消費税率アップ先送りならば安倍辞任が筋/アベノポリシーの危うさ(45)
安倍晋三⾸相が平成29年4⽉に予定していた消費税率10%への引き上げを⾒送る⽅針を固めたという。
消費税引き上げには反対であるが、安倍首相が「この道しかない」と標榜して、2014年12月の総選挙に臨んだことをそんなに簡単に忘れてしまうほど呆けてはいないつもりだ。
元外務相の分析官だった佐藤優氏がモスクワに駐在していた頃、ソ連共産党が、「この道しかない」というスロ-ガンを掲げ、テレビ・ラジオは「改革のためには、この道しかない」とがなりたてたという。
佐藤氏は、「今になって振り返ると、このあたりからソ連のペレストロイカ路線はおかしくなって来た」という。
なぜなら、複数の考え方、複数の選択を認め、社会を活性化していこうとすることでソ連社会を活性化するという発想と、「この道しかない」という路線を押し付けることが、矛盾していたからである。
案の定、3年後の1991年12月、ソ連は崩壊したのである。
⇒2014年12月25日 (木):「この道しかない」という硬直性/アベノミクスの危うさ(45)
安倍首相が先延ばししようというのは、世界経済が減速・不安定化する中で再増税すれば国内の景気が冷え込み、政権が最重要課題に掲げるデフレ脱却が困難になるとの判断からだという。
しかし世界経済が減速・不安定化するか否かにかかわらず、再増税すれば国内の景気が冷え込むだろうことは、最初から分かっていたのではないか。
しかも政策的失敗をポール・クルーグマン教授の名を借りて糊塗しようとしたのが、クルーグマン教授により暴露されてしまう始末だ。
会談の後半は政府側との討議であるが、「日本政府の質問はこの程度?」というような次元の低いものだったという。
例えば安倍首相は「難民のための住宅投資や教育投資は景気刺激になるのではないか」と質問。
これに対し教授は「難民受け入れは、とてつもない社会的緊張をもたらすが、実のところ金額的には大したことはない」とやんわり否定。人道問題である難民を、経済的価値でしか見ていない安倍首相の底の浅さが透けて見える。
また、菅官房長官は「商品価格の下落が発展途上国に大きな打撃となっている」と発言したが、教授は「商品価格ではなく、需要不足こそが問題だ」とこれまた否定した。
極めつきは、安倍首相が「これはオフレコで」とあえて断った発言までオープンにされていることだ。安倍首相が「ドイツは財政出動の余地が最も大きい」として、「訪独の際に財政出動を説得したいが、いい知恵はないか?」と尋ねると、教授は気候政策などを挙げた上で、「もっといい提案ができればよいのですが、私は外交の専門家ではないので……」と答えている。
安倍首相赤っ恥 クルーグマン教授が極秘会合の中身を暴露
前回の総選挙の際には、延期は「絶対にしない」とまでミエを切ったのだ。
延期するなら辞任、がスジというものだろう。
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