「セブン&アイ」の企業統治/ブランド・企業論(50)
セブン&アイ・ホールディングスは19日、取締役会を開き、中核子会社であるセブン―イレブン・ジャパンの社長を務める井阪隆一取締役(58)が社長に昇格する人事案を決議した。
長年グループを率いてきた鈴木敏文会長兼最高経営責任者(83)は退任するが、今後の鈴木氏の処遇については未定である。
背景には余人の知る由もない理由があるのかも知れないが、直接の原因は、井阪隆一社長兼COO(最高執行責任者、58歳)に対し、退任を求めた鈴木氏の提案が、7日の取締役会で、否決されたことにある。
カリスマ的な存在である鈴木会長の人事提案が取締役会で否決されるなど、従来ならば考えられなかったことだという。
鈴木会長は井阪社長を交代させようとした理由を「彼が作り出したものは何もない」(7日の記者会見)などと語っているが、井阪氏を社長にしたのは鈴木氏であったから、自分の眼力が無かったということではないのか。
鈴木氏が、セブン-イレブンを育ててきたのは間違いないだろうが、公器のリーダーとしては問題なしとは言えまい。
鈴木会長が辞任表明した日の4月7日はセブン&アイの2016年2月期決算発表日でもあった。
営業利益は前期比2.6%増の3523億円と5期連続で最高益を更新した。
井阪社長率いるセブン‐イレブン・ジャパンは2350億円(前期比5.2%増)の営業利益を上げており、セブン&アイの稼ぎ頭であった。
グループ社の業績の中でも、ダントツである。
セブン&アイ鈴木会長、突然の退任に波紋 - セブンは強さを維持できるか
セブン&アイには指名報酬委員会という組織があり、人事案について事前に議論したものの反対論が出て委員会としての結論は出なかった。
セブン&アイの委員会は、同社の鈴木会長と村田社長、それに2人の社外取締役の合計4人がメンバーとなっているが、その2人の社外取締役は井阪氏のセブン‐イレブン・ジャパン社長交代案に反対したという。
にもかかわらず鈴木会長が人事案を取締役会に提案したということは、何のための指名報酬委員会が問われよう。
いかにカリスマ的といわれようと、遵法的でなければならないのは当然である。
「週刊新潮」4月21日号は、背景に伊藤家(イトーヨーカ堂創業)と鈴木家の軋轢があったと書いている。
どこまで事実か分からないが、神様にも血族がいて、世襲への執着が断てなかったと言うことのようである。
コンビニ三国志(セブン、ローソン、ファミマ)の新時代に入っていくのだろう。
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