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2016年4月27日 (水)

石黒耀『死都日本』/私撰アンソロジー(43)

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スクープを連発している「週刊文春」の3月17日号に、池澤夏樹氏の『3.11を読む』という書評が載っている。
小松左京『日本沈没』、石黒耀『死都日本』、北野慶『亡国記』である。
いずれも、地学的な変動が日本国を滅亡の淵に追い詰めるというストーリーである。
⇒2016年3月23日 (水):浜岡原発撤退の論理と倫理/技術論と文明論(42)

発行は『日本沈没』が1973年、『死都日本』が2002年、『亡国記』が2015年である。
日本沈没』と『死都日本』では、先見性のある政治家が危機を救うが、『亡国記』では安倍晋三首相をモデルにしていることが明らかであるが、危機におけるリーダーとしてまったく機能しないリーダー像である。

私は今回の「別府-島原地溝帯」と呼ばれる地域で起きている地震の第一報を聞いたとき、この作品のことが頭に浮かんだ。
霧島火山帯の古層の加久藤カルデラが30万年ぶりに噴火し、日本が壊滅の危機に瀕する……。
初版は2002年だが、東日本大震災が起きて、ストーリーの現実味が増した。

日本列島はプレートの押し合いで成り立っている。
押す圧力と岩盤の強度のバランスが崩れると断層になる。
大断層帯として中央構造線と中央地溝帯(フォッサマグナ)があるが、静岡県はそのシンボル的な地域である。
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富士川河口断層帯では中央地溝帯が露出している。
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東西を結ぶ要衝であり、地震が起きれば被害は甚大である。
浜岡原発は中央構造線と中央地溝帯に挟まれた地点にある。

偶然かも知れないが、太平洋の対岸のエクアドルでも大地震が起きた。
地下で何が起きているのか? 
気象庁はどう推移するか予測できないとしている。
「別府-島原地溝帯」という限定された範囲でも分からないののが現在の地球科学の水準である。
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地震連鎖と愚か者の無責任

「火の国」の由来となった阿蘇で巨大噴火が起きる可能性もゼロとは言えないだろう。
今回は内陸断層型地震で、南海トラフ地震との関連性は薄いとされているが、南海トラフ地震の発生確率は確実に高まっていると考えられる。
死都日本』は先見的な警告の書として読まれるべきであろう。

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