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2016年4月28日 (木)

金融緩和政策の末路/アベノポリシーの危うさ(58)

海外でのアベノミクス評価は厳しい論調が目立つようになっているという。

『ウォール・ストリート』(2016年2月10日)も「三本の柱の内、最初の金融政策は唯一、期待が持てるが、財政拡張は財務省の抵抗で失速し、構造改革は短期的には成果が期待できないものだ」と指摘し、もっと大胆な政策が必要だと説いています。『ワシントン・ポスト』(2016年3月5日)は「アベノミクスは今までのところ、たいした成果を上げていない」と書いています。通信社AP(2016年2月15日)も日本経済がマイナス成長になったのを受けて「大規模な金融緩和によるインフレを通して経済を再生するという安倍首相の野心的な戦略は約束されたような成果を上げていない」と厳しい見方を紹介しています。
 通信社ブルームバーグ(2015年9月10日)は、アベノミクスに好意的であったクルーグマン教授が「アベノミクスが失敗するリスクは高まっている」と、アベノミクスに対する懸念を表明したと報道しています。クルーグマン教授は2014年11月に安倍首相と会談し、消費税引き上げを延期するように語っています。同様にノーベル経済学賞経済学者ジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大学教授も2016年3月16日に安倍首相と会談し、クルーグマン教授と同様に、消費税引き下げの延長の必要性を説いています。
4年目のアベノミクス 厳しい論調に転じた海外メデイア

にもかかわらず、安倍首相はアベノミクスを世界に広めると意気軒昂である。
正気の沙汰とは思えない。

安倍晋三総理は21日、先進7か国と欧州の経済界首脳が参加し開催された「B7東京サミット」であいさつし「日本のアベノミクスを世界のアベノミクスへと、経済政策を更に進化させることにより、G7議長としての重責を果たし、世界経済のかじ取りにしっかりとリーダーシップを発揮していきます」と強くアピールした。
アベノミクスを世界のアベノミクスへ 総理決意

世界に恥を撒き散らすことになりかねない。
28日の金融政策決定会合で追加緩和が見送られ、現状維持となった。

日銀は28日の金融政策決定会合で、追加金融緩和の見送りを賛成多数で決めた。マイナス金利と国債の大量購入を柱とする大規模な金融緩和を現状のまま維持する。一方、2017年度の物価上昇率の見通しは前年比1.8%から1.7%に下方修正。2%の物価上昇目標の達成時期を従来の「17年度前半ごろ」から「17年度中」へと約半年先送りした。目標達成時期の先送りは今年1月に続き4回目。13年4月の「異次元緩和」導入当初は「2年程度」とした目標達成時期は4年半程度かかることになり、18年4月に任期を迎える黒田東彦総裁の在任中の目標達成は瀬戸際に追い込まれた。
日銀決定会合で追加金融緩和見送り 現状維持に

自ら異次元という金融緩和政策で何がもたらされたのか?
経済政策の狙いは下図のように解説されている。

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アベノミクスは、すでに失敗している!?
「金融緩和⇒円安⇒輸出増⇒給与アップ」のはずが… 輸出減る!!
金融緩和⇒円安⇒輸出伸びる⇒国内の生産活発に⇒景気回復⇒給与アップ⇒景気回復の好循環
のはずが、輸出は延びず、給与アップは幻想になった!?
アベノミクスは、すでに失敗している!?「金融緩和⇒円安⇒輸出増⇒給与アップ」のはずが…輸出減る!

GDPも消費も増えず、インフレにもなっていない。
アベノミクスの基軸というか唯一の金融政策の限界は明らかである。
⇒2016年4月 5日 (火):金融政策だけではどうにもならない/アベノポリシーの危うさ(48)

 ブルームバーグが25日付で報じた試算(21日現在)は衝撃だ。日銀の2010年から5年以上に及ぶETF買い入れ額は時価ベースで累計8.6兆円に上り、日銀は日経平均採用225銘柄のうち約200社で、保有率上位10位に入る実質大株主になっているという。
 たとえばミツミ電機の実質保有率は約11%で筆頭株主、ファーストリテイリング(ユニクロ)は約9%で3位だ。現在のペースで日銀の買い入れが続いたら、17年末には京セラや日清製粉グループ本社でも日銀が事実上の筆頭株主になる見込みというから、今さらながら“異次元”の事態だ。
黒田バズーカ4あるか 日銀追加緩和で進む企業の“国有化”

国債は1,000兆円にもなる。
このまま日銀が国債を買い続けるとどうなるだろうか。
日銀券を大量に出し続けることになるが、いつまでもそんなことが続けられるわけもなく、いずれは売るという“出口”を探さなければならなくなる。
日銀が売らずに保有し続けると、浮動株が減って、株価操作がしやすくなるという“副作用”が生じる。
金融緩和政策は終焉を迎えざるを得ない。

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