熊本の地震と『死都日本』のメッセージ/技術論と文明論(48)
昨夜、TVとiPadの緊急地震速報が、同時に鳴り響いた。
しばらくして、熊本地方の地震であることが分かった。
14日午後9時26分ごろ、熊本県を中心に強い地震が発生し、同県益城町(ましきまち)で震度7を観測した。熊本市や玉名市などで震度6弱、菊池市などで震度5強を観測。福岡、大分、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、山口の各県でも震度4を観測するなど広い範囲で強い揺れに見舞われ、最大で震度6強の余震も続いた。国内で震度7が観測されたのは、2011年3月の東日本大震災以来で、4回目。九州地方での震度7は1923年の観測開始以来初めて。
東日本大震災以来 2人死亡、100人けが
被害の全容はまだ分からないが、私は先日読んだ石黒耀『死都日本』が頭を過ぎった。
⇒2016年3月23日 (水):浜岡原発撤退の論理と倫理/技術論と文明論(42)
同書は、霧島火山の下に眠る加久藤カルデラが30万年ぶりに巨大噴火(破局的噴火)し、南九州は火砕流に飲み込まれて壊滅する、というストーリーである。
冒頭に参考地図が掲げられている。
今回の震源地である益城町は、白山火山帯と霧島火山帯が重なった付近であると思われる。
わが国の代表的な活断層は、列島を縦断する中央構造線と、日本の中央部を横断する糸魚川~静岡構造線(糸静線)である。
益城町は中央構造線の西端付近であるが、中央構造線は水銀・朱の産地と関連していると言われる。
丹生都比売伝承
福島第一原発事故を半年前に予言した書『原子炉時限爆弾』ダイヤモンド社(2010年8月)を書いたノンフィクション作家の広瀬隆氏は、ダイヤモンドオンライン2015年7月17日号の『再稼働で揺れる川内原発の地震対策は、まったくなっていない!』で次のように書いている。
同じように、中央構造線もそろそろ動くだろうと見られている。川内原発は不幸にして、その日本最大の活断層の上に建っているのだから、そもそもこんな場所にあることが間違いなのだ。
中央構造線が動けば、マグニチュード8という内陸型地震として最大の揺れに襲われる。しかも、大地震が原発の直下で起こるのだから、東日本大震災で、至るところが破壊された福島第一原発とは比較にならない巨大な揺れに襲われるのである。
原子力発電所の敷地そのものがはね上がるので、耐震性も何もない。原発ごと吹き飛ぶ大惨事となる。
加えて現在は、それを予告するかのように、地球の動きが止まらない。
誰もがご存知の通り、九州全体の火山の噴火が日本一、という活発な状態を続けているのだ。
すなわち、2009年にはじまった鹿児島県の桜島の大噴火は、2010年以後、1000回を超える噴火を4年間も記録し続け、昨年だけ爆発的噴火が450回へと半減したが、安心できるどころか、逆に、噴煙の高さが3000メートルを超える噴火が16回を数え、爆発の規模はむしろ拡大傾向にあるのだ。
2011年1月26日には、桜島の北にある霧島山の新燃岳《しんもえだけ》で大噴火が起こった(その直後に東日本大震災が起こったのである)。
2014年11月25日には阿蘇山噴火が起こって噴煙が1500メートルに達したかと思うと、2015年5月29日には、前年に噴火がはじまった鹿児島県の口永良部島《くちのえらぶじま》で大噴火が起こり、噴煙が9000メートルに達した。つい先日のことだ。
地震で九州新幹線の回送列車が熊本市内で脱線した。
けが人は無かったが、川内原発は運転を継続するという。
3.11の時、震度4の余震で震源から200km離れている青森の東通原発は冷却機能を喪失したのである。
その教訓も広瀬氏の警告も『死都日本』のメッセージも、九州電力と政権の耳には、念仏のように聞こえるのであろうか。
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