬直性/アベノミクスの危うさ(45)
「息を吐くようにウソを言う」と言われている人だから、そんなことは大した問題ではないと思っていることであろう。

安倍首相は18日発表の1〜3月期の国内総生産(GDP)の速報値で個人消費の回復が鈍かったとして、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げを再延期する検討に入ったと報じられている。
⇒2016年5月17日 (火):実質消費支出の急減とエンゲル係数の上昇/アベノポリシーの危うさ(66)

予定通り増税した場合、デフレからの脱却が困難になると判断しているという。
私は、消費増税は延期もしくは取りやめるべきだと考えるが、その場合は、安倍首相にアベノミクスと称する政策の失敗を認めてもらわないとスジが通らない。
藻谷浩介氏の指摘するように「PDCA]サイクルを回すという基本的なことに立ち戻るべきだ。
⇒2016年5月14日 (土):PDCAなき安倍政権の政策/アベノポリシーの危うさ(64)

消費者・生活者の暮らしが悪化していることは肌で感じられる。。
⇒2016年5月17日 (火):実質消費支出の急減とエンゲル係数の上昇/アベノポリシーの危うさ(66)
国内消費の動向を見れば、国民の怒りは蓄積してと思われる。
Ws000000
東京新聞5月19日

しかし、安倍首相は、目先のオバマ大統領の広島訪問等の効果を見込んで、衆院を解散し、夏の参院選と同時に衆院選も行う衆参同日選に持ち込む肚だと解説されている。
熊本地震等のことを考慮すれば、常識的にはそんなことを考えるのは論外であろうが、常識が通用しない世界である。
柳の下にドジョウは何匹もいないことを思い知らせるべきだ。

Ws000001 首相は26〜27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)での議論を踏まえ、消費増税先送りと衆院解散に踏み切るかを最終判断する方針だ。今国会の会期末は6月1日。公職選挙法の規定から同日選に踏み切る場合、6月1日に衆院を解散し、7月10日に衆参両選挙を実施する日程となる可能性が高い。
 1〜3月期のGDP速報値は2期ぶりのプラスで年率換算で1・7%増だったが、個人消費の伸びは、うるう年で1日多かった影響を除けば小幅だったとの見方が強い。首相は18日の党首討論で「(14年4月に)消費税を引き上げて以来、(個人)消費が弱いのは事実だ。その弱さは我々の予想より弱く、そこに注目している」と強調した。
 消費増税の判断については、「リーマン・ショックあるいは大震災級の影響のある出来事がない限り引き上げを行う」と従来の答弁を繰り返したものの、そうした状況に該当するかは「専門家に議論してもらい適時適切に判断したい」と明言を避けた。
同日選を視野 消費増税の再延期検討

私は解散総選挙を安易に、政局的に用いるべきではないと考える。
しかし、もし解散となれば、今度こそ安倍政治を終焉させるチャンスにしなければならない。

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2016年5月22日 (日)

沼津で『お菓子放浪記』執筆・西村滋/追悼(84)

全国青少年読書感想文コンクールの課題図書となった『お菓子放浪記』の著者・西村滋さんが、21日亡くなった。
西村さんは、1961年から1993年まで沼津市で過ごした。
2160522
東京新聞5月22日

西村さんは、愛知県名古屋市に生まれた。
6歳で母と、9歳で父と死別して孤児となり、以後放浪生活の後、少年養護施設の補導員などを務めた。
1952年、処女作の『青春廃業』を発表した。
『やくざ先生』は、1960年に石原裕次郎主演で、日活で映画化された。

沼津在住中の1975年に『雨にも負けて風にも負けて』で第2回日本ノンフィクション賞を受賞。
1976年に代表作のの『お菓子放浪記』を刊行し、同年、テレビドラマ化された。
1994年に『続・お菓子放浪記』、2003年に『お菓子放浪記 完結編』と書き継がれ、2011年には『エクレール・お菓子放浪記』として映画化、劇場公開された。
1985年に『母恋い放浪記』を中心とした作家活動で「路傍の石文学賞」を受賞した。

今年1月、沼津市民文化センターでミュージカル化された「お菓子放浪記」が上演されたばかりである。
沼津にはファンが多い。
私の静岡市にいる幼馴染み熱心に後援している。
西村さん自身も、沼津には格別の思いがあって、市民文化センターのトークショーでは、「雌伏の時が続き、やっと世間に認められたのが『お菓子放浪記』。良い時期も悪い時期も、沼津で過ごした時間の全てが印象深い」と懐かしんでいた。
合掌。

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2016年5月20日 (金)

浜岡原発撤退の論理と倫理(10)/技術論と文明論(56)

日本列島の地質的条件は、中央構造線と中央構造帯(フォッサマグナ)によって特徴づけられる。
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東京新聞4月19日

熊本地震の16日未明の本震で震度7の強い揺れが観測された熊本県西原村で、縦ずれの正断層と横ずれ断層が約2キロの間隔を置いてほぼ平行に走っているのを、東北大の遠田晋次教授(地震地質学)らの研究グループが確認した。
同地震について、気象庁は地盤が南北方向に引っ張られる力で断層が横に動いた「横ずれ断層」型としているが、遠田教授らは、部分的に縦方向のずれが別の断層として現れたとみている。
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朝日新聞5月5日

「縦ずれと正断層の組み合わせ」が国内初ということは、経験則や通説を越えた想定外が起こり得るということだ。
5月1日放映の「サンデーモーニング」で、毎日新聞記者の元村有希子さんが使っていた「未科学」という言葉が実感される。
⇒2016年5月 2日 (月):浜岡原発撤退の論理と倫理(7)/技術論と文明論(53)

「未科学」を検索したら以下のような図がヒットした。
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図解ニセ科学

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2016年5月19日 (木)

震災を緊急事態法に使う改憲論者/アベノポリシーの危うさ(68)

産経新聞は熊本地震で川内原発の運転停止求める署名活動を「反原発派 熊本地震を利用」と見出しをつけた。
⇒2016年5月11日 (水):ひたすら政権追随の産経新聞批判/アベノポリシーの危うさ(62)

一方、安倍首相に近い改憲派が地震を改憲に利用しようとしている。
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緊急事態条項は必要か

菅義偉官房長官

緊急事態条項は自民党が2012年に発表した改憲草案に盛り込まれた。大規模災害時などに首相が緊急事態を宣言すれば、内閣は法律と同じ効力を持つ政令を制定でき、国民には政府の指示に従うことを求められる。菅義偉官房長官は15日の記者会見で、熊本地震に関連し「大規模災害の発生のような緊急時に、国民の安全を守るために国家や国民がどのような役割を果たすべきかを、憲法にどう位置づけるかは極めて重く大切な課題」と述べた。
緊急事態条項は必要か

礒崎陽輔首相補佐官

自民党憲法改正推進本部の事務局長を務める礒崎陽輔首相補佐官は22日、大分市での自身の政治資金パーティーで、憲法改正について、大災害などを想定した緊急事態条項の新設から取り組むべきだとの考えを示した。「最初はできる限り合意が得られるところで行い、次からもう少し難しい問題を議論すれば良い」と2段階論を唱えた。
礒崎首相補佐官、憲法改正「まず緊急事態条項から」

櫻井よし子氏

ジャーナリストの櫻井よしこ氏ら早期の憲法改正を求めるグループが2016年4月26日、都内で記者会見し、「緊急事態条項」の制定に向けた憲法論議を改めて求めた。特に櫻井氏は、仮に緊急事態条項があれば、熊本地震は「最初から国が前面に出て」「事態に対処することができたであろうと思われる」と主張。現行憲法が災害対応の妨げになっているとの持論を改めて主張した。
   だが、会見に同席していた百地章・日大教授は、熊本地震は現行の法律内で対応できたとの立場を表明。登壇者間の温度差も浮き彫りになった。
櫻井よしこ氏、憲法改正して「緊急事態条項」を 「熊本地震」に触れつつ「国がパッと対処できる」

緊急事態条項は災害対策に必要か?
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県42自治体へのアンケートでは、条項が必要だと感じたという回答は1自治体だけであった。
被災自治体の多くは現行の法律や制度で対応できると考えているのである。

憲法改正の是非が夏の参院選の争点に浮上し、緊急事態条項は安倍晋三首相が改憲のテーマと考えているとされる。5月3日の憲法記念日を前に毎日新聞は今月、岩手12市町村、宮城15市町、福島15市町村の担当部署にアンケートを送付。37自治体が回答した。

  初動対応で「もっと適切に対処できたと感じる場面があったか」と聞いたところ、30自治体が「あった」と回答。この30自治体に対処が不十分だった原因を選択肢(複数回答可)で聞くと、(1)「震災の規模が事前の想定を超えていた」が26自治体と最も多く、(2)「法律制度に不備があった」が5自治体、(3)「憲法で保障された個人の権利(移動や経済活動の自由、財産権など)が障害になった」は2自治体、(4)「その他」は3自治体だった。
緊急事態条項被災3県で「必要」1町

折しも安倍首相は、私は立法府の長だと言った。

民進党・山尾志桜里政調会長が安倍首相の政策を批判し、「女性活躍どころか“男尊女卑”政権だ」と突きつけた同じ委員会でのことだ。山尾議員は安倍首相に、なぜ保育問題に前向きに取り組まないのかと訴えたのだが、安倍首相は「山尾委員は議会の運営ということについて少し勉強していただいたほうがいいと思います」と前置きして、こう述べたのだ。
「議会についてはですね、私は立法府、立法府の長であります」
 国会中継を見ていた人は、思わず耳を疑い、フリーズしたに違いない。総理大臣は行政府(内閣)の長ではあるが、立法府(国会)の長では断じてないからだ。勉強したほうがいいのは間違いなく、安倍首相のほうである。
安倍首相がまた「私は立法府の長」発言! たんなる言い間違いではない、三権分立を破壊する安倍政治の本質

確かに単なる言い間違いではないようだ。
かつて麻生太郎副首相兼財務相、憲法改正をめぐり戦前ドイツのナチス政権時代に言及する中で、「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と言ったことがある。
⇒2013年8月 4日 (日):撤回では済まされない麻生副総理の言葉

第1次大戦後の1919年、ドイツでは帝政に代わり、ワイマル憲法を柱とする共和政となった。
ワイマル憲法は、法制史において人権概念の萌芽とされる基本的人権の尊重が定められるなど、きわめて民主的なものであった。
しかし1929年に発生した世界恐慌によってドイツ経済は最悪の状態になり、ベルサイユ体制の破棄を訴えるナチスの支持率が上昇していった。
1933年、ヒトラーが首相に就任した直後のドイツ国会議事堂放火事件によって、緊急大統領令を発令し、憲法の基本的人権を停止するとともに、実質的に他の政党の抵抗力を奪った。
ヒトラーは全権委任法を制定し、憲法に違背する法律を制定する権限を含む強大な立法権を掌握した。
これが緊急事態法の真髄なのである。
麻生氏の言葉が口が軽いでは済まされなくなる。

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2016年5月18日 (水)

東京五輪の裏金が示すもの/アベノポリシーの危うさ(67)

それにしてもゴタゴタ続きである。
招致に係わった猪瀬直樹前東京都知事、新国立競技場やエンブレムの問題に加え、招致の際に使われた裏金がクローズアップされてきた。
イギリスのガーディアン紙が、東京オリンピックの招致をめぐり、日本から国際オリンピック委員会の有力者側に2億円を超える支払いがあったとしてフランス検察当局が捜査を開始した。
ガーディアン紙のギブソン記者は次のように語っている。

 「オリンピックやワールドカップの世界では、コンサル料としていろいろ悪いことを隠せる。コンサル料が2億円の価値があるか疑問視すべきだ」(英・ガーディアン紙 ギブソン記者)
 フランス検察当局は、東京での開催が決まる前後に日本の銀行から、IOC=国際オリンピック委員会の有力な委員だったディアク氏の息子が関係する銀行口座に日本円でおよそ2億2300万円が振り込まれたとして、贈収賄の疑いで捜査を開始しました。一方、JOC側は、支払いが日本の招致委員会からディアク氏と親しかった人物の会社に支払われたコンサルタント料であることを認め、「なんら疑問をもたれる支払いではない」としています。
 これについてガーディアン紙の記者は・・・
 「疑惑はまだ解明されていない 。しかし、答えるべき深刻な疑問があり、葬られてはならない」(英・ガーディアン紙 ギブソン記者)
 ガーディアン紙の報道後に捜査を開始したフランス検察当局について、この記者はまだ国際的な捜査を展開していないが、今後様々な事実を明らかにするだろうと、述べています。
英・ガーディアン紙記者、五輪招致「2億円に疑問」

5月16日に、民進党の玉木雄一郎氏が国会の質問時に使ったパネルは以下のようであった。
Photo
https://twitter.com/tamakiyuichiro

D社というのが電通であることは明白であるが、玉木氏は次のように説明している。

国会パネルの電通の部分がD社になっていたことを指摘される方が多いのですが、これはパネルの使用について与党理事の承認を得やすくするためであって電通に配慮したものではありません。理事会で物言いが付くとパネルを使えないルールなのです。

答弁に立った馳浩文科相は、電通と明言した。

一方で、玉木議員の質疑に答弁した馳文科相は「招致委員会のメンバーは、コンサル業務に関してはプロではありませんので、電通に確認をしたそうであります」と、電通の社名を伏せずに明言した。
馳文科相は続けて「そうしたら、電通のほうから、こういう実績のある会社としては、この会社はいかがでしょうかということの薦めもあって、最終的には招致委員会で判断をされて、この会社と契約をされたということ」と、電通が招致委員会に疑惑のコンサル会社を薦めた経緯と、高額な送金を2回に分けた委員会の財政事情を説明した。
すると、再度、挙手をした玉木議員も「電通からの推薦でお願いすることになったコンサルティング会社であることは分かりましたけれども…」と、電通の社名を伏せることを止め、質疑を続けた。
民進党が「広告会社D社」と社名を伏せるも馳浩文科相が「電通」と明言

また馳文部科学相は17日の閣議後記者会見で、コンサルタント会社に約2億2000万円を支払っていたことについて「ロビー活動を展開するため、より核心に触れる情報が必要だった。多数派工作(のため)で、買収ではない」と述べ、正当性を強調した。
これではまさに買収を認めたことになるのではないか。

 馳氏は会見で、同年7~8月が「票読みのヤマ場で、20年の五輪をどこで開催するか、激しい情報合戦が繰り広げられていた」と指摘。IOCメンバーによる東京電力福島第1原発の汚染水問題に対する懸念を払拭(ふっしょく)する必要もあった説明した。
 その上で「どうしたら汚染水の問題にきちんと答えられるのか、東京がふさわしいと思ってもらえるのか、核心的な情報を得るにはコンサルが果たした役割は極めて大きい」と述べた。 
核心情報の収集に必要=五輪招致のコンサル料―馳文科相

早い話が、安倍首相の「アンダーコントロール」のつじつま合わせに四苦八苦して、そのスジの依頼したということである。
こんな形で五輪を開催してもナンダかなあ。

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2016年5月17日 (火)

実質消費支出の急減とエンゲル係数の上昇/アベノポリシーの危うさ(66)

エンゲル係数という言葉を学習したのは中学生の時だっただろうか。
家計支出に占める食費の割合を指し、ドイツの統計学者エルンスト・エンゲルが労働者世帯の家計簿を分析し、所得が少ない世帯ほど家計の消費支出に占める食費の割合が高くなる傾向を示したことから、生活水準を示す「エンゲルの法則」として広がった。
その「エンゲル係数」が日本で急上昇している。

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 安倍政権の経済政策・アベノミクスが始まった二〇一二年末以降、円安や消費税増税を背景に食品が値上がりしたのに、賃上げが追いつかないためだ。戦後長らく「生活水準」の指標とされたエンゲル係数が、いま再び注目を集める時代になるのか。
・・・・・・
 新日本スーパーマーケット協会(東京)によると、食品の価格は一三年半ばから目立って上がり始めた。一方で、物価の伸びを超えて賃金が本当に上がったかを示す「実質賃金指数」は一五年は前年比0・9%減で四年連続で下がった。収入が伸びない中で食品が値上がりし、エンゲル係数が高くなった実態が浮かぶ。
 食料品の値上げは一二年末から進んだ円安で食料の原料や輸入商品が値上がりしたためだ。一四年四月に消費税率を8%へと引き上げた増税が追い打ちをかけた。一九九七年四月に消費税率を5%に上げた際はエンゲル係数に大きな変化はなく、まだ家計にはゆとりがあった可能性がある。現在の状況を、みずほ証券の末広徹氏は「低所得者は食費の上昇を賄うために、他の支出を切り詰めており格差も広がっている」とみる。
エンゲル係数 急上昇 食品値上げ 賃金追いつかず

アベノミクス称する経済政策がいかにインチキ・虚構のものであったかは、トリクルダウンという用語取り扱いが示している。
昨年の1月、気鋭の経済学者トマ・ピケティが来日した。

 ピケティ氏来日の前日28日の参院本会議で松田公太議員が、ピケティ氏が格差解消の処方箋としてあげる世界的な資産課税強化について問うと、「執行面でなかなか難しい面もある」とそっけなく否定するだけだった。
 ところが、直後に側近から「人気の経済学者なので反論ではなく、アベノミクスの恩恵をアピールすべき」とアドバイスされたらしい。29日の衆院予算委員会での民主党・長妻昭氏との質疑では、「ピケティ氏も成長は否定していない」とまずピケティ人気にあやかったうえで「成長せずに分配だけを考えていけば、ジリ貧になる」と持論を語り、2日の参院予算委員会では「(アベノミクスは)全体を底上げする政策だ」と力説した。
・・・・・・
 1月29日のシンポジウム後半のパネルディスカッションでは西村康稔内閣府副大臣がパネリストとして登壇した。政府の「雇用者100万人増」や「トリクルダウンの試み」などについてパワーポイントの資料を何枚も使って説明し、「アベノミクスで格差が拡大しているというのはまったくの誤解」とドヤ顔を見せた。
 しかし、データ分析ではピケティ氏の方が2枚も3枚も上手だった。
「確かに日本の格差はアメリカほどではない。しかし、上位10%の富裕層の所得は国民所得全体の30~40%まで上がってきており、さらに上昇傾向にある。しかも、日本はゼロに近い低成長なのに上位の所得が増えているということは、実質的に購買力を減らしている人がいるということだ。おまけに累進課税の最高税率も低い。国際的水準で見ても、日本の過去の税率と比べてみても。つまり、トップの所得シェアが増えているのに以前より低い税率しか納めていないということだ」
・・・・・・
 アベノミクス最大のキモは、まず富裕層を優遇して儲けさせ、その富の一部がやがて低所得者層にまで"したたり落ちてくる"トリクルダウン理論にある。ピケティ氏はこれを、「過去を見回してもそうならなかったし、未来でもうまくいく保証はない」(東大講義講義)と一蹴した。
世界が注目する経済学者・ピケティが来日して“アベノミクス“をケチョンケチョンに!
⇒2015年2月19日 (木):ピケティVS アベノミクス/アベノミクスの危うさ(48)

甘利明経済再生担当相は2014年11月14日、消費増税判断のための点検会合後の会見で次のように語った。

消費増税を延期した場合、日本売りを起こさせない決意と手当てをどうしていくかだと指消費増税を延期する場合の理由として、企業収益が上がっている一方で実質賃金が上がっていない点を指摘。「アベノミクスの基調が頓挫したということではないが、トリクルダウンがまだ弱い。引き上げを延期するとしたら、企業業績が賃金に跳ね返る2巡目、3巡目を起こす時間的猶予が必要になるという判断だ」との考えを示した。
増税延期なら日本売り起こさせぬ決意と手当て必要=経済再生相

大晦日から元旦にかけて放映された「朝まで生テレビ」で、竹中平蔵氏は次のように発言した。

「アベノミクスは理論的には百%正しい」と太鼓判を押した竹中平蔵氏。アベノミクスの“キモ”であるトリクルダウンの効果が出ていない状況に対して、「滴り落ちてくるなんてないですよ。あり得ないですよ」と平然と言い放ったのである。
⇒2016年1月17日 (日):いかさま経済政策の破綻(続)/アベノミクスの危うさ(68)

そして5月15日放送の「NHK日曜討論」である。

共産党の藤野は、中間層を応援するために正社員を増やし賃上げを上げるなど、働く人が安心できる社会が経済に繋がるとコメント。社民党の吉川は、非正規社員を正規に置き換え、正規社員を長時間労働の働き方にしていると指摘。これに対し、自民党の稲田は、問題解決について解雇が無効となった場合、戻るか金銭解決かを選択できる制度で、お金を払って解雇しやすくなる制度ではないと反論し、安倍政権はトリクルダウンの考え方を取っていないとした。
「トリクルダウン」 に関するテレビ情報

もう支離滅裂の政権である。

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2016年5月16日 (月)

分ける思考(5)マトリクス②/知的生産の方法(149)

マトリクスは直観に訴えやすく、さまざまな分野で用いられている。
SWOT分析はその代表例と言って良いだろう。
1920年代からハーバードビジネススクールのビジネスポリシーコースの一部として開発されてきた、ハーバードポリシーモデルの一部である。

SWOTは以下のように表される。
• 強み:目標達成に貢献する組織(個人)の特質。
• 弱み:目標達成の障害となる組織(個人)の特質。
• 機会:目標達成に貢献する外部の特質。
• 脅威:目標達成の障害となる外部の特質。
Swot
Wikipedia

マトリクスの考え方の例をいくつか挙げてみよう。
【レッドオーシャンとブルーオーシャン】
競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」とし、競争のない未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海、競合相手のいない領域)」を切り開くべきだと説く。
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ブルー・レッドオーシャン

夫婦の家事分担
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なぜ大半の夫は家事育児をやろうとしないのか?男性目線で解決策を考える 

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【デジタル管理は時代遅れ!?】紙とペンでできるタスク管理術

軸の選び方は無制限にあるが、含意が明確でかつ違いがはっきりするような軸が選べた時は、会心という感覚になる。

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2016年5月15日 (日)

舛添都知事の醜態と支援責任/アベノポリシーの危うさ(65)

東京都の舛添要一知事が窮地に追い詰められている。
知事就任前に政治資金を使って千葉県内のホテルに宿泊したが、実際には家族旅行だった疑いがあると週刊文春が報じたのだ。
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週刊文春5月19日号

舛添知事は5月13日の定例会見で以下のように経緯を説明した。

 東京都の舛添要一知事は13日記者会見し、自身が代表を務めていた政治団体の収支報告書に、私的な飲食費が計上されていたことを認め、「不徳の致すところで、心からおわびしたい」と謝罪した。近く報告書を訂正する意向を表明。「全力を挙げて都民のために働く」と述べ、辞職はしないとの見解を示した。
 家族との旅行費を記載していた疑いがあると指摘されていることについても「事務所関係者らと会議をした」とした上で、「家族と宿泊していた部屋を利用していたことから懸念を招いた」とし、報告書から削除するとした。
舛添都知事、政治資金で私的飲食 認めて謝罪、収支報告書訂正へ

質疑応答の一例は次のようなものである。

――ホテルでの会議について。短時間の会議でも政治活動と言うが、本当はプライベートで家族だけで過ごして、本当は会議をやっていないのではという疑いが持たれている。人数すら答えられないのは不透明ではないか。
疑問はわかりますが、政治の場ですから、機微に渡る。そこは差し控えたいと思います。参加者は、事務所関係者等という言い方をしましたが、そこは機微にわたるので差し控えたい。
舛添要一氏「説明責任は果たした」 週刊文春報道で謝罪

「政治とカネ」と言われるが、それにすらなっていない。
公金横領に近いと言うべきであろう。
舛添氏は、かつて次のように書いた。

私は終始、「反小沢」の旗幟を鮮明にしてきた。そこが、「みんなの党」の渡辺喜美氏との違いといえる。渡辺氏は、「アジェンダが一致すれば、小沢氏とも組む、小沢氏に関してはあくまでもフリー」だと明言している。
私は小沢氏と組むことはない。なぜか? それは小沢氏の手法では日本が沈没する、政治不信がますます深まると憂慮するからだ。
⇒2010年12月16日 (木):舛添要一氏の小沢批判言説

舛添氏の手法では日本が沈没すると言うべきだろう。
都知事選では、自公の与党が舛添氏を支援した事実を忘れてはならない。
⇒2014年2月11日 (火):都知事選の結果と暗い予感/花づな列島復興のためのメモ(306)

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2016年5月14日 (土)

PDCAなき安倍政権の政策/アベノポリシーの危うさ(64)

現在最も油が乗っている社会批評家の1人である藻谷浩介氏が、アベノミクスと称する経済政策を痛烈に批判している。
藻谷氏は、ビジネスの世界では「PDCAサイクル」を回すということは当たり前のことであるが、政府の経済政策はそうでないという。
「PDCAサイクル」はいまさら説明するまでもないが、Wikipediaでは次のように説明されている。

第二次世界大戦後、品質管理を構築したウォルター・シューハート、エドワーズ・デミングらが提唱した。このため、シューハート・サイクル (Shewhart Cycle) またはデミング・ホイール (Deming Wheel) とも呼ばれる。
PDCAサイクルという名称は、サイクルを構成する次の4段階の頭文字をつなげたものである。後に、デミングは、入念な評価を行う必要性を強調してCheckをStudyに置き換え、PDSAサイクルと称した。

  1. Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する
  2. Do(実施・実行):計画に沿って業務を行う
  3. Check(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する
  4. Act(処置・改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする

この4段階を順次行って1周したら、最後のActを次のPDCAサイクルにつなげ、螺旋を描くように1周ごとにサイクルを向上(スパイラルアップ、spiral up)させて、継続的に業務改善する。
Pdca

つまり、初回から理論どおりにいくはずはないので、やってみたらこうなったという「事実」に立ち、計画とその背後にある理論を破棄ないし修正し、またやってみて結果を再確認して、という積み重ねの中から、判断の精度が上がってくるというわけだ。

 皆さんは、ものごとを判断するときに、何を基準やよりどころにされるだろうか。(1)学術理論か(2)自分の信念や思いか(3)信頼できる人の意見に従うか(4)とりあえず世のトレンドや空気に流されておくか。はたまた(1)〜(4)のどれでもないか。
・・・・・・
 この「PDCA」は、日本の企業や行政組織に深く浸透している。だが政府の経済政策だけはカヤの外にあるようだ。この3年間遂行されてきた「異次元の金融緩和」を例に取ろう。これは「リフレ論」なる特殊な経済理論((1))を奉ずる一部の学者をブレーンとした首相が、日本経済を成長させるには「この道しかない」という信念((2))を抱いて日銀の幹部を入れ替え、「経済理論はよくわからないが、この首相のやることなら信じる((3))」という一部の熱狂的な層の積極的支持と、「よくわからないけれど皆がそういっている((4))からそうなのだろう」と考える多くの層の消極的支持を得て進めてきたものである。しかしその結果はどうだっただろう。
 異次元緩和で、マネタリーベース(世の中に出回っている円貨の総額)は、過去3年間に3倍に増えた。これを受け、東京証券取引所1・2部の株式時価総額は、野田政権当時の2012年の平均273兆円が、15年には569兆円と2倍以上に高騰した。「リフレ論」からすれば、株式市場だけでなく実体経済もすぐにインフレ基調となり、3年といわず1年内には順調な経済成長が起きるはずだった。しかし実際には、過去3年間の実質経済成長率は順に1・4%、0%、0・5%と、野田政権当時の12年の1・7%より低い水準にとどまった。成長の鍵を握る個人消費(国内家計最終消費支出の実質値)が、1・6%、マイナス0・8%、マイナス1・3%と低迷したことが主要因だ。
異次元緩和の効果見極め=藻谷浩介・日本総合研究所首席研究員

今やアベノミクスと称する経済政策の失敗は明らかであろう。
にもかかわらず、「アベノミクスの「三本の矢」を、もう一度、世界レベルで展開させることであります」などというトンチンカンなことを言っている安倍首相は、正常な判断力を失っている(あるいは最初から持ち合わせていない)としか思えない。
熱狂的な層に囲まれて耳に心地よい意見しか聞かないからだろう。
⇒2016年5月 7日 (土):もはや錯乱の域の安倍首相の認識/アベノポリシーの危うさ(61)

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2016年5月13日 (金)

アングラから世界のニナガワへ・蜷川幸雄/追悼(84)

 “世界のニナガワ”として国際的にも高く評価された舞台演出家の蜷川幸雄さんが、12日亡くなった。
死因は肺炎による多臓器不全で、80歳だった。

Ws000000_2埼玉県川口市に生まれ、開成高を卒業後、画家を志したが、安部公房作の舞台「制服」を見たのがきっかけで1955年、劇団青俳に俳優として入団した。
アングラ全盛期の1968年、青俳の蟹江敬三、石橋蓮司さんらと劇団現代人劇場を創立し、1969年、清水邦夫さん作の「真情あふるる軽薄さ」で演出家デビューした。

「真情あふるる軽薄さ」は、学園紛争が終息しつつある時期で、若者の反権力的な志向と政治的挫折感の中で熱狂的に迎えられた。
Wikipediaでは、次のように「あらすじ」が解説されている。

舞台に行列ができている。何かの切符を買うための行列らしい。
毛糸編機のケースを背負った酔っぱらいの青年が現れ、行列の人々に挑発的な言葉を浴びせかけ、小競り合いが起きる。
1人の若い女性が青年の言動を面白がり、共感する態度を示す。また、中年男が親しげに話しかけるが、青年は「あんたなんて知らない」と突っぱねる。青年が行列の人々に突き倒されると、中年男は青年をかばう。
その後も3人の掛け合いが続くが、そのうちに行列の人々も遊び始める。青年が毛糸編機のケースからマシンガンを取り出し、打ちまくると、行列の人々は倒れて死んだふりをする。
やがて、倒れていた中年男が起き上がり、合図を出すと、盾と棍棒を持った「整理員」たちが現れる。青年は棍棒で叩きのめされ、マシンガンで撃たれた女性がその上に折り重なる。中年男は「行列を乱すな!乱す奴は容赦なくたたき殺せ!」と叫ぶ。

1974年、日生劇場の「ロミオとジュリエット」の演出で大劇場に進出し、活躍の場を商業演劇に移した。
日本の戯曲からシェークスピアなどさまざまなジャンルの作品を手掛けた。
稽古場では怒声とともに灰皿が飛ぶと言われるほど、妥協を許さない厳しい演出姿勢で知られた。
主宰する「さいたまネクスト・シアター」で若手俳優を育成する一方、「ゴールド・シアター」では高齢者を起用し、演劇の新しい可能性を追求し続けた。
また1人、戦後のチャレンジャーが喪われた。
合掌。

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2016年5月12日 (木)

小林節氏が「怒り新党」設立/アベノポリシーの危うさ(63)

昨年の憲法審査会で、安保法案を違憲であると意見表明した小林節・慶大名誉教授が、怒り心頭で新党設立を表明した。
政治団体「国民怒りの声」を設立し、今夏の参院選比例代表に出馬すると共に、公募を行った上で、自身以外に10人の比例候補の擁立を目指すとしている。

 小林氏は「失うものは、女房以外に何もない。最後の演習として、自分で立とうと思った」と、不退転の決意であることを強調。「自公とおおさか維新を合わせて、参院で3分の2の議席を取らせないことが唯一の関心事だ」と述べ、参院で、与党勢力を過半数割れに追い込み、「ねじれ国会」の再来を目指すと、意気込みを示した。
 出馬を決意した経緯については、小沢一郎・生活の党代表らが主張し、野党の一部で水面下で進んでいた「野党統一名簿」構想が頓挫(とんざ)したことを挙げた。小林氏は、「このまま(の現状)では与党の勝利は目に見えている」とした上で、「安倍政権の暴走は止めたいが、いまだに民主党政権失政を許すことができす、また共産党に投票する気にもなれない多数の有権者の代弁者たらんとして、第3の旗を立てることにした」としている。
 中国の記者から、「安倍政権の何に、いちばん怒りを感じるか」と問われ、「あまりにも、怒りがありすぎる」「ここ1年は、安保を軸に論争し、無視され、怒り心頭になっている」と述べる場面もあった。
 党名については、自身は「国民の声」を提案し、多数決で周囲の声に負けたと述べた。「僕はこの名前はいやだった」と苦笑いしながらも、「安倍晋三首相は人の話を聞かない。僕が(参考人として)国会で話しても無反応。小林は怒っているかといわれたら、それは怒っている」と述べ、理解を示した。選挙資金は、クラウドファウンディングを使って集めるという。
憲法学者小林氏「国民怒りの声」設立、参院選出馬へ

安倍批判が眼目であるから、民、共、生活などと親しい政策だ。
いまさらながら、小沢一郎氏の不当起訴が悔やまれるが言っても仕方がない。
民進党には、票を奪われるという意見もあるようだが、競合と協同は常のことだろう。
私は、小林氏の意見に全面的に賛同というわけでもないが、本件に関しては賛成であり、精一杯応援したいと考える。
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東京新聞5月10日

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2016年5月11日 (水)

ひたすら政権追随の産経新聞批判/アベノポリシーの危うさ(62)

私は購読者ではないので、現在は産経新聞は他人がネット等で引用した記事などしか目にしない。
それにしてもこれはヒドイのではないか。
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署名活動とは以下のようなものである。
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岐阜経済大学(大垣市)の高木博史准教授が16日呼びかけ、4日後には10万人が賛同した。
産経新聞のリード部分を引用しよう。

熊本地震をきっかけに、反原発運動が活発化している。国内で唯一稼働している九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)に対し、インターネット上で呼びかけられた運転停止署名が6日現在、12万4千人を超えた。だが、原子力規制委員会は「現状で安全上問題はない」と科学的根拠を挙げて地震の影響を否定。有識者もリスクは小さいと強調しており、過度に不安をあおる反原発活動の非科学性が浮き彫りになっている。
揺れ想定の70分の1なのに…反原発派、熊本地震を利用 川内停止署名に12万人

原子力規制委(規制庁)の説明は以下の通りである。

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原子力規制庁の言っていることは科学的か?
今回の熊本地震には今までの経験則から外れた特徴が幾つかある。
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東京新聞4月18日

多くの国民は川内原発という局所では地震動が基準内だったかも知れないが、基準地震動を超える可能性が否定できないことを感じているからこそ、4日で10万人もの署名が集まったのである。
事実、今回の地震でも益城町では基準地震動を超えた揺れが観測されているのである。
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「神」になった規制委 熊本地震1580ガルでも原発停止否定

地震や火山のような地球科学は、実験により仮説を検証することができる物理や化学と異なり、仮説の検証が難しい。
5月1日放映の「サンデーモーニング」で、毎日新聞記者の元村有希子さんが「未科学」という言葉を使って地球科学の特性を説明していた。
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図解ニセ科学

識者の意見も分かれているが、安全性については、積極的に安全であることを立証しない限り、危険だと考えるべきなのである。
もう「想定外」では済まされないのは国民の共通認識であろう。

以下のような意見は十分に傾聴すべきではなかろうか。
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震源から80km!「川内原発は安全」というウソ

後藤政志氏は元東芝・原子炉格納容器設計者、河合弘之氏は弁護士である。
産経新聞はもはや社会の木鐸としてのミッションを放棄したと断ずるべきであろう。

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2016年5月10日 (火)

浜岡原発撤退の論理と倫理(9)/技術論と文明論(55)

安倍首相は4月1日、核物質や核施設の防護・管理強化を話し合う「核安全保障サミット」で次のように演説した。
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東京新聞4月2日

しかし、東京電力福島第一原発事故では、10万人近い人が避難生活を送っているほか、除染袋はピラミッドのように積み上がり、汚染水タンクも増え続け、トリチウムの海洋放出が検討されている。
「原発事故を踏まえ」と胸を張って言える状況ではないことは明らかである。
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トリチウムとは、原子核に陽子1個と中性子2個、電子1個の原子である。
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トリチウムはβ線を出して、ヘリウム3に転化する。
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トリチウムは通常3重水(HTO)となっていて、水に混じっています。水中のトリチウムを除去できるフィルターがあるか?というと、ない。
水にトリチウムが混ざってしまうと化学的性質(化学反応性が)、物理的性質(原子の半径)が同じで、物理的性質の中の原子の重さだけが違うので、トリチウムだけを除去することもできない。
だたし莫大な費用をかけてウラニウムを濃縮するのと同じプロセス、ガス拡散法やガス遠心分離法などで何十段階も繰り返していくとトリチウムだけを取り出すことは可能ですけれども。
それこそトリチウムを除去するために莫大な費用をかけて対策するよりも、原子力発電をやめてしまったほうが賢い。
原子力発電には、人間がコントロールできない致命的な危険が存在するのですから。
【死せる水トリチウム】三重水素の恐怖の正体とは?矢ヶ崎克馬教授

生態系の食物連鎖を通じた濃縮を考えるならば、海洋に放出するというのは犯罪的である。

4月14日、福井地裁は高浜原発3、4号機の再稼働差し止めの仮処分決定の判断を下した。
国の原発の「新規制基準」を「緩すぎる」「適合しても安全性は確保されていない」「合理性を欠く」と、根底からバッサリ否定したのだ。
安倍首相は「世界一厳しい基準」と言うが、「適合すれば安全」と言って良いのか。

原子力規制委員会の田中委員長は次のように繰り返している。
「安全か、安全じゃないかという表現はしない」「絶対に安全だとは私は申し上げません」 要するに、規制委の審査は「安全」を宣言するものではないのである。

新潟県の泉田知事は「新規制基準」について次のように話した。

世界の標準は「住民の命と健康をどう守るか」なのに、田中委員長は『そこは私たちの仕事ではない』と言う。無責任以外の何ものでもありません。
我々が審査するのはハードだけ」という姿勢なのだ。
米国の原子力規制委員会が、緊急時の避難計画が整っていなければ稼働許可を出さないのとは大違いだ。
高浜原発差し止め 司法も警告「世界一厳しい」安全基準のウソ

ちなみに田中委員長は原子力工学の専門家ではあるが、原発の安全性が炉の工学的安全性の判断だけでは不十分であることは、子供でも分かる。

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2016年5月 9日 (月)

分ける思考(4)マトリクス/知的生産の方法(148)

マトリクスすなわち2軸による思考は、マーケティング戦略等でビジネスパーソンにとってはなじみ深いものである。
代表例は、BCGのPPMであろう。
「経験効果曲線」と「製品(市場)ライフサイクル」という2つの要素の複合により、好ましい事業の組み合わせを検討する手法として考案されたものである。

1960年代の後半、Boston Consulting Group (BCG)社のB.Hendersonによって、経験曲線効果という概念が提唱された。
経験と効率との間の関係を示す経験則であり、単に経験効果とも呼ばれる。
一般に個人や組織が特定の課題について経験を蓄積するにつれて、より効率的にその課題をこなせるようになることを指す。
また累積生産量の増加に伴って、製品数量ごとの間接費を含めた総コストが予測可能な一定の割合で低下していくことを指す。
1970年代にBCG社によって行われた調査により、この効果は様々な産業において確認された。

経験曲線の前身となった概念として学習曲線がある。
これは課題を反復してこなした回数が増えるほど、一回ごとに要する労働時間は減少することを表す。
この概念は1936年、航空機の生産機数が倍になると、機数あたりの作業時間は10-15%減少するという経験則として発見された
。この経験則は即ち、生産された品物の数の増加に伴い、生産コストが予測可能なペースで減少することを意味した。

経験曲線は学習曲線より広い概念であり、その対象は単に労働時間に留まらない。
経験曲線効果は、ある業務がより頻繁に実行されるようになると、そのコストが減少することを表す。
これはどのような商品やサービスにも適用できる。
累計での生産回数が倍になるごとに、生産回数あたりの総費用(生産、管理、マーケティング、販売を含む)は一定かつ予測可能な速度で減少する。
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事業ポートフォリオ管理(3) - ポートフォリオ組み換え方法

製品が市場に登場してから退場するまでの間をPLC(プロダクトライフサイクル)という。
普通は各製品に対してこの間の売上と利益の変化に着目して、最適のマーケティング戦略を構築するための基本的な情報となる。
プロダクトライフサイクル(製品の寿命)は、大きく分けて4つの段階に分けられる。
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製品ライフサイクル|マーケティング用語集

「経験効果曲線」から「相対的市場占有率(シェア)」を横軸に、「PLC」から「市場成長率」を縦軸に、2次元で描画することにより、有名な「BCGマトリクス」が得られる。
市場成長率、市場占有率それぞれの高低により4つの象限(項目)に分類したものである。
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マーケティングの基本まとめノート【入門】

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2016年5月 8日 (日)

まだまだ続く耐震偽装・東亜建設工業/ブランド・企業論(53)

海上土木を主力とする中堅ゼネコンの東亜建設工業が、羽田空港C滑走路の耐震性強化のための地盤改良工事でデータ改ざんを行っていた。

 同社によると、偽装があったのは地震時に滑走路の液状化を防ぐ耐震化工事。土中に注入する薬液が予定量の5.4%しか注入されなかったにもかかわらず、仕様書通りに施工されたようにデータを改竄し、虚偽の報告をして完成検査を受け、引き渡していた。国交省関東地方整備局は、通常利用に問題はなく滑走路の運航制限はしないとしている。
 同日、横浜市内で記者会見した同社の松尾正臣社長は「関係者にご迷惑とご心配をおかけし、心よりおわびします」と謝罪。当初予定の6月株主総会に先だって社長を辞任し、代表権のない相談役に退く意向を示した。
 問題の工事は、滑走路の脇から穴を掘って薬液の注入を行う同社が開発した「バルーングラウト工法」とよばれる工法で、平成27年5月から同28年3月に行われた。
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羽田空港滑走路のデータ改竄 東亜建設工業、耐震工事の薬液量など4点

関東大震災級の地震が起きた場合に滑走路の液状化を防ぐための工事で、地中に管を通して土を固める薬液を注入する。
しかし、管を通すため機械で穴を開ける際、地中のコンクリート片や古タイヤなどの障害物に当たって予定の位置に達せず、薬液を計画値の5.4%しか注入できなかった。
このため、データを改ざんして全て入れたように装って整備局に報告していた。
過去に同じ工法で、松山空港と福岡空港のほか、羽田空港の誘導路と千葉港の工事を実施している。

工事は東亜建設工業などの共同企業体(JV)が受注したが、整備局がJVから施工不良の疑いがあると申告を受けた。
熊本地震により、地震国の宿命を改めて認識されたところだが、耐震偽装はリアルタイムでは発覚しにくい。
企業のモラル低下が止まらない。

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2016年5月 7日 (土)

もはや錯乱の域の安倍首相の認識/アベノポリシーの危うさ(61)

外遊中の安倍首相の発言が奇妙だ。
5月5日のロンドンでの内外記者会見の冒頭発言である。

世界経済の「下方リスク」と「脆弱性」が高まっている。こうしたリスクに、G7が、いかにして協調して立ち向かうことができるかが、伊勢志摩サミットの最大のテーマであります。G7がリードして、世界経済の持続的かつ力強い成長への道筋を示す。政策協調への力強いメッセージを打ち出さなければならなりません。
 なすべきことは、明確です。
 アベノミクスの「三本の矢」を、もう一度、世界レベルで展開させることであります。
 自由な競争の中から、新しい技術革新が生まれ、そして、新しい付加価値が生まれます。構造改革を推し進め、「良いものが良い」と評価される、自由で公正な市場を創らなければなりません。そのためにも、日本は、TPPや日EU・EPAの実現を急いでいます。
 多くの専門家は、今年、更なる景気悪化と、世界的な需要の低迷を見込んでいます。安定した成長軌道を目指し、この低迷した状況から、一気呵成に抜け出す。「脱出速度」を上げていくためには、金融政策だけでなく、財政政策においても、機動的な対応が強く求められています。新興国を中心に、質の高いインフラや環境分野での投資を、一層拡大していくことも必要です。
首相官邸

今やアベノミクスと称する政策が効なく、副作用が懸念されることは明らかであろう。
4月28日の黒田東彦日本銀行総裁が金融政策決定会合後に行った記者会見で、追加緩和に対する「ゼロ回答」を発表した結果、安倍首相外遊中に一時105円まで円高が進行、株価は1万6,000円を割り込むこととなった(6日の東京外為市場は107円に戻し、同日株価の終値は1万6,106円)。
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伊勢志摩G7サミット(5月26~27日)で議長を務める安倍首相は、GW中にイタリア、フランス、ベルギー、ドイツ、英国、ロシア6カ国を歴訪した。
最大の眼目は、財政規律を重視し財政出動に慎重なメルケル首相を説得することだった。

だが、メルケル首相から「賛同する」という回答を引き出すことができなかった。それどころか、中央銀行の金融政策、政府の機動的な財政出動と構造改革の3つの包括的対応の必要性を説かれたのである。

メルケル首相は次のように語った。

「私たちは経済・金融危機から学んだことがある。だから私たちはEU経済域内で一貫した、協調した形で次なるステップに向かうべきだ。私としては構造改革の必要性と、そしてもちろんECB(欧州中央銀行)の金融政策に影響を受けるわけで、日銀とECBの協力(問題)もあると思う。それから財政出動の問題がある。従って、この3つ(の包括的対応)が必要である」
安倍首相「欧州歴訪」の結末 〜なぜメルケル首相を説得できなかったのか?

本気で「アベノミクスの「三本の矢」を、もう一度、世界レベルで展開させること」を考えているのだろうか?
もはや錯乱というべきではないだろうか。

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2016年5月 6日 (金)

浜岡原発撤退の論理と倫理(8)/技術論と文明論(54)

熊本地震と関連して、以下のような署名活動のニュースがあった。
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発案者は岐阜経済大学(大垣市)の高木博史准教授である。

 高木さんは熊本地震の本震が発生した16日、「川内原発を止めてください」と呼びかけ、インターネットでの署名活動を開始。大学を卒業するまで過ごした故郷は、現在暮らしている大垣市と同じように地下水が豊富で自然にも恵まれている。そのふるさとを守りたいとの一念からだった。
 この地震災害では実家の両親も被災し一時、県外に自主避難した。高木さんは「東日本大震災で被害があった福島第一原発を考えれば、安全という言葉は使えない。福島では広範囲に被害も残り、収束もしていない」と主張する。
 署名活動を始めて4日後には10万人が賛同し、26日までに12万2千人を超えた。21日に内閣府を訪れ、途中集計した9万8889人の署名と2万1350件のコメントを安倍晋三首相や林幹雄経済産業大臣、丸川珠代原子力防災担当大臣に宛てて提出した。
 高木さんは当初、「署名してくれるのは多くて1千人程度」と見込んでいただけに、想像をはるかに超える賛同者の数に驚いた。賛同者からは「安全が確保できるうちに、一刻も早く停止を」「電気は足りている」といった意見が書き込まれている。
岐阜)熊本思い、原発停止求める署名活動 大学准教授

4月18日、熊本における一連の地震を受けて臨時会議を開いた規制委は、“原発を止める必要はない”という結論を出した。
会議後の会見で原発を止めない理由を聞かれた田中俊一委員長は、「原子炉規制法上は安全上重大な懸念がある場合には止める権限があります。でも、それは根拠がなく、そうすべきだという皆さんのお声があるから、そうしますということは、するつもりはありません。政治家に言われても、そういうつもりはありません」と断言した。

川内原発の運転の可否はどう判断したら良いであろうか?
言い換えれば、原発運転あるいは停止の、必要条件と十分条件はどう考えられるであろうか?

規制委の強気の根拠は、地震動の数値だ。原発の耐震設計においては、安全性が確保される設計を行うため、各原発施設ごとに基準となる地震動の数値を設定しており、これを「基準地震動」と呼んでいる。川内原発の基準地震動は620ガル。14日からの一連の地震で観測された川内原発内の地震動は最大で8.6ガル。同原発の原子炉を緊急停止する設定値は160ガルとされ、止めるほどの緊急性も科学的根拠もない、というのが規制委の見解だ。 
しかし、「原発を止めてもらいたい」と願っている国民の多くは、今回の地震動の数値がどうのという話を聞きたいわけではあるまい。自然災害は人知を超えるもの。現に熊本地震を予知できた学者などいなかったはずだ。規制委が直視すべきは、誰も予想できなかった熊本の地震で、川内原発の基準地震動を大きく超える数値が観測されていることだろう。
「国立研究開発法人 防災科学技術研究所」(防災科研)は、14日と16日の熊本地震を解析。観測された地震動のうち、上位10か所の数値を公表している。同研究所の了解を得、作成された表を簡素化した。
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 14日の「前震」はマグニチュード6.5で震度7。地震動(最大加速度)は最大の益城町で1580ガルを観測していた。川内原発の基準地震動620ガルの2.5倍超。次に高かった矢部でも669ガルで、こちらも川内の620を超えている。 
 16日の本震はマグニチュード7.3で震度6強(気象庁は、20日に震度7に訂正)。各地の地震動は、益城=1362ガル、宇土=882ガル、熊本=843ガル、矢部=831ガル、菊池=800ガル、砥用(ともち)=778ガル、湯布院=723ガル、小国=687ガル、大津=669ガルと、ほとんどの地点で川内の620を超える数値を観測していた。10番目の豊津にしても612ガル。本震の凄まじさを物語る結果だ。
「神」になった規制委 熊本地震1580ガルでも原発停止否定

川内原発で基準地震動以下であったのは、幸運というべきではないだろうか?

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2016年5月 5日 (木)

分ける思考(3)統計的仮説検証/知的生産の方法(146)

テレビの「開運なんでも鑑定団」は、長寿の人気番組である。
絵画や陶磁器などの骨董の鑑定を依頼し、鑑定士が評価するという趣向である。
鑑定士の方々は、いずれも博識であり、納得的な説明をされるが、ときどき「本当かな」という気もする。
鑑定の方法が、多分に様式論や手法などによるものであり、完全に主観を排除することは難しい。
何らかの統計的検定が行われれば客観性が担保されるのであろうが。

古代史等の分野では、理化学的方法が脚光を浴びている。
それは本質的に誰がやっても同じ結果が得られるからである。
理化学的データは、一般に統計的仮説検定の手法が用いられる。
原理的に2つの誤りを犯す可能性がある。
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統計学とデータマイニングの基礎

帰無仮説というのは、棄却するために立てられた命題である。
仮説検定を行うとき、分析者は帰無仮説が正しいか正しくないかを知らない。
検定統計値が棄却域に入れば帰無仮説を棄却し、入らなければ採択する。
帰無仮説が正しくないときに帰無仮説を棄却すれば正しい行動であるが、帰無仮説が正しいのに棄却した場合は誤りであり、第1種の過誤(type I error)という。
これに対し、帰無仮説が正しくないのに帰無仮説を採択してしまうという誤りを第2種の過誤(type II error)という。
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αエラー・βエラー

2種の過ちは、刑事裁判に擬せられて説明されることが多い。
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統計的検定を考えるヒント

贋札の判断やDNA鑑定についても、原理的には統計的仮説検定法である限り、2種の誤りを排除できない。
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大沢樹生  喜多嶋舞 息子 「DNA 親子不一致について」

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2016年5月 4日 (水)

指数という見方の効用/知的生産の方法(145)

日本語の指数には、数学的な意味での使い方と、物価指数などのように経済学などで使われる場合がある。
英語では、数学の場合はexponent、物価指数などの場合はindexである。
指数は累乗、すなわち同じ数を繰り返し掛ける時に使われる。

例えば「5×5×5×5」のように5を4回くり返し掛ける場合、54と書き、「5の4乗」と呼ぶ。
この4乗の4という数字を「指数」と呼ぶ。
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http://posi-nega.juniorhighschool-math.net/multiplication_division/involution.php

この表記法を使うメリットは何か。
100000000000
=10×10×10×10×10×10×10×10×10×10×10
=10^11

「^(キャレット)」は、 Excel乗をする時に使う。
すなわち、100000000000という数を、そのまま100000000000と見るのではなく、「10を掛け合わせた数」として見るということである。
畑村洋太郎『直観でわかる数学』岩波書店(2004年9月)では次のように説明している。

100000000000は、「10を掛け合わせた数」として見ることによって、指数という表現が可能になるのである。
10×10×10×10×10×10×10×10×10×10×10と見る必然性はないが、10×10×10×10×10×10×10×10×10×10×10と見る必要性があるのである。

指数による表現は、
・視覚的に簡単である
・数の大小の比較が簡単にできる
というメリットがある。

日本語には大きい数を表す言葉として、無量大数とか不可思議という言葉がある。
吉田武『虚数の情緒―中学生からの全方位独学法』東海大学出版会(2000年3月)には次のような説明がある。
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指数の考え方がなければ大変である。

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2016年5月 3日 (火)

マイナス金利という愚策/アベノポリシーの危うさ(60)

「新潮45」の5月号に、小野善康大阪大学特任教授の『マイナス金利よいう愚策』という論文が載っている。
小野氏は次のように言う。

自ら「異次元」と呼ぶ極端な金融緩和政策は、まったく効果がないことがわかってきた。それでも、あれだけ金融緩和を前面に掲げて登場した以上、政府も日銀も引っ込みがつかない状態になっている。そのあげくに出てきたのがマイナス金利である。これは効果がないばかりでなく、金融危機の危険をさらに増幅させてしまう。

現在のように、長期不況の状況で有利な投資先がないと、マイナス金利でない限り、銀行は日銀の当座資金に置いておくことが有利な選択肢になって、日銀当座預金が法定準備金を越えて積み上がる。
日銀はこれに対して当座預金から引き出させたいので、ゼロ金利からマイナス金利にした。
しかし、ゼロ以下では効果がない。
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銀行は当座預金から引き出しても家計や企業への貸し出し増や資産投資の拡大に繋がらない。
資金を現金で積んでおくという選択肢があるからだ。

これは一般家庭でもおなじである。
預金の金利がマイナスになれば、銀行に預ければ元金が目減りする。
それなら自宅で現金を保管しておいた方が価値を保つことができるだけメリットがある。
実際にマイナス金利導入以降、金庫が爆発的に売れているということは、家計がそう行動しているということだ。
金融緩和が効果を持つにしても、ゼロ金利の範囲であり、マイナスにまで拡大しても効果はない。
現在の日本は、お金があっても消費も投資も増えないのだ。
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日銀の貨幣供給量とGDPおよび消費者物価指数(CPI)の関係は下図のようである。
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90年代から現在に至るまで、金融緩和は、景気にも物価にも全く影響を与えていないのである。

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2016年5月 2日 (月)

浜岡原発撤退の論理と倫理(7)/技術論と文明論(53)

別府ー島原地溝帯を襲った連続地震は、予測・予知の難しさを再認識させたものと言えよう。
5月1日放映の「サンデーモーニング」で、毎日新聞記者の元村有希子さんが「未科学」という言葉を使っていた。
東洋医学で言う「未病」を連想させる言葉だ。
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⇒2013年1月28日 (月):『<老い>の現在進行形』と未病の概念/闘病記・中間報告(58)

エビデンスに基づいた推測が科学的予測であって、エビデンスなき推測は、予言の類である。
そういう観点で考えた場合。地震予知は可能なのか?

「正確な地震予知」とは科学的根拠に基づいて、地震発生の場所・時間・大きさとその許容範囲を前もって明らかにすることである。もちろん、社会的な意味を考えると、M7以上の内陸地震、M8以上の沖合の地震といった大きな地震の予知でなければ、予知情報は社会にとってほとんど意味がないだろう。
また、時間・空間の許容範囲は、例えば3日以内、半径100 km以内といった具体的で明確なものでなければ、予知情報への対応ができない。当然のことながら、かなりの信憑性がないと、情報としての価値はゼロに等しい。100回発信して1回当たる程度では逆に、有り難迷惑になる。
現時点では、残念ながら、上述のような正確な予知はできないというのもそのための理論はもとより、手法も皆無だからだ。国内外の多くの研究者が130年にわたって頑張ってきたことは事実だが、その努力は報われなかった。これは決して筆者単独の意見ではない。
1999年にネイチャー誌が開催した予知についてのディベートでは、世界トップレベルの研究者のうち、現時点で正確な予知を述べた者は皆無だった。また、日本政府も1995年の阪神淡路大震災の発生後、予知できなかった批判をかわすためか、旧科技庁に設置されていた「地震予知推進本部」を廃止し、その代わり「地震調査研究推進本部」を設置した。
・・・・・・
これまで国内外で地震発生後、多くの「こういう前兆現象をみた」との報告があったが、これまで科学的に有意性が確認された前兆現象の事例は皆無でこれらは地震予知ではなく、“地震後知”と呼ぶべきものだ。
日本では世界の中でも最高性能の観測網が設置されているが、2011年の東日本大震災(M9)前にもそのような前兆現象が観測されなかったし、熊本地震においてもなかった。東海地震は他の地震と違うという主張も聞くが、地球はそのような特別扱いを都合良くしてくれるのだろうか。つまり、東海地方で巨大地震が起こる前に予知を可能とする現象が発生することを前提に国の法律を制定してしまうことは、トンデモナイ“前兆幻想”といわざるをえない。
「地震は予知できない」という事実を直視せよ

すなわち、現在の水準では科学的予測は不可能と言うことである。
別府ー島原地溝帯地震でも、今までの経験則から逸脱した特徴も見られたし、今までの知見の範囲で合理的に解釈できる特徴もあるだろう。
熊本県西原村では横ずれ断層と縦ずれ断層が同時に見られた。
昨日掲出した石黒耀『死都日本』の記述からも、かなり特異な現象であることが分かる。
⇒2016年4月27日 (水):石黒耀『死都日本』/私撰アンソロジー(42)

熊本地震の16日未明の本震で震度7の強い揺れが観測された熊本県西原村で、縦ずれの正断層と横ずれ断層が約2キロの間隔を置いてほぼ平行に走っているのを、東北大の遠田晋次教授(地震地質学)らの研究グループが確認した。同地震について、気象庁は地盤が南北方向に引っ張られる力で断層が横に動いた「横ずれ断層」型としているが、遠田教授らは、部分的に縦方向のずれが別の断層として現れたとみている。
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 遠田教授らが24日、国土地理院の航空写真に写っていた地表のひび割れを現地で調べ、断層と確認した。正断層は地盤が引っ張られた時に縦にずれ動く断層。同村では俵山の西斜面で、北西側が最大約1.5メートル落ちる形の縦ずれが2キロ以上延びていた。並走する横ずれ断層でも約1・5メートルの横ずれがみられたという。
 遠田教授によると、本震が起きた時、震源とされる布田川断層帯の地下の震源断層面に沿う形で横ずれと縦ずれが生じ、それぞれが別々に地表に現れたと考えられる。地震のエネルギーが大きかったためで、「スリップパーティショニング」と呼ばれる珍しい現象だという。
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熊本地震 西原村で縦ずれの正断層確認 東北大教授ら

科学的な予測が不可能であるというのに、「世界で最も厳しい安全審査基準に適合した」ことを錦の御旗とする安倍政権は、科学的思考も国民に対する責任感も欠落している。

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2016年5月 1日 (日)

原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)

東芝が4月26日、原子力事業で約2600億円の減損損失を2016年3月期に計上すると発表した。
米原子力事業子会社ウエスチングハウス(WH)などの資産価値を見直し、「のれん」の大半を取り崩すことに伴う。
室町正志社長は減損の理由として「東芝の財務状況が著しく悪化し、資金調達環境に変化が生じた」と述べた。
要するに、親会社である東芝の格付けが引き下げられたことで、WHの資金調達コストが上昇したということである。
今までしてこなかった連結決算での減損処理をせざるを得なくなったということである。

東芝は2006年に約5400億円でWHを買収したが、買収価格とWHの純資産との差額、約29億3000万ドル(当時のレートで約3500億円)をのれんとして計上した。
WHは2012年度と13年度、単体で巨額の減損処理を実施し赤字に転落していたが、東芝はその事実を隠蔽していた。
今年1月の減損テストでは「公正価値」が「帳簿価額」を上回っているとしたが、再度現存テストを行ったところ、現存損失を計上せざるを得なくなったということである。
しかし、依然として原発事業を主力事業と位置づけたままだ。

会見で室町社長は「原子力事業の事業性、将来計画に大きな変更はない」と強調し、「今後は前向きにどんどん原子力事業を進めていきたい」と述べた。東芝連結で、今後15年間に45基(2月4日に46基から下方修正)の新規受注を目指す計画は変えなかった。
だが、この計画は現実味が乏しい。東芝がWHを買収した当時の社長、西田厚聰氏は「2015年度までに33基の新設受注を見込む」と公言した。後に東芝は39基へ上方修正した。ところが、WHが受注し建設しているのは8基にとどまる。本誌が入手した内部資料によると、現在の計画は“結論ありき”で策定されたものと言わざるを得ない。
東芝、やっと認めた原子力事業の巨額減損

原発事業に見切りを付けない限り、東芝の明日には暗雲がたちこめているとせざるを得ない。
結局、国策とズブズブの関係で自律的な事業展開をしてこなかったツケではないか。
企業コンプライアンスの権威・郷原信郎弁護士は次のように指摘する。

東芝の不祥事対応の最大の問題点は、第三者委員会のスキームを悪用したことだ。「日弁連の第三者委員会ガイドラインに準拠したもの」と説明していながら、実態は東芝の執行部の意向で動く委員会でしかなかった。不正会計への対応で中心とされてきた「第三者委員会スキーム」は、世の中を欺くための「壮大な茶番」でしかなかった。
東芝不正会計問題の本質は、1990年代に発覚した重電談合の頃から脈々と続く同社の「隠ぺいの文化」と見ることができる。隠ぺいしようとしたのは、「国策事業」である原発事業が福島の原発事故後に、危機的な状況に陥った現実だった。
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東芝不正会計の本質は、「国策」原発事業の巨額損失隠し

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